PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<アアルの野>ゴールドストーンを砕け

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 登っては降りて、また登って――奇妙な階段がひたすら続く遺跡の中は只々広く。中央の塔まで至るには無数の階段がより途方もない道のりを感じさせていた。
「お宝が遠いですね、お頭」
「ハッ。この先にあるものを考えりゃあ、そこへ辿り着くためのお楽しみタイムってとこだ。まあ……想定外はあるが」
 コラット――自らの右腕たる男の言葉に笑った男は、されどその後渋面を浮かべる。脳裏に浮かぶのは勿論、憎らしき特異運命座標(イレギュラーズ)たちであった。悉く自分たち『大鴉盗賊団』の前へと現れ邪魔をしてくる存在である。想定外と言えば彼らが思っていたよりも強かった事であろう。
 易々と打ちのめせるハズだったのに、実際はこちらの被害の方が大きい。先の二面作戦でもそうだった。
「まあ、強いヤツと戦えるのは悪くねェ。今のお前とも戦ったら愉快そうだ」
 にぃと嗤うコルボ。コラットも共に笑みを浮かべるが、その瞳は以前よりも凝って見えるような気がした。
 とはいえ、現時点で仲間同士やりあうつもりはない。ここで無駄に戦力を落とすなど馬鹿げている。やり合えば確実に怪我をすることが目に見えていた。イレギュラーズたちもまたあの塔を目指しているとなれば尚更、これ以上の遅れをとる訳にはいかない。
「あの女がいりゃ多少は楽だったか……いや、」
 言葉を途切らせたコルボは眉根を寄せた。パサジール・ルメスの民である鴉のスカイウェザー。名をレーヴェンと言ったか。あれを人質にすればこうした回りくどいことをしなくてよかったかもしれないが、結局のところ先の戦闘と同じような事が繰り返される可能性が高い。つまるところいつかは取り返されたということであろうし、再び攫うのも馬鹿らしい話だった。この先でも役に立つかと思ったが――ないものねだりをしても仕方がない。
「……おい、コラット」
「ええ」
 コルボの呼びかけに右腕たる男はちらりと背後を見る。登って降りて、また登る。そんな構造故にそこまで先は見通せないが。
「来ていますね。そこまで数が多いってわけじゃあなさそうですよ」
「追いつかれると面倒だ。戦うだけならまんざらでもねェが」
 コルボの視線が先を偵察する部下へ向く。他の部下たちがイレギュラーズと鉢合わせている間に極力邪魔をされないよう道を選んで来たつもりだったが仕方がない。そこの何人かとコラットと――そう、『ホルスの子供達』をいくらか使ってやればいい。
「てめェら、せいぜい生きて帰って来いよ。じゃねぇと宝をあの世で眺めるだけになるぜ」
「お宝」
「へへ、生きて帰ってきますよ」
「お頭についていきゃあなんだって手に入る」
 ニヤニヤと笑みを浮かべる部下たちにコルボもまた笑みを浮かべ、彼らを送り出す。そして自身と残った部下で再び中央を目指し始めた。
 ――正直な話、部下が生きていようが死んでいようが構わない。コラットほどの実力ともなれば惜しいが、それも『ホルスの子供達』が姿を取ればそれなりの実力を模すことだろう。
 だがコルボは知っている。『欲求』というものがどれだけ強い想いを秘め、力を呼び覚ますのかを。故にそれを煽っただけに過ぎない。彼らはまだ自身ほどに至っていないが、それでも欲を強く認識すれば更なる深みへと墜ちていくことだろう。
(精々遊ばれるんだな、イレギュラーズ。力も宝も、手にするのはこの俺だ!!)



「すごい……!」
 ラサで見つかった遺跡群<FarbeReise>の中核。輝かんばかりのクリスタル遺跡にソア(p3p007025)は目を輝かせた。初めて足を踏み入れる場所だったが、どこもかしこもキラキラと輝いている。
(これが盗賊たちの欲しかったものなのかな? ううん、でも……)
 先日交戦した大鴉盗賊団は、攫ったレーヴェンを人質にファルベライズのより深くへ進もうとしていた。そして彼女を奪還された今もこのクリスタル遺跡を『進んで』いるのだという。この先にあるものと言えば、中央にそびえる塔くらいしか見えないものだ。
(そこまでレーヴェンさんを連れて行こうとしていた? イレギュラーズに対する牽制だけのため……?)
 わからない。大鴉盗賊団の真意が読めない。けれどもこのままでは再びレーヴェンが攫われることもあり得る訳で、ソアはもっと詳しく調べるためにこのクリスタル遺跡まで足を運んだのだった。
 この場所では『ホルスの子供達』と呼ばれるゴーレムのようなものと、色宝によって姿かたちを変える部屋が見つかっている。部屋の方はどことなく幻想の『果ての迷宮』と似たものかもしれない。空も見えぬ地下遺跡だというのに青い空が広がったり、海中のような場所だったり、時には心象風景を映したりもすると言う。
(コラットも……ここにいるのか?)
 アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)は大鴉盗賊団頭領の右腕と呼ばれる男を思い出す。大鴉盗賊団は先の戦いで大打撃を受けたものの、依然として野心を燃やしているらしい。あの男もまだ生きているのなら――あるいは。
 歩を進めるイレギュラーズたちは登って、降りて、また登る階段に若干辟易としながら前を向く。不意にアルヴァはざわりと揺れる本能に従い、大きく跳躍した。甲高い音がアルヴァの進んでいた辺りで鳴る。
「やあ」
 躱されたのも想定の内――そんな笑みを浮かべ、階段を上がった先にコラットは立ちはだかっていた。

GMコメント

●成功条件
 コラット及び大鴉盗賊団の撃退、或いは撃破

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。不明な点もあります。

●エネミー
・コラット
 大鴉盗賊団幹部であり、頭領コルボの右腕たる男。見かけはよく酒場に居そうなおっちゃんです。砂上でも抜きんでた俊敏さと機動力を見せます。空を舞い、鋭い刃で獲物を狩る双剣使いのスカイウェザーです。大鴉盗賊団が有名でない頃から所属しており、コルボとは長い付き合いです。
 以前と比べどことなく異様な雰囲気の気がします。宝が近いせいでしょうか、より強欲にそういったものを狙う心が現れているようです。戦闘能力にも多少の変化がある可能性があります。

乱舞:砂の竜巻は無数の鋭利な刃となって。【流血】【混乱】
俊足:目にも留まらないとはまさにこのこと。【移】【体勢不利】

・部下×3人
 大鴉盗賊団の一員です。比較的若く、スカイウェザー2名とブルーブラッドです。コラット同様に異様な雰囲気であり、やはり宝を欲する想いが強いようです。人によってはコルボに対して妄信的な者もいます。
 いずれも剣による近接戦闘に長けており、耐久力もあるようです。ただし俊敏さで言えば後れを取るでしょう。そこそこに連携します。

堅牢たる壁:2人までブロックできます。
紅の攻勢:鋭い連撃は紅色を散らすでしょう。【出血】【乱れ】

・ホルスの子供達×10人
 土塊から生まれたモノ。かつて散って逝った大鴉盗賊団のメンバーの姿を取っており、今はコラットたちの望みによってイレギュラーズへ抗戦を仕掛けるようです。
 意志疎通は可能ですが、何処か不完全なものを感じさせます。倒せば土に戻ってしまうことでしょう。色宝が力を与えており、普通に戦えるだけの力を有しています。
 神秘適性があり、後衛からの攻撃と支援が中心となります。その体は若干脆そうな印象を受けますが、色宝に与えられる力は確かであり、その攻撃性と回復能力は警戒すべきでしょう。

刃の雨:雨のように鋭く変化した魔力弾が降ってきます。【出血】【致命】【識別】
雷竜:雷が竜のような姿を模し、襲い掛かってきます。【Mアタック50】【感電】【鬼道20】
泥沼:ある一点を起点とし、鈍重にする魔法陣が発生します。【泥沼】【呪縛】
賦活:周囲のメンバーを癒し、異常状態を正常化させます。【治癒】

●フィールド
 ファルベライズという遺跡群の中核、クリスタルの遺跡です。
 皆様の初期位置は登り階段であり、コラットたちは階段の踊り場のような場所に位置しています。
 階段も踊り場も比較的広いですが、いずれも高い位置にあります。落ちてしまったなら重症は免れないでしょう。

●ご挨拶
 アフターアクションありがとうございます。愁です。
 彼らを退け、コルボたちへ追いつくための布石としましょう。
 ご縁がございましたら、よろしくお願い致します。

  • <アアルの野>ゴールドストーンを砕けLv:20以上完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2021年01月31日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

コラバポス 夏子(p3p000808)
八百屋の息子
ルウ・ジャガーノート(p3p000937)
暴風
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
業壊掌
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
希望の蒼穹
ソア(p3p007025)
虎風迅雷
アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)
財布の死亡判定
ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)
陽気な歌が世界を回す
微睡 雷華(p3p009303)
雷刃白狐

リプレイ


 ファルベライズ中核――クリスタルの遺跡にて。昇降繰り返す階段のその先に彼らはいた。大鴉盗賊団の一味、そしてそれを率いるコラットは今しがた投げた短剣の予備を懐から取り出し、手で遊ぶ。その背後ではコラットの率いてきた部下たちに名を呼ばれたことで変質していく土塊の人形があった。
「ホルスの子供達……」
「正解。一時を共に戦ってくれる『かつての仲間たち』さ」
 コラットが目を細める様を、ホルスの子供たちが変質する様を『虎風迅雷』ソア(p3p007025)はじっと見つめていた。その目がキランッと光る。
(見て分かる……あの3人、とってもしぶとそう)
 恐らくは彼らがタンク的な役割であり、攻撃はホルスの子供達任せ。ならばその形を崩せば突破口は開けるはず!
 ソアは自らの能力を一時的に引き上げるなり力強く宙へ向かって跳躍し、落雷の如く部下たちへ向かって飛び込んでいく。確かな感触にソアはにっと笑みを浮かべ、得意げにウィンクした。
「好きにさせないんだから!」
 その言葉と同時、逃がさないと言わんばかりの弾幕がソアを巻き込んで敵全体へと降り注ぐ。『銀河の旅人』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)は彼女の合図を見逃さない。素早く確かなリロードと共に2度、3度と弾幕が敵陣へ張られた。早抜きからの流星雨は重なれば重なるほど、そうそう完全に避けられるものでもない。
(できる限り避けてくれよ……!)
 味方のソアのみを避けさせるような器用さはない。彼女自身の反応速度とその幸運に任せるしかないのだ。
 それが止むと同時、『怪盗ぱんちゅ』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)は動き出す。遺失魔術のアミュレットが小さく煌めき、同時に地から足を離したコラットへアルヴァは鋭く肉薄していく。空を飛ぶ利点を生かし、より三次元を生かして翻弄するアルヴァは瞬く間にコラットを追い詰めた。
「お前のために用意したんだ、受け取れ」
「ちっ……!」
 空中を味方にした力強い一撃にコラットが舌打ちする。受け身を取ったものの、翻弄されたおかげであまり効果的とは言えなかったのだろう。すぐさま距離を取ったコラットはアルヴァを見据える。
「誰かと思ったら怪盗くんじゃないか」
「この前の地底湖以来だな、コラット」
 レーヴェン・ルメスを攫った大鴉盗賊団が向かった地底湖。そこで交戦をした2人は、されど決着がつくことなく――大勢では決していたが――ここでの再会となった。故にアルヴァは逃がす気などない。ここで今度こそ決着を着ける心づもりで今ここに立っている。
「悪いね、俺はかなり執念深い性格なんだ」
「はは、そうみたいだね。もう少し大人になってもらいたいもんだが……ガキには無理か」
 構ってやるよ。そう呟いたコラットは短剣をアルヴァへ構える。アルヴァもまた低空飛行魔導狙撃銃のグリップを握り直した。

(この先にコルボがいる……)
 『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)は立ちはだかった彼らに、更にその先を進んでいるだろうコルボの事を考える。色宝を欲し、力を欲し、その行く果てに何を企んでいるのか分からない男だ。けれども分からないから様子を見てみるなどという段階はとっくに越えた。彼とその配下はいずれも放っておくわけにはいかない存在である。
「私たちには私たちのやらなくちゃいけないことがある、だから――通してもらうよ!」
 アレクシアは部下3人のうち2人をブロックし抑え込む。ホルスの子供達との間に入ってしまえば、直接彼らの元へ馳せ参じることはできないはずだ。
「君等の仕事、嫌がらせだろ? 奇遇だね~」
 俺も俺も、と『八百屋の息子』コラバポス 夏子(p3p000808)はへらりと笑って彼らへ告げる。彼らが自分たちを通さまいとするのと同じように、自分たちとて都合よく動かされるわけにはいかない。
 夏子とソア、アレクシアが部下3人を押さえたことで道が開く。そこを『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)は力強く駆け抜けた。全身の気を爆発させた突進は全てを打ち砕かんという勢いだ。
(アシドメされてる状況だけど、悪くない)
 ここコラットがおり、その部下も一部いるということはそれだけコルボのもとが手薄になっているという事。戦力が分散された状態で少しずつ潰していけるのであれば、これはむしろまたとない好機である。
「――って思うことにしてハデに暴れて行こうか!」
 ホルスの子供達のうち1体へ強烈な力を叩き込んだイグナート。その後方を『暴風』ルウ・ジャガーノート(p3p000937)が追いかける。
「大鴉盗賊団の幹部のお出ましか! 全員ブン殴って目を覚まさせてやるぜ!」
 攻撃と共に移動できる手段がないのならば、普通に駆けていけば良い――筋肉質な巨躯が走ってくる様はなかなかに圧が強いが、ホルスの子供達はひるむことがない。ルウは短剣を構え、勢いよく突進していった。
 その後を追うは少しだけ眠たげな目をした少女、『折れた忠剣』微睡 雷華(p3p009303)。階段の上で待ち受ける敵とは何ともありがちな障害である。雰囲気十分、ならばここで雌雄も決したい。眠たげな表情とは裏腹に派手な格闘術で攻める雷華へホルスの子供達の視線が向く。

 ――戦いの始まりだ。

「ちょこまかと良く動く」
「それは怪盗くんも同じだけどね」
 アルヴァとコラットは互いに躱し躱され、近づいては離れてともどかしい戦いが続いていた。コラットは前回同様に空中を飛び回るが、アルヴァは地に足こそついていないものの低空飛行状態。この広いとは言えないフィールドで落下してしまわないよう、そしてコラットを空から引きずり落とすために地上からの打ち落としを狙う。
「俺が墜ちるのが先か、お前が墜ちるのが先か勝負だ」
「賭けるのは自分の命ってか。俺の命はお頭のモンだぜ?」
 とん、と自らの左胸を指し示すコラット。軽薄なその表情に苛立たせられるが、相手の調子に乗らぬようアルヴァは静かに深呼吸しながら銃を構え――放つ。
「ここで勝負しないなら、そのお頭の命を奪うまでだ」
 銃弾はコラットの肩を掠める。軽い、だがまず一発。
 コルボが現状のまま進むのであれば、かの命は誰かにずっと狙われることだろう。コラットはすぅ、と目を細めてアルヴァを見る。
(……以前とは違う。何だ……?)
 地底湖で戦っていた間とはまた異なる感覚にアルヴァは眉根を寄せる。その攻勢も以前より強く、一言で表すなら――不気味だ。
 されど元よりアルヴァは理解している。前回戦ったからこそ、1人で彼を落とせるなどと驕れるわけもない。故に今は我慢の時でもあった。
 一方、夏子に部下たちを任せたアレクシアとソアはホルスの子供達討伐に移行していた。超集中状態へ入り、夏子へ魔力障壁を張ったアレクシアはホルスの子供達と相対する仲間たちの支援へ。ソアは自らの能力を引き上げつつ光のような速さで突っ込んでいく。
(早く、やっつけてあげなきゃ)
 ソアは目の前で呻き声を上げたホルスの子供達を見て、ほんの微かに眉尻を下げた。ソアは、イレギュラーズたちはこの男の名前を知らない。他の者の名前も、どんな人柄だったかも、どうして盗賊団に入ったのかさえも知らない――もしかしたら極悪人だったかもしれないけれど。それでも死者は悼まれるべきであり、元が紛い物の土くれだったとしてもこうして姿を取られては気の毒だ。
「さあ、ツギはどいつだ!?」
 アレクシアの回復を受けながら、イグナートは次々に雷吼拳を放って自身へ注意を引きつけていた。ホルスの子供達の中には正気を取り戻させる力を持つ者もいたが、それならばその敵を誰かが倒してくれるまでひたすらこちらを向けさせ続ければ良いこと。大事なのは如何にダメージを周りへ散らさないかだ。
 何より――力の見せ時こそ滾るものはない!
(宝を廻ってのチェイスか……懐かしい、などと悠長なことは言っていられないが)
 特殊支援を自らとアレクシアへ付与したヤツェクは曲芸射撃と弾幕を使い分けながら敵の力を削いでいく。その支援を受けたアレクシアは彼の傍ら、階段や踊り場の外へ落とされてしまわないようにと立ち位置を気を付けながら方々へ支援をかける。治癒のできるホルスの子供達を倒してしまえば、あとはアレクシアが状態異常を浄化の魔力で打ち払いながら確実に敵の数を減らしていくだけ。雷華は神秘攻撃を遮断する結界を張りながら格闘術で攻め立てて行く。物理攻撃が通る以上、完全にという訳にはいかないが――。
「効かないよ……」
 雷竜の牙にダメージはない。そこに伴うアレソレは別としても、すぐさまアレクシアが打ち払う。魔法陣を展開していたホルスの子供達をルウが力いっぱいに殴り潰し、土塊へと還した。何の捻りも無く特殊な力なども込めていない純粋な力だが、彼女のそれは雑魚敵なら文字通り『ひと捻り』だろう。
「やっと1人か~」
 コラット配下をようやく1人昏倒させた夏子は残る2人へ目を向ける。目を血走らせた彼らは未だ倒せない相手であっても引く気配を見せない。夏子は来たる攻撃に向けて耐え忍ぶ姿勢を取りながら口を開いた。
「色々目的はあると思うよ。でもやって良い事と悪い事は区別しよ? 死者を利用しちゃうメンタルはマズいわ」
「使えるモンは使うに決まってんだろ」
「全てはお頭と宝のためだ!」
 死者を『使う』という非人道的な行いに対して悪びれる気配はない。これが非人道的だと認識しているのかすら分からないが。
(目的の為でも、手段を選ぶのが知的生命体だ。それを選ばなくなったらそりゃもう、ただの――)
 どうすれば伝わるのか、どうすればそう認識するのか。考えようとして夏子は首を振る。少なくとも今ここで、説得という形は難しいのだろう。なればすべきは仲間が勝利をもぎ取るまで耐え忍ぶ、その一点に尽きる。
「……それでもさ。やっぱ人間である内は省みて、償って欲しいんだよな」
 そんな『いつか』を、願うのだ。



 流れが変わり始めたのはホルスの子供達が少なくなった頃。対応していたイレギュラーズが二手に分かれだす。同時に夏子は範囲に収められるだけの全てへ注意を向けさせんと声を上げる。
「この先目指すなら、竜のような何かくらい倒せないとな? あ、それとも倒せちゃったり? した?」
 言わずとも分かる煽りである。寄ってきたホルスの子供達へアイアースを放つと、合流してきた雷華がナイフと格闘を交えた追撃をかける。
「俺はこっちに参戦するぜ」
 ルウはアレクシアからの支援により少しばかり回復した力でしかと体験を握りしめ、分厚い鋼の刃で敵を両断しにかかる。直撃は外したが――男の腕が1本、下へ下へと落ちて行った。
(できればコラットも部下も殺さず捕まえたい所だが、そうも言っていられない相手らしいしな)
 ルウは視線を空中へ、コラットの方へと向ける。特にあの男はそうだし、空中へ逃げられてはルウに届かせる術がない。一見どこにでもいそうなオッサンではあるが、油断はできないだろう。
「この……!」
 片腕を失くした男が残った手で剣を取り向かっていくが、横合いから大きな発砲音と強い光、そして衝撃を受ける。あわや落ちかけたものの、自前の翼で飛んだ男はひとつ離れた踊り場に着地して――膝をついた。
「……人間辞めんのは早いと思うよ。俺はね」

 コラットを押さえるアルヴァは肩で息をしながら、されどまだどうにか立ち上がっていた。目の前ではコラットが空中を飛び回っている。だがあと少し――アルヴァは全力で肉薄し、攻撃を叩き込んだ。痛みに目が眩もうが『その時』が来るまでは耐えるのがこの役目を任されたアルヴァの矜持。
「――待たせたね!」
 強烈な蹴りを受けると同時、その声が聞こえた。次いで雷のような光が落ちるアルヴァの代わりに上空へと上がり、コラットへと向かっていく。
「言い忘れた……お前を堕とすのは俺だなんて、一言も言ってない」
 コラットの虚を突かれた表情にアルヴァは笑う。幸いにして落下したのは踊り場の上だ。

「悪いね。相手の得意な土俵で戦う程、俺は親切じゃないんだ」

 イグナートの跳躍に次いで、ヤツェクが素早く曲芸射撃を放ちソアが跳躍から急襲の構えを取る。イレギュラーズ側の手数が一気に増え、コラットの傷が目立ち始めた。アレクシアは武器の力で治癒能力を上げながら味方の力を底上げしていく。
「重要な証人だ、死ねると思うなよ?」
「ハッ……何を証言する? うちのお頭が全てを手に入れるって話か?」
 ヤツェクはコラットの言葉に目を細める。彼は今のコラットしか知らないが、以前もこうだったのだろうか。話では多少雰囲気が違うという事であったが、欲望を引き金に力を引き出すような仕掛けがあるのか、或いは文字通りに『おもい(欲望)』の為せる業か。
(捕まえて吐かせるしかないな)
 銃を構えるヤツェクの隣でアレクシアが回復を施しながら叫ぶ。その心の内に秘めた想いを。

「これ以上あなたたちに犠牲は出させない! だから絶対に――負けるものか!」

 彼女の言葉に仲間たちもそうだと呼応する。その様と、そして配下の様子。そして土塊に戻ってしまったホルスの子供達をコラットは見た。
「――まあ、こんなもんだな」
 被害も、戦いにかかった時間も『十分だ』と。
 コラットの鳴らした指笛は部下たちへの合図らしい。倒れていた盗賊たちが一斉に起き上がり、イレギュラーズの手を掻い潜って翼を広げた。スカイウェザーの片割れがブルーブラッドの男を掴んで一同は階段外へと飛び出す。
「待て、コラット……!」
 コラットもまたその後を追わんと羽ばたいたが、アルヴァは引き留めた。言外に告げる。此処で逃げるのかと。けれどもそんな挑発に乗ることなくコラットは小さく笑みを浮かべた。
「まあ慌てなさんなって。この奥を目指すんだろ? それならまたその内会えるさ」
「ふざけるな」
「ふざけてなんかいないさ、お頭からは『遊んで来い』としか言われてねぇからな。怪盗くんたちを殺そうが生かそうが自由だ。だが――宝も何もかも、お頭が手にするのが相応しい。手にする瞬間を見に来るくらいなら構わないぜ」
 にたりとコラットが嗤う。これまでの軽薄な彼とは異なる一面に小さく息を呑んだアルヴァは、目の前に迫る旋風に腕で顔を庇った。
「コラット……っ」
 攻撃ではなく、ただの目くらまし。ここで手加減されるなんて腹が立って仕方なく、そして同様に手加減されなければ更に危険な状態だっただろう自身にも腹が立つ。
 噴き上げる風から顔を庇いつつ視線でコラットの姿を探すが、あっという間に撤退していったようで彼の姿はもはやそこにない。アルヴァは道の先、まだまだ続く階段の方を見つめた。
(この先に大鴉盗賊団が……コラットが)
 勝負は延長戦。ならば――向かわねばならない。

成否

成功

MVP

アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)
財布の死亡判定

状態異常

コラバポス 夏子(p3p000808) [重傷]
八百屋の息子
アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360) [重傷]
財布の死亡判定

あとがき

 お疲れさまでした、イレギュラーズ。
 次の会敵は――果たして、いつになるのか。

 それではまたのご縁をお待ちしております。

PAGETOPPAGEBOTTOM