PandoraPartyProject

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Who in the world am I?

 ――正義国を舞台にした新イベント、『lost fragment』が始まります! ふるってご参加ください!

 そんな新たなクエストが正義の方で始まった――
 『ワールドイーター』なるバグの怪物が正義の各地を喰らい、奇妙なモザイクを覆いかぶせている。奴らに食われた人は、建物は、その地は――初めから『存在しなかった』かのように人々から忘れ去られてしまうのだ。
 それが故にこそ、正義に住まう者達ですら異常事態に気付くのが遅れた。
 異常を認識できぬ脅威。
 しかし始まったクエストがワールドイーター達との戦いを指し示していて……
「あはぁ~~ん。全く大変な事ですねぇ、そうは思いませんかジャコビニ学習帳君」
「――団長! またそういう変な呼び名を付けるのはやめていただけませんか!!」
 同時刻。正義西部……伝承国との国境にも近い街、アルベランズに滞在していた者達がいた。ここはワールドイーターに呑まれてもいない場所なのだが――彼らはサーカス団。
 世界的に有名な『シルク・ドゥ・マントゥール』という一団のメンバーであった。
 ――彼らは現実世界では魔種の一団であった。
 その名は大規模な事件を起こした、サーカス事件の主犯として……名を遺す事になる。
 しかしこの世界では恐らく只の善人――というか普通のサーカス団なのだろうか。
 『副団長』たるジャコビニからは何の妖しき影も見られない。
 むしろ――何か怪しい感じを醸し出しているのはジャコビニと話している『団長』で――
「冗談ですよ。ジョ~ダン~!! もぉう! ジャコビニ君は冗談が通じなくていけませんねぇ。これもお仕事の内と割り切って、盛大に乗っかっちゃってくれないもんですか。次のお給料上げるから!! オネガイ!! レンタル部下として延長お願いします!!」
「クラリーチェ。また団長がいつも通りおかしいので、対応変わってくれぬだろうか?」
「諦めなよ! 伝説ピエロは脳髄の底からなにもかもおかしいってね!」
 あははと笑うのは『道化師』クラリーチェ――
 その、眼前にいるのはこれまた道化師……そう、つまりは『ピエロ』たる人物。
 この世界においてシルク・ドゥ・マントゥールを率いている者――

「うんうん、クラリーチェはホントぅにいい子ですねぇ~~! ヨーシヨシしてあげますよヨシヨシヨシヨシ!! あ、これセクハラとかになったりしませんよね? 大丈夫? 訴えたりしないよね? 性別不明はセーフでいいよねセーフッ!!」

 その名はバンビール。
 伝説的なピエロとしてサーカス業界の中では有名な人物だ――
 尤も。現実では彼は――少なくともサーカス事件の折にはいない。いやそもそもバンビールという人物が現実に確かに存在してたのかさえ不明だ。バンビールという名は一種の御伽噺や創作上における名であるともされており……
 しかし現実の事情はともあれ、このR.O.Oのサーカス団の長として――彼は居る。
 そして。
「まぁそれは良いとしてですね……それより重大発表があるんですけれど」
「はぁ、なんでしょう?」
「あ、今日付けでサーカス辞めるので。後任はジャコビニ君でおねがいシャッス!!」
 沈黙。一秒、二秒。そして――

「…………えええええええええぇぇぇぇ――!!?!?!?!?」

 思わず魔種顔ジャコビニ君。青天の霹靂、鳩が豆鉄砲を食ったような顔で。
「いやいやいや次の公演どうするので!!?」
「今更ワタシがいなくても大丈夫じゃないですか。ここ最近ワタシさぼり気味だけど皆の尽力のおかげでなんとかなってますしぃ……? これもうジャコビニ学習帳に譲ってあげてもいいかなって……」
「クラリーチェ! クラリーチェ! お前からもなんとか!」
「え、出てくの団長? ならお土産よろしくね!」
 いきなりの重責。なんとかバンビールを留めんとするが、頼みのクラリーチェは相も変わらず陽気なままにバンビールと握手をしている――そしてあれやこれやジャコビニが文句を言いつつある中をバンビールは脱出。
 駆け抜ける。街の中を、ジャコビニらの声が聞こえなくなるまで……さすれば。
「あっははは、ははぁ~ん!
 はぁ~……さてさて。まーた翡翠に戻りましょっかねどっこらしょっと」
「――何を遊んでいるのかしら? ピエロ」
 いつの、まにやら。
 隣。路地裏の中に放置されていた大きな樽の上に腰掛けていたのは――アリスという少女だ。
「うわビックリした!! ちょっと話しかける時は初めに話しかけるって声を掛けてくださいよねぇ! いやなにねぇ、これから忙しくなりそうですしお別れをしてきただけですよぉ。い~~~い子達なんですけどねぇ、ああ――まっこと残念な事だと思いませんか」
「何が?」
「この世界はただのデータなんですよ。デ・ェ・タ・ァ♪
 あの子達が良い子であることに――何の意味もない」
 そして、語り続ける。
 天を仰ぐ様に。どこまでも続くかのような――青空を彼方に見据えながら。
「あれも! これも! それもぉ! どれもどれもどーれもデータデータデータ!
 見えてるのは嘘っぱち。ピエロがおどけて笑う人がいても嘘っぱち!
 嘘嘘嘘嘘ぜーんぶ嘘! 『現実』とかいう神様にはなんにも影響しないクソカスですよ!」
「そう――それで?」
「だぁら私は今から翡翠に行ってきます・ヨン♪
 無意味なこの世界に意味を作る為に――ね」
 高笑う。笑いて笑う、腹の底から。
 ――その笑いに込められていたのは一体どんな感情だったのか。
 嘲笑。喝采。憤怒。悲哀。喜び。それとも――虚構の世界では只の0と1の組み合わせか。

「ねぇアリスゥ。
 ――私たちの生きている意味ってのは一体どこにあるんでしょうねぇ」

 零した言葉。振り向けばもうそこにアリスはおらず、どこぞへと消え果てていた。
 ……虚構の世界でピエロは踊る。
 だってそれが――ピエロなのだから。

これまでの再現性東京 / R.O.O

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