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樹上の村

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街角の更新ログ

何となく残しておくと面白いかも知れないと思ったので記録しておくことにする。

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2018/6/4(1/2)

潜伏マントゥール

「ええい、どれだけしつこいのか……!」
 苛立った声を上げたのはシルク・ド・マントゥール団長――ジャコビニだった。
 全身から鬼気を漂わせる彼は姿を隠す事を余儀なくされている現状に確かな怒りを見せている。
 先のノーブル・レバレッジを切っ掛けに国王の庇護を失った彼等の現状は実に悲惨なものだった。幻想という国は良くも悪くも貴族派の力が強い。フォルデルマンがサーカスを見限った以上、遠慮する理由は無いとばかりに所領を検問で封鎖した貴族達はローレットの要請通りに『自己利益を追求し始めた』のである。
 ローレットによる周知が進んだ今となってはサーカスは国賊。(幻想の司法に頼る事は馬鹿馬鹿しいので、或る意味でその判断は正解だったが)逃げ出した時点で黒は確定というのが専らの流れである。そうなれば、黄金双竜(レイガルテ)、暗殺令嬢(リーゼロッテ)、遊楽伯爵(ガブリエル)等、有力貴族派閥が『サーカス拿捕の功』を競うのは当然であり、派閥の領袖がそこまでを考えていなかったとしても下につく貴族達が自身の手柄を主に献上したがるのは当然だった。
 最早、サーカスは狩りの対象になっている。
 そして幻想貴族達というものは元々――酷く上手に悪趣味な狩りを嗜むような連中だ。
「……団長、どうしますか?」
 偵察から戻った団員が疲れた顔をして頭を振った。
 彼のサインが示すのは「ここにも長居するのは危険」という意味合いである。
「おのれ、大体話が違うではないか。この国は――」
 無能王と腐敗貴族による専横が進んだ『どうしようもない国』。
 そして、凶事の影を見つけたとしても決して団結出来ない、末期患者だった筈――
 表情を歪めるジャコビニに、最早平素の余裕は無く、ギリギリと歯を噛む彼はこれ以上無く焦っていた。
「それだけすごいって事じゃない?」
 笑顔を浮かべたクラリーチェが落ち着きのないジャコビニに告げる。
「『こんな国をどうにかしちゃった誰かさん達がさ』」
「……」
「いやあ! 驚いた。驚きついでに、そろそろ僕達もチェックかな?
 やー、困ったねえ! 滅びを望む『魔種(デモニア)』自身が追い詰められてるなんて!」

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