PandoraPartyProject

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竜域踏破: 竜骨の道

 ――練達。
『想像の塔』Dr.マッドハッターのサロン。

「成程、クエスト『竜域踏破』か。実に興味深いな。ドクター、混沌でも深くは解明されていない土地をネクストが再現していることに関してはどう思う?」
『実践』の塔、塔主の佐伯 操は穏やかな声音で問い掛けた。観測モニターではクエスト『竜域踏破』についてのデータが映し出される。イレギュラーズ達の活躍によってクエスト進行度は92%にまで差し掛かっていた。
 コントロール権は喪われたが、観測できないわけではない。故に歯痒さを感じている操は数あるクエストからネクストへと干渉する機を伺っていたのだろう。
「もしも、だ。ネクストで再現された竜域が『混沌世界そのもの』であったならば――これは、稀代の発見だ。
 我らの箱庭は我々の知識外までも混沌を理解しているというのならば。世界回帰への挑戦の……Project:IDEAの進展をこの目で観測できたと言っても過言ではないだろう?」
「ああ、そうだね。そうさ、操。『うさぎの穴』から飛び出して、我々は白薔薇を赤く染める方法にまで行き着いたのさ。けれど、それが真実だってどうやって知るんだい? 赤の女王の判決なんて、信用ならないだろうに。まさか、覇竜領域デザストルに踏み込んでみようとでも?
 それだけは悪い冗談さ! ああ、私達より『狂った』提案だろう。終わらない毎日のお茶会を楽しむよりも酔狂に酔狂を輪を掛けててんで可笑しくて腹を抱えて笑ってしまうもの!」
 饒舌なDr.マッドハッターの話を半分だけ聞いていた操は「まあ、その通りだ」と静かな声音で返した。
「つまり、覇竜領域デザストルにも『竜域』で得られる情報を駆使すれば『辿り着ける集落』があるのではないか?」
「――まさか」
「いいや、モニターに並んでいるテキストをしっかり確認し給えよ。ドクター。
竜の領域には竜骨の道と呼ばれる砂嵐への安全なる出入り口がある』――ならば、覇竜領域にも『竜骨の道』なるものが存在しラサへと辿り着く。
 その可能性とて十分にある。現に竜の領域で観測されている『亜竜姫』珱・琉珂はラサへと到達し、イレギュラーズとも相対したことがあるらしい」
 操の興奮しきった声音にマッドハッターは「私よりも君が落ち着かないなんて珍しいこともあるものだね」と揶揄うように囁いた。囁かれた側の女は白けた表情でそっぽを向く。
 ネクストで得た情報を現実に活かせる。それだけでも十分な成果ではないか。
 事前に調査は必要であろうが、竜骨の道なるものを琉珂に教わり辿ってみれば良い。その到達地点と同様の箇所を現実で探し出して本当にそれが存在したならば?
「さて、ドクター。竜骨の道なるものはプレイヤー諸君が聞き込みをしてくれているだろう。
 ならば、それを現実で調べるのが我々練達のフィールドワーカーだ。君の所のファンを借りても構わないかい? 何、見てくるだけで構わないさ」
「私のアフタヌーンティーは誰が淹れるんだい?」
「一人で淹れろ」
 冷たい声音でそう言った操にマッドハッターは笑顔を崩さぬままモニターを指先でなぞった。

『亜竜姫』珱・琉珂――彼女が『亜竜種』と呼ばれる混沌世界で新たに観測される純種であるのは確かだろう。
 竜種と共に閉じた領域である覇竜領域デザストルで暮らしているそれらが『特異運命座標』の仲間入りを果たすことになったならば?
 ああ、もしもそうなれば新たな特異運命座標(アリス)達との出会いが待ち受けているのだろうか。
 そして、彼等が気にしている『竜王』ベルゼー。
 そのかんばせは――練達とて所有しているデータベースで確認出来る。
『冠位魔種』に数えられたその一人。その姿形は同じであった。彼等の立場は現実とは大きく違っているだろう。その魔種が何処ぞで過ごしているかは分からないが。

「……実に、興味深い」

 ――この手から離れた『Rapid Origin Online』は我々に何を教えようとしているのだろうか。
 

 ――『竜骨の道』さえ知れば何時だってわたし達と会える。
 ううん、それどころか、わたし達だって、皆の仲間に――!

 果たして『幻ともされる亜竜種のお姫様』はこの混沌世界のどこにいるのだろうか……?

これまでの再現性東京 / R.O.O

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