PandoraPartyProject
シナクシス
「――預言者ツロの言葉?」
「うむ……『招待状』なるものが、届いたのだ」
「陛下の下に……!?」
聖都フォン・ルーベルグ。その中枢にて、シェアキム・R・V・フェネスト(p3n000135)はレオパル・ド・ティゲール(p3n000048)に語る――己が手に、一つの手紙を抱きながら。
封蝋として刻印されているのは聖痕、か?
その印、遂行者ルルのものである様に窺える。えぇいふざけた印だ……!
「今朝方、枕元にふと、な」
「中身は」
「まだ中は見ていない。大方予測は出来るがな……
それよりも不思議なのは『何』も起きていない事だ」
「それはどういう事でしょう――何か仕掛けられている、と?」
うむ、と紡ぐシェアキムは手紙そのものに視線を落とそうか。
遂行者が1人。神の言葉を聞き、先を見通す者、名をツロという――
己が眠りについている間に齎された、その言葉が脳裏に響き残っている。
直感もするものだ。アレはきっと誘いであった、と。
それは呼び声であると同時に、彼らの拠点たる地への招致という意味でも……
報告によれば遂行者達が『帳』とやらを展開した際、神の国に引きずり込まれた者がいたと聞く。然らばある程度狙って、特定の人物を自らの領域に招致せしめる事も不可能ではないだろう――特に、冠位傲慢に近しい者の放つ力であれば尚更に。
しかしシェアキムの身に異変は起こっていない。呼び声の狂気に犯されてもいない。
これは一体如何なる事か。
即座に発動しなかった手前、今から何か起ころうと対処出来るかもしれぬが……しかし。
「――例えば。行方が知れなくなった者はいないか?」
「すぐに調査を行いましょう。しかしもしも神の国に強制的に招待されたのなら、事態の把握にはやや時間がかかる可能性が……」
被害を受けた者は既にいるのでは、と。
レオパルは表情を微かに曇らせるものだ。
どれ程の人間が対象となったのか。そしてどこへ招待されたのか――
突発的に行われた敵からの攻撃。全貌の把握を即座に、とはいかないだろう。
……しかし放置する訳にはいかない。敵地に招かれたのならば危険だ。
イレギュラーズ、聖騎士、聖職者――いずれの者であろうとも。
「聖騎士団はいつでも動けるように待機を。
――しかし遂行者らの企みは今まで国内外で阻止されてきました。
自らの国に外的要因を引き込んだのは、遂行者らの『焦り』が故やもしれません」
「確かに……此度の一件は実に大胆が過ぎる。懐に敵を招くは諸刃の剣。
……もしくは『どうとでも出来る』という傲慢もあるのだろうがな」
同時。レオパルは聖騎士団団長として、騎士団員らに備えをさせる指示も飛ばそうか。
事態がどう動くにせよ対処できるように。
と。その時。
「教皇陛下! 此度の事態に対し、情報を知るという者が……!」
「――失礼仕る」
リンツァトルテ・コンフィズリー(p3n000104)がシェアキムの下へと至った。
その背後には――黒衣を身に纏った白髪の男も伴って。
「下賤なる身でありながら教皇陛下の御前に身を現わす事、お許しください。
私の名はネロ。『バビロンの断罪者』の一員でございます」
「バビロンの断罪者? ……聞いたことがある名だな。
先々代アルマン枢機卿の口から噂にと伝え聞いた事がある。
斯様な組織がある、と。しかし実在したとは」
「我らは影。光たる御身らと歩み交えぬ存在でありました。我らの断罪の咎は教皇陛下らのあずかり知らぬものであるとする為にも堅く秘匿されていたのです。尤も、残っている者も最早私以外おりませんが……
ともあれ預言者ツロが動いたと聞き、事態は深刻であると存じます」
それはネロなる者。かつて天義が苛烈極まっていた時代、秘密裏に作られた組織に属する人物だ――聖騎士団と合流せず、闇に潜りて断罪を成す血の側面。彼らは聞く所によると遂行者らと長らく戦っていたらしい。
その結果で、もうネロ以外の人員は存在しないとの事だが……
代わりに長年追っていたが故の情報も持っている。
「ツロは恐らくアリスティーデ大聖堂、その中の『聖女の薔薇庭園』に見込みがある者を呼び寄せたのでしょう。庭園は遂行者らにとっての重要な拠点。かの地に招かれたというのならば、手は一つしか御座いません――大聖堂を攻める事です。救出の道はそれしかありますまい」
「しかし道筋が分からぬ」
「我々にとっても同様でした。ですが今は事態が異なります。イレギュラーズ達によって確保されたリンバスシティを経由すれば攻め込む事は不可能ではありません――更に教皇陛下がお持ちのその手紙。ツロの力を感じえます」
「解析し神秘の経路を……ツロへの道筋を辿れという事か。騎士団長」
「ハッ、至急に。ですが手紙を開いた瞬間、招致の力が作動しないとも限りません。慎重に行います」
ネロの言葉を聞き、シェアキムはレオパルへと手紙を託そうか。
上手く解析する事が出来れば――庭園へと侵攻する手がかりが掴めるかもしれぬ。
しかし。
「しかし傲慢とは言え、斯様な隙を作るのは違和感が……」
「ご明察恐れ入ります、コンフィズリー卿。
庭園には強力な呼び声が渦巻いている事が予見されます。
――つまり下手に人員を投入すれば、全て魂を犯され全滅されかねません」
「では」
もしも攻めるのであれば精鋭を投入するしかない――と言う事か。
この手紙は罠であったのかもしれない。焦って部隊を投入すれば甚大な被害が出ていた可能性もあるのだ。
……ならばそれこそ、イレギュラーズ達の力を頼るしかないかもしれない。
彼らはいずれも神によって選ばれた、世界の滅びを妨げる者達。
遂行者らの狂気にも抗う事――彼らならば出来るだろう。
「しかし。バビロンの断罪者、ネロよ。何故この機に光と交わらんと決意したのか」
「……私だけで抗うは不可能であると。それになにより。
滅びに立ち向かう英雄らの光が――なにぶん。
「焦がれる程に眩しきものでありましたが故」
「思わず手を伸ばした、か。フッ。確かに、な……」
さればシェアキムは――口端に微かな笑みの色を灯そうか。
つまる所、ネロはイレギュラーズらの希望を信じたのだ。
彼らならばこの国を救えると。ならば矜持よりも彼らに託した。
そしてその心はシェアキムも分からぬではない。
――なぜならば。冠位強欲の事件の折がそうであったのだから。
この国を包まんとしていた闇を祓った彼らは――正に、希望そのものだったのだから。
※遂行者に『何らかの動き』がありました――
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