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シナリオ詳細

<黄昏崩壊>黄昏を這いずる影竜ども

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 『冠位暴食』ベルゼー・グラトニオス。
 覇竜と浅からぬ関係にある彼は現在、ヘスペリデスと呼ばれる黄昏の似合う最果ての地にいるらしい。
 そこは、人の集落を模した竜族の里。
 しばらく、竜種達もこの地へと踏み込んだイレギュラーズは、女神の欠片……『巨竜フリアノン』の力の残滓を集めることとなる。
 ベルゼーの権能の規模を僅かに抑えることができるという女神の欠片を集めるイレギュラーズの活動に、竜種も目をつむっていたのだが……。
 ベルゼーの権能が暴走するのももう間近。
 状況を受け、竜種達も様々な思惑を抱いてはいたが、多くはイレギュラーズへと警告を発していた。
「この地を去れと言われても……」
「覇竜出身のわたくし達に去るところなんて……」
 亜竜種少女ペア、カレル・タルヴィティエ(p3n000306)、シェイン・ラーティカイネン(p3n000307)の2人は表情をこわばらせる。
 竜種達の主張しているのは、ヘスペリデスからの退去。
 ただ、2人にとっては自分達が竜種達から否定されたのが、ベルゼーに……里おじさまに否定されたような感覚だったのだ。
 ただ、ベルゼーを救いたいという気持ちは2人も強い。
 だからこそ、はいそうですかと彼女達も、イレギュラーズも引き下がるわけにはいかない。
 覇竜がなくなる可能性だけでなく、他国へと影響が及ぶ恐れもあるのだ。
「……今はやれることをやるだけだ」
 恋屍・愛無(p3p007296)も黄金のリンゴを握りしめ、胸の内を語る。
 この場のメンバー達の決意を耳にしたカレル、シェインは笑顔を浮かべて。
「絶対、救ってみせる」
「里おじさまをわたくし達の手で……」
 今はいち早く、ベルゼーの元へ。
 イレギュラーズ達も確かめあうように頷き、ヘスペリデスを目指す。


 ベルゼーの元へと向かうべく、ヘスペリデスへと辿り着いたイレギュラーズ。
 風光明媚な空間であったヘスペリデスは現状、『何かに引付けられるように』崩れた岩などが宙を舞っている。
 以前、この地を訪れたメンバーは、あまりの変化に驚き、戸惑う。
 これも、ベルゼーの権能が暴走した影響なのだろうが、それでもまだ破壊の予兆というから恐ろしい。
 荒れ狂う空の下、あちらこちらで竜種が立ちはだかり、イレギュラーズのチームと交戦が始まっていたようだが。
「やはり来たか」
 メンバー達の前に現れたのは、大きなヒルのような姿をした明星種『アリオス』ラードン。
 それだけでなく、傍には美男子の容姿をした人影も。
「また貴様らか」
 将星種『レグルス』ティフォンは呆れるような所作で頭を振る。
 2人はピュニシオンの森で遭遇した。
 黄金のリンゴを守護するラードンは森の通り道で。
 ティフォンは森の出口付近でそのリンゴを食している時とヘスペリデスの花畑で女神の欠片を探す時の2回出会った。
 2人とも、イレギュラーズに対しては尊大な態度を崩さない。
 それは、自分達が人間よりも上位に立つ存在だと疑っていないからだろう。
「戦うしかないのかな」
「気は進まないけれど……」
 戦うべきは竜種でないとカレルやシェインも考えている。
 だが……。
 メンバー達が思い悩む中、周囲に現れたのは、いくつかの黒い影だった。
 ティフォンは現れたそれらに舌打ちする。
「ラードン。この場は任せる」
「御意」
 ティフォンはどうやら他の状況に備えるようで、ラードンにこの影の掃討を任せるつもりのようだ。
 そこで、ティフォンが何かを思いついたようで。
「貴様らも女神の欠片が欲しいのだろう?」
 以前、イレギュラーズはティフォンにその所在を尋ねたことがあった。
 あの時は勝手に探せと言わんばかりの態度だったが……。
「レムレース・ドラゴン……まがい物の竜だ」
 崩壊しつつあるヘスペリデスにおいて、『女神の欠片』が過剰反応したことで、現れたのがこの影の竜だとティフォンは言う。
 ティフォンが言うように、所詮まがい物。その力は竜種とは比べるまでもない。
 グルルルル……!
 四つん這いになった黒い竜は5体。
 そのうちの2体はラードンが受け持つようだ。
「ベルゼーを救うのだろう? この程度倒せぬようでは話にならんぞ」
 力を認めてくれてはいるのだろうが、共闘に足る相手とすらティフォンは思っていない。
 ここは彼の言うように、残るレムレース・ドラゴン3体を倒すべきだろう。
 倒せば、女神の欠片を回収できるかもしれないというのも大きい。
 グアオオオオオオ!!
 レムレース・ドラゴン3体と向かい合う形となるイレギュラーズは、その掃討に当たり始めるのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 <黄昏崩壊>のシナリオをお届けいたします。
 竜種達はベルゼーを思ってか、イレギュラーズを追い出す者が多数ですが、そうでないものも存在します。
 彼らと協力して女神の欠片の入手を願います。

●敵
〇『レムレース・ドラゴン』×3体
 全長3~4mほど。『黒い影で出来た竜』の様な見た目をしています。
 ヘスペリデスの崩壊に伴い『女神の欠片』が過剰反応して出現させた個体です。
 周辺の生物を激しく敵視し、全てヘスペリデスへの攻撃者と捉えているのか無差別に襲い掛かります。その対象は竜種も含むようです。
 ただ、形が竜に似ているだけで竜ではありませんし、実力も竜程ではありません。それでも、強敵ではありますので油断はされませんように。
 登場は5体ですが、うち2体は竜種ラードンが相手をしてくれます。
 鋭い爪での薙ぎ払い、尻尾叩きつけ、ブラックファイア、大咆哮と攻撃方法は多彩です。

●NPC
〇竜種
 今回は共同戦線を張りますが、基本自分達の相手すべき敵のみ相手します。

・将星種『レグルス』:ティフォン
 全長6.5mほど。人間の姿とった彼はかなりの美男子。
 本来の姿は、複数の蛇の尾を下半身として持ち、背には大きな翼、腕を大きな斧状に変化させることもできます。
 どうやら、レムレース・ドラゴンをラードンに任せるつもりのようです。

 なお、チームが半壊する状況であれば、ティフォンがイレギュラーズに力なしと判断。
 ヘスペリデスから追い出す為、とどめを刺しにきますので留意願います。

〇明星種『アリオス』:ラードン
 全長5mほど。巨大な黄色い体躯のヒルを思わせる見た目をしています。
 森を守護する若き竜。黄金のリンゴの守護者でもあります。
 人の姿こそとることができませんが、強力な力を有しています。
 彼のみで、レムレース・ドラゴン2体を相手にするようです。

〇亜竜種少女ペア
 以下2人、同行します。
 フリアノン出身、互いを友情以上の感情を抱くペア。
 イレギュラーズ側で共闘します。

・カレル・タルヴィティエ(p3n000306)
 18歳、赤いショートヘアの長剣使い女性。
 軽装鎧を纏い、剣舞で周りを魅了しながら相手を殲滅します。

・シェイン・ラーティカイネン(p3n000307)
 17歳、緑のロングヘアを揺らす術士の少女。
 樹でできた長い杖の先端にはめ込んだ魔力晶から炎や雷、治癒術を使います。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <黄昏崩壊>黄昏を這いずる影竜ども完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年06月29日 22時06分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

(サポートPC2人)参加者一覧(8人)

オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
鏡花の矛
バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)
老練老獪
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)
流星と並び立つ赤き備
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
恋屍・愛無(p3p007296)
愛を知らぬ者
ルクト・ナード(p3p007354)
蒼空の眼
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師

サポートNPC一覧(2人)

カレル・タルヴィティエ(p3n000306)
シェインの相方
シェイン・ラーティカイネン(p3n000307)
カレルの相方

リプレイ


 ヘスペリデスを訪れたイレギュラーズ。
 風光明媚だったはずの場所は、ベルゼーの権能が暴走する予兆もあってか、空は荒れ、地響きが起き、あちらこちらで落雷や竜巻が起きて破壊が進む。
「こんな風になってしまったら黄金のリンゴはどうなってしまうのかしら」
 『木漏れ日の優しさ』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)はピュニシオンの森でヒルの姿をした竜種、明星種『アリオス』ラードンが守っていた黄金のリンゴについて思い出す。
 いずれ、なくなってしまうという話もあり、オデットはラードンの為にも何とかしたいと語る。
 そのまま、メンバーは挨拶を交わしつつ軽く雑談する。
「と、ところでその……カレルさんとシェインさんは、とっても仲良しなのね!」
「えっ……」
「そ、そう?」
 『蒼剣の秘書』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)に呼び掛けられたカレル、シェインの2人は手を繋いだまま頬を赤らめる。
「ちょっとうらやましく思えちゃうわ」
「友達以上な感じ、素晴らしいのだわ……落ち着いたら二人のお話をゆっくり聞きたいのだわ……」
 オデットや華蓮の言葉に2人はますます顔を赤らめるが、それでも寄り添ったままなのが互いに依存し合っている関係を窺わせた。

 程なく、あちらこちらで竜種とイレギュラーズの交戦が始まり、こちらのチームもまた竜種……先の話のラードンと、それより格上の将星種『レグルス』ティフォンと対することとなる。
 一時は交戦するかと思われが、新たに襲い来る影竜『レムレース・ドラゴン』の排除へと彼らと当たることになる。
「竜との共同戦線……これは心躍る展開だわね」
 共にラードンが戦ってくれるという状況に、華蓮は気分を高揚させていた。
 ただ、この状況でも静観してこちらの品定めをしようとするティフォンに、数人がやや不満顔。
「この状況下でも力の確認、ね」
 『堕ちた死神』天之空・ミーナ(p3p005003)が尊大な態度をとり続けるティフォンへと言い返すと、『老兵の咆哮』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)が頭を振って。
「全く、試すだの追い出すだの、竜というのはどうにも堅っ苦しいもんだ」
「やれやれ、やっぱ一度戦って見せただけじゃダメか」
 『揺蕩う黒の禍つ鳥』エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)も小さく嘆息する。
「全く、竜は個体性能は高いのに不器用なものだぜ。そんな突き放し方で諦める連中じゃないって分かるだろ?」
 『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364が言うように、皆諦めるどころかやる気を漲らせて。
「そして、そういう連中には手を貸したくなる奴らも沢山いるってな!」
「……いいよ、これくらいやらなきゃ未来がないってんなら。見せてあげるさ。人の強さを、ね」
「アタシ等の力見たいってんなら何度でも見せてやるぜ!」
 ミーナ、エレンシアは早くも戦闘準備を整える。
「目的が何であれ現状をどうにかする気持ちが同じ向き向いてるんなら、ある程度は歩み寄れるんじゃねえかね」
 バクルドはそうティフォンに呼び掛けるが、相手は黙したまま。
「やれやれ。物騒なお茶会になりそうじゃないか。まったく」
 『ご馳走様でした』恋屍・愛無(p3p007296)も是非もないと悪態づきつつ、見知らぬ顔も視界に入れ、面倒事はサッサと片付けるに限ると敵に向かう。
 なんにせよ、女神の欠片が原因で現れた影竜によって、この地の生物を襲うのも忍びないとバクルドは襲い来る相手を新ためて見やる。
「ま、今は目の前の似非竜をぶちのめすことから考えんとな」
「……竜。竜、か」
 応じる『蒼空の眼』ルクト・ナード(p3p007354)は例え、この影竜『レムレース・ドラゴン』がまがい物の竜であれ、挑めることに嬉々として瞳を輝かせる。
 また、ルクトもまた共闘者の存在を気に掛けるも、情けない姿を晒さぬよう仕事に当たって。
「……狩りだ。行こう」
 近づいてくる影竜に、彼女もまた指輪に魔力を込めて挑みかかるのである。


 現れた影竜、レムレース・ドラゴンは5体。
 ただ、2体をラードンが請け負ってくれる為、イレギュラーズは実質3体を相手取ることに。
 メンバーは手早くA,B,Cの3班に分かれ、それぞれの影竜の討伐に当たる。
 A班はエレンシアにミーナ、カレル&シェインで影竜に挑む。
「カレルとシェインはお互いの連携、支援を最優先! こっちには余裕がある時でいい!」
「ありがとう」
「最善をつくすよ」
 2人は笑顔で答える手前で、低空飛行を始めたエレンシアが一気に影竜の1体へと迫り、あいさつ代わりに大太刀で邪道の極みとなる一閃を見舞う。
 続けてミーナが相手の虚を突くように懐へと潜り込み、死神の大鎌で終焉を刻み込もうとする。
 そこに加わる新たな2人のサポーター。
「以前の依頼でお世話になったからね。少しでもサポートさせてもらうよ!」
 『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)は亜竜種少女ペアを援護すべく参戦し、まださほど離れていない他2体の影竜も捉えて。
「飲み込め、泥よ。混沌揺蕩う星空の海よ」
 一見すればケイオスタイドにも見えるが、それは彼流にアレンジされた星空の泥。
「他者を助けることができそうだと聞きましたので」
 それに塗れた1体へと、『期待の新人』线(p3p011013)も「NMフリークス」に火を噴かせ、竜の目を狙撃する。
 さらにシェインの雷が追撃し、頭上から翼を羽ばたかせたカレルが強襲する。
 アオオオオォォォ……!
 影竜は全身からどす黒い血を流し、苛立ちげに吠えていた。

 オデット、バクルド、華蓮がB班となり、別の1体の撃破を目指す。
 倍近い体躯がありながらも素早い影竜の前に、華蓮が立ち塞がって鋭い爪を受け止める。
 華蓮はすぐ、他班の仲間達にも届くよう、稀久理媛神が贈る追い風を吹かせて。
「大丈夫、危険は一つも届かせないから。思うままにかましてやって欲しいのだわ!」
「任せとけ、存分にぶちかますさ」
 華蓮に応えるバクルド。
 別の影竜に挟まれてお陀仏という事態を避けたと考えていた彼は、仲間と一体の相手に集中できる状況をありがたく感じながらも、腕内部に搭載された鋼鉄球をばら撒く。
 初手なら、比較的敵の位置も近い。別班が引き付けることもあって二撃目は厳しいが、牽制には十分だろう。
 そして、オデットが接敵し、自身の魔力と周囲の光を集めて生み出した太陽をぶつけていく。
 ギシャアアアアアアアア!!
 ある者には暖かに感じる太陽だが、敵対者には恐ろしいまでのエネルギーを浴びせかける。影が固まったような体の竜には堪えたことだろう。

 C班となるのは、愛無、ルクト、錬だ。
 戦いに先んじて、錬は練達上位式で飛行種の式神を作製しておき、戦場を俯瞰させて伝達役にする。
「竜種相手に範囲攻撃対決するのは分が悪いからな!」
 実際、こちらを敵として見定めた影竜は長い尻尾を振り回し、こちらへと叩きつけてくる。
 いち早く察した愛無が統率力を働かせたことで、敵の初手をこらえた錬はすかさず式符より無数の木槍を鍛造して、その影竜の体を撃ち貫く。
 ルクトもまた尻尾の一打でむち打ちになりながらも、指輪を槍へと変えて逃がさじの殺人剣を浴びせかけ、多量の血を流させる。
「さて、競争といくか」
 向こうで交戦する蛭君ことラードンの支援に向かえばキレ散らかしそうだと嘆息する愛無は、竜モドキと揶揄する影竜に向かって体表上に形成された魔眼で凝視してそいつの気を引いていた。
「…………」
 ティフォンがこちらの力を見定めようとしていることもあり、無様な姿を晒すわけにもいかない。
 メンバーはそんなティフォンを意識しながらも、無差別に力を振るう影竜に更なる攻撃を繰り出す。


 ラードンはまるで苦戦することなく、影竜2体を相手にする。
 黒い炎に大音響の叫びと相手の猛攻をものともせず、ラードンは己の巨躯を活かして相手を押し潰そうとする。
 ただ、それは相手が2体であったから。
 これ以上増えれば、さすがの竜種も苦戦を余儀なくされていたことだろう。
 影竜は確かに紛い物の存在で間違いないが、その力は決して油断ならないものがある。
 A班はエレンシア、ミーナが中心となって攻め、最も多くのイレギュラーズが対していた。
 それだけに追い込むのも早く、影竜は苦しそうに息づき、一層大きく暴れる。
 サポートメンバー達が押さえつけにかかるが、それでもなお、影竜は振る払うように身をよじらせ、近づいていたミーナを鋭い爪で引き裂いてしまう。
 やや前のめりに攻めていたメンバー達だが、ミーナがパンドラを砕けば、すぐさまシェインやヨゾラがリカバリに当たる。
 だが、その間も、影竜は血を流して徐々に弱っている。
 それを注視するエレンシアは仲間の立て直しと好機を待つ。

 B班は華蓮が鉄壁の守りを見せ、影竜の攻撃を他2人へと通さない。
 祝詞で自己強化する華蓮は相手の攻撃を防ぎつつ、できる限り、他班も含めて追い風を起こして火力を高めようとしていた。
「負担かけて悪いわね、華蓮。さっさとやっつけるからそれまでよろしく!」
 1人、影竜の攻撃にさらされる華蓮を気遣うオデット。
 とにかくなるべく早く敵を撃破すべく、破滅の魔眼を開いて更なる陽光を全力で叩き込む。
「早いところケリつけて女神の欠片を手に入れるぞ」
 バクルドもフェイクを織り交ぜた斬撃で相手のミスを誘いつつ、つけた傷を深めていく。
 華蓮も仲間に気遣われてばかりでなく、折を見て攻めの一手に出て、神罰の一矢を撃ち込む。
「大したダメージではないかしら? そうだわね……初めの内はそう思ってくれても間違ってないのだわよ」
 ただ、魔力気力といった力を削げば、それだけで大技を潰せるかもしれない。
 加えて、身体の痺れ、行動ミスを誘うことができれば、それだけで自分達が攻める機会が増える。
 思うように暴れられず、その影竜は苦しんでいたようだ。
 少し離れ、C班。
 こちらは錬や愛無が引き付け、ルクトが距離をとりつつ交戦する形だ。
「……リスクは承知の上だ。何、空戦は専門だ。慣れているさ」
 一定範囲への攻撃を得意とする影竜に、ルクトは傷を増やし、体力を削ぐ。
(あの造形だとこの竜モドキは飛ばないのだろうか)
 見た目で判断するのは危険と見ていたルクトだが、実際、相手は本物の竜ではないものの、そこらの魔物や亜竜以上の力を持つとみられる。
 不意に繰り出される一撃は非常に強力で尻尾を叩きつけてくる。
 抑えていた錬や愛無を掻い潜って振るわれた尻尾に叩きつけられたルクトは、意識が薄れながらも強引に運命の力で引き戻す。
(やはり、モドキとはいえ、強力な相手に違いない)
 それを再確認した愛無はさらに魔眼を輝かせて強く気を引き、敵に鋭い爪で反撃を繰り出す。
(モーションを盗まねばな)
 錬もまた気が抜けぬ影竜を注視し、読みにくい動きを分析しつつ行動パターンを割り出す。
 いくら暴れようとも、個体ごとに動きの癖はあるものだ。
 火力担当となる錬はそれを見定め、高位術式による鍛造式符で五行……木、火、土、金、水の力を顕現させ、影竜の体を災厄によって苛んでいく。

 ラードンの食らいつきで影竜1体がすでに姿を消し、更なる1体も尾ではたかれてその存在が消えかけている。
 もはやそちらが負けることはないだろうとイレギュラーズは察しながらも、眼前の敵の撃破に専念する。
「「はああっ!」」
 同時に声を上げたカレルとシェインが繰り出すコンビネーション。
 剣戟によってついた傷を炎が焼き、焦げた臭いが漂う。
「狙い穿つなのです!」
 隙を見れば、线も砲弾を叩き込んでおり、一層影竜を追い込む。
 ヨゾラが星の破撃で殴りつけ、よろけた相手にミーナがここぞと紅の一撃を浴びせて相手を刹那恍惚とさせる。
「エレンシア、でかいの一発頼むよ!」
「はっ! 任せろミーナ! アタシは取り柄はそれしかないからな!」
 ここぞと攻撃集中し、エレンシアが出せる最大火力を発揮し、未完成とはいえ確殺自負の殺人剣を刻み込む。
 ついに、影竜の全身が爆ぜ飛び、小さな女神の欠片を残して消え去っていった。
「もうひと踏ん張りよ、頑張りましょ」
 それを認めたオデットは、自分達が相手にする1体も追い込んでいることを察する。
 こちらは盤石の構えで華蓮が影竜を抑え続ける。
 加えて、華蓮は他班も併せて仲間の支援も続けており、影の功労者と言えるだろう。
 無論、同班のバクルドやオデットが最もその恩恵を受けており、全力で影竜を討伐せんと攻撃を繰り返す。
 思ったよりも抵抗する影竜に、バクルドは再び鋼鉄球を撃ち込んで敵の動きを止め、三光梅舟による連撃で影竜の体深くまで刃を食い込ませる。
 グエアアアアアア!!
 苦悶の声を上げる相手に、オデットは幾度目かの陽光の恵みを叩き込む。
 何度も体を灼かれてその身を保っていた影竜だったが、それももはやできなくなり、全身が黒い砂のようになって虚空へと消し飛んでしまう。
 オデットはすぐ戦場を見回し、傷ついた仲間の支援へと回っていたようだ。
 そして、C班。
 最後まで交戦していた3人は、傍でラードンが2体目の影竜を屠っていたのを目にする。
(蛭君が死んだら林檎を守るモノが居なくなるし。何よりも僕は勝てると思った勝負で負けるのが死ぬほど嫌いだ)
 彼が2匹を抑えきるのが前提のミッションではあったが、竜の力は愛無の想像を上回っていたということだろう。
 ――勝利に勝るプライドなどありはしない。勝つ事。それが全てだ。
 プライドの高い愛無はラードンの勝利を認めながらも、自らも影竜に勝つべくべく、爪を薙ぎ払って応酬する。
 もう仲間に攻撃を通さじと、愛無は敵の爪も受け止めてしっかりと反撃を叩き込む。
 ルクトも駆けつけた仲間の癒しを受け、態勢を立て直す。
 一時は敵のペースになっていたが、終盤になってルクトは自分のペースを取り戻し、敵の頭上から攻め立てる。
「出し惜しみはナシだ、ありったけの弾丸とミサイルをくれてやろう」
 多連装ミサイルポッドを展開するルクト。
 一斉に発射される弾丸、ミサイルだが、それらの音はほとんど聞こえない。
 ルクトによってそれら全てにサイレンサーが施されており、無数の武装が影竜へと浴びせかかる。
 グエアアアアアア!!
 ルクトの苛烈なる爆撃に抑えつけられる形となる影竜だが、なおも両腕をもがくようにして抵抗する。
 錬は空に飛ばしていた式神による情報からこいつが最後の一体だと認め、別個体と協力するなどといった不測の事態の可能性が低いことを察する。
 攻撃の度、式符を操る錬だが、地殻を操作して鍛造した絡繰兵士を利用して戦場を支配して。
 満足に動けぬ敵の頭上から飛び掛かる錬。
 唸りを上げて回転する斧刃を振り下ろし、影竜の体を寸断する。
 声を上げられずに消え失せる影竜の跡から、女神の欠片と思しき結晶が現れ、地面へと落ちたのだった。


 全ての影竜が姿を消し、イレギュラーズは改めて共闘した竜種達へと話しかける。
「これでどう? 少しは認めてくれた?」
「……で、共闘に足るだけの実力か見れたのか?」
 ミーナやバクルドに、竜種達はそれぞれ、こんな反応を見せる。
「貴様達の力、しかと見届けた」
 ラードンは交戦の最中も、イレギュラーズの戦いぶりを見届けていたようだ。
「竜にとっちゃ微々たるものなのかどうかも、主観が強くてわからんもんだ」
 ただ、竜種らが認めようがいまいが、バクルドは仲間と勝手にやるだけだと主張する。
「ま、こんくらいはどってことねぇな。ティフォン、あんたと戦った時と比べりゃ大したことねぇ」
 そう告げたエレンシアは実際そうでもないが、こうでも言わないとかっこつかないと思いつつもそちらは口に出さない。
 また、エレンシアは語り掛ける間も、影竜を倒した残骸から女神の欠片を一つずつ回収していく。
 バクルドもどれだけ散らばっているのかと女神の欠片の回収が完全に行うのが難しい状況にぼやきつつも、改めてティフォンら竜種に呼び掛ける。
「それはそれとして、協力できるならそれに越したこたぁねえ」
「私達はただ弱いだけの人間じゃない。脅威に立ち向かう意志がある。……だから、隣人として。仲良くしようとまでは言わないから、協力しよう?」
 バクルドやミーナはできる限り歩み寄ろうとするが、ティフォンは変わらず一言。
「協力? 笑わせるな」
 あくまで、竜種の立場が上だと言わんばかりの態度。
 ただ、人間が力なき存在という認識が改まったのは間違いない。
「ほら、ラサの果物を使った菓子をやるから許してくれたまえ」
 世の中はらぶあんどぴーすだと、愛無は用意したアイスクリームやクレープを差し出しつつ要望する。
「ヒトより格上というならば、度量のでかさを見せてくれたまえ」
 それに、ティフォンは視線を投げかけつつ、ゆっくりと手に取る。
 人の手の入った甘味に、彼は大きく目を見張っていたようだ。
「これでどこまでうまくいくかはわからないけど、少なくとも黄金の林檎とかは守れるようにしたいわね?」
 全部をめちゃくちゃになんて許せないじゃないと、オデットは同意を求める。
「林檎も大好きだし、ね」
「…………」
「ティフォン殿……」
 ラードンもティフォンをたしなめようとする。
 今更、下手に出られないのも、竜種としてのプライドあってのことなのだろう。
 ともあれ、目につく女神の欠片を回収し、ミーナは毅然として2人に告げる。
「ベルゼーを止める。彼が愛した世界を壊させない為に」
 竜種達を尻目に、イレギュラーズは先へ……冠位魔種の元へと進んでいくのである。

成否

成功

MVP

華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは影竜を抑える傍ら、自班だけでなく他班の援護までこなした貴方へ。
 今回もご参加、ありがとうございました。

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