PandoraPartyProject

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大鴉の渇望

 どうしてこうも上手くいかないのか。
 それを考え始めればキリがなく、非常に腹立たしい。
 故に――考えず、前へ邁進することも必要なのだとコルボは知っている。


「お宝が遠いですね、お頭」
「ハッ。この先にあるものを考えりゃあ、そこへ辿り着くためのお楽しみタイムってとこだ」
 そう呟く男に小さく笑い飛ばしたコルボは渋面を浮かべる。
 ファルベライズ遺跡中枢部『アアルの野』をコルボ達は進んでいた――宝を前にしたお楽しみタイム。その高揚感は間違っていないが、如何せん辿り着くための遮蔽物が多い。そう、予想外と言わしめる程に。
 空中庭園へ召喚されし特異運命座標(イレギュラーズ)。彼らの存在と活躍は前々から耳にしていたが、まさかこれほどまでとは思わなかった。否、その活躍があったからこそこれほどまでに強くなったのだろう。彼らはラサからの依頼により願いを叶える秘宝――色宝(ファルグメント)を集め、保護し、それを狙う自分たち大鴉盗賊団の邪魔立てを繰り返してきた。その最たるものが先のネフェルストも襲撃した戦闘である。
 元よりラサの首都ネフェルストへ行った者たちは多少なりとも打撃を受けただろうが、それも思っていたより大きい。そしてコルボたちの方も強力な追手がかかるとは思わなかった。イレギュラーズ、そしてラサの傭兵たちもそれなりに強力なカードを揃えているということだろう。
 虎の子であった『竜』の残骸すら出したというのにこうなるとは……
「まあ、強いヤツと戦えるのは悪くねェ」
 にぃとコルボは笑みを浮かべる。そう、悪くない。金も力も――それ以上も――この手にしたくはあるが、同じくらい強敵との邂逅は高揚する。今、このタイミングでなければ。いやこのような場面でなければコルボとて、イレギュラーズと鉢合わせないよう道を選ぶことなく彼らの前へ出ていたことだろう。それくらいには強いヤツは好ましい。
 そう、今のコラットも戦えば楽しそうだ。自分の影響ではあるものの、元よりこの男は強い。だがこれまでもずっと『わざわざ戦って戦力を落とすこともない』と刃を交えてこなかったのである。
(だが……『コレ』さえ終わったら、やりあってもいいかもな)
 そう内心で思い、同時に考える。もしもここにあの女――レーヴェン・ルメスがいたのなら。

「……いや、」

 しかし思ってすぐに頭を振った。あの女がいれば確かにイレギュラーズたちの動きは鈍らせられたかもしれない。迂闊な事をしようものなら女の体の部位を少しずつもぎ取って、奴らに送りつけてやれば同様のひとつもするだろう。ローレットという組織は中立だが、そこに属するイレギュラーズたちは比較的『善』の者が多いようだから。
 けれどそうなるよりも早く先の戦闘と同じことが繰り返されると思うのは気のせいではないだろう。そうなればいつかは取り返されたということだろうし、そう考えると再び攫うのも馬鹿らしい。この先に待つかもしれないものを考えればあった方が良いモノだっただろうが、無いものねだりも後悔も盗賊には似合わないのだ。
「……おい、コラット」
「ええ」
 コルボの呼びかけに右腕たる男はちらりと背後を見る。登って降りて、また登る。そんな構造故にそこまで先は見通せないが――気配がする。ひとつではなく、土塊のそれでもない
「追いつかれると面倒だ。戦うだけならまんざらでもねェが」
 確実に邪魔立てをしに来ているだろう彼らを迎える余裕はない。ならば己の望みのため、手足たる部下に一仕事してもらおうではないか。
「コラット、ちょっと行って遊んでやれ。何人か連れて行っていい。……そうだな、死んだやつも使ってやれ」
 死んだ者が生き返ることは無い。この世界の理であり覆らない定めだ。けれども死人を模すだけならこの遺跡にいる『ホルスの子供達』が役に立つ。あれらも迂闊に接すればこちらを敵として認識してくるが、要はなにもかも『使いよう』という訳である。
 『博士』とやらが残した遺物。精々利用させてもらうとしよう。
 先述の通りこちらにもあまり戦力的余裕がある訳ではないのが些か口惜しい……

 どうしてこうも上手くいかないのか。
 そう思う事はあれど、深く考えることはない。ただ前へ進んでいけば良い。
 この世界は『手にした者』が勝者なのだから。
(精々遊ばれるんだな、イレギュラーズ。力も宝も、手にするのはこの俺だ!!)


 <アアルの野>の探索が始まっています――

*混沌世界に新たな敵性存在『怪王種』が世界中で発見、報告されました。

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