PandoraPartyProject

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0と1・閉幕

「ぷっ……あは、あははっ! あははははっ!」
 身を包むほどの大きなソファに座っていた『聖女』は、まるで子供のように笑い転げていた。
 というのも――無様に敗退したクソマゾ野郎の姿を拝めたからだ。
「ああ、ああ、ごめんなさい。傷心よね。あれだけ気色ばんで練達に向かったのに――切り札の竜もどきも使ったのに、負けて帰ってきたんですものね?
 ええと、なんだったかしら――そうそう、『――必ずや、この国に、正しきを、正義を、降ろさなければならぬ』だったかしら?」
 聖女ルル=カロル・ルゥーロルゥーは、この時ばかりは嗜虐的な笑みを浮かべて、クソマゾ野郎=サマエルを小ばかにするように笑ってやった。
 普段なら、こうすれば笑みも浮かべようクソマゾ野郎であったが、しかしそれは、こいつの仮面の一つに過ぎないことを、ルルは充分に理解していた。
 彼は本心を見せない。時に気障ったらしくふるまうこの男の『本心』の一端を観られたのは、ルルにとっては意外だったし、同時に『本心』などというものは弱点に通じるものであったから、それはもう、たいそうしてやったりと思ったものだ。
「これは、手厳しい。同時に、報告するまでもなく、私の痴態は確認済みということか。
 いや、これは失礼――」
 サマエルがどうにか笑みを浮かべると、その身をひるがえした。ゆっくりと暗闇へ去っていく男の姿を見ながら、ルルはにんまりと笑った。
「久しぶりに、アイツに一発くらわしてやった気分だわ。ああ、愉快」
「そういえば、君の方は? カロル」
 サマエルに問われたルルは「それは後でお話ししてあげるわよ」とその顔を押さえ付けた。
「愉快といえば」
 そう声を上げたのは、異形の男、マスティマである。
「覇竜のほうでは、そう愉快とは言えぬ状況に陥っているようだな。
 暴食は、『黒き聖女』の干渉を受けたが、しかし『神託の魔女』の横やりによってご破算になった――」
 マスティマの言葉通り、現在、ローレットが大規模な作戦の実行中である覇竜領域において、外部からの『干渉』があったことは事実だ。
「どうなるのかしらね、あっちは」
「興味がないか」
 マスティマの言葉に、ルルは笑った。
「あのクソマゾの悔しげな顔よりは。結局――暴食は、」
 そう言って、僅かに止まった。
 なんと言葉を紡ぐべきなのだろうか。
 愚かだった、か。
 弱かった、か。
 愛に負けた、か。
 そのすべての言葉があまりにも『陳腐』なような気がして、カロルはべぇ、と舌を出した。
「我が神の足元にも及ばない、わ。真にこの世界を変えることができるのは、我らが神だけよ」
 カロルはそう言った。そうだ。そうだとも。『傲慢』にも神を名乗る、我らが神よ。汝だけが唯一であり、汝だけが絶対である。
 汝の言葉に従い、汝の言葉を世に布こう。その意志を、その名の下に遂行する。故に、我らは遂行者なのだから。
「所詮暴食は暴食なんでしょ」
 テレサ=レジア・ローザリアは座ったまま、つまらなそうに足先を揺らした。
「それで、次の予言は?」
 アドレが言う。
「……ツロ様としては、預言で『なぞられない場所』ばかりかもしれないけれど――」
 アドレはそう言って、地図を指さした。
「本来は、眠りに落ち、すべてを閉ざすはずだった緑の大地。
 本来は、砂塵に消え、欲望の内に潰えるはずだった砂の大地。
 本来は、暴力と憤怒の太陽に飲まれ、無へと還るはずだった鉄の大地
 此の辺りを僕達の独断と『偏見』で撫でてみるのはどうかな」
「いずれも、我らの正しき歴史よりはずれた、異端の大地だ。粛清されるべきである」
 マスティマがそう言った。
 世界はいまだ、激動の渦の中にある。
 悪意。魔の、悪意。それが、どの大地であろうとも、確かに、確実に、渦巻いている。
 その悪意が萌芽の時を迎えるのは、さほど遠くない筈だ。
 さて――
「で、聞かせて貰おうか。ルル。『本来は在るべきでなかったあの場所』の話を」
「カムイグラは――」
 そう、聖女は口火を切った。

 ※遂行者たちの暗躍は、未だ続いています……。


 ※『黒聖女』マリアベルの『無慈悲な呼び声』を空中神殿のざんげが『空繰パンドラ』発動で阻害したようです……!
  代わりに空繰パンドラの現在値が100000低下しました……

 ※『空繰パンドラ』の発動を経てベルゼー・グラトニオスによる『裏切り』が発生しました……!
 『<フイユモールの終>Goodbye Dear You.のシナリオ内容・情報が更新されました。



 ※『双竜宝冠』事件が新局面を迎えました!
 ※豊穣に『神の国』の帳が降り始めました――!

これまでの覇竜編シビュラの託宣(天義編)

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