PandoraPartyProject
思惑は入り乱れて
これが。不凍港の地図――
その言葉が先に零れたのは、はたしてポラリス・ユニオン(北辰連合)の会議室だったか、それとも独立島アーカーシュの一室だったか。いずれにせよ先日の不凍港の調査において不凍港ベデクトの状況を調査せんとイレギュラーズ達が赴き……そして入手した現地の地図を、皆が眺めていた。
かなり詳細な地図だ。西部にはベデクト駅があり、中央には工業区画や居住区画、そして当局庁舎の位置もハッキリと描かれている――東部へと目を滑らせれば、鉄帝国海軍施設――つまりは軍港やベデクト湾、監視塔や指令本部の位置なども記されていようか。
これがあれば制圧作戦を実施する際にスムーズな行動が可能となるだろう。
……問題は。
「ノーザンキングスだな」
「ええ。彼らが座して見ているとは思えません――新皇帝派を排除せんと我々が動くのであれば、横から『殴り』に来る事は、十分に考えられるでしょう」
ポラリス・ユニオンの拠点、ローゼンイスタフの居城において語るのはヴォルフ・アヒム・ローゼンイスタフ(p3n000288)にギルバート・フォーサイス(p3n000195)の二人だ。やはり懸念は、北東部に位置するノーザンキングス達――
彼らは新皇帝が成り上がってから不穏な動きを見せていた。
鉄帝軍がマトモに動けないならば今こそ――と。
そんな彼らが狙うのは冬に備えての不凍港である、との見方は強かったし実際にそうであろうとギルバート達は踏んでいた。なにせトビアスという、シグバルドの孫たる男がベデクトにいたのだから――それはノーザンキングスの偵察であったのは間違いない。
「不凍港ベデクトを新皇帝派の横暴から解放する、この方針に変わりはない。
……しかし全軍をもってベデクトに向かう、と言う事も出来ない」
「防備が空になればノーザンキングスは北辰連合の拠点たるこの城を落とすでしょうしね」
「ああ……そこで、だ。
独立島アーカーシュもベデクトに来ている、という話を聞いたな」
であればと。ヴォルフは鋭い眼光を向けるものだ。
――この機会にいっそ、アーカーシュと協力する道もあるのではないか、と。
「……北辰連合もベデクト奪回を考えているのならば、互いに争う理由はありませんね。
競合しないようにはしたい所ですが、しかし……
互いにベデクトを制圧した時、得られるモノをどうやって分け合うか」
そしてエフィム・ネストロヴィチ・ベルヴェノフ(p3n000290)も似た様な事を考えていた――もしかすればポラリス・ユニオン(北辰連合)とは協力出来るのでは、と。ただし事はそう簡単ではない。
北辰連合とアーカーシュが共同でベデクトを制圧した場合、港の利権はどうする?
分割? 分譲管理? それとも早い者勝ち?
とりあえず新皇帝派の手から取り戻してから話し合い、という手もあるが――というか、この地図なんですか。どうして都市設計書と軍用が混ざった上に印刷がずれているんです。担当者はどこのどいつなんでしょうかねこのクソXXXXX
「……ベデクトを取り戻すならば早急に動かなくては……ベデクトを合同で攻め落とす……? それぞれの派閥で攻略する地点を先に決めて、ぶつかり合わないようにしつつ……アーカーシュの『火』を落とす訳にはいきませんし……彼らが西部から当局庁舎を落とすなら、こちらは南部と港を……」
生じていた頭痛の種から、ひとまず一端目を逸らして考え込む歯車卿エフィム。
やはりこういう時、互いに鉄帝の事を想っているとはいえ勢力が別れていると面倒だ――どうすべきか。彼は思案を脳内で幾度も重ねて……
「――そうだ。イレギュラーズの皆さんならば」
と、その時思い至ったのはイレギュラーズ――
より厳密には、イレギュラーズ達の支部となっている『銀の森』の存在だ。あの地は勢力ではない。故にこそ派閥の垣根を超えて情報を交流できる……勿論イレギュラーズを介して、だが。
今からアーカーシュなりポラリス・ユニオンの代表が互いに出向いて代表会談などを行い、改めて軍備を整える――と言った暇はない。されどイレギュラーズ達に交渉の権限を委託し、銀の森にて調整を行ってもらう――と言う事は可能なはずだ。彼らならば空中神殿を介するテレポートが可能なのだから。
もしも北辰側も同じ考えであるならば、それでベデクト攻めの調整が出来得ることだろう。
故に。数多の戦いを勝ち抜き、信頼できる英雄たる彼らに声を掛けんと――歩みを進めるものであった。
そしてラド・バウ独立区では――先日の調査で判明した地下鉄の事を話していた。
「地図?」
「うん。まぁ地図っていうか、スースラさんが脱出の際に見たっていう事だったんだけど……こんなのが見つかったんだって」
ビッツ・ビネガー(p3n000095)とパルス・パッション(p3n000070)の声だ。
両者の眼前に広げられているのは地下鉄の地図……らしきモノ、であった。先日イレギュラーズと帝都中央駅ブランデン=グラードへ行動を共にしたスースラが脱出の際に、壁に貼り付けられていた地図らしきモノを記憶していたらしい――
ただ。虫食いか長年の放置による風化の結果か、大部分が消失していたようだ。
これだけでは、詳細な不凍港ベデクトの地図と比べるととても使えない――が。
「……あっちこっちに伸びてる様に見えるわね。これがホントなら相当な長さよ」
しかし。確認できる場所をよく見てみると……東西南北あらゆる方向に伸びている。
これが事実なのであれば、新皇帝派の跋扈する地上を通らなくても良いルートが見つかるかもしれない。物資の搬入などに役立つ可能性はありそうだし、他派閥などであれば『秘密裏に他派閥と接触できるルート』も、もしかしたら見つかるだろうか?
まぁ勿論、それは地下が安全か本格的に調査してみてからにはなりそうだ、が。
「ま、独立の維持も簡単じゃないからね――冬を前に食料がなくなったりなんかしたら、暴動ものだろうし。面倒くさいけれど、中央駅に向けたことでもイレギュラーズと話し合いましょうかね……」
「うんうんそれがいいよ!」
ひとまずは中央駅をラド・バウの手中に収めるべく動いてみようかと――
パルスは元気よく。ビッツは面倒くさそうに吐息を一つ零すものだ。
不凍港ベデクト・マップ
鉄帝地下鉄(現在名称不明)
※各派閥で勢力の行動を決める相談が行われようとしている様です――
※不凍港ベデクト、鉄道網の調査の報告書が届いています――!
※アーベントロート動乱『Paradise Lost』が最終章を迎えています!
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