PandoraPartyProject
囚われのお姫様なんかじゃない
「うおー!? おれたちの混沌側の体が狙われてるのか!? にーちゃんやねーちゃんたちのも!?」
ROO内仮想世界ネクスト。その一画にて。空中に開いたコミュニケーションウィンドウにルージュ(p3x009532)は身を乗り出した。
ウィンドウには自撮り角度の『希望ヶ浜学園校長』無名偲・無意式 (p3n000170)が不吉そうなつらで映っている。
ROO内でのアバターではなく、混沌での姿だ。これは、ROOと混沌を繋ぐ通信である。
「出所は分かっている。R財団を含む複数の団体だ。ログイン装置とROOのシステムは現時点で既に貴重だ。手に入ればまあ……色々と悪巧みができそうだな」
「それでおれたちを人質にとろーってのか! ゆるせねー!」
腕をぐるぐる回すルージュだが、残念ながらログアウトして入ってきた相手をぶん殴るというマネはできそうにない。
P.P.(p3x004937)が余った袖をぶらぶらしながら、なんだか心ここにあらずといった様子だった。
望んでこの世界への鍵を『閉め直させた』身としては、身に降りかかる火の粉を払いのけられないのはもどかしい。だが同時に、自分の身を案じて飛び込んできてくれるであろう存在がいくつか脳裏に浮かんでは消えていた。
「安心しろ。希望ヶ浜コスプレ部も参戦している」
「その情報はいらないし安心できないけど?」
まあまあと手を翳すドウ(p3x000172)。
「その口ぶりだと……私達の代わりに防衛にあたってくれるメンバーに目星はついているんですよね?」
「ついている、というより……既に手配し到着した所だ。見えるか」
くるりとカメラが回り、希望ヶ浜学園の制服を着た集団が映った。イレギュラーズたち同様、学園の生徒として活動しながらも夜妖退治や街の外への対応に当たっているような人々だ。中にはROOの被験者として捕らわれたところをイレギュラーズに助け出された者も混じっている。
「『恩返し』と言ったら露骨か?」
「いいえ……」
イデア(p3x008017)は目を伏せた。『学園の教師』としてふれあっていた者たちがこうして自分たちのために動いてくれるのは、まんざらじゃあない。
カノン(p3x008357)やセフィ(p3x001831)は一度顔を見合わせ、そして画面の向こうにいるであろう校長に呼びかけた。
カメラの反転方法がわからないらしく変に上下反転しているが……。
「では、そちらのボディは任せます」
「こちらはこちらで、イノリを倒すことに集中しなければいけませんしね……」
そこまでの話になって、神様(p3x000808)はこくりと頷いた。
「私達が動けなくなれば、相応の戦力的喪失を招く」
「この世界では、僕たちはそれ相応に戦力が強化されているしね」
勇(p3x000687)は、隣のダリウス(p3x007978)に視線をやった。
「まあな。仕事はいつでも適材適所ってやつだ。こっちは例の魔王様気取りをぶちのめしてくるからよ、そっちは火事場テロリストどもをぶちのめしといてくれ」
「……」
リュティス(p3x007926)は『御主人様』たちもまた同様の状態にあるのだろうと想いながら、「そうですね」と頷いて見せた。
カメラの角度がやっと整い、校長とそれに随伴したイレギュラーズたちの顔ぶれが見えた。
「そちらのことは、どうか頼みます」
――希望ヶ浜地区からの援軍第一陣が到着しました!
――『ログアウトロック』対象者たちが狙われています! 奪還作戦開始中!
R-Crisis
一方――練達国の首都セフィロト。
ログインルームを備えた特別研究施設ヘキサゴンはその厳重なセキュリティと複数ブロックに分かれた構造によってログイン中のイレギュラーズたちを強固に守り続けていた……が、それも練達内のネットワークがハックされるまでの話である。
姉ヶ崎-CCCによってハッキングを受けた練達ネットワークは『世界の崩壊』という目的をかかげ人類に対し牙を剥いた。
通信の遮断はもちろんのこと、あらゆるセキュリティシステムが人間たちを阻み、武装を備えたロボットたちに至っては人類抹殺という使命を淡々と実行し始める。
イレギュラーズたちの活躍によってこれらのロボットたちが排除され、同時期に場を混乱させるために放たれた脱獄囚たちもその多くが鎮圧されつつある。
が、そんな中で動き出した勢力があった。
「レディースエンジェントルメン! ショータイムだ。楽しい時間が――おっと」
警備員の頭が打ち抜かれる光景からサッと顔を背け目を瞑る男。彼の名はザムエル・リッチモンド。悪名高きアンラックセブンのメンバーにして、世界中に武器を売りつけては戦争を煽る死の商人『R財団』のリーダーである。
「撃つときは言え。血が苦手なのは知ってるだろう」
顔をしかめて言うザムエルに、カナデ・M・偽神が無表情で視線だけを送る。
その後ろで、白衣に眼鏡の男性が皮肉げに口元を歪めた。
「いい加減慣れたらどうだね。武器商人が血が苦手って……」
「人類が減ればこんなものも見なくて済む。エビアレルギーの人間に必要なのはエビの根絶だ。適応じゃあない」
「そうかね? そうかもしれない」
ニイ、と今度は悪魔のように笑う。
「お喋りはそこまでじゃ。折角の『お膳立て』に遅れるぞ」
ズッと姿を現したジーニアス・ゲニー・ジェニ博士。もとい空中に浮かぶ水槽のような物体はスピーカーから声を発した。
「ROO内の『姉ヶ崎因子』にコードを流し込み刺激する作戦は、例のファンドマネージャーのせいで失敗した。ROO内の『我々』に情報を送り込み内部から支配させる作戦も、忌々しいバイクたちのせいで失敗。これ以上失敗が続けば、これまで積み上げてきたものがパァになるぞ?」
「そうしないために、わざわざ手を組んだんだろうに」
たいそうな軍服を纏ったリアム・クラークが手にした鞭を払い、ピシャンと音をたてた。イングがそれを合図に前へ出ると、セフィロト再配備されていた警備組織の面々へとエネルギークローを露出させる。
それだけではない。
L&R株式会社とR財団の合同傭兵団、秘密結社ネオフォボスによって製造されたロボット怪人軍団、量産型偽神シリーズといった複合部隊が一斉に襲いかかり、警備スタッフたちを次々に切り裂き、食い破り、打ち抜き、炎上させていく。
彼らの目指す先は、ログインルームを内包する特別研究棟ヘキサゴン。
狙いはもちろん、ROOとそのログイン装置だ。ザムエルは眼鏡をクロスで拭ってからかけなおし、笑みを深めた。
「さあて、横っ面を殴りつけ、漁夫の利を得に――」
「させるか! 行け――シェギー、ジーニア!」
ヘキサゴン内部より、巨大な蜘蛛型の魔獣やサイ型の魔獣が飛び出し、ロボット怪人たちを突き飛ばした。
破壊された怪人をよそに、顔をあげるザムエル。
「おお……こんな所にいたか、イペタム」
イペタムは仲間である魔獣たちを展開し、自身もヘキサゴンを守るように身構える。
「もうてめぇらには騙されない! 世界は確かにクソッタレだらけだよ。けどなあ……てめぇら程腐ってねえんだ!」
「その通りっすわぁ。そういうクソッタレどもが作るアニメが、良い味出すんすわぁ」
エージェント・タカジが魔獣たちの後ろに現れる。
サングラスをきらりと光らせ、拳銃を抜いた。
更に再編成された警備組織クルースニクの隊長パウル・オ・ブライアンも駆けつけ、傭兵達との交戦を開始する。
「この先は国家の重要施設。『あいつら』がログアウトして来るまでの時間稼ぎくらいはできるつもりだ。それでも落とすつもりなら……死ぬ覚悟で来い」
――ログインルームが狙われています!
――ラリーシナリオ『<ダブルフォルト・エンバーミング>Zap! Zap! Zap!』で防衛にあたりましょう!
これまでの再現性東京 / R.O.O
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