PandoraPartyProject

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私達は潮騒には遠いのだから

 誓って、清廉潔白である。神の御心に従い、万物を愛し、ただ、祈りを捧げ続けるべきであった。
 それが『カロル・ルゥーロルゥー』の在り方であったのだから。
 その道を外れてしまったならば、果たして『カロル・ルゥーロルゥー』と呼べるのであろうか?

「暑っっい。馬鹿じゃないの」
 ぐったりとしていた聖女ルルはテーブルに額を擦りつけている。
 白いテーブルとチェア。薔薇の咲き誇ったガーデン。それがルルにとってのお気に入りで、彼女にとっての『陣地』であった。
 遂行者の中でも発言力が強く(喧しいとも言う)、目立つ存在である彼女は『預言者ツロ』の言葉を聞き届け、各地の遂行者達へと『神託を降す』役割でもある。
 故に、このガーデンは遂行者達にとっても見知った場所なのだが――
「てか誰も居ないじゃないの! 皆、何処行った訳?」
「皆、真面目だから」
「待て、私が真面目じゃない見たいに言わないでよ。じゃあ、アドレも不真面目じゃないの」
 唇を尖らせたルルに遂行者アドレは「僕はツロ様を待っているだけ」と外方を向いた。
 ルルとアドレはそれぞれが違った思惑で動いている。ルルが『ツロの協力者』であったならば、アドレは『ツロの配下』と呼ぶべきだろう。
 立ち位置が違うのだから、動き方だって違う。当たり前の話だ。
「ツロは何してるの?」
「大事な『あの子』を迎えに行くらしい。それに、さ、ほら……一人じゃ寂しいだろうから友達もって」
「あー。まあ、天義でよく見る顔なら『ツロだったら出来るかも知れないわね』」
 ルルはさも興味も無さそうにテーブルをなぞった。ツロが何かを考えて居て、アドレがその為に動く。上等な話だ。
(まあ、ツロも私に対しては怒ってるでしょうけれど。
 ……豊穣で、つづりって子見たときに同情したのよね。
 あーあ、あの子も雁字搦めで『カロル』みたいだったもの。つい、見逃しちゃった。馬鹿みたい)
 さっさと殺しておいて、豊穣そのものを歴史から消し去れば『主』も喜んだだろうに。
 つい、見逃した。言い訳のように其処に居るだけだったのだ。
「私だって、そろそろ何かするわよ」
「何て?」
「……独り言。ほら、『地の国』でも見ましょうよ」
 テーブルのなぞった位置には『氷』が張られていた。そこに徐々に何かが映し出されていく。
 地の国と呼んだ現実世界の様子をルルは時折眺めている。
 この『氷』には、神託が映し出されることもあった。今までイレギュラーズよりも先に先にと動き回ることが出来たのはルルの『神託』を受ける事の出来る特異な体質によるものだ。
(……徐々に、この力も弱くなってる)
 神託の乙女だなんて呼ばれていたくせに。
 神託を受けることさえ出来なくなれば、自分は用無しだ。
 あの方に嫌われてしまえば、もう何も残らないことを知っているのに――
(せめて、何か、何か情報を得られたら)
 ルルがぴくりと指を動かした。

「は?」

「……どうしたの? カロル」
「アドレ! 見なさいよ。何コレ、すっごく楽しそう!?
 はあ? てか、『オルタンシア』も夏を満喫してるじゃないの!
 私を誘いなさいよ。許さねー! 何よ、サマーフェスティバルって」
「……」
 アドレは黙り込んだ。ルルが覗き見たのはイレギュラーズ達が参加していたサマーフェスティバルの水着コンテストだったのだろう。
「ああ、もう! 本当に可哀想に!
 私の水着が見られなかっただなんて、全世界の聖女ルルファンが嘆いているわ。
 我が主だってさぞ悲しまれたことでしょう。
 ああ、なんてこと。……我らが主よ、何時でも脱ぎますから許し給え」
「脱がないで欲しいし悲しんでないと思うし嘆いてないよ」
「は? 嘆いてるわ」
 ルルが唇を尖らせた。何とも言えない表情を見せたアドレは「ほんとうにさあ」と呟いた。

 ――本当にさ、『見えなくなった』んだね。『神託の乙女』は。

 ※天義国の方で動きが見えているようです――?
 ※2023サマーフェスティバルコンテストの結果発表が行われています!
 


 ※パンドラパーティープロジェクト6周年ありがとうございます!
 『六周年記念ローレットトレーニング』開催中!
 


 ※『冠位暴食』との戦いが終結しました――
 ※覇竜領域では祝勝会が行なわれているようです。

これまでの覇竜編シビュラの託宣(天義編)

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