PandoraPartyProject

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霊喰集落アルティマ

 水晶の台座であった。
 一色に染められた半透明な鉱石が、磨かれたように平らな面を上にして置かれている。
 空からそそぐ陽光は薄く、むしろ台座からあがる微光のほうが強いようにも見えた。
 巨大な羽ばたきの音がゆっくりと近づき、黒水晶の台座の上へと降りる。
 降り立ったのはやはり巨大な鴉にも似た亜竜であった。
 それが巨大だとわかるのは、亜竜が連れる大量の鴉型眷属が八面体のクリスタルを運んできたためだ。いや、より厳密に言うなら五人ほどの亜竜種(ドラゴニア)が閉じ込められたクリスタルをである。
 彼らドラゴニアの一般的な体長と比較すればあまりに巨大。とって食うと言われて容易に信じられるほどの差であった。
「ブラックアイズ、今回はそれだけ?」
 嘲笑するような声がして、ブラックアイズと呼ばれた鴉型亜竜はぎろりと別の台座を睨んだ。
 そこには、赤いドレスを纏った少女が可愛らしく体育座りをしている。むき出しにした膝にほほをつけるさまは可愛らしく、とろんとした声音(こわね)ととろけたような表情は幼さと妖艶さが入り交じっている。
 が、瞳の奥にあるのは果てなき餓えであり、舌に乗っているのは暴食への渇望だった。
 彼女はブラックアイズに比べて、サイズで言えば普通だ。背後で無数の亡霊たちに取り囲まれるようにして浮かぶ紫色のクリスタルに閉じ込められたドラゴニアたちに比べれば小柄とすら言える。
 けれどその体格差が気にならないほどの圧力で、少女はブラックアイズの眼光を受け止めていた。
「そんなことじゃ、クリスタラード様への忠義を示していると言えるのかしら」
 またも嘲るように言う少女に、たしなめるような声がした。
「そこまでですよ~、ウルトラヴァイオレットさん~」
 間延びした、聞いている者の気持ちを萎えさせるようなトーン。
 実際気持ちが萎えたようで、超越者ヴァイオレットは声のする方を見た。
 白い水晶台座の上に、巨大な蛇がはいずって現れる。
 引き連れた蛇型眷属たちが運び込んだクリスタルには七人ほどのドラゴニアが閉じ込められている。
「ホワイトライアー……」
 そう呼ばれた大蛇への声色に、微妙な色が混ざる。超越者ヴァイオレットの連れてきたドラゴニアの人数からひとつだけ多いから……ではない。5~7人という些細な違いで争う無意味さをわかっているからだ。故にこれは、ただのじゃれ合いでしかない。
 一方で。閉じ込められた彼らの目には、生きる力というものがなかった。
 立ってはいる。息もしている。おそらくパンを与えれば食べもするだろう。しかし、彼らの目やその奥に生きる者の輝きというものがまるでない。
 これから食卓に並べられる餌の目であり、言い換えるなら死んだ魚の目であった。
 そしてそれは、側面的な事実でもある。
 今から現れる『いと高き御方』への、これは贄なのだから。

 ゆっくりと、空から舞い降りるものがあった。
 首に七つの水晶を埋め込んだ、それはまさしく『竜(ドラゴン)』である。
 伝説にうたわれ、存在すら疑われ、しかし出現するだけで都市一つが崩壊し、場合によっては国すら壊れてなくなってしまうという魔種をも越える脅威存在。
 無言のまま、七色の入り交じった水晶台座の上へとおりたその姿は、大蛇ホワイトライアーよりも、大鴉ブラックアイズよりも、当然超越者ヴァイオレットよりもはるかに巨大。
 赤い鱗に覆われ、筋肉が隆起したマッシブな肉体はただそこにあるだけで強烈なプレッシャーを放っている。
 そしてそのプレッシャーに耐えかねたという様子で。あるいは深い忠義を示すためにか。ブラックアイズたちは一様に跪くような姿勢をとった。といっても、大蛇や大鴉は身を低くし頭を下げるという程度の共通点しかないが。
 そして代表するように、超越者ヴァイオレットが唱えた。
「いと高き御方。クリスタラード様。あなた様のお力に感謝し、ここにまた、栄えある贄を捧げます」
「おめぇら――」
 ドラゴンは粗野な口調で言うと、にやりと笑う。
「よくやった。こちとら、一仕事終えた後なもんでな。腹が減って仕方がねえや」
 その巨大な腕を翳し、爪を(もとい指を)ちょいちょいと手招きするように振る。
 すると八面体のクリスタルたちがひとりでに浮かび上がり、まるで見えない糸で連結されたかのようにクリスタラードと呼ばれるドラゴンの周囲をゆっくりと周りはじめた。
 動きの違いはそれだけだ。だが、クリスタル内部での変化は劇的であった。
 閉じ込められていたドラゴニアたちは一様に呻きはじめ、まるで見えない何かに生命力を吸い上げられるかのように痩せ細っていく。
 たとえばジャーダという名の青年がいる。集落では将来を期待されていた狩人で、集落近辺の亜竜を狩ってはその牙を連ねたネックレスを作るのが自慢だった。将来は父のような優れた狩人になることを公言していた。そんな彼の夢は、いま潰えた。
 腕は枯れ木のように痩せ細り、悲鳴もあげられないほどこけた頬と枯れた喉。胸にはあばら骨が浮き、内臓部分だけを残して腹がぽっこりと出っ張った。立っている力も失われたのか、膝から崩れ落ちどこを見ているのかわからない目だけが、ここにはいない父へ助けを求めた。
 例えばミルンという少女がいる。昨今周りの集落に生まれたというイレギュラーズに憧れ、自分も遠い地に赴き大冒険をするのだと空想し木で出来た短剣を家の中でこっそりふりまわして遊ぶ子供だった。だがそれは叶わない。今枯れ木と化したことで、木の棒すら振り回せなくなった腕では。
 だがある意味では幸運だろう。急激に生命力を吸い尽くされたことで、元々少なかった彼女の生命は死に絶え、苦しまずに済んだのだから。
 例えばラ・イワンという男がいる。彼は屈強な戦士であり、地下空洞にできたペイトという大集落の守り手だった。坑道警備隊として配属され、現れるモンスターを次々と倒しその武勇は一族の誇りであった。だがその武勇を語ることはもうない。喉はしぼみ、リザードマンタイプの頭はそれこそ枯れた歯のようにかさかさと音をたて、舌すらもまともにのばせない。干上がったことで縮み、喉をつまらせないようにするのに精一杯だからだ。
 彼は恨んだ。己の生命力の高さに。そして、これから一体何分かけてこの苦しみを味会わなければならないのかという不安に恐怖した。
 十数人による連なるうめき声が水晶の中からわずかに漏れ聞こえるが、それも一瞬のことだ。クリスタラードが不快そうに顔を動かすと、クリスタルはやや厚みを増し声は遮断される。
 静かになったことに満足したのか表情を柔らかくしたクリスタラードは、自らの胸元へと手を当てた。
 そこに傷などない。いや、彼に傷を付けることの出来る者などそういない。
 仮に鱗を剥がしたり、血を流させることがあったとしても、その傷はすぐに修復され消えてしまうだろう。
 けれど撫でたのは、身体ではなく『プライド』に傷がついたためである。
「ローレット……イレギュラーズか。クソ忌々しいぜ。雑魚どもの集まりのくせによお」
 苛立った声に、ブラックアイズたちがびくりと震えた。
 その怒りが自分達へ物理的に向けられれば、いかに強力な亜竜である彼らといえど粉々に轢殺されてしまうだろうからだ。
 その様子を気にとめるでもなく、クリスタラードは思い返す。
 練達という国へ、怪竜ジャバーウォックの言葉をうけ襲撃に向かった。竜である自分を傷つける者などどこにもおらず、あの練達という殻にこもった人類どももそうだった。だから、人間の密集する場所を選んで食らいつくそうと考えた。
 が、その試みは失敗した。人類が強かったからではない。自分を倒せる者などその場には居なかったはずだし、実際そうだ。だが、奴らの……なんとしても食い下がりつづけようという目の中の光が、クリスタラードにそれ以上進ませるという選択肢を鈍らせた。
 なにもこんな場所に執着する必要など無いと考えさせたのだ。
 ……そうだ、実際、その通りだ。
 今まさに枯れ果てていくクリスタル内のドラゴニアたちを見る。
 己の支配した地は、こうして定期的に贄を貢ぎ、集落は子をなし増え、これからもずっと己に貢ぎ続けるだろう。あんな場所に拘らなくとも、食うに困ることなどないのだ。
「食い足りねえな……」
 思わず呟く。配下の者たちが震えているが、無視だ。
 クリスタラードはちらりと、空いている四つの台座を見つめた。赤、青、黄色、緑の水晶台座である。
 じきにこれらの区画を担当している配下からも贄が貢がれるだろう。その時にこの餓えは満たせばいい。
 だから、今は言うべきことを言うことにした。
「よくやった。貴様等の忠義にこたえ、これからも霊喰集落アルティマを守護することを約束してやろう」
 感謝の意を示しより深く頭を垂れる配下たち。
 クリスタラードは満足したように、空へと再び舞い上がった。

 羽ばたきの音が遠ざかる。
 超越者ヴァイオレットは『はあ』と深く息をついた。
「なんとかしのげたわね」
「ええ~、危ないところでした~」
 同意する声が、大蛇ホワイトライアーからした。
 此度、クリスタラードから命じられた内容は厳しいものだった。
 通常捧げる贄は各担当エリアから1人のみ。
 であるにも関わらず、『いつもの五倍以上の数を捧げよ』と命じられたのだ。
 大鴉ブラックアイズが老人のような声を出す。
「練達なる土地への遠征。それだけ力をお使いになったということだろうか。それとも……望むように餓えを満たせなかったのか」
「どちらも同じことだわ」
 集落の人間はギリギリの生活を送っている。クリスタラードの餓えを永遠に満たすための『家畜』である亜竜種(ドラゴニア)たちは奴隷として労働し、閉じた世界の中でその生命活動を低い水準で維持している。
 捧げる贄が一人から二人に増えたくらいならなんとかなるだろうが、五倍以上の数を出荷し続けるには不安があった。それがいつまで継続するかもわからないのだから。
 だから、配下である彼女たちは『外から持ってくる』ことにした。
 特に大きな集落であるフリアノン、ペイト、ウェスタ。この三つか――あるいはその周辺小集落からだ。
 ブラックアイズは空を飛びフリアノンからかなり離れた小集落から。超越者ヴァイオレットは地底湖内部に小集落を作っていた水棲ドラゴニアの一団を。ホワイトライアーは地底を掘り進みペイトへ直接乗り込んで贄となるドラゴニアを獲得してきたのだ。
 その過程でだいぶ殺してしまったために数は多くないが、2~3度の『霊貢の儀』には耐えられるだろう。大体また足りなくなれば、もう一度調達しにいけばいい。
「しかし、こんなことは何百年ぶりかのう。500か、800か……」
「いい加減なことをいわないでよ。私は最近ここへ来たばかりなんだから」
 ブラックアイズの言葉に超越者ヴァイオレットはつまらなそうに言って、立ち上がる。
 もう身体に震えはない。
「私は担当エリアに――ヴァイオレットウェデリアに戻るわ」
「では~、わたしもホワイトホメリアに~」
「ブラックブライアへ戻るとしようかのう」
 それぞれは別々の方法で台座をはなれていく。
 あとに残ったのは、ただの静寂だけだった。

 ――霊喰集落アルティマ・ブラックブライアより
 ――霊喰集落アルティマ・ヴァイオレットウェデリアより
 ――霊喰集落アルティマ・ホワイトホメリアより
 ――以上三件の結果がアルティマへと影響を及ぼしているようです


 ……否。
 静寂の中に、ふわりと浮かび上がった存在があった。
 それまで完全に闇に溶けていたそれは、紫色の微光をもって浮かび上がると空へととびあがる。
 ウェスタにて戦士をつとめる彼の名はリュート。『紫光』のリュートとして知られる戦士だ。
 潜行能力に長け、長距離を単独で素早く移動する能力をもつ彼が、今回の強行偵察役を任されていた。
「思った以上にマズイ相手みたいだ。早く里に知らせねえと。
 しかし、里の戦士を直接関わらせるにゃあ……」
 戦いを挑むには敵が強すぎる。戦いを避けるにも情報が少なすぎる。
 リュートはつぶやき、そしてはたと思い至る。
 ブラックアイズたちに対抗して送り出したローレット・イレギュラーズたち。彼らならば……と。
「けど、あいつらが引き受けるかねえ。他人のために死ぬかもしれねえ場所を調べにいけなんて……正義の味方でもあるめえし」
 だが、彼はまだ知らないのだ。
 仮に正義の味方でないとしても。かれらローレットがこの世に奇跡を起こした、生きた奇跡であるということを。

覇竜領域デザストルにて、動きがあるようです……

「霊喰集落アルティマ……本当に存在していたのですね……」
 西洋と東洋の入り交じったような、占い師のような格好をしたリザードマン系ドラゴニアが呟いた。人間種がぎょっとするような、優しく可憐な女性の声だった。
 彼女の名は『占い師』プルネイラ・吏・アガネイアム。風属性のドラゴニアであり、常人を遥かに凌ぐ占いの力を持っていた。ただし、彼女が占う内容は必ずといっていいほど災いに関するもので、その多くが避けようのないほど大きなものだった。そして全ての災いを予知できるというような便利さでもないことから、彼女は『たまに当たる普通の占い師』を装って生活していた。
 避けられない、そして当たるとは限らない災いの未来など、触れ回ればよりひどい状態が待っているのは目に見えているからだ。
 そんな彼女が見た災いのひとつが、『霊喰集落アルティマという伝説上の場所から七体のしもべが放たれ、人々を奪い去り贄とするだろう』というものだった。
 占いが当たって悲しいのは、こういうときだ。
 そしてこういう時だからこそ、動かねばならないだろう。
 プルネイラは薄暗いテントの下で立ち上がり、そして垂れ幕を払って外へと出た。
 混乱を招くであろう里の者ならともかく、外部の者であるなら……あるいは次なる災いへの対処も可能なのではないか。と。

「こいつぁ……マジか。……マジかー……」
 頭に手を当て、くしゃくしゃと灰色の髪をかきまわすドラゴニアの女。
 角と尾を除けば人間種のそれと変わらない彼女だが、そんな人間種標準をしても独特な体型をしていた。屈強さと豊満さ、そして『いい意味での太さ』を兼ね備えた絶妙なバランスによる体つきである。
 背には亜竜の骨から作り出したとされる剣を背負い、赤いマフラーを首からさげている。
 地下空洞に巨大居住エリアをもつ亜竜集落ペイト。その坑道区画にて警備兵を務める女である。それも、警備兵という組織を束ねる長だ。
 つい先日、兄貴分であるラ・イワンがアルティマより現れたという伝説上の怪物に食い殺されたという事件があってから、繰り上がりで長の座についたこともあり貫禄という意味では弱い。
 けれど、元々素質があったのか、彼女――『ダイアモンドドレイク』アダマス・パイロンの姉御肌な雰囲気にはフォロワーも多かった。
 そんな彼女の頭を目下悩ませているのは、まさに兄貴分を食った怪物のこと。より深く言うなら、霊喰集落アルティマのことである。
 石をくりぬくように作られた大きなドーム状の部屋には熱鉱石の明かりが灯り、石の円形テーブルとその周りに集まる人々を照らしている。
 アダマスの他には部下の坑道警備隊員……だけではない。そこにはフリアノンからやってきた占い師プルネイラ。そしてこの二人とはある意味対照的な人物がいた。
「ちょっとちょっと! なんでみんなして暗い顔してるわけ? 別に里が滅ぶわけじゃないんでしょ!?」
 両手をぱたぱたと上下に振り、それだけでは足らないとばかりに身体も上下に動かすピンク色の少女。
 ウェスタ近郊の湖内外に集落をかまえるドラゴニア。『鈴家当主』鈴・呉覇(リー・ウーパー)である。中華風と和風を併せたような美しい服を纏い、耳からは両生類の(あるいはウーパールーパーの)エラのようなツノが伸びている。
 翼はそれこそエラのようで、下半身からはつるんとした尾がのびていた。ドラゴニアの中にたまにいる、両生類っぽい外観の個体だが、彼女はその特徴がかなり強く出ていた。
 そして個性が強いということは、多くの場合血も濃いということである。
 ウェスタでもそれなりに影響力をもつ鈴家の長として、そしてウェスタ近郊を襲撃した怪物への対策担当者としてここに居るのだ。
 彼女の少女めいた外見や、きゃははという鈴を転がしたような笑い方、そしてこの格好。どれをとっても幼いが、この地位にいるものが幼子なわけがない。
 これが彼女の演技であることも、他者と交渉する際の武器にしていることも、この場に居る者たちは理解していた。
 なぜなら、呉覇の振る舞いには幼さと同時に妖艶さもまた、あるからである。
 そして、彼女の言うこともまた、理にかなっていた。
「アルティマから三体の怪物が攻めてきた。これは事実ね?
 ケド、これが里に入り込んだからって滅ぶほどの怪物じゃないし、一部じゃ派遣したイレギュラーズチームが撤退したっていうけど、皆殺しにされたわけじゃなかったんでしょ?
 だったら、強行偵察に行ってくれたその……」
 ちらり、と呉覇はそこに集まるもう一人の顔をみた。
 視線は一人に集まる。ウェスタの戦士であり、遠隔地における偵察能力に優れた『紫光』リュートである。
 彼は憮然とした顔で首を横に振った。
「俺は二度と御免だぜ。あの場でバレなかったのは奇跡みたいなもんだ。もしかしたらバレてたのに泳がされてたのかもしれねえって予感もしてるんだぜ」
 彼はウェスタ郊外を超越者ヴァイオレットが襲撃した際、単独で尾行しアルティマの場所を特定したのだった。
 そして彼が盗み聞きした情報によれば、アルティマはドラゴニアを家畜として飼育し、支配者であるドラゴンのクリスタラードへ定期的に貢ぐというサイクルがなされていたらしい。
「配下の怪物どもと戦うにしても、七つはいるだろうボスのうち三つしか知らねえ。それも一度やりあった程度の浅い知識だ。戦うにしても戦力が足らねえし、知識も足らねえ」
 リュートの言葉に、呉覇がムーンと不満そうな声を出した。頬をぷくーっと膨らませるかわいらしさで。
「わかってるわよ。私達が直接コトをかまえたら、上にいるドラゴンが文字通りくちばしを突っ込んでくるかもっていうんでしょ?」
 そうなれば本当に集落が滅びかねない。
 強硬策は滅びへの道なのだ。
 未だ黙ったまま話を聞いているプルネイラムにかわり、アダマンが腕組みをして彼らの顔を見る。
「だったら、頼るべきは一つだけじゃあないのか? アタシらが直接手を出せないなら、代わりに手を出す奴を雇うしかない。でもって、ここ覇竜領域にドラゴニア以外がいるとしたら、そいつは――」
「ローレット・イレギュラーズだけ」
 可憐な声がした。プルネイラムの声だ。
「この災いを止められるのは、きっとあの人達だけだわ……」
 彼女のつぶやきを否定する声はなかった。
 それは同意であり、そして同時に、ローレットへの依頼が決定した瞬間でもあった。

亜竜集落から重要な依頼が舞い込みました……!

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