PandoraPartyProject
『チャンプ』
風が吹く。『氷狼』の遠吠えと、見まがうばかりの風が。
「ううー寒いね。いつまで続くんだろう、この寒波」
「ホント。お肌に悪くてイヤだわ」
斯様な冷気を肌に感じているのはパルス・パッション(p3n000070)にビッツ・ビネガー(p3n000095)か。大闘技場ラド・バウの一角より周囲を眺めてみれば、寒さを凌がんとする者らがあちらこちらに。
しかしまぁ。それでも、ここはまだマシな方であろうか。
帝政派にしろザーバ派にしろ、革命派にしろ北辰連合にしろアーカーシュにしろ……勢力の庇護下にあれば支援の手がある。まだ寒さが激しくなる前からイレギュラーズが積極的に尽力し、食料の備蓄らを行い生産力を維持していた賜物でもあろう。
勿論根本的解決にはまだまだ乗り越えなければならぬ事がある。
「ひとまず地下の土地がもっと手に入ればね……
なんだろう。たしかフローズヴィトニルとかいう狼が封じられてるんだっけ?
この寒さもソレが原因ってイレギュラーズから聞いた事あるよ」
「さぁ。その辺りは、アタシも噂程度よ。
銀の森のエリスって子がよーく知ってるんでしょ?
でもアタシ達はイレギュラーズじゃないからね。あそこ行けないのよね」
銀の森。そこの主たるエリス・マスカレイド――イレギュラーズ達を歓迎しているかの地では、この寒波に対する伝説が語られていた。フローズヴィトニルという狼が封じられた伝説を……
だがその伝説を知るは銀の森だけではない。
新皇帝派組織アラクランも、だ。特にその総帥――ギュルヴィと名乗っている男――はフローズヴィトニルの封印の要を破壊し、この寒波を呼び寄せた人物でもある。その結果として鉄帝の地は凍り付き、人は飢える。
……果てに彼が『何』を望んでいるのか。
その野心の行き着く先がどこであれ、奴らの陰謀を放置する手はない――
「ま。アタシ達は新皇帝派の襲撃に備えておきましょ。
地下の事はイレギュラーズ達に任せるのが一番だわ」
「そうだね――ボク達もやれる事をやらなきゃ。
……って、ん? あれ? ねぇねぇビッツさん。アレ、ガイウスじゃない?」
と、その時だ。パルスが指差した先にいたのは――
スーパーチャンプと呼ばれるガイウス・ガジェルド(p3n000047)である。
おや珍しい。基本的には我関せずと只管に自らを高める男が、動いている。
「あら。どこに行くのかしらガイウス? お買い物かしら?
どこかに行くならついでに化粧品も買ってきてほしいのだけど――」
「あぁ、野暮用でな。少し、出てくる」
「そう。なら宜しく――はっ?」
ふ、と。思わず、ビッツの喉奥からは素の声が零れたものだ。
半ば冗談めかした言葉なだけだった。ラド・バウの最高戦力たるガイウス……そういった期待がある事に、自ら自覚があるのかないのか知れないが彼はラド・バウからあまり動こうとはしなかった。
ラド・バウは新皇帝派の膝元たる帝都に最も近いが故にこそ、いつ連中から襲撃があるとも分からないのだから。『最悪でもガイウスがいる』と言う事に安堵していた民も――幾らかはいた事だろう。
その彼が、動く? いや動くのはよしんば構わないが、どこへ――
「すぐに戻る」
「ちょ、ちょちょちょ、ガイウス――!?」
叫ぶパルス。しかし、ガイウスは振り返る事なく歩みを進めるものだ。
その行き先は近頃噂の『地下道』へと。
――そこへ往けば、自らとも関わりのある『かつての闘士』が至るやもしれなかったから。
※何かが始まろうとしています……!
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