PandoraPartyProject

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たった一つだけ

 神の門は聳え立つ。潜り抜ける事が容易であると考えた者が居たか。
 積み上げた石はいとも容易く崩れ落ちるが、それでも神域――或いは、理想に手が届くと信じ込む者達が居た。
 何方が無様であるかと問われれば『アドラステイア』否、アドレは答えることが出来なかった。
「不細工な顔」
 嘲るように言った女へと振り返る。何方が、と言い掛けたがアドレの脳裏に浮かんだ『知り合いの恋ボケ聖女』が言って居た言葉が過る。

 ――女の子にとって、恋することは命を奪われるようなものよ。
   愛しい人からの拒絶なんて、それこそ死んだようなものだから。優しくなさいよ。

 ああ、そうだったか。彼女は、楊枝 茄子子(p3p008356)は『一度振られてきたのだったか』。
「暇してるの?」
「ん? 違うよ。ツロが少し待っていろって。何させるつもりなのかしらないけどさ」
 爪を噛んだ。急がなくては。至急、『あの人』の予定を確認して、二人きりで話せるタイミングを見極めねばならないのだ。
 茄子子は恋をしている。その恋心は憧憬というよりも執着にも近く、盲目的なほどに自らが受け居られると信じ込んでいる。
 アドレと共にテュリム大神殿での防衛を行なった際には彼女は預言者ツロから指示を受けて『自由に動く』ようにと遙々と『偽の預言者』の元へと果せた。
 その地に居た教皇シェアキムに共に逃げて欲しいと誘ったその言葉は虚しくも振られてしまったのだけれど。
「茄子子はさあ」
「え、今名前呼んだ?」
「呼んだ。お前の識別固有名詞」
「……遂行者に気楽に呼ばれるって、違和感しかない。何?」
「偽の――いいや、これはダメだな。えーと、シェアキムって男は誘えば着いてくると思う?」
「当たり前じゃん」
 茄子子は眉を吊り上げた。当たり前ではないか。唯一無二の願いだ、彼を手にすることだけを目的に遂行者にまで『寝返った』のだから。
 それでも茄子子の肉体には聖痕は刻まれていない。聖痕は則ちは死を意味している。
 例えば、グドルフ・ボイデル(p3p000694)や夢見 ルル家(p3p000016)が自らの目的が為に遂行者の信頼を目的に肉体に得た『証』のように。
 聖痕は滅びによって肉体が蝕まれる。狂気ともとれる成人状態にまで移行するが、強大な力を得る事には違いない。
 茄子子はその選択をしていない。『何故か同情したような顔をした』聖女は「フリでもしときな」と言ったのだ。
(信頼されてない……ってより、目的を理解された気がして『大嫌い』だ)
 茄子子は聖女ルルが嫌いだ。大嫌いだ。そう面と向かって言えば何を思ったのか「私は好きよ」などと宣うのだ。
「なんか恋すると皆馬鹿になるんだね」
「はあ?」
「ルルも、茄子子もさ。好きな人が絶対に振り返ると思い込んでるじゃん」
「……」
「いいね。僕もそうなれたらよかったんだろうな。僕がツロ様をそういう意味で好きだったら何かを疑わずに済んだかな」
「……どう言う意味?」
 茄子子は一番に信用ならない男『ツロ』を盲目的に敬愛している少年の言葉の全容を把握できずに居た。
 アドレは肩を竦める。それから困ったような顔をして「何となく」と呟く。
「茄子子に教えといてあげるよ。ルル家はルルが連れ回してるけど、グドルフや茄子子はそろそろお呼びが掛かるんじゃない?」
「ツロから?」
「そう。茄子子何て特に。目的があるだろうから」
「……まあ」
 その為に動いている。茄子子は己のエゴであると豪語できるほどに目的を胸にしている。
 イレギュラーズのために『穴』を見付けるグドルフは疑われないようにと再三の注意を行なって遂行者らしく動いているがツロはどう思うのか。
「やっぱりさ、信じるって難しいんだよね」
 アドレはぽつりと言った。
「だから何の話」
 茄子子は眉を吊り上げてからアドレにつかつかと近付いていく。この面倒くさい『クソガキ』は何が言いたいのか。
「……ちょっとイレギュラーズと遊んでこようかなって話」
 さらりと躱した後に少年は言った。罪は消えず、罪は濯がず、受け入れる事も罪ならば、有り余るほどの罰を受けたこの身は何処に行けばいいのだろうか、と。

 ※遂行者との戦いが続いています――

 ※シーズンテーマノベル『蒼雪の舞う空へ』が開催されました。
 ※プーレルジールの諸氏族連合軍が、魔王軍主力部隊と激突を始めました。
 ※イレギュラーズは『魔王城サハイェル』攻略戦にて、敵特記戦力を撃破してください。


 ※ハロウィン2023の入賞が発表されています!

これまでの天義編プーレルジール(境界編)終焉の兆し(??編)

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