PandoraPartyProject

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日出処の天子

「――以上が『星読みキネマ』による予兆にございます」
 傅いた双子巫女、つづり・そそぎの肩は震えていた。げに恐ろしき『終焉』の姿に言葉をも発することが出来なくなった彼女達に付き添う『陰陽頭』月ヶ瀬・庚は神妙な表情で座した霞帝を伺い見遣る。
「主上、如何なさいますか? 所詮は海向こうの災厄。
 広大なる水溜まり……竜眠の海域を越えてくるとは思えませぬ。
 我らも戦を終えたばかりの身……出兵を、と求めるには余りに酷ではありましょう」
「だが、海向こう――かの大陸は神使達の活動域だ。
 ……庚。俺の『答え』の見当が付いておきながら、その様な事を申すのは悪い癖だ。
 確かに俺は向こう見ずだ。直情だと晴明にも良く叱られる。だが……だが、なあ」
 揶揄うような視線を向ける霞帝に庚は微笑むだけであった。
 この男は自分の性質を良く分かっている。善性に大凡を傾けた彼は政よりも人の痛みに寄り添いやすい。治政者としては有能とは言い辛い存在だ。
 嘗てのこの国は天香の天下にあり、獄人など襤褸衣以下であったのだ。其れに異論を唱え、自身が君主であると知らしめて訪れた諦星の治政でも其れは変わりない。酸いも甘いも知りながらもこうなのだから根っからのお人好しだ。
「つづり、そそぎ。大義であった。大陸の危機を予見したことは褒めて使わそう。
 ……無理をさせたな。無幻、廻姫、済まぬが二人に付き添ってくれ」
「「御意に」」
 つづりとそそぎに付き添い部屋を後にする無幻と廻姫の様子を影から眺めていた今園 章は「もうお話ししても良いかしら?」とそろそろと顔を覗かせた。
「あのね、わたしは『援軍』に行くべきだと思うの。……言わなくったって『父上』はそうするつもりでしょうけれど。後押しする人間は多い方が良いでしょう?」
「章……」
「それにね、『父上』が双子巫女が危機を予知したと聞いて真っ先に書いたお手紙を見れば誰だって納得するのだわ!」
「章!」
 どうしてそれを、と言いたげな霞帝の視線に章はくすくすと笑みを返す。
 彼が懐から取り出した文には「我が友人・遮那殿」と書かれていた。庚はぱちりと瞬く。
「……『遮那』にございますか?」
「ああ。偶然ではあるのだが、航海という国に懇意にしている商家があってな。
 そこの当主殿が我が友人に生活の基盤を与えたのだ。まあ、偶然ではあるのだが。
 友の名は遮那、と申してな。ヒイズルの八百万だ。彼に手紙を出し、航海の船舶を借り受けようと思う。
 それに、そうだな――『コンテュール』にも一筆書いておいた。此度の大陸の危機、銃や武装も飛ぶように売れるであろう! そして、この危機に力を貸して名を売ってはどうかな? とな」

 ――航海
「失礼します、ソルベ殿。実は『友人』から文が届いたのですが……ご覧頂いても?」
「ああ。遮那さん。ありがとうございます。賀澄さんですか? 全く、嫌な予感しかないのですが。
 今日の私は忙しいのですよ。『提督王女』と彼女の懇意にする『海賊王』がアクセサリーをお求めなのですからね!」
 やれやれと立ち上がったソルベ・ジェラート・コンテュールは自身の商会で働く『遮那』と名乗る精霊種の手紙を受け取ってから黙りこくる。
 何が書かれているかを遮那はおおよその見当も付いている。平穏な生活を送るばかりでは居られぬ事が分りきっているからだ。
「遮那さん、あなたは妻君をお守りなさい。商会を任せてもよろしいですか?」
「ソルベ殿は?」
「どうやら、あなたのご友人が私に商機を下さったようです。ああ、『提督王女』との謁見の日で良かった!
 彼女ならば直ぐに抜錨せよと命じられるでしょう。『海賊王』にだって協力を取り付けられます。エリザベス嬢さえ味方に付けば、女王など頷くしかありません」
 ワクワクとした調子で執務室を後にするソルベの背中を眺めて遮那は首を捻った。
 ……砂嵐に現れた『終焉の獣』。その気配に恐れ戦く訳ではなくやけに楽しげなのだ。
「お兄様、久方振りの『国力のお披露目』に心を躍らせているんですわよ。
 ドレイク様やバルダザール様に協力を願い、ヒイズルへと船舶を用意する。ええ、武装も飛ぶように売れるでしょう!」
 在庫の確認を始めたカヌレ・ジェラート・コンテュールは遮那を見遣ってから「手伝って下さいます!?」と叫んだ。
 航海――この国は優れた造船技術と工船技術を有し、数年前の『大号令』を終えて東方の『ヒイズル』との航路を確立させた。
 彼らにとっては数年ぶりの『航海王国大号令』の始まりなのだ。
『終焉の獣』等という荒波を乗り切ってこそ海洋国家。
 ヒイズルより齎された『星読みキネマ』の情報と『砂嵐の現状』を照らし合わせて、来るべき終焉に備える彼らは『神使』の逞しき増援になる事だろう。
「遮那さん、在庫の確認を手伝って下さいます!?」
 大忙しと叱るように叫んだ彼女の声を聞いて、遮那は実感したのだった。

 ※『砂嵐の謎の存在』を星読みキネマが予知したようです――
 ※神光&航海が協力し来たる『終焉の気配』への援軍を用意しているようです――
 R.O.O-patch 4.0『ダブルフォルト・エンバーミング』が先行告知されています!

これまでの再現性東京 / R.O.O

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