PandoraPartyProject

ギルドスレッド

造花の館

閉架式書庫

セレマの図書室は造花の館のなかでも大きな割合を占めている。
入ってすぐ目につくのは、一面に並んだ自動スタックランナーの列だ。
練達の技術によって自動化された図書室は、常に書物にとって最適な温度と湿度を保ち続けており、微かに香るミントの香りで満たされている。

セレマ自身が使うためのテーブルもソファもあるので、ここで快適に本を読むこともできるだろう。


●主要な蔵書
・混沌各地で集めた物語
・異世界の戯曲や脚本多数
・歴史書ならびに民俗学書
・魔術関連の一般的学術書
・詩集、画集、楽譜などの芸能に関する本

●やってはいけないこと
・天秤を載せた丸テーブル席に座ってはならない
・意識がハッキリしないならここにいてはならない
・奥にある開かずの扉の先にあるものを気にしてはならない
・知らない声が聞こえても返事をしてはならない

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(書物というものは埃と古インクのにおいがするものであるが、ここではどうやら違うらしい。
 購入した額縁……屋敷の室礼が分からなかったので、シンプルなものばかりだ……を主に預け、通された書庫で最初に思ったのはそれだった。
 視線を巡らせて香りの出所を暫く探していたが、すぐに諦めて書架へと向かう)

(並びが分からないので手前から順番にタイトルを眺めていく、知っているものもあるが、知らないものの方が多い)

 ……美少年、オススメある?

(速攻で家主に頼りに行った)
知らねぇよ。
とりあえずビール感覚で勧められる本に覚え何ざねぇよ。
むしろなにを期待してここに来たんだよ。

(華奢な腕で抱いていた額縁を丸テーブル席に預けながら、面倒そうに返すだけである。
 実際のところ、ここには価値のあるものしか置いていないので何れも進めるに値するものなのだが、こいつが言っていることはそういう事ではない。もっと大前提の話である。)
暇つぶし。

(0.01秒以下の返しであった)

それに当たっては……。
……原作者が異世界に居るタイプの本はいくつか読んだから、混沌原作の話がよいな。
超大作は読むのに時間がかかるから一、二時間で読み終わるくらいのやつがいい。
混沌の歴史は詳しくないから前提知識がないと読めない奴は避けたい。
内容はに関しては悲劇はこの前しこたま読んだのでそれ以外。

……こんなとこか。なんかオススメある?
(張り倒すぞ。
 そう口にするのを堪える自分のなんと寛大なことだろうか。)

張り倒すぞテメェ。
(こういう正直さは美徳である。間違いない。寛大さよりも尊ばれる宝である。)

童話集でも読んでろ。
挿絵付きでお前にもちょうどいいだろうよ。
これできちんと答えてくれるから美少年よな。

(手に入るのならば過程はさほど気にしないのが美少女である。
 さて、童話集は何処にあろうかと書架に視線を巡らせて――)
(不意に悪いものが自分に触れた気がした。
 奇妙に慣れ親しんだ不吉が一種の強制力を持って視線を動かす。
 今いる場所から右に2つ、下から3段目、左隅3番。
 童話集には似ても似つかぬそれを選び取り、抜き取った)

(それは旅人が自身の世界について書いた書物であると、家主ならわかるだろう。
 革張りの装丁でタイトルはない。
 内容は、そう、美少女と呼ばれる種族について。
 種族に伝わる説話がいくつか書いてある……偶に金に困った旅人が出すようなそういうものだ。それにしては装丁がいいが)
……開祖の文字。

(無言のままそれを開いた美少女はそう言った)
かい……………なんだって?
そっちには稀覯本の類は置いてなかったと思うが。
白百合清楚殺戮拳の開祖の文字だと、思う。

(紙面から顔を上げないままに答えた。
 指先が素早くページを繰る)

……美少年、これはここにあるべきものか?
(なるほど。よくはわからない。
 わかりはしないが、どうやらその本を書いたのが美少女の先祖であるらしい。
 よくよく見てみればその本というのは美少女(広義ではない)に関して書き記されたなんとも胡乱な本だった。
 背景は知らないが信憑性が増したとみるべきだろう。)


…そいつは世間的には好事家が欲しがる以上の価値はないし。
そいつを手元に置くために、相応の対価を用意し差し出したのはボクだ。
そうだな「あるべきかどうか」と問われれば。
所有する権利はボクにある以上はここにあるべきものじゃないのか。
そっちではなくて、収納場所の事だが……その反応を見るにここにあってよいものなのであろうな。

(そこまで言ってやっと本から顔を上げた。
 不可解である、という態度を隠さずに眉を寄せ口元を歪めている)

……お前にとっては一つ朗報かもしれん。
これは間違いなく稀覯本の類であるぞ。人皮装丁本である。
内容は道場の語録レベルの内容であるが。
………人皮装丁?これが?
話には聞いたことはあるが、そうか。
中身にしか興味がなかったからな。

(なるほど。そうであるなら多少なりとも価値のある本として見てもいい。)

だがな、美少女。
それでもソイツは混沌内において「好事家向け」の範疇で片づけられる代物には違いないぜ。
内容も内容だからな。そんな深刻ぶるほどの物でもないだろ。
ウチの開祖、自分の皮で装丁する趣味があるからな。
実家にも残っておったので間違いあるまい。

(息を吐いた。力が入りっぱなしの眉間を軽く揉む)

うむ、内容自体は全然大したことないな。
それ故に大したことない内容の本に自分の皮で装丁するのかという疑問が生まれる。
実家に残っていた書籍は奥義書の類であったが……。
否、本当に冗談でなく自分の皮で装丁する趣味があったならこういう事もあるのやもしれぬが……。
急に猟奇に満ちた世界観を展開するのやめろよ………ついていけねえだろ。
というかなに…自分の皮を…趣味で……………?
自分の切った頭髪で腕輪を編むくらいの気軽さじゃん。
美少女の中でも異常だからな?
敵の皮を剥ぐならまだしも自分の皮を剥いで何か作るとか他に聞いたことないからな?

……まぁ、なんというか狂人であったとは言われておる。
直筆の書物がいくらか残っておるがほぼほぼ妄言みたいな技術書とか理論書であるし、開祖とは言え実際の組織運営は弟子がしたと伝わっておるし。
確実に話が通じるような輩とは思えぬ感じの逸話ばかりで……なんか虚しくなってきたな。
多少は薄まってんだな、その血。
良かったな。

ともあれ。
それはお前の遠い婆さんが、元の世界で書いたものが流れ着いたとか。
そういうものだってことだろ。
奇縁ではあるが過ぎた話じゃないか。
虚しくなるなら気にしなきゃいいんだ。
……暗号でも仕込まれているのではないかと思うたがそれもないな。
奇縁と片付けるのが賢しいのであろうが……。

なぁ、何千年も生きてて今の吾よりも強い美少女が居たとしたら契約する?
強くて御しやすくて話が通じて、相手が求めるものに対してボクが差し出せるものが釣りあうようなら、一考の余地はあると考えるだろうな。
あるいは明確な弱点を導き出せるなら、そこから支配する道筋をたどる方がコストパフォーマンス的にも最適だろう…………が、それは判断材料が十分に出揃っている場合の話だ。
現状の手札じゃ、ソイツが求めているであろうものに対する、ほんのとっかかりともいえない程度の可能性しか見えてこないからな。
そうか。
咲花・香乃子。それが吾が開祖の名だ。
伝承でしか知らぬが、神代から生きてつい千年ほど前まで実在したと言われている美少女、彷す百合。
まぁ機会があれば挑戦してみるがいい。
開祖はこちら側に流れ着いておる。……確証はないがそういう予感がする。
予感、ね。
ボクとしてはソイツが生きていたとしても、この混沌で果たして使い物になるレベルの実力であるかどうか………非常に怪しいところではあるがね。
こっちに来たらどいつもこいつもレベル1だからな。

で、実際予感が当たったらお前はどうするよ。
開祖が何もわからなくなるほど狂っていれば、なにもしない。無害故。

何に狂っているか覚えていれば……そうさなぁ。
美少年よ。
お前は動物を繁殖させていて、極めて珍しい形質の個体を産出するのが目的だとする。
それで何年にもわたる執念の末に、目的の形質が出来たら当然最初の一匹は繁殖用に回して同じ形質を増やそうとするよな?
馬主の発想だな。
言ってることはわからんでもない。
吾の立場としては繁殖馬入りを馬主不在で逃れたという所でな。

出会いたくない相手よ。
どうするかと言われても、どうしていいのか分からん。
立場としては彼方が上なので、礼を尽くす、と言うのが筋であろうが……。
……そうか?
ソイツが自分の皮で作った装丁ってだけで、大分傾向は見えてくるもんだろう。

(そう言いながら、棚から本を数冊抜き取る。
 どれも富裕層向けに作られたような金の刺繍が目立つような本ばかり。
 中を開けば写実的タッチで描かれた絵と、これ見よがしに敷き詰められた修飾文字。
 なんのことはない。やや値が張る程度の絵本に過ぎないが、少なくともこの来客にはそれくらいでいいだろう。)
ふうん?
お前はどう感じる。自身の皮で本の装丁を作る様な輩を。

(持っていた本を閉じて表面を撫でた。
 薄く白い色をして見た目だけなら羊の皮で作られた装丁に似ている様にみえるが、吸いつくような感触が指に残る。
 疼痛のような正体不明の恐れが指先から広がる様な気配がして、逃れるように視線を其方にやった)
そうか。わからないか。

いいか美少女。
「狂人」と「衝動的人物」というのは根本から別ものだ。
狂人というものは常軌を逸するような解決策を選び取るだけで、その思考回路と導出方法そのものは極めて合理的かつ理に適っているものだ。

では今回はその開祖とやらが「狂人」であると仮定しよう。
ボクがお前を観察する限りでも、お前が情緒的には人間の物差しで測れる範疇であることがわかったから、美少女という種族単位に対してもそういう精神構造だと仮定する。
ソイツがどんな逸話を持っているか、なんてボクは知らないが……お前が伝え聞かされた数々のイカレの、その根本には至極まっとうで誰にでも理解できるものがあるとみるべきだろう。
そうすると、狂人美少女こと開祖は、理由そのものは誰にでも理解できる範囲で、なにがしかの必要に駆られた結果、それが効率的によいと判断したから、自分の皮で本を作ったことになる。

ここで質問しようか。
お前がその開祖だったら、どういう理由があればそんなことをする?

(3冊、4冊、中身に目を通してはある本は腕の中へ、ある本は棚へ戻す。
 本を選別しながら片手間に語っていた。まるで雑談のように。
 事実、自分自身とは全く関係のない人物の話なのだから、この人物にとっては雑談なのだろう。)
元居た世界の基準で言うなら機密の為だ。
自身の皮と血を混ぜた墨を用いれば、血族以外には読めない書物が出来上がる。
あとは単純に強靭であるというのもあるが、身近にある無限に使えて優秀な触媒の一つが皮だったのであろう。

……こちら側の基準で考えると分からない。
手慰みに書いたものに、気が向いたから人皮装丁にする、と考えるのは違和感がある。
だが、そうだな。この訳の分からなさが分かるのは同門の者くらいだ。
そして、混沌に流された自分の駒を回収したいと考えているのなら……撒き餌か?

(実際の所、会話が続いていればなんでも良かったのだろう。
 すべては仮定の話に過ぎない。一時的な不安感を緩和するための処方だ。

 頭にはくるくる見た事もない女の影が回っていたが、華奢な腕の中に本が溜まっていくのを見とがめれば躊躇いがちに件の人皮装丁本を元の位置に戻した。
 美少年の腕は美少女と違って見た目通りなので。
 そして溜まっていっている本は自分の為に選んでもらったものなので。
 本をよこせと手を差しだして、本置き場になりに行く)
暗号も道標も記載しない本が撒き餌……ないことはないが、考えにくいな。
なによりその考え方だと先へと繋がらない。

(『笑う竪琴』『騎士スウィンの悲しい物語』『花嫁泥棒』『金色の絵の具』など、あまり見かけないような短編を預けた。)

ボクならそいつの目的はもっと原始的感覚に基づいたものだと考えるね。
知恵ある生物としての生存本能よりももっと深いうちにある、泥臭い欲望…自己保存願望だ。
自分の生きた証を残したい。種を。技術を。記録を。知識を。あるいは自分そのものを。
それがどういう形質をもっているかは問わず、「自分がある」ことを示す貪欲さ故だと、ね。

例えばその本。
装丁というのは本来は書物そのものを守るために施されるものだ。
なるほど。この武骨で飾り気のない装丁は、あくまでその目的のためだけに施されたものに違いない。
じゃあどうして人皮だ? 同じ皮なら鹿……あるいは熊や獅子でもいい。
もっと丈夫で使いようのある皮なんていくらでもあるはずだ。試し用もあるはずだ。
なんだったら木でブックカバーを作ることも不可能じゃあないだろう。
本を守るだけなら鉄の箱にでも入れればいい。

だが、そうはしなかった。
じゃあ合理的に考えて、本を守るために己自身の人皮を使わなければならない理由は?
なんのことはない。そいつには傲慢さに裏付けられた確信があったのさ。
「最も強く価値ある生き物の皮で作った装丁ならば、誰にも傷つけられることはないだろう」という確信がな。

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