PandoraPartyProject
憤怒と愉悦
(まあまあ、面白い状態だ)
バルナバス・スティージレッドの心境を示す言葉として『まあまあ』は最も適切であった。
自身の『暴政』により予定通り、鉄帝国は国家破綻の危機に瀕している。
弱い連中は弱いなりに寄り集まり、比較的マシな連中に導かれて『苦境』に立ち向かっているように思われたが、状況は予想をはみ出すものではない。自身なる暴威が直接手を下さなかったとしても、この国の冬は想定外を許しはしないのだからその先は見えていた。
「……まぁ、強いて言うなら予想外は案外協力的な奴が多い事なのかもな」
新皇帝派を名乗りバルナバスの意向に従う連中は存外に多かった。
彼等は主に旧国軍の強硬派からなる連中だが、余程ヴェルスの治世が気に喰わなかったらしい。
弱肉強食なる残酷かつ単純な四文字を強く望む彼等は不要物をそぎ落とす事で国を強く出来ると本気で信じているらしいのだから聞いて呆れる他も無かった。
(馬鹿かよ。いや、馬鹿だな?)
バルナバスはそんな単純な彼等を心底からせせら笑っている。
(強いだ弱いだ誰が決める?
滑稽だな。その辺のゴミも王宮のゴミも俺からすりゃあ誤差だってのに。
連中、自分だけは生き残れる側だって本気で信じてやがる。
……ま、ヴェルス位の奴なら認めてやらねぇでもないんだが)
バルナバスは内心で「それからこの間の連中も合格にしておいてやるか」と付け加えた。
(無駄だが、頑張るだろうな。実に無駄な努力だが)
人間は弱いがたくましい。どれ程の苦境に陥ろうとも、生き汚い彼等はそんなに簡単に絶えはしない。
圧倒的に酷薄な白が世界を支配したとしても、それこそ。
『いざ、他に手段が無ければ同胞の肉さえ喰らってでも生にしがみつくのが人間なのだ』。
(いいねぇ、そういうの! そうでなくちゃ俺が来た甲斐もねぇ)
唯の武力でそれを潰して回るではキリがない。
力のみを信望する国に最も相応しい『最期』はそんな中途半端では訪れないのだ。
故にこの国は荒れなければならない。
もっと、もっと、もっと、もっと。
悲劇を積み重ね、非業を肯定し、無惨に争い、怨嗟ばかりで満ちなければならないのだ。
憤怒が溢れれば溢れる程に、バルナバス・スティージレッドの権能は大きく大きくなるだろう。
舞台を呑み込み、欠片も逃さず、全てを終わりにする程に。
強く、強くなるのだから――
「――ああ、楽しみだ。このクソ国が木っ端微塵になくなる頃が!」
――最強の冠位にしか届かない『本当の破滅』を見せてやる。
※新皇帝派・『新時代英雄隊』の暗躍は続いています……。
※極寒はひとまずの収まりを見せています……。
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