PandoraPartyProject
焦がれたモノ
遥か彼方より、望みはたった一つだけだった――
天浮の里。豊穣側にも近い、深海の隠れ里は一つの意思に塗りつぶされる寸前だった。
『海援様』なる存在に。
その存在は魔種。遥か以前より存在し、そして伏せていた存在――
名をカンパリ……否。リモーネ=コン=モスカと言った。
ソレは衣(ガワ)を変え、器(ガワ)を求め、現代にまで至る原初のコン=モスカ。
そしてたった一つの願いに■焦がれた古き魂。
「――さぁ。今こそ行こうか」
彼女は往かんとする。深海の果てより地上を目指さんと。
その望みは己が信望する存在――リヴァイアサンに関わりがある。
……彼女は■焦がれたのだ。遥か彼方、あの方を目前にしてから。
その雄大さに。その偉大さに。その猛々しさに。その全てに。
だけどあの方は眠ってしまわれた。
いやそれだけならまだいい。あの方を永遠に封ずる事など出来ようものか――だがリモーネにとって何より見過ごせなかったのは――『あの戦い』において、あの方の一撃を真正面から受けとめた者がいるという方だ。
自らでは無理だった事を、成せた者がいる?
欲しい。
次なる衣(ガワ)として。次なる器(ガワ)として。
ここが大一番。ここが天王山。
『真正面からリヴァイアサンと相対する力』を求めるのだ。
ああソレが手に入った時にこそ――僕は――
「あの方の隣に、きっと在れる」
あの方に施された『眠り』に関しては必ずどうにかしてみせよう。
その為にあの方を信仰せし――天浮の里に接触したのだ。
「『滅海の主』、準備は良いね?」
「…………あぁ。我に一切の陰りなどなし」
同時。にこやかなるリモーネの隣にあるは、氷雨(ひさめ)なる人物だ。
彼は豊穣に程近い深海側に位置する亜竜種達の隠れ里――天浮の里に住まう亜竜種。そしてリヴァイアサンを偉大なる存在として信仰する里において神の依り代……神子として深く心棒されし者、だ。
ただし今ではリモーネの支配下に置かれ、里の信仰と思念を一手に受ける存在となってしまっている――自らは『本物のリヴァイアサン』であると信ずる程に。否、信ずるを超えて『そう』であると確信させる程に。
……その結果として彼の魂は歪に歪んだ。
概念的存在(神性)を宿して、疑似的にリヴァイアサンに近しくなっている――勿論その力に関しては本物に遠く及ばないだろう。そればかりか肉体は只の亜竜種に過ぎぬ氷雨が、過ぎた神性を宿すのなら、いずれその身が崩壊するのも遠くないやもしれぬ。
しかしリモーネにとっては構わないのだ。
氷雨をそのように誘導したのは、たった一つの願いを叶える為。
「『滅海の主』であれば、この海を全て好きに出来るだろう。
――そう。『あの方』と『器』を掬い上げる事も、きっときっと」
この海域の主として一時でも在れば。
あの方と、あの方と渡り合った器の溶けている地が分かるだろう。
そして双方ともに掬い上げる事が出来るのではないか――?
あの方は、この海域の偉大なる主であったのだから。
お前も『そう』であるのならば、それを察するは簡単であろう?
……それはリモーネの勝手な想像であるのかもしれない。
それはリモーネの勝手な妄執であるのかもしれない。
だけど素面で■は語れない。
そして――まぁ。
予備プランもあるにはある。
本命はあの方と渡り合った器だが。
「――ねぇ。『君』はきっと来るよね。『お母様』を放ってはおかないだろう?」
『再演』だ。
あの戦いを再現する。
強大な海嘯をもってして全てを薙ぎ払わんとしてみせよう。
その為の『滅海竜』だ。その為の『渦潮姫』だ。
止めてみせなよ、代替物。止めてみせなよ、有象無象。
僕に器(ガワ)としての価値があると認めさせてみろ。
「今度こそ、今度こそ、僕は彼と添い遂げるの」
永遠に。
永劫に。
滅海竜(あの人)のお側に居られるのは――僕だけなんだ。
※シレンツィオ・リゾートで戦いの準備が始まっています……
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