PandoraPartyProject

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神の門

 遂行者の中でも最高位に存在する『預言者』ツロより幾人ものイレギュラーズに招待状が届けられた。
 その内の一通は、シェアキム・R・V・フェネスト(p3n000135)が手にしている。それは教皇である『フェネスト六世』を本拠に誘い込み天義そのものの機能を停止させようとしてのことなのだろう。
 命が惜しければ此方に降れと云う事だろう。
 その招待状より敵地を辿れると告げたバビロンの断罪者の言の通り、神の国への経路を辿ることは出来そうだ。
「幾人か帰還致しました。サクラ曰く、ロウライト卿は敵地に残られた、と。」
 リンツァトルテ・コンフィズリー (p3n000104)の報告を聞いていたシェアキムは「ふむ」と呟く。
 サクラ――サクラ・ロウライト(p3p005004)は祖父であるゲツガ・ロウライトがツロとの交渉のテーブルに着いたと報告した。
 彼女と共に帰還したスティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)やゴリョウ・クートン(p3p002081)、ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)であれば『神の国』への道筋が確かなものであるかを肌で感じ取ることが出来るだろう。
「茶会の席に着いたイレギュラーズは以前と行方知らずだが帰還可能性はあるだろうか」
「どうでしょうか。……易々返すとは思えませんが」
 ココロが眉を顰めればゴリョウは「ま、『迎えに行けば』状況が変わるんじゃねぇか?」と何かを含ませたように云った。
「例えば、アイツらの領域を制圧しちまって、大物を釣り上げるってのはどうだ? それが出来りゃ、後手に回ることもねぇ!」
 ゴリョウの笑みにリンツァトルテは「大物」と呟いた。そう、幾らツロが最高位の遂行者であれど彼の上には更に『上位存在』と呼ぶべき者が居る。
「――『冠位傲慢』」
 彼こそが此度の敵なのだ。
 彼の権能を借り受け、本拠とされた『領域』を制圧する。
 権能を多数に分けた事によりそれらを撃破することで弱体化された『冠位怠惰』でも、己の権能を相手取り制御を試みた『冠位暴食』とも違う。
 つまり、傲慢にも権能をひけらかした以上、その部分をじわじわと削り取って行く事が出来る筈なのだ。
「神の国に渡り、道を繋ごう。冠位傲慢を倒す道。それから、仲間が帰ってくるための道だよ」
 サクラはお祖父様と唇に含んでからシェアキムを見た。その双眸には強い決意が宿されている。
「やれるやれないか、じゃなくってやるだけだよね?」
 にんまりと笑ったスティアはサクラの手を引いて「作戦会議にいこう」と微笑んだ。
 作戦遂行のために準備へ向かうイレギュラーズの背を見送ってからリンツァトルテはシェアキムを振り返る。
「招待状がその手の内にあると言うことは、此方への干渉が無いとは言い切れません。どうぞ、御身が無事でありますよう」
「……ああ、其方は宜しく頼むぞ」
「お心のままに」
 傅いた青年は、深く頭を下げてから聖剣を手にした。
 コンフィズリーの不正義――父の『罪』は確かに当時の天義を揺るがす大罪だったのだろう。
 其の儘、落魄れ項垂れていたならばリンツァトルテとて何時、魔の気配に手を伸ばしたかは定かではない。
 隘路より救い出してくれたのは紛れもなくイレギュラーズ達だった。彼等の為にこの国を良き物にすると誓ったのだ。
 そんな彼等が強制召喚により拐かされたというなら。
 恩義に報い、必ずや。
「彼等を必ずや救い出しましょう。そして、この命に代えてでも必ずしや冠位魔種を――」
「コンフィズリー卿!」
 勢い良く開かれた扉と共に「ちょっと!」と呼ぶ声が聞こえた。振り返れば慌てた様子で走り寄っているスティアと声の主、イル・フロッタ(p3n000094)が立っている。
「……イル」
 ゆっくりと立ち上がったリンツァトルテにイルをその双眸に映してから不機嫌そうな顔をした。
 己の宣誓への横槍は長らくを共にした『後輩』であったとて認められやしない。
「教皇猊下、私もスティア・エイル・ヴァークライトとサクラ・ロウライトと共に神の国へと参ります!
 友人であるスティアの無事を願う事も何よりですが、コンフィズリー卿は無茶ばかり。サクラの制止だって聞きますまい!」
 ぐ、とリンツァトルテは息を呑んだ。当たり前だ、サクラが何と云おうとも己が命を賭けるべきならば擲つ覚悟で『騎士』としてやってきた。
「騎士団は死にたがりばかりです! 先輩は、いつも死に急ぐし。
 オリオール卿とかどっか行ってしまったし、アリアライト先輩もだ!
 グランヴィルは真面目過ぎるし、グランヴィル小隊なんて爆発物みたいな感じだ! それに、それに!」
「イルちゃん……」
「サクラも、スティアもそう! イレギュラーズは何時も勝手に何処かに行っちゃって……」
 イルは叫んだ。つかつかとリンツァトルテに近付いていくイルをスティアは慌てて追掛ける。
「貴方が一番、腹が立つ。分かった顔をして、救われたフリして。
 全然……これからなのに、もう満足だって、覚悟ばっかり完了してるんだ」
 イルは拳を固めてから、リンツァトルテを睨め付けた。桃色の瞳に苛立ちが乗せられている。
「先輩の馬鹿! 馬鹿ンツァトルテ!」
「イルちゃん……ふふっ……」
 スティアが笑いを堪える。背後には言っちゃったという顔をしたサクラの姿も見えた。
「イ、イル……」
「猊下! イルダーナ・ミュラトール、馳せ参じました。
 ミュラトール家には話を通しました。どうせ死にに行くなら名乗っても良いとのことですもの!
 覚悟の元、私は天義騎士ミュラトールの騎士としてこの作戦に参加させて頂きます。
 要するに猊下とイレギュラーズを勝手に呼び出した遂行者が居て、帰ってきたイレギュラーズも居るけれど未だに茶会やらなにやらで残っているイレギュラーズがいる、と!
 取りあえず帰り道を得るために遂行者をドツいて、ついでにその周辺を制圧して冠位傲慢を引き摺り出す作戦ですよね!?」
「あ、ああ……」
 勢いの良すぎるイルにシェアキムもたじろいだ。世にも恐ろしい勢いで此度の作戦を纏めてきた。
「イルは残って周辺対応を、」
「行きます」
「いや、周辺対応を」
「行きます! 先輩が私を置いていくのは後輩だからですか? 危険だからですか? 嫌です!」
 イルがリンツァトルテの胸倉を掴む。リンツァトルテは目を見開いたままイルを見詰めていた。
「私は貴方に笑っていて欲しい! 貴方に幸せになって欲しい! その隣が私じゃ無くっても良い!
 先輩が幸せになってくれたら私なんてどうでも良い位に貴方の事が好きなんだ!」
 シン、と時が止まった。リンツァトルテは掴み掛かられたまま「は」と小さく息を漏し――
 シェアキムの咳払いが響いた。
「え―――ああああ、私、言って――ッ、ス、スティアアアアアア、サクラアアア、どうしようううう!?
 そっ、それでは! 作戦開始! 解散! 行ってきます!」
「ちょ、イルちゃん!? あ、リンツさん、集合場所はここってことで!」
「それじゃ、神の国でね!」
 走り去っていくイルを追掛けるスティアとサクラが手を振ってから駆けて行く。
 ぽつねんと残されたリンツァトルテは振り向いてからシェアキムに「ど、どうかご無事で」と絞り出してから何とも言えぬ表情の儘、その場を後にした。

 ※一部のイレギュラーズが『聖女の薔薇庭園』なる地へと招待されたようです――!
 ※『神の国』に存在するテュリム大神殿攻略作戦が開始されました――!


 ※プーレルジールで奇跡の可能性を引き上げるためのクエストが発生しました!

これまでの天義編プーレルジール(境界編)終焉の兆し(??編)

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