PandoraPartyProject

ギルドスレッド

時計屋

扉を開いて

ちくたくと時計の針が鳴る。

人を出迎えたのは一面に飾られた時計の数々。
だが、その時計は一つとして同じ時間を指してはいない。

奥に見える作業台に初老の男が腰掛けている。
愛想を感じられる挨拶はなく、この商店の主人であろうその男は来客者を一瞥するのみで、すぐに手元で弄ぶ時計に興味を移した。

店の主が偏屈である事が窺える。

どうやらあなたを快く歓迎してくれるのは
相も変わらずちくたくと働く、時計達だけのようだ。

=====
このギルドのとりあえずの玄関口。
主人は時間合致した場合に応答します。
差し当って一発言・一行動の短文推奨。
不在時に万引きされると主人が悲しみます。

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(ぎぃ、と。軋んだ音を立てながら、扉が開かれる。入口から姿を見せたのは、白い髪と白衣が目立つ白づくめの男。ただ瞳だけが、深紅色に輝いていた)
こんばんは。
腕時計の修理をお願いしたいのだけれど……見てもらえるかい?
(主人の偏屈そうな素振りも意に介さず。ただ静かに笑みを深めて、そう問いかけた)
(開いた扉の中からは軋む音を掻き消し、規則正しい音の波が沸き起こった。主は来訪者に一瞥を向けて、意識の矛先をほんの僅か耳に預けた。言葉の端々から、どうやら冷やかしの類では無い事が理解できた)
……いらっしゃい。品物はこちらへどうぞ。
(指先が作業台の上をトンッと跳ねる。慇懃無礼な口調と表情は、穏やかな笑みを讃える客人といっそ対照的だ)
ふふ、ありがとう。
……見て貰いたい物って言うのが、これなんだけどね。
どうも何か強い衝撃が加わってしまったみたいでね……
生憎私は記憶が飛んでしまっているものだから、具体的に何が起きてこうなったのかはわからないんだけど……
(そんな風に淡々と説明しながら、つかつかと男の方へと歩み寄って来ると、作業台の上へとその"品物"がそっと置かれた。
 シンプルな革ベルトの小さな時計だが、ガラス部分には大きなヒビが入っている他、短針が外れて文字盤の上に転がり落ちてしまっている。秒針も随分と緩んでいる様に見えた。)
直らなければ、諦めて新しい物を買おうと思っているけれど……直せそうかい?
(フムン、と奇矯な唸り声を落として、ハンカチ越しに『品物』を手に取る。モノクルの上から更に重ねた拡大鏡が、キリリと音立て伸びた)
(時計の針の音、品定めの合間に鼓動のように鳴り響く)
……完全な修復を望むなら、結構な時間を頂きたいところだな。
このサイズの硝子片を加工出来る設備がうちには無い。
――だが。この罅割れた硝子蓋を諦めるなら、本日中にでも。どうするね?
(四の五のは言わない。時間を惜しむかのように、純粋な結果と選択肢だけを客人に差し出した)
へえ……直るには直るんだね。さすがは本職、って事なのかな。
(一瞬目を見開き、感心と安堵が混じった声音でそう呟いてから)
幸い、時間だけは無駄に有り余っている身だ。
別に急いで直して貰いたいわけでもないし。完全な修復を、お願いしようか。
……ちなみに、具体的にどれくらい時間がかかりそうかわかるかい?
(一応、聞くだけ聞いて置きたくてね。そう、言い訳っぽく付け足しながら、店主を見つめて)
(こめかみを指で叩く仕草の後、主は1209600と小さく呟いた)
いや、失礼。二週間と言ったところだな。
何分、街を駆け回って硝子職人を探す所から始めにゃナラン。
私はこの時計たちの事ほど、この世界に精通しているわけではないのでね。
(そこで一旦、フムンと言葉を切った)
併し――一応言っておくが、硝子豚が罅割れていた処で、時計としての機能はなんら損なわれるものではない。
記憶が飛んでいると言う話だったのは解るが、コレに何か思い入れでも?
おや……二週間の事を秒数で言う人、記憶の無い私でも初めて見た気がするよ。
(何かこだわりがあるのかな、と興味深そうに呟いたが、本当に答えが貰えるとは思っていないらしく、その口調は随分と軽い)
……二週間か。もっとかかる事も想定していたけれど……
(思い入れ、と男に問われて、穏やかだった笑みが曇る。困った様な様子で店主から視線を逸らしながら)
思い入れ、というか……その……
……先程記憶が飛んでいると言ったけれど、本当に文字通り全部が消し飛んでしまっているみたいでね。
正直、自分の名前すらも曖昧にしか思い出せない有様で。
そんなだから、記憶を失う前から持っていた私物はできる限り綺麗な状態で持っておきたくて……ね。
……物を通じて昔の事を思い出せる可能性があるかもしれない、と思うとつい……
(初対面の人相手に話す様な事じゃなかったかな、と囁いて笑っているが、その顔はどこか強張っている様に見えるかもしれない)

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