PandoraPartyProject

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lost fragment:???

 R.O.Oの正義国を襲う異変。正義国の各地はモザイクのような物体に覆われ、しかし人々はその異変を認識できない。
 そうだろう――仮令、世界(ゲーム)がバグっていたとしても、その世界の住民(キャラクター)には、世界(ゲーム)が正常か否かを判別することなどは出来ないのだ。
 故に。この問題に対処できるのは、世界の外より来たりし者……R.O.Oのプレイヤーである、イレギュラーズ達だけであったのだ。
「かくして、正義国は特異運命座標――火焔天たちに泣きついたわけだね。
 楽しみだね! これからどんどん、仲間が増えていくかもしれないんだ!」
 和装の少女が言う。
「そだねー。けど正義の人達、今までこーげきされてるのに気づかなかったの、マジウケるよね。
 フツー気づくっしょ! アタシでも気づきまーす!」
 ケタケタと笑う、ギャル風の女性。モザイクで構成された椅子に勢いよく座って、足をバタバタさせながらひとしきり笑ってみせた。
 奇妙な空間である。広大なようで、狭くも感じる。明るいようで、昏くも感じる。相反する性質を併せ持つこの空間は、あちこちがモザイクで包まれ、ついでに『工事中!』などと言う看板まで、見るものを馬鹿にするかのように立てかけられている。
「ダメだよー、×××さん、そんなに馬鹿にしちゃ。所詮は世界の殻を破れない存在(NPC)なんだから。
 それに、イルさんだったり、気づいた人もいるみたいだしね」
 和装の少女はギャル風の女性の名を呼んだはずだが、それはノイズにまみれて聞こえない。ギャル風の女性は「はーい」とけだるげに返事をしながら、
「わかってるよぉ、×××っち。それとも、原動天サマ、とか呼んだ方がいい?」
 ギャル風の女性が呼ぶ和装の少女名も聞き取れない。だが、原動天と言うワードは、まるで何かを示唆するように聞こえていた。
 原動天と呼ばれた少女は、むー、とほっぺに手を当てて、小首をかしげる。
「あんまり実感わかないんだよね、それ……。
 他にも同じ『位階』の人はいるから、いつも通りに呼んでほしいな」
「なるりょ! で、とりまこの国への攻撃は、今までどーりでおけまる?」
 ギャル風の女性がそう言うのへ、原動天の少女は微笑んで頷いた。
「うん! ワールドイーター達はまだまだ増産できるからね。ワールドイーターがデータを喰らい、そのデータをもとにバグの世界を生み出して領土を侵食していく。基本的な方針は変わらないよ!
 仮にワールドイーターたちが火焔天たちにやられたとしても、ワールドイーターの祖たるスターイーターがいる限り、ワールドイーターの生産は出来るからね!」
 二人はゆっくりと、モザイクの奥へと視線を送る。その先には、闇に隠れてその巨体の一部をのぞかせる、一体の怪物――『星喰らいの怪物(スターイーター)』の姿があった。
「これで完璧だね! ……ぷっ、あはははは! ×××っち、流石に説明台詞くさい!」
 けらけらと笑うギャル風の女性に、原動天の少女は少しだけ頬を赤らめた。
「だって! 説明しないとゲームにならないでしょ? 火焔天の皆は、ワールドイーターと戦って正義の領土を取り戻す。私たちは、ワールドイーターを使って正義を侵蝕する。
 そう言うゲームなんだから、そう言うルールなんだから仕方ないよね!」
「そだねー、そう言うゲームだもんね、これ。たのしいたのしい、陣取りゲーム!」
 二人はくすくすと笑い合うと――同時に、あなたの方へと向いた。
「そう言う事だから、頑張ってね、プレイヤーさん?」
「それともアバターっちって呼んだ方がいい?」
 二人は、怪しげな笑みと視線をあなたへと向けると、
『せいぜい、ゲームを盛り上げてね? 正義編、『lost fragment』! はじまり、はじまり!』
 異口同音にそう告げた。同時、画面がブラックアウト――。

「以上が、R.O.Oの各プレイヤーに送られた映像メッセージの内容だ。もちろん、我々システム観測チームの方にも届いている」
 練達、『Project:IDEA』データ観測室の一つ。クロエ=クローズは、あなたへとそう言った。
「昨今の正義国の異常は、こちらの方でも観測している。領土のほとんどが『モザイク状の物体』に覆われているらしい。
 これは新たにR.O.O内を観測して分かった事だが、どうやらこのモザイク状の物体は、ゲーム内のデータを利用して生み出されているらしい。
 つまり、既存のデータを奪い取り、それを粘土や積み木のようにこねて組み合わせて、異常な空間を作っている……と予測されている。
 先ほどの映像メッセージの情報と照らし合わせて発覚した事実は三つ。
 1つ、ワールドイーターなる敵が、正義国内のあらゆるデータを喰らっている。
 2つ、ワールドイーターが喰らったデータを利用し、データを食われた跡地に、敵はいわば『バグの世界』を生み出し、領土を侵食している。
 3つ、これは敵の仕掛けたゲームの一環である。
 以上だ」
 クロエはこめかみに手をやりながら、深く嘆息した。
「舐められたものだ。我々は完全に遊ばれている……だが、これを見過ごすわけにはもちろんいかない。
 我々がなすべき行動は、主に2つだ。
 1つ、ワールドイーターなる敵による、新たなデータの捕食を食い止める防衛作戦。
 2つ、生成された『バグの世界』に侵入し、内部調査と、出来ればバグの世界を破壊する領土奪還作戦。
 奴らはこれを陣取りゲームと呼んだな。悔しいが、今は乗ってやるしかない。
 おそらく、近く正義国にて、このゲームに関するクエストが発生するだろう。
 ……ヒイズルや翡翠国でも騒動が起きてる。多方面に、同時に対処せざるを得ないだろう。
 イレギュラーズの君達には苦労を掛けるが、敵の目論見を打破するために、頑張ってほしい」
 クロエの言葉に、あなたは頷いた。
 R.O.Oのデータを観測するディスプレイには、こちらをあざ笑うかのように、以下の文字が躍っていた。
 ――正義国を舞台にした新イベント、『lost fragment』が始まります! ふるってご参加ください!
 と――。

これまでの再現性東京 / R.O.O

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