PandoraPartyProject

ギルドスレッド

造花の館

安くはない。決して。

作業終わり、朝一番のホットビールを傾けながら、目の前の結果を精査する。

造形はストレートのシルエット。寸法はあれの体躯にしっかり合わせてあるので、丈が余ることも袖が短いという事もない。慎ましやかボディラインはパフによって淑女然とした柔らかさを演出し、少女性以上の魅力を引き出すことに成功している。やはりランタンにして正解である。
コルセットで締める必要もない良くできた造形は、悪く言えば引き締め甲斐のない『余白』のない造形。余白がないが故にバッスルとも噛み合いが悪く、シルエットが味気のない砂時計型になってしまうのを避けるために、腰に付けたフリルは悪くない仕事をしている。
早朝の窓から抜け落ちてくる、まだ冷たい硝子の温度のまま差し込む光を受ければ、鈍く暖かなオフホワイトに。陽を受け止めない陰の側は、岸辺から沖へと沈もうとする白い砂浜の鮮やかさで、仄かに色合いを変えていく軌跡だ。より深く目を凝らせば、僅かな角度の違いで表情を変えるレース模様が、宝石のカットのように静かに煌めく様は、主張の程度も相まって「最適」だろう。

姿見に映るその容貌は、千歩譲ってその奥に映るボクの次程度にはよくできていると認めてやってもいい。想定を超えないが期待以上の結果……総評としては『よし』と言ってもいい。

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(複雑に輝く白い袖を掲げて不思議そうに見ていた。
 同系統の糸で複雑な刺繍がされた生地は光が当たれば砕けるようにして様々な色合いを見せた。
 それよりも不思議なのは肌に吸いつくようにピッタリな縫製である。これほど体に馴染むものは普段着ているセーラー服を覗いては他にない。

 ぱちりと、長い睫毛が瞬いて貴方を見る。

 枕元にこれを見つけた時に得た興奮も、着替える過程の中にあった高鳴りもまだ胸にある筈なのに上手く出力しきれない。
 すっかり混乱して言いたい言葉も、言うべき言葉も喉の奥で詰まってしまっているのだ。
 あるいは、どこか本能的な部分でどれもこの感情を表現するに適切ではないと判断したのかもしれない。
 やがて、覚えたばかりの爪紅に彩られた指先を自身の胸に押し当て、ぎこちなく眉を下げて微笑んだ)
我ながら、よくできているな。

(まずはそう、余裕をもって勝ち誇ってみる。
 自分が用意した完璧なカードが、相手の予期しない最も適切なタイミングで公開された時の、その混乱の混じる表情の色合いといったら……どれもこれも愉快でならない。
 特にそれが自分のセンスによって選び抜かれた最良の一撃であるなら猶更。
 勝ち得るという行為に宿る愉悦はここに宿ると言っても間違いない。

 だが、このホテルで一番の麦酒の肴に相応しいのは『それ』ではない。)


気に入ったか?

(言葉選びに難儀した時の、特有の癖を見せる美少女に対し、敢えてわかり切ったことを聞いてやった。やはり勝利宣言とは、相手に価値勝ちを認めさせてこそである。
 「参った」、その言葉があるべきだ。)
(与えられた服装を気に入ったかと言えばもちろんだ。
 ともすれば白ばかりで退屈になりそうなデザインなのに絶妙に差し込まれる青い生地、細い肩を強調する様なパフスリーブのシルエット……。
 細部にまでこだわり抜いて作られた……自分が着る事を想定して作られた衣服。
 大人びた淑女然としたデザインは少しばかり自分の好みとは外れていたが、それを差し引いたとしても何ら問題なく「手持ちの服で一番気に入っている」と言えるだろう。

 だが、それは服飾のセンスによるものだけではない。

 単純に、貴方が自分の為に選び抜いて与えたものだからだ。
 でも、きっとそれを告げてしまえば貴方は不機嫌になるだろうから)

だいすき

(スカートの裾をつまんで翻して見せる。
 光を受けて輝く生地が、繊細な刺繍が、揺れるスカートのシルエットが、そうだとでもいうように)
(ふつ、と口角が持ち上がって――

  ―――挑発的で、獰猛な、あの残忍な微笑。
     底意地の悪い歓喜を牙に、狡猾がゆえの悦を瞳孔に。
     冷たい空気を物ともせずにギラと黄金に濡れて微笑う。――

 ――そのまま先の言葉を、ビールと一緒に胃袋に流し込み、収めた。
 爛れるような弾ける熱に臓腑が一度、揺れる。)



よし。
(改めて総評を『よし』と定める。)

それくらいの物の良さはわかるようになったということだろう。
ボクが準備したものなのだから理解されて当然ではあるが。
(明るい冬の夜空を映したかのような瞳が大きく見開かれる。
 それを見るのは二度目だった。

 初めて見たその時、自分と世界を隔てるすりガラスは壊れてしまった。
 姦しい乱雑で暴力的な原色の絵の具がそこら中に塗りたくられた世界に否応なく立たされてしまったのだ。
 それ以来ずっと、誰かの絵の具に汚れて染まって、時々変質の恐ろしさに震えるほどだったのに。

 『よし』と

 定められると喜んでしまうのだ。
 貴方が私に求めるような、私が自分に求めるような自立心ではないのに)

 ……こんないいもの一体いつ用意したんだ。
 サイズも既製品みたいな遊びが無いくらいピッタリだし。
数カ月程前からじっくりと、な。
一点物の、それも限りなく上等のものともなれば、たった一着を仕上げるのにも途方もない時間がかかるものだぞ? なんならあと数カ月辛抱してやってもよかったんだが……上等が過ぎると、お前も使いあぐねるだろ。

(悠々とソファに腰を落ち着け、また双眸を細くあなたを睨む。
 その顔つきはいつものような愛想の少ない、ともすれば不機嫌にも見えるソレに戻っていたが、声音には微かな喜色が乗っている。)
それは……そうだが。

(格式の高い礼服なんて着る機会と言うもの事体そうない筈だ。
 衣服と場面の関連性について少し学び始めただけがその位は分かる。
 かといって、この服装が日常使いに適しているかと言えばそうではない。
 少なくとも自分自身はこの服装に見合うほど格調高い上品な生活を営んでいる訳ではない。それは貴方も承知の上だろう。
 この服に見合う程度の場面と言えば、偶に貴方と行く観劇などの上等な場に行く時くらいで……)

入念に下準備をして罠にかけるなんて厄介だ。厄介だぞ。

(それはつまり、連れて行くから準備をしろという意味なのか。

 厄介だと繰り返す唇の端は震えながらほころんでいる)

こんなのかかるに決まってるじゃないか。ほんとに、全然心の準備なんて出来てなかったのに。
させなかったからな。
厄介含めて誉め言葉として受け取っておく。

どちらかといえば、夜更かしに付き合う気を見せたお前のが限りなく厄介極まりなかったがな。気の昂ったガキじゃあるまいし………
………なんだお前その顔。口元緩み過ぎてんぞ。
そういう絶妙に不格好な表情もできるようになったのかよ。
(両手を口元に当てて隠した。戻せる気がしなかったので)

……お前に出来るようにさせられたんだぞ。
だってもう、どうやって喜んでいいのか分からないじゃないか。
他の格好ならお前を抱きしめて千回転位してるもん。
なのにこんな格好じゃ、そんな事出来ないじゃないか。ほんとに、ほんとに厄介だな!
こういう淑女然とした格好をしてたら、少しはそんなフリをしてみたくなるだろ。
……わからないか?
ふーん………?
(興味深い兆候である。
 着ているものを大事にしたいではなく、着ているものに相応しい振る舞いをしてみたい、という意思を自分から発信し、実際にそのように振舞うよう努めている。いままでにも制服以外の服を着せて連れまわした事はあったが、ここまで素行に影響した例はなかっただろう。)

じゃあやってみるか、淑女のフリ。
中央幻想の初歩的な作法程度だが。
教えてくれるの?

(見た目相応の少女めいて瞳が煌めいた)

やってみたい。どんなの?マノン・レスコーみたいな動き?
遠からず近からず、だ。
イメージとしてはバレエを思い浮かべるのが手っ取り早いだろうな。
あれは動作の一部に貴族的仕草を取り入れているから、フリ程度なら参考にはなる。

高い位置から見下ろすように胸を反らす立ち方で、顔を上げて遠方に視線を送るようにしてみろ。
ばれえ……。
(見たことないってツラをした)

……ん。

(言われるがままに胸を張り、顔を上げて見せる。
 しかし、顔の角度に難儀している様子で何度か顎の高さを調整しては、これでいい?と確認するように貴方に顔を向ける)
立ち居振る舞いというのは衣服と同様、その人物の身分を示しうる。
なぜならその階級の動作・仕草とは生活習慣に根付くものでもあるからだ。

その姿勢を維持したまま、幻想の派手なドレスを着た貴族を思い浮かべろ。
……思い浮かべたな?

今胸を反らしているのは、そいつらがドレスの下にコルセットを着て胴を絞めているからだ。それに……ドレスの腰回りだけやたらデカいのがあったろう?あれは「バッスル」という骨組みを腰にとりつけて、その上からドレスを被せている。そんなものをつけていれば自然とそのような姿勢にならざるを得なくなる。
視線が高い位置にあるのはハイヒールを履いているからだ。やつらは長時間労働・重労働、長距離の移動や長時間の立ち仕事を行わないし、整備されない道を歩かないから「そういう衣装」を着る。故に「そういう仕草」になる。

つまり、その姿勢は枷をつけているときの姿勢だ。
今着ている服がもう少し重く、胴周りが絞られているイメージでもう一度だ。
(説明されて、ぼんやりとしていたイメージが明確になる。
 体のどこに圧をかけたらどう動くかというのは自分の専門分野であるからだ。

 コルセットの圧がどれほどのものかは分からないが、そこを締め上げて背筋が伸びるのなら気を付けるべきは背筋ではなく腹筋。
 さらにハイヒールでかかとが持ち上げられている事も想定して……)

こう?
(体術を専門として扱うからだろう、形にするのが上手い。
 加えて想像力もそれなりにある……いままでこれを死蔵させてきたのかと考えると呆れてくる。)

実際のヒールではないから多少歪な形になるがそれでいい。
それが「立つ」の基本形、正しく「立ち居」の振る舞いだ。

次に歩き方だ。
先も言った通り、奴らは悪路を歩くことを想定していないし、靴は踵が高いことが前提だ。
膝を曲げずに爪先を前へ、接地も爪先から入るように歩け。
当然足元が見えづらいわけだから移動や動作はゆっくりとしたものになる。
腕を大きく振るとバランスが崩れるから動作もコンパクトに。
(言われるままに膝を曲げないようにして爪先から一歩二歩。
 ぎこちない足取りで、動きそのものの思惑を確かめるように、ゆっくりと動く)

……なんとなくわかって来た。
この姿勢の時の『楽な歩き方』なんだな。

(そもそもハイヒールはバランスが悪い。
 膝を曲げて足を高く上げれば容易く体勢を崩してしまうので、自然とすり足じみた移動になってくる。

 そう自分の中で一つの納得を得れば、歩き方にもぎこちなさが消えていく)
そうだ。よくできている。
何度も言うが「その階級の動作・仕草とは生活習慣に根付くもの」だ。どこに住み、何を着て、どう生活しているか……そのイメージがあれば「フリ」を完成させる分には問題ない。

最後に手の動きだ。
掌の動作には「自分から相手に伝えたいこと」「相手にはこう見られたい」という意識が殊更に強く宿る。身振り手振りが時に言葉のように雄弁となるのは、手指の動きだけで印象と表現を制することができるからだ。
貴族は社交界に出る都合「自分を美しく見せたい」「好印象を抱かせたい」という意思が掌に宿る。だから、指先を細長く美しく見えるように、親指を広げないような所作を心掛ける。内側に折り込んで見えないように隠してもいい。
ティーカップの正しい持ち方が「持ち手に指を通さずに持つ」のは、その方が親指が隠れて手指が細く見えるからだ。テーブルマナーの基礎たる食器の持ち方についてもこれは同様で、彼らの美意識を表現しやすいようになっている。
こっから挨拶とか詳しい礼儀作法とかは……
そこまでやるとフリの域を超えるから今はいいだろ。
その服に合った貞淑な女を演出するには十分だ。
ボクはペテン師であって貴族でもマナー講師でもねえし、もっと詳しく語るには復習が要るしな。
(手の動き、と言われて自分の掌を眺めてみる。
 指を広げた時よりも指を閉じていた時の方が確かに長く見える……錯視に過ぎないが「そう思わせる事」に意味があるのならば無駄な事ではないだろう)

我々美少女も他の学園部族と交流する時、手の動きは重要になる……のでなんとなくわかる。
「敵意がない」という思惑を示すのが最も重要になるので、人前で拳を握らないというのが最も重要視されていたな。
後は口で喧嘩を売らないだとか。
……本当?これだけで外を歩いても大丈夫?
貴族の振り、ではなく。
淑女のように振舞うなら問題はないな。

なんだったら教わった通りそのままではなく、多少形を崩してもいい。
先に教えた振る舞いは、その格好やお前の表現したいものに対して「固すぎる」可能性もまあある。その所作をどう追求するかと言えば……それこそ、姿見を通して試行錯誤と研究を繰り返すとか、もっと勉強するとかそういう話になる。
一流のバレリーナは、上流階級においては歩き方・所作の講師として招かれることも多いと聞く。言葉を介さず、動作のみで表現を行うことと、体術のプロフェッショナルだからな。
興味があれば見にいってもいいんじゃないか?
……これからどうしたいとか。もっと動きを洗練させたいとかそういうのはまだ分からない。
バレエも今は北では見れそうにないから他の国で探さなくちゃだし……。

それより、今日は何処に行く?
この格好のまま歩けるところに行く?
(こちらが思っている以上にその格好を気に入っているらしい。
 ならば予定を変えて、その格好をそれなりに楽しめるプランに差し替えてやるだろうか。
 懐の手帳を捲り、間に挟んだ小さな地図を広げる。)


……朝食を終えたら、その衣装に合う服飾品を探しに店でも巡るか?
その淑女っぷりがどれくらい通用するか、早速試してみてもいいだろ。

上等とは言い難いが、それなりに見れるバレエが昼頃だな。
そこからは適当に時間をつぶして、アフタヌーン・ティーで締め括る……こんなもんか?
(広げられた地図を覗き込み、貴方の言葉を反芻する。
 自分の中の淑女像というものはまだぼんやりとして定まっていないが……)

良いと思う!

(淑女っぽい一日というイメージにぴったり当てはまったのだろう。
 保とうとしている『淑女のフリ』が剥がれて、贈り物を受け取った時の熱情そのままの勢いで頷いた)

……セレマ、もう朝ごはん食べられる?

(出発するのが待ちきれないが、ホットビールで体を温めている貴方の事も気づかわしいらしい。
 遠回りな『早くいこう』が口からこぼれる)
急かすな。もう動ける。
(ホットビールのカップを空にすると、外出用のコートを上に羽織る。
 部屋の入り口を目指す足の速度で、入れ替わった今後の予定をどのようにして『最良』まで仕上げるか……またどれほど実のある結果とするかに、思考を割いていく。

 やはりアルコールはいい。寝起きの思考にはよい油になってくれる。)
(ぱちり、と目をしばたたかせて「よかった」と小さくこぼす。
 持ってきたコートは今の服装に合っていないが……それはこれから選べばいいのだ。
 中の服が見えないようにぴっちりと着こんで部屋を出ようとする貴方を追いかけた)

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