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造花の館

安くはない。決して。

作業終わり、朝一番のホットビールを傾けながら、目の前の結果を精査する。

造形はストレートのシルエット。寸法はあれの体躯にしっかり合わせてあるので、丈が余ることも袖が短いという事もない。慎ましやかボディラインはパフによって淑女然とした柔らかさを演出し、少女性以上の魅力を引き出すことに成功している。やはりランタンにして正解である。
コルセットで締める必要もない良くできた造形は、悪く言えば引き締め甲斐のない『余白』のない造形。余白がないが故にバッスルとも噛み合いが悪く、シルエットが味気のない砂時計型になってしまうのを避けるために、腰に付けたフリルは悪くない仕事をしている。
早朝の窓から抜け落ちてくる、まだ冷たい硝子の温度のまま差し込む光を受ければ、鈍く暖かなオフホワイトに。陽を受け止めない陰の側は、岸辺から沖へと沈もうとする白い砂浜の鮮やかさで、仄かに色合いを変えていく軌跡だ。より深く目を凝らせば、僅かな角度の違いで表情を変えるレース模様が、宝石のカットのように静かに煌めく様は、主張の程度も相まって「最適」だろう。

姿見に映るその容貌は、千歩譲ってその奥に映るボクの次程度にはよくできていると認めてやってもいい。想定を超えないが期待以上の結果……総評としては『よし』と言ってもいい。

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(明るい冬の夜空を映したかのような瞳が大きく見開かれる。
 それを見るのは二度目だった。

 初めて見たその時、自分と世界を隔てるすりガラスは壊れてしまった。
 姦しい乱雑で暴力的な原色の絵の具がそこら中に塗りたくられた世界に否応なく立たされてしまったのだ。
 それ以来ずっと、誰かの絵の具に汚れて染まって、時々変質の恐ろしさに震えるほどだったのに。

 『よし』と

 定められると喜んでしまうのだ。
 貴方が私に求めるような、私が自分に求めるような自立心ではないのに)

 ……こんないいもの一体いつ用意したんだ。
 サイズも既製品みたいな遊びが無いくらいピッタリだし。

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