PandoraPartyProject

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ポロキメン

 われわれは、主が御座す世界を正しさで溢れさせなくてはならない。
 ひとは産まれながらに罪を犯すが、主はわれらを許して下さる。
 故に、われらはその御心に応えるべく献身するのだ。

           ――――ツロの福音書 第一節

 この世界は偽りに満ち溢れている。
 決して避けることの出来ない滅びは足音をさせずに近付いて来ていた。
 預言者ツロは『特異運命座標』と呼ばれる者達が大量に召喚された日の事を思い出す。
 運命の日。始まりの日。流転せし、激動の第一日目――
 なんて、下らない。ツロは一人、非憎げな笑みを浮かべた。
 滅亡だ運命だ、ましてや神託だ? 偶然ではなく必然だという。
 この世界に訪れる終局を否定するために呼び出された英雄候補達。
 救いの可能性(パンドラ)が、確定的終局が訪れる未来を捻じ曲げようとするのだ。
 ほら、此れだけで良く解るではないか。可能性の蓄積は本来の『神託』を捻じ曲げている。
 神託の少女ざんげが語った未来を変えるために姿を見せたイレギュラーズの存在が、全てにおいての歴史に変化を齎したのは言うまでもない。
(そうだ。ルスト・シファーという男とイレギュラーズならば何方が先に居たか――)
 つまり、『正しい歴史』を求める遂行者の言は決して間違っては居ないとツロは考えて居た。
 勿論道理を説かれてしまえば『これまでの歩み』への否定を行なう遂行者は卑劣なる存在であろう。それも認識している。
 だが、全ての始まりに立ち返ったときに一つの救いが其処にあったならば縋るのが人間の業でもある筈だ。
 少なくともツロは――……
 男の唇がつい、と吊り上がる。己の身の上話などどうでも良いではないか。
 準備は整った。刻は来た。此れをしくじれば、可能性の刃は喉元にまで近付いて来ている。
 ひりつく空気をツロは人生のスパイスのようにも感じていた。そんな物を味わうのは一度きりで良いのだがそうも行かないらしい。
「アドレ、西の様子は?」
「指導者達が変化に気付いたようです、如何なさいますか?」
「ルスト様は勝手にしろと言って居た。興味が無いと仰って居たのだからそれ以上は何もない」
「そ、うですか……」
 アドレと呼ばれた遂行者は眼前のツロを眺めて居た。
 いつにも増して、彼は悍ましい気配をさせている。それが神様(ルスト)の力を借り受けた結果だと言う事だろうか。
(……この人は、僕を道具だと認識しているんだろうな)
 アドレ――アドラステイアは遁れざる宿命を背負って生きてきた。人の業を喰らい、救いの時を待つ『方舟』の役割だった。
 主と共に歩んだ正しき者だけが救われるべきなのだ。
 遂行者は認められた証に聖痕を体に刻み込まれている。
 人ならざる滅びそのものも。滅びが結びつき作られた者も。魔種も何もかも、だ。
(置いて行かれないだけ、きっと、良いことなんだ。僕はもう独りぼっちではないのだから)
 アドラステイアは一つ息を吐いてからツロを見た。
「選択はお済みですか、ツロ様」
「ああ。……ルルも、お前も、オルタンシア達も利口だったね」
 彼は今から、『選んだ者』達へと聖痕を付与するために誘うのだという。
 ただ、数を限ったのは神の国に彼等を招き入れることになるからだ。誘いを断った者が出た場合に『駆除』には手間取るだろう。
「さあ、選別の刻だ――
 アドレ、イレギュラーズはどうなると思う?」
「……それは貴方様の誘いを『断った場合』のことですか?」
「勿論。我らの『隣人』になる存在は、掬い上げよう。そうでないならば――」
「答えは同じようだね」
 隣人ならば招き入れ、共にさいわいを手にしよう。そうでないならば、悪魔そのものだ。殺さねばならない。
 堕落し、争い合う人間はこの世界には必要ないのだから。
 ツロが求めるのは争いはなく、静かに終っていく世界だ。
 その中で、己が正しき行いを見た神が救う価値を見出せばこの世界から抜け出すことも出来よう。
 無理に足掻くことに意味があるのか? 無辜の民を危険に晒し、わざと救いの光を作り出そうとした神は果たして本物なのか?
 ならば、どうして原初の魔種が、原罪と呼ばれた存在がこの世界に存在して居るのか。
 男の声は、彼方へと響く――

「遂行者が1人。神の言葉を聞き、先を見通す者、名をツロという―――」

 ※遂行者に『何らかの動き』がありました――


 ※希望ヶ浜で『マジ卍祭り』が開催されました!

これまでのシビュラの託宣(天義編)プーレルジール(境界編)

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