PandoraPartyProject

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ふれる白雪

 混沌世界の西側で『茨』に国が飲み込まれる事態が起こっていた頃――
 東の豊穣でも、一つの小さな動きがあった。
「な、なんと……まさか『そのような事』があるというのか……?」
 声を震わせたのは、豊穣に存在する牛宿大寺に祀られる四神の一柱――玄武(p3n000194)である。この地に根差す彼は先日、己に代わって神使達に一つの依頼を出していた。それが『久遠なる森』と言う地の付近にて生じている、行方不明事件の調査。
 いわゆる此岸の辺に飛ばされるバグ召喚とは異なる奇妙な事件が発生していたのである。身内がいなくなり不安になる民もいる中、玄武は信頼しうる神使達に話を持ち掛け、かの地を調べんとしていた――
 その結果として分かったのが森の奥には一つの『街』があった事。

 そして……偲雪という『かつての帝』を名乗る者がいたという事。

 偲雪。まさか、そんな筈は……
「知ってるのかい? その名前を」
「うむ……もう随分と昔に、その名を持つ帝がいたのは確かだ……
 我と直接関係がある訳ではないが黄泉津瑞神と親交が深かったとは聞いておる」
「――なんだ? 玄武のじーさんとは直接の面識はないのか?」
「我が四神として成る前の帝よ。一介の精霊に過ぎぬ身であった頃のな」
 語るは、かの地の情報を齎してくれたムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)などの神使に対して、だ。
「偲雪……正眼帝と言われたかの帝は、鬼とヤオヨロズの関係性を憂い、融和を目指さんとした人物よ――しかし彼女は性急であったが故か、成せなんだ」
 彼女を疎んだ勢力により、暗殺されてしまったという。
 霞帝以前に彼と同じ事を考えた者がいた……と言う事か。
 しかし霞帝とは異なり彼女は『失敗』してしまった――政治の力が無かったか敵を作りすぎたか。
 或いは味方となってくれる者がいなかったか……仔細までは分からないがとにかく志半ばで倒れたのだけは間違いない。
「その後は、帝の突然の崩御により国内が一時的に荒れての。
 妖が各地に跋扈し、混乱の最中に一旗揚げんと野心を抱いた者も出る始末。
 ……『干戈帝』と称された、次代の帝が出るまでの」
「ん、干戈……? たしか、その名を持つ者もいると聞いているでありますよ」
「――何? 干戈の奴めもか!!?」
 刹那。希紗良(p3p008628)は己が猫の耳を動かし、その単語に反応する者。
 たしか――その称号を持つ帝も、あの森にいると『己が親しき者』より話を聞いていた。
 いやそれだけでなく実際に接触した神使もいただろうか。
 ……同時。その名が耳に届けば、玄武の様子が一変する。
 目を見開き、驚愕の色を表して……
「むぅ……これは、ますますに奇怪であるの。
 干戈の奴めは戦乱を収めた者にして、戦乱を楽しんだ悪鬼の帝よ――
 奴は帝として与えられた加護を利用し、我欲を満たさんとしたのだ」
「なんと――危険な者であるという斯様な行いは事実であったのでありますか」
「むっ? うむ、まぁそうであろうな。
 ……あの頃の時代は話せば長くなる故に省くが、暗闇の時代よ。
 妖に騒乱、収める者も武の欲に溺れる者……
 干戈の奴めは仕舞には黄泉津瑞神の怒りに触れ、その座より堕ちたのだが。
 永き時を生きておったのか、それとも奴めも別の存在へと変じたか……」
 顎に手を当て、考え込む玄武。
 如何なる理由で斯様な古き帝達が現世にまでいるのか――
 死者が蘇る。それだけはあり得ぬ事だ。
 しかし、もしかすれば。
 奴らは正常ではなく、魔に侵された姿であるならば……
「……妖の類になっている、と?」
「うむ、そうとしか思えぬな。如何に恋焦がれようと過去は戻ってこぬのであれば」
 つまり姿が人間なだけで内は異形――妖か魔種である可能性もなくはない、か。
 死者の蘇生は何人に果たせずとも骸として動く存在ならば例外。幻想王国辺りでいえばアンデッドの類と言えようか……いずれにせよ正常な状態であるとは決して思えぬ。勿論、断言しうる要素も今の所少ないが……だからこそ。
「更なる調査が必要であろうな。神使よ――頼めるか?」
「ああ、勿論。偲雪さんとは腰を据えて話したい所なんだ。今すぐにでも……」
「いや待つのだ。話すのは構わなんだが、しかし『行方不明者』が出ている事は忘れてはならぬぞ――言の葉を力と成す、言霊の使い手でないとも限らぬ。彼女と話している間も警戒するのだ」
 魂が穢されぬとも限らぬと、新道 風牙(p3p005012)へ言を伝えるものだ。
 聞いた話では偲雪からは友好的な雰囲気を感じ取れもした――しかし分からぬ。もしかすれば完全なる狂気……呼び声に満たされてしまったが故の笑顔かもしれぬのだ。何より、偲雪らを調べる為には、かの街に入る事が必要……つまり敵地そのものに乗り込まねばならぬ。
 警戒が必要だ。
 偲雪は何を考えているのか。行方不明となった者達は街に確かにいるのか。
 そして――古き帝が危険であるならば。
 討つべき存在なのか?
「……それとこの件であるが、まだ暫く黄泉津瑞神には秘密にしておってはくれんかの?」
 と、その時。
 玄武は語る。豊穣郷神威神楽の守護者たる――黄泉津瑞神にはまだ秘匿に、と。
 元々は玄武がここまでの事態とは思っていなかったが故、もあるが。
「古き帝はの、黄泉津瑞神と縁がある者も多い……あの方の心労を増やさずに済むならば」
 それが一番なのだからと。
 いつかは耳に入るかもしれないし、もしかしたら伝える必要のある日が来るかもしれない。
 しかし、今一時はと願えばこそ……

 再びかの森へと、神使の歩みが向かわんとしていた……

 豊穣の地で生じている事件にて、再び玄武より調査依頼が出んとしています……

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