PandoraPartyProject

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鉄義会談

 R.O.O世界ネクストが一国『鋼鉄』――
 かの国は皇帝暗殺による余波が広がり、軍閥の形成にまで至っていた。
 次なる皇帝は自らだと……それが『最強』の座に繋がるのだから。
 力試し、私欲、その他諸々。多くの事情を抱いて形成された軍閥の数々は、一重に述べれば鋼鉄の内乱状態。
 斯様な状況は隣国の『正義』としては見過ごせず、聖騎士団の展開にまで至っていた訳だ、が。
 それは無用な争いを広げる為のものではなかった――

 鋼鉄に誕生せしゼシュテリウス派閥・ギアバジリカ。

 次期皇帝の有力候補とされるヴェルスが『色々な事情』により立ち上げた一団である。
 イレギュラーズを擁するかの一団は機動要塞ギアバジリカを拠点とし帝国内のあちこちを転戦していた訳だが――その内部へと案内されたのは『正義』より至っていた一人の使者。
 ――聖騎士レオパル・ド・ティゲールであった。
 彼はこの派閥の長――に担ぎ上げられているヴェルスと接触せねばならなかった。『現状起こっている鋼鉄と正義の国境問題解決』の為にも。故にイレギュラーズの力をも借りてここまでやってきたのだ。
 ……そして。ギアバシリカ内の応接室に設えられた椅子に座ることなく、レオパル・ド・ティゲールはヴェルス・ヴェルク・ヴェンゲルズと会合していた。
 飾らぬ男であった。
 自然体そのものと言った男の雰囲気は、しかし容易に隙を見せるないが、同時に気さくさのようなものを持ち合わせている。
 奇妙な男であったが、なぜか好感を持てる男でもある。
 ――これが鋼鉄の、最も皇帝に近いと言われている男か。
 ……尤も、本人にその気はないという話も聞いているが。
 いずれにせよレオパルは『鋼鉄』が隣国『正義』より至った使者として――ヴェルスに頭を下げた。
「正義(ジャスティス)より参りました。この度は拝謁に感謝を」
「あー……いいよ、そういうのは」
 困ったようにヴェルスは言った。
「俺は皇帝じゃないからな、そんなかしこまらないでくれ。むずがゆい。
 そう言うのは本当に、マジで、苦手でね。君も楽にしてくれていいよ」
 ショッケンあたりが居たら卒倒しそうなほどフランクに、国賓に接するヴェルス。レオパルは些か面食らったが、しかし此方を試しているとか、そう言う雰囲気は感じられない。
 となれば、これが彼の素なのだろう。
「では……お言葉に甘えて」
 レオパルは咳ばらいを一つ。
「私がここに来たのは……」
「見極め、だな」
 ヴェルスが言った。
「正義の事情は知ってる。うちの混乱が、そっちの国境に迷惑かけているのもね。
 で、正義としては、この混乱をさっさと何とかしたいわけだ。
 そこに現れたのが、俺達ゼシュテリウス……しかも、特異運命座標たちも担いでる派閥だ。
 できれば、内情を探っておいて、使えるなら手を結ぶし、アホを担いでるならさっさと潰しておきたい。だろ?」
 レオパルは無表情であったが、流石に舌を巻いた。ただ、強いだけの男、と言うわけでもない様だ。だが、こうもあけすけにものを言うのは……。
 しかし事実でもある。鋼鉄の内乱に伴い、難民が幾らか生じているのだ――それが正義の国境に押し寄せている。
 このまま事態が長引けばより多くの難民が誕生しないとも限らない……『だから』
「君が嘘を見抜く、と言う噂は知ってる。だから、全部、俺の本音を話しているわけだ。
 そのうえで言うが。俺は、この国の現状をどうにかしようとしている。民が混乱しているのは、流石に捨て置けない」
 真実。天眼はそう告げた。
「だが、俺はべつに皇帝になんてなりたくない。そんなのは、やりたい奴がやればいい」
 真実。天眼はそう告げた。
「故に……私達は手を結べる、と言う事であるな」
 レオパルが言った。
「貴殿に野心はない。しかし、現状をどうにかしたいという点で、我々と貴殿らの利害は一致している。
 幸いなことに、両者を結び付ける特異運命座標たちもいる……」
 レオパルはふむ、と唸ると、ヴェルスにむかってゆっくりと頷いた。
「我々正義は、特異運命座標を通じ、其方、ゼシュテリウスに対して最大限の支援を行う事を、レオパル・ド・ティゲールの名において約束しよう。
 私は、現在全権を任されている。これは、教皇シェアキム・ロッド・フォン・フェネスト六世の意思であると認識していただいて構わない」
「それはよかった」
 ふぅ、と息を吐いて、ヴェルスは苦笑した。
「こう見えても結構緊張はしていたんだ……だが、上手いこと言ってよかったよ。ショッケンに怒鳴られなくて済む」
 ヴェルスはそう言うと、レオパルに向けて手を差し出した。レオパルもそれを受けて、その手を握る。強く、硬く握られた握手。
「だが……本音ついでに言うが。私は、ヴェルス殿、貴殿こそが鋼鉄の皇帝にふさわしいと思うぞ。
 貴殿が皇帝になったなら……おそらく、我が国は鋼鉄への対処に悩まされることになるとは思うが」
 そういって笑いかけるレオパルに、
「やめてくれよ……」
 ヴェルスは困った顔をした。

 ――イレギュラーズの活躍により、ヴェルスとレオパルの会談が実現、平和裏に終了しました。
 正義は、ゼシュテリウスに対して支援を決定しています――。

これまでのリーグルの唄(幻想編) / 再現性東京 / R.O.O

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