シナリオ詳細
<月だけが見ている>救済の理想、始まりの時
オープニング
●アストラ・アスター
――始まりは、間違いなく義憤。
深緑という、穏やかながら『脆い』国に対する、それだった。
深緑は確かに、安定した国家ではあった。だが、それも今だけにすぎない。やがて大樹もまた、幻想のように毒虫に食われ、内部から朽ち果てる可能性はある。
ゆえに――大局的見地から、より強固な、完成された国家として、深緑を作り上げなければならない。
そのためになら、暴力革命者の汚名をも被ろう。
そのために、アストラは幻想種民族解放戦線を作り上げ、エーニュへと合流した。
……いつからだろうか。
その理想に、陰りがさしたのは。
いや、陰り、というのは適切ではないかもしれない。
ただ、背負うものが増えてしまったのだ。
患者たち――解放戦線の部下たち。
彼らは様々な事情から、心を、体を、病んだものたちだ。
それが、医療の知識を持ち合わせていたアストラを頼って、すがってきた者たちだった。
その多くの者たちを、アストラは見捨てられなかった。
見捨てられなかったのだ。
だから、すこし、アストラの『理想』は変化していった。
少なくとも、彼らを救わなければならない。自分が、この手で。
それは傲慢であったかもしれないけれど――。
確かに、正しい思いだ。
「でも」
と、アストラの前のアストラが言う。
「私は、本当は誰を救いたかったのだ?」
と。
「うっわ、すごい熱」
と、ヴァニティアが言うので、アストラは意識を現実に引き戻した。
エーニュのアジトからしばし離れた、岩場の影である。
少し、意識がもうろうとしていたらしい。それもそうか。ペニンドに打ち込まれた烙印強化兵のアンプルは、完成品ほどに強力な効果を持ってはいなかったか、あるいはでたらめに撃ち込まれたせいで異常反応をもたらしたせいか、今のところ、アストラたちを『狂化』させる様子はない。
ただ……少しずつ、ジワリ、じわり、と自身の意識が陰りを見せるのは自覚していた。試しにそのあたりにあった小石をつかんでみれば、さほど力を入れなかったというのに、べキリとへし折れる感覚がいた。明らかに、異常な力を得ている。それが、変貌の一歩目であることは間違いなかった。
「大丈夫?」
「大丈夫だと思うか?」
「そこは強がりで大丈夫っていって、ボクが『大丈夫じゃないじゃん!』っていう所じゃない?」
ヴァニティアが、アストラの隣に腰を下ろした。
「私はいい。患者たちは」
「みんな同じ感じ」
ヴァニティアが、あたりを見回しながら言った。アストラの部下たちは、皆高熱にうなされたような様子を見せていた。一歩、何らかのきっかけがあれば、その意識を狂気へと手放すかもしれない。ただ、それでも耐えていられたのは、アストラへの信頼であったからか。
「第一に考えてほしいのは、患者たちのことだ……私は、後でいい」
「駄目だよそういうの、自分第一に考えないと」
ヴァニティアが言った。
「だって。患者さんはキミを頼りにしてるんでしょ? だったら、キミが一番に元気にならないとダメじゃない?」
「私は――」
そうつぶやいて、ふと空を見上げた。満月だ。この王国は、いつも月が照らしている。
自己・犠牲。それはなんと傲慢なことだろうか、とふと思った。なるほど、確かにそうだ。残されたもののことなど一切考えていないのだ。あるいは、自分はいい。そうやって満足で、勝手に死ぬのだから。そう考えれば、ヴァニティアの言うことも、なんとなく理解できるような気がして――しかし、笑った。
「私は、だいぶあくどいことをしてきたからな。これは罰だ。だが、患者は……許してやってほしいものだな」
「んー、精一杯誤れば許してくれるんじゃない? ボクも結構、やること裏目に出て迷惑かけたけど。
思いっきり謝ったら、まぁ、自宅謹慎くらいで許してもらえたよ!」
「謹慎してるお前が、何故王国にいるんだ。ここがお家か?」
「ん? でもほら、謹慎してるだけじゃ反省って示せないし、悪い奴がいるならボクがやらないとね! と思って!」
「お前組織にいちゃいけないタイプだぞ」
アストラが苦笑する。ふとヴァニティアの事情を聴いてみた時のことを思い出してみれば、彼女はラーガを吸血鬼をやっつける正義の集団だとだまされていたらしい。そこで、吸血鬼に対抗するために、リッセ(これは彼女らは知らない事実だが、烙印強化兵のアンプル量産のために必要だったようだ)を連れてくるように依頼されたということだった。アストラはこれを聞いた瞬間に、
「あんなクソ野郎を擬人化したような顔をした奴が正義の味方なものか」
と言ったので、ヴァニティアは、
「確かに、クソ野郎を擬人化したような顔だった……!」
と、頷いた話がある。
それはさておき、ヴァニティアはそういう、「単純明快フルスロットル女」であることは間違いないのだ。こういうのは往々にして無自覚な災害を招く。そして反省しない。無自覚愉快犯。見てる分には面白いが、友達にするとめんどくさい。アストラは数度の会話で、ヴァニティアの性質を見抜いていた。悪い奴ではないが、めんどくさい奴である。
「……お前を少しは見習った方がいいかもな」
「どういうこと?」
「その、能天気さだ。なるほど、確かに……私がやるべきことがなんなのか、改めて思い出した気がした」
アストラが笑う。
「私は、患者を救いたい。患者たちを助けらえるのは、『私だけなのだ』」
「そっか……」
ヴァニティアは、頷いた。
「ならボクも手伝おう! ボクに任せてくれれば百人力だからね!」
そういって、笑う。アストラも微笑して、
「百人力かは知らんが。付き合ってくれ。『最期』まで」
そう、言った。
●始まりの時
「こっちね」
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)が静かにそういう。砂漠には、どうしても移動の痕跡が強く残る。アストラがそれを隠そうとしたとしても。
「私にはお見通しよ、アストラ」
イーリンには、どうしてか、それが分かった。ある意味では、それはイーリンへの助けのサインなのかもしれない、と、そう思ってしまう。それが実際にそうなのかはさておき、イーリンがアストラの痕跡を見つけ、先へと進んでこれたのは確かだ。
「それに、情報通りなら、間違いなくヴァニティアのやつがいる」
アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)が頷いた。
「……あのバカ、ミスで紅血晶を大量流通させた件で、ギルドから謹慎食らってたんだぜ。
それが、なんか知らんけど脱走して、王国の方に行った――しかもラーガに接触して、エーニュのアジトに来た?
いや、訳が分からん。なんでそうなるんだ?」
頭を抱える。ヴァニティアの行動は、はっきり言って『予測不能』であり、いわゆる『斜め上』を平気で突っ走るタイプだ。
「……まさかラーガに騙されて、正義のためにエーニュに盗みに入ってこい、とか言われたんじゃねぇだろうな……」
正解。
「ヴァニティアって子がアストラを連れ出したのは、ある意味正解だったわね。あの戦場で、アンプルに侵されたアストラがどんな反応をするかは未知数よ」
無論、その場にとどまっていてくれた方が話が早かった可能性はあるが、こうなってはもはや「かもしれない」の話であり、それを論ずるのは無意味である――と、イレギュラーズたちが、進んだその先に。
「来たか」
人影が、あった。
「アストラ」
イーリンが、声を上げた。
「マジでヴァニティアじゃねぇか!」
アルヴァも声を上げた。
「あ、アルヴァだ! キミも来てたんだ!」
「何やってんだお前! こっちに戻れ!」
慌てるアルヴァに、ヴァニティアはなんか「よよよ」と泣いて見せた。
「でもね、だめなの。愛する二人を切り裂くのは、大切な親友の信念の戦い――ああ、これって悲劇だよね! 好きなシチュ!」
「愛してねぇし話を聴けよ!」
アルヴァが叫ぶのへ、イーリンはちらり、と視線を向けてから、
「親友?」
と、アストラに尋ねたので、アストラは苦笑した。
「らしいな。初耳だが」
くっくっと笑うその額には、脂汗がにじんでいる。イーリンが声を上げた。
「投降しなさい。エーニュはもう終わりよ」
「知っている。だが、私の救済は終わらない」
「救済?」
イーリンが尋ねる。アストラはうなづいた。
「そうだ。私の患者たちを、救済する。それができるのは、私だけだ。
お前たちでは、それができない。
いや、できてなるものか」
アストラが、ゆっくりと息を吐いた。ばき、ばき、とその体の一部が、結晶化を起こし始めた。
「貴方、烙印を――」
「プロトタイプだがな、強化アンプルを撃ち込まれた。
だが……そうだな、おかげで、お前たちを相手にしても大丈夫なくらいには、力を得たよ」
アストラが、ふぅ、と息を吐いた。
「ボクも手伝うよ! 親友!」
ヴァニティアが構える。さらにそこへ、足音が響き、やがて10名ほどの人影が現れたのだ。
「総統……我々もやれます……」
そう、息も絶え絶えに言うのは、アストラの『患者』たちである。
「馬鹿な! お前たちは、私が守ると……!」
「そうですね。ですが、俺達にも、総統を守らせてください……」
患者たちは、迷いのない瞳で、そういった。それからゆっくりと息を吐き出すと、その体の一部が結晶化を起こす。
「我々は、我々の救いの道を行く――どけ、ローレット!」
アストラが、叫んだ。
「わけがわからないが……」
アルヴァが言う。
「全員、救えばいいんだな!?」
「そうね、お願い!」
イーリンが叫ぶ。それに合わせて、仲間たちは武器を構えた。説得は聞くまい。ならば、今は武力を以って、彼らを鎮圧するしかない!
「行くわよ……『神がそれを望まれる』――!」
その言葉を合図に。
決戦が始まろうとしていた。
- <月だけが見ている>救済の理想、始まりの時完了
- GM名洗井落雲
- 種別EX
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2023年05月25日 22時05分
- 参加人数10/10人
- 相談7日
- 参加費150RC
参加者 : 10 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(10人)
リプレイ
●アストラ
アストラ・アスターを「人種差別主義者(レイシスト)である」と表現するのは、正しくも間違っているといえた。
アストラが求めたのは、究極的に言えば仲間であり、その仲間の定義すらあいまいであやふやな彼女にとって、自分と同じ符丁を持つものとは、つまり『同種族』しか考えつかなかった、のである。
アストラは仲間がいなかった。アストラの半生を語る必要はないし不明であるが、少なくとも、それだけは確かである。
それ故に、彼女は『人種』を仲間の条件としたし、そうでないものたちを排他することとなる。
しかし同時に、彼女は優しくも真っ当であり、人を見捨てられぬ人でもあった。そして医療の知識があったがゆえに、彼女の周りには様々な『患者』が集まっていた。
体を壊したもの。心を壊したもの。救えたもの。救えなかったもの。そういった多くの患者を診、得、失い、彼女はその時ようやく、『仲間』というものの理解をした。だが、その時すでに、彼女は『テロリスト』として、逃れられぬ場所にはまり込んでいたのである。
そこから、彼女の綱渡りと転落は始まった。そして彼女がどうなったかは、今の姿を見れば察せるだろう。
だが……奇妙なところで、奇妙な縁ができた。
ヴァニティアと名乗る大バカ者は、いつも通りに何も考えずに、自分のやりたいことをやって、アストラを救い出した。まずこれは、アストラにとって第一のカルチャーショックである。まったく人種の違うそれが、アストラに手を差し伸べたのは、ヴァニティアが馬鹿だから、を差し置いても、アストラにとっては、妙に心地の良いものであった。
結局の所、アストラには『手を差し伸べる誰かが必要だった』のだろう。それが、ヴァニティアの行った、たぶん人生で初めての「プラスに働いたこと」であったともいえる。
さておき、それはアストラに自分の本当の想いと、やるべきことを考えさせる時間をくれた。本当には、誰が救済されたかったのかを、本当に全く、考える時間ができたのだ。
「結局、救われたかったのは自分なのかもな」
ふ、と、アストラが笑った。僅かに結晶化した体をおしながら、アストラがイレギュラーズたちの前に立つ。
「え、なんか難しい話をしてる?」
ヴァニティアが小首をかしげる。
「思うままにやるといいよ! 親友! ボクが手伝ってあげよう!」
しゅっ、と構えるヴァニティアに、心底複雑そうな顔を、『航空猟兵』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)は向けた。
「お前のそういうシンプルなところは嫌いじゃないけどな、お前のそういうシンプル所がめんどくさいんだ!」
「え、なんか難しい話をしてる?」
ヴァニティアが小首をかしげた。
「わかってんのか!? お前がそのまま好き放題に暴れまわるってことはな、親友が死ぬかもしれないってことだぞ!」
そう叫ぶのへ、ヴァニティアは、むー、と口を尖らせた。
「『わかってるよ、それくらい』」
「だったら、抵抗するな!」
「だから、抵抗する! 親友のやりたいってこと、かなえてあげないなら嘘じゃん!」
「説得失敗ね」
くっくっと『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)が笑った。
「別にああいう馬鹿、嫌いじゃないわよ。
でも、あの子を間違った道においておきたくはない。
ちゃんと助けて、しかって、またラサで笑わせてあげたい。
それは変わらないわよね?」
「見透かしたようなことを」
アルヴァが頭をかいた。
「任せられる?」
イーリンが言った。
「誰にものを言っている」
アルヴァがうなづいた。
「任せるわよ――私は、全部救いたい」
そういう。救いたい。この場にいる、すべてを。
「それができるのは」
アストラが声を上げる。
「私だけだ、司書」
「『イーリン』よ」
そう答える。
「イーリン。この場ではそう呼んで、アストラ」
「イーリン。患者たちを救えるのは、私だ。私であるべきだ」
にぃ、と、凄絶な笑みを浮かべた。
「それが傲慢であろうと、破滅が待とうと。私が、為すべきことだ」
「そうね。とっても傲慢だわ」
『白き寓話』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)が、静かにつぶやいた。
「でも――きっと。そうしないといけない何かが、あなた達にはあって。
同情なんて、求めていないのでしょう。
けれど――あえて言うわ。可哀そう、と」
ヴァイスの言葉に、しかしアストラや患者たちは、怒りはしなかった。
「可哀そうだというのならば」
患者の一人がそういう。
「そうなのだろう。我々は、哀れで、醜いものたちだ」
「でも、それ故に、救いを求めた」
「我々の、ドクターに」
そう、言った。それはある意味、盲信に近いものであったけれど、不健全な信頼関係とはいえたけれど、それでも、絆に違いはなかった。
はじめて彼らが結んだ、絆に違いはなかった。
「なるほどね。でも、医者が患者に救済とかいうときは、大体ろくでもないときじゃァないかね」
ヒヒヒ、と『闇之雲』武器商人(p3p001107)が笑う。
「ああ、すまないね。悪いところが出てしまった。別にキミたちを卑下しているわけじゃあないよ。これは本当。
ただ、そうだねぇ。セカンドオピニオンって奴というか。
こっちの『イーリン』も、悪い子じゃないと思うけどね?」
「知っている」
アストラが言った。
「だが、この患者は、私の仲間達だ」
「ようやく得た者、というやつか。わかるよ。手放したくない気持ち」
「救済なぁ、まぁお前さんらにとっては悲願なんだろう。
探し求めて足掻いたからこそ他の可能性があることを信じられない認められないってところか」
『老いぼれ』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)が、ふむん、とうなりつつ、続けた。
「だがな……あえて、言わせてもらえれば、だ!
『知らんなそんなもん、ガキの頃に言われんかったか? 病人は寝てろって』
これだ。まだ、治せる。その目はある」
「烙印の事か? それとも、患者たちの病の事か?」
アストラが言う。
「治せるとも。そうだ。私が、治す」
「おいおいおいおい! イーリン! どうしてお前さんと似た顔のやつは、お前さん同様意固地なやつなんだ!?」
「さぁ、解らな……ちょっとまって? 私そんなに意固地?」
「そういう所だぞ!」
けらけらとバクルドが笑う。イーリンが憮然とした顔をした。緊張感はあるが、しかし悲壮感はない。必ず、助ける。そう、決意しているからだ。例えば『ヴァイスドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)なども、まったくその通りの表情で、
「『最期』っておもってんじゃないわよねー! 貴方達!
そう簡単に終わらせないわよ! 烙印? 救い? それらは玉砕する理由にはならないわ!」
びしっ、と胸を張り、レイリーは立つ。
「貴方が救う、というのなら、それでもいいわ。
でもその前に、わたしたちは皆まとめて救う。
こんなところで、悲しくひっそりと、なんてのは性に合わないの!」
「君たちは、なかなかいい仲間に巡り合えたみたいだけど」
『奪うは人心までも』結月 沙耶(p3p009126)は、にこりと笑ってみせる。
「こっちの仲間も、なかなか傲慢でね! 救う、と言ったら全員救う。そのために、多少傷ついても、だ。
でも、そっちもただ、はいそうです、なんて言えないんだろう?
だからこれは、意地だ。意地のぶつかり合い、ってやつだよ」
沙耶がそういうのへ、『赤い頭巾の魔砲狼』Я・E・D(p3p009532)が続く。
「うん、文字通りの患者さん達なんだね。
正直、この戦いはわたし達のエゴでもあるのだから。
貴方達には悪いけど、『わたし達の手で』救われてもらうために、貴方達は束縛させてもらうよ」
それから、少しだけ微笑んだ。
「だからこれは、きっと戦いとか、決着とか、狩りだとか。そういうのじゃない。
ケンカなんだと思う。うん。意見の食い違って、どっちも意地を通して、ぎゃあぎゃあと騒ぐ大げんかだ」
「随分と物騒だけどね?」
『炎熱百計』猪市 きゐこ(p3p010262)が苦笑する。
「でも、そうね。けんか、で済むならそれでいいわ。
私個人の意見を言わせて貰えば救済なんて人それぞれ個人の勝手。
結局の所自分の救いを押し付けあう物よ!
という訳で押し付けに行きましょう♪
今日の気分は命を救う気分!
意地の張り合い、大げんか!」
「患者の定義も。
救うと言う意味も。
それはとても虚ろで、形のないものです。
人によって違う、解のないもの」
『ラトラナジュの思い』グリーフ・ロス(p3p008615)が、言葉を紡いだ。
「治療とは、医療とは、一方的に与えるものではありません。医療者と患者が相互に参加し、協力し、選択し臨むもの。その意味で、彼らは今、共に歩む、理想的な患者と医療者なのかもしれません。
その先にあるものが、必ずしも生や根治でなくとも。
……ですが、この場に立ち会ったものとして、言葉をかけていいのであれば。
どれだけつらく苦しくても、生きてこそ、と」
わずかに不思議そうに、グリーフが言った。
「え、なんか難しい話をしてる?」
ヴァニティアが小首をかしげた。アストラが笑った。
「君の頭ではついていけない話だ」
「え、じゃあ考えない! そういう方がうまくいくっ!」
びっ、とこちらを指さした。
「親友の邪魔をするならば! まとめてドボンだ!」
「まったく、馬鹿ウサギ! 今日ばっかりは少し懲らしめてやるからな!」
アルヴァが構える。
「始めましょう、アストラ。意地の張り合い大げんか、いいじゃない。
あなたも意地を通しなさい。私も意地を通すわ。
そして全部救ってみせる」
「『キミがそれを望むなら』、かい」
武器商人が言った。『イーリン』は笑った。
「そうね、今この瞬間だけは、私がそれを望む。
救済はこの世に無く、胸の内にこそある。
救済を最期まで全うしようと、生きることを諦めさせない貴方は、私が尊敬する、医者よ。
さあ悪夢を終わらせましょう。
オペの時間よ、アストラ・アスター!」
「ゲリラ戦の時間だ、患者たち!」
アストラが構える。患者たちも、遅れてヴァニティアも、構えた。
意地の張り合い。大ゲンカ。
すべてを救うと豪語した、傲慢ものたちの大立ち回り。
これより始まるは、救済の理想の、始まりの時。
●救うということ
「さぁて、どう動くかな、イーリン」
静かに、アストラがつぶやく。どこかほほが紅潮しているような気がした。対等か、あるいはそれ以上の相手と戦えるというのは、戦術家としてはありがたくも恐ろしく感じる瞬間だ。
「ボクはどうする!?」
「お前は直掩だ、親友」
アストラが言う。
「とはいえ――引きはがしには来るだろう。ふむ、そうなったら、思いっきり乗って暴れてやれ」
「いいの? ぴったりくっついてた方がいいんじゃない?」
「それはそうだが、お前はそういうタイプじゃないだろう。ならば、せいぜいこちらにやってくる敵を散らしてやれればいい。
だから、好きにやれ!」
「そう言うことなら!」
ぴょん、とヴァニティアが飛んでいく。ああいうのは、本当に全く、好きにさせた方が戦果を上げるものだ。良くも悪くも。
「――と、考えてるのは間違いないわね」
イーリンが言うのへ、アルヴァがうなづく。
「じゃあ、予定通り、俺が馬鹿ウサギを抑える」
「おっと、ウサギっこは我(アタシ)も担当しようかね、航空猟長?」
武器商人が言うのへ、アルヴァは頷いた。
「頼むぜ――あいつはマジで、何をしでかすかわからねぇ!」
猟兵が飛ぶ――彼のウサギに向けて。ヴァニティアは楽し気に飛び跳ねると、あいさつ代わりとばかりにアルヴァに向かって飛び蹴り!
「やっほー! アルヴァ!」
「来たな馬鹿ウサギ!」
体勢をひねって、一撃を回避する。強烈な衝撃が大地を駆ける。ヴァニティアの一撃は、なるほど、強力らしい――当たれば、だが。
「いいのかよヴァニティア、お前でも今回は容赦しないぜ?」
「それはこっちのセリフ! 愛し合った仲でも、この戦いは止められないの!」
アルヴァはバックステップしつつ、銃を構えた。
「その設定どこから生えたんだよ!」
ぶっぱなす! 放たれた銃弾は、しかしヴァニティアが軽やかに跳んでかわす! なるほど、相変わらずいい動きをしやがる。内心で舌打ち一つ。
「おっと、ウサギの方? 我(アタシ)とも遊んでほしいねぇ?」
呼ぶ、武器商人。ヴァニティアはきゅえ、と可愛らしく悲鳴を上げて見せた。
「え、なんか怖い……アルヴァ、お友達?」
「ああ、あいつは怒らせるとおっかないぞ! 今のうちにやめておけ!」
黒き影が、武器商人から巻き起こる。それは、暴威。怪物たる力の具現。ヴァニティアが悲鳴をあげながら、その一撃から逃れて見せる。なるほど、素早い。だが、こちらに攻撃を当てるのには、彼女は少々に大雑把すぎた。
「なるほどねぇ。随分と、その、おおらかな」
「大雑把とかかんがえなしって素直にいいな。あれはありがたいが、まぐれ当たったときは怖い」
アルヴァが言うのへ、武器商人はうなづいた。ヴァニティアの一撃は重いが、すこぶるファンぶってろくにあたりはしない。が、それでも当たったときのダメージはシャレにならないということを、先ほどから穴が開かんばかりに衝撃を受けている地面からも察している。
「……航空猟長、これは結構、しんどい仕事かもしれないねぇ?」
「だが、やるんだ。全部救うんだろ? 逃げるなよ?」
そういって笑ってみせるアルヴァに、武器商人はヒヒ、と笑って応えて見せた。
一方、『患者』たちは規律よく連携よく、イレギュラーズたちを攻撃して見せた。
「やっぱり、指揮官がうまいね」
沙耶が嘆息する。
「うん、いい動きだ。信頼と連携。良い部隊なんじゃないかな?」
「言われてるぞ、指揮官殿」
バクルドが笑ってイーリンに言う。イーリンが肩をすくめた。
「こっちもまけてないところを見せましょうか。
横陣を敷かせないで、射線を自由に通せば集中砲火よ!」
「なら、少しだけ本気出す」
Я・E・Dがそういった。見た目は変わらない。ちょっと目元がキリリっとなった。それだけ。でも、よく見れば違う。より洗練され、より最適化されている。すこしだけ。それで充分。
「絨毯爆撃」
そういって、Я・E・Dがその両手を掲げた。呪殺の紋章。輝く。同時、放たれたのは、強烈な、せん滅の魔術砲撃!
ばぐおん、と強烈な音をあげながら、閃光が大地を駆ける。一度。二度。三度。間髪なき容赦のなき砲撃が、患者たちを嘗め尽くす!
「これで馬鹿正直に整列はしないでしょ」
「違いない」
バクルドがゲラゲラ笑いながら言った。
「お次はどうする?」
「ならば、こっちはこのまま包囲! 敵の数の方が多いから、逆に包囲されることには注意して!
グリーフ、回復サポートお願い! あなたが生命線よ!
レイリーは敵を集めて!
集まったとことで、ヴァイスときゐこでどかん! これで行くわ!
あ、でも、殺さないで!」
「難しいこというわね! 了解よ!」
きゐこが笑った。やれる。理想を、このメンバーなら、実行できるはずだ。
無論、楽な道ではない。多くは傷つくだろう。幾度か斃れもするだろう。でも。
「大丈夫です。支えます」
グリーフが言った。
「私もまた、この場に同席する者として、受け止め、傾聴し、なせることをなしたいと思います」
「頼りにしているわ?」
ヴァイスが笑った。
「向こうがチームワークなのでしたら、こちらもチームワークと参りましょう?
さぁ、行くわ。ちょっと眠っていて頂戴ね?」
ヴァイスがぱちん、と指を鳴らす。展開する、虹色の庭園。それは、ヴァイスの攻撃結界だ。
「先に行くわ! あとをお願い!」
レイリーが叫び、飛び出す。
「私に貴方達の望む救済は出来ないかもしれない。
でも、私はそんな貴方達を助けられるわ!
私はヴァイスドラッヘ! 夢を見せて夢を護る者よ!」
白きアイドル/ヒーローが戦場へと飛び出す。水晶の魔銃などは恐れたりはしない。なにも恐れたりはしない! この場で恐れたら、きっと救えるものを取りこぼす!
「来なさい……全部! 取りこぼさない!
さぁ、貴方達の想いや叫び、全て受け止めてあげるわ!」
「囮……いや、違うな。すべてが本命か」
アストラが思案する。レイリーは囮のようにも見えるが、しかしレイリーを無視して進めば、中央から突破され、アストラに肉薄されるだろう。となれば、結局レイリーを攻撃せざるを得ず、そうなれば、その間に包囲されかねない、という事態になる。
「やるな、イーリン……いや、おまえだけの策じゃないんだろう」
アストラが笑った。おそらく全員で、必死に知恵を絞った策だろう。全員が、共通の意思のもと、練りに練った策なのだろう。
アストラVSイーリンなのではない。アストラVSローレット・イレギュラーズという構図なのだ。
「本当は君たちはわかっているのではないか? 私達に助けを求めたいことを」
沙耶が叫ぶ。
「意地でも何でも、全て受け止めてやるからかかってくるがいい!」
叫ぶ! それは、言葉、想い、そういったもの。『患者』たちより降り注ぐ銃弾は、彼らの叫びであり、絶望であり、救いを求める声でもある。
それがわかる。わかるからこそ、踏みとどまり、勝たなければならない!
「レイリーさん、これは巻き込まないやつだから安心してね!」
きゐこが叫び、そのての魔道具を掲げた。同時、鳴る風音は、鬼哭啾々。鬼の慟哭は災いとなって、患者たちを包み込む!
「くそ、負けるな!」
患者の一人が叫んだ。
「我々の、救済のために! あきらめるな!」
彼らが望む、救済。それがどのようなものであったとしても、その最後に、アストラは自らの罪を償うために、命を差し出すのかもしれない。
だとするならば。
「そんなの、認めてらんないのよ!」
きゐこが声を上げる。そうだ、認めてられない!
「練度も良い、烙印で強化されてるのか威力も中々で士気も高いな」
バクルドが言う。
「だが士気が高かろうとも、動きすぎるのは死期に近づくだけだとも思わんのか?
……いや、殺す気はないのだから、死期ってのはなんか違うか?」
いささか困ったような顔をして見せる。
「そうですね。この場合は――年貢の納め時?」
グリーフも困ったような声を上げた。
「上手い例えが見つかりませんね」
「とにかく、そちらの負け……でいいのではないかしら?」
ヴァイスが言う。
「誰かを救うということは、とても難しいことだけれど。私たちはそれぞれに可能なことがあるのだから。
それを精一杯やっているのならば、私たちに負けはないわ。そうでしょう?」
「そうだなァ」
バクルドが笑った。
「さぁて、頑固者。お前さんの見せ場だ。サクッといってやれ」
そういって、視線を移す。イーリンが、それを受けて、走りだした。
●イーリンとアストラ
――貴方が求めるのは、自分の生の肯定。
イーリンは、ふとそう思う。
――それは患者の救済と生存。そして自分を託すことのできる相手。
ふと、そう理解する。
アストラ・アスター。それの『救済』。それをまるで最初から知っていたように、ふと気づく。
あるいは、最初から知っていたのかも知れない。自分が思い至るに足る判断材料。それがそうなのだと、今日今のこの瞬間まで気づかなかった。
だからわかる。知っていたことにできる。
アストラ・アスターという個の救済。
それはあまりにもシンプルで、ちっちゃくて、でも、貴く。
「仲間が欲しいなら、そう言いなさいよ、ばかったれ!」
隣にある、友。あるいは仲間。それが欲しい。なぜならアストラは、それを欠如していたがゆえに、今があるのだから。
「うるさい!」
アストラが顔を真っ赤にして叫んだ。
「うるさい、ばーか! そんなことが言えるなら、こんなことにはなっていない!」
「吠えるな! 威張るな! この頑固者!」
「だまればーか! お前に言われたくないわ、ばーか!!」
「何あれ、姉妹喧嘩?」
Я・E・Dが肩をすくめた。
「ほんとにけんかじゃん」
「でも、本当に人の心をむき出しにして話し合ったとしたら」
沙耶が言った。
「あんなものなのじゃないのかな?」
アストラとイーリンがやりあっている間にも、患者とイレギュラーズたちの戦いは続いている。けんかではあるが、両者ともに傷ついているのは事実だ。それでも、アレでいいのだ、という気持ちもまたある。
「人の心、ですか」
グリーフが静かにつぶやいた。
「まぁ、よいけれどね? こちらも、皆さんを眠らせてしまいましょう?」
ヴァイスがそういうのへ、仲間たちはうなづく。
「……ちょっと眠っていてちょうだいね?
何を望むかは人それぞれ。あなたが本当に願うのなら……可能な限り、私達も力を貸すことも出来るのよ」
そういって、その手を掲げる。神光が、砂漠の地を照らすように、輝いた。
「で、お前はどうなんだ、ヴァニティア!」
アルヴァが叫ぶ。ヴァニティアが、ぴょん、ととぶ――足を取られた。Я・E・Dの放った呪印が、ヴァニティアの足をからめとっている。
「どうって、なに!?」
「悪気がねえのは知ってる。だからこそ、お前を悪人にしたくはねえ」
そう、告げる。
「だから、頼む。俺らにもお前の親友を助けさせてくれねえか?」
「ねぇ、アルヴァ。ボクが何て呼ばれてるか知ってる?」
ヴァニティアはにっこりと笑った。
「『常に最悪の方を選ぶ奴』。知ってるよ、それくらい。でもね。ボクにはそれが止められない。天性なんだろうね。ボクはどうしても、考えるとムズムズして、やりたいことをやっちゃう」
「わかってるんだろう! 今だけでいい、止めるんだ!」
「だから、だよ!」
ヴァニティアが叫んだ。
「『ボクがそれを選んだら、きっと最悪になってしまう』」
「おまえ――」
悲しそうに、ヴァニティアは笑った。アルヴァが、ふと脳裏に浮かんだ。ヴァニティアが行方不明になった、という話を、彼女の仲間から聞いたとき。
『あいつはな、次に会ったらうっかり反転して魔種になってるかもしれねぇ。それくらいおかしくないくらいに――』
下手を踏む。そう、言って、笑って。
それが、どれだけヴァニティアを傷つけていたのか、ここにきてようやく理解できた。
「ボクは止まれないんだ」
植えつけられらジンクスを払えずに。
「ボクが選んだら、きっとそれは最悪を、親友に、キミに、プレゼントすることになるんだから」
ずっと、苦しんでいたのは。
「アホか!」
アルヴァが叫んだ。
「もう、この……アホか!! いいか! お前は、あー、もう! わかった!」
アルヴァが、構えた。銃ではない。徒手空拳の形。
「俺が止めてやる。それで満足か!」
「『ボクは止まらない!』」
嘘つきウサギ、何みて跳ねる。
「『止められるものなら』――」
幸せ夢見て、跳々、跳ねる。
「止めてやる! 武器商人、Я・E・D、たのむ!」
「任せて」
「応とも、航空猟長」
Я・E・D、そして武器商人が、その手を掲げた。呪印と、『力』とが混ざり合って、ぴょんぴょんと飛び跳ねる、兎を捕まえた。
アルヴァが跳んだ。兎よりも高く。ずっとずっと高く。流星のように降り落ちる一撃は、兎の意識をぶつんと暗転させた。
「向こうも決着がついたみたいよ」
イーリンがそういった。すでに趨勢は決している。わからないアストラではない。
友を失い、患者を失い……失い……? そう考えた刹那、アストラは、あ、と声を上げた。
「殺していないのか!?」
周りを見回す。誰も倒れていた。だが、誰もが息をしていた。
「馬鹿な! こっちは殺す気だったぞ!」
「あたりまえでしょう!?」
答えたのは、レイリーだった。
「助けるって、言った!
だから、助けるの!」
当然のように、レイリーは胸を張った。
ボロボロの体で、痛みを堪えながら。
ただただ、当然のことをしたのだと、胸を張った。
ああ、とアストラは思った。
この戦いは、アストラVSローレット・イレギュラーズだ、と先ほど考えた。
だが、其れすらも甘かったのだ。
これは本当に――アストラ一人と、10人の知恵比べだったのだ。覚悟と決意の比べだったのだ。
「白状するわ、アストラ。私一人だったら、せいぜい対等か、どっちかが死んでたと思う」
イーリンが言った。
「『10人だから超えられた』。
それは確かよ」
それは、
アストラにはない視点だった。
患者は救うもので、
並び立つものではなく、
自分を託すものではなく。
ああ、改めて、
自己の救済を理解する。
友の、在り方を。
「ああ」
アストラが、つぶやいた。
「やっとわかった」
そう、声を上げた。
「そうだったのか、イーリン」
にこりと笑う。それから、
「――気に入らん」
ぶす、とほほを膨らませた。
「何が気に入らんって、お前に負けたのが気に入らん。気に入らん――」
「そんなこと言ったって」
イーリンが唖然とした。
「どうしろってのよ」
「『最後』まで足掻かせろ」
そういって、にぃ、と笑った。
「それから『始める』」
強化されたか魔銃を、アストラが構えた。
イレギュラーズたちも、構える。
一触即発。空気が、張り詰めた。
ぱちん、と、何かが鳴った。
空気が鳴ったのかもしれないし、気のせいだったのかも。
でも、それはスタートだった。アストラが、引き金を引いた。爆発せんばかりのエネルギーが、あたりを薙いだ――レイリーが立ちはだかる。最期まで、守るために!
「行って!」
叫ぶ。レイリー――続いた。きゐこ。放つは聖光――焼くようなそれは、でも優しく。僅かに意識を飛ばしたアストラは、しかし意地でそれを維持した。
「でも、もう一撃!」
きゐこが叫んだ。
「救いなさい!」
そう、叫んだ。
イーリンが、戦旗を構えた。柄を握る。振り上げる。
「一回、寝ときなさい」
振り下ろした。それが、強化されたアストラの、意識をついに、ダウンさせた。
どさり、と、アストラが地に倒れ伏す。ふぅ、とイーリンが、息を吐いた。
「落ち着いてる場合じゃないわよ!」
きゐこが、声を上げた。
「まずは、全員の病状の確認! けがの確認! それから応急処置!
助けるんでしょ? ならば、まだまだこれから! 全員、手伝ってもらうわよ!」
きゐこがそういうのへ、バクルドが笑った。
「まぁ、そうだな! そう言っちまったからな。最後まで――いや、次の始まりまで、責任は持たないと、か」
バクルドの言葉に、皆は頷いた。
誰もが倒れている。
だが、誰もが生きていた。
まだ、誰もが、生きていた。
ならばこれは終わりではない。
次の希望は、救済への希望は、途絶えていない。
ならばこれは始まりの時。
彼らの救済の道筋の、始まりの時に、間違いなかった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
ご参加ありがとうございました。
皆様の活躍により、作戦目標は遂行されました。
あとは無事に、烙印が解除されればよいのですが――。
GMコメント
お世話になっております。洗井落雲です。
救済の時です。
●成功条件
すべての敵の無力化。
アストラ・アスターの救済。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●特殊判定『烙印』
当シナリオでは肉体に影響を及ぼす状態異常『烙印』が付与される場合があります。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします
●状況
エーニュアジトから逃走した、アストラ一味を追ってきた皆さん。
皆さんはその痕跡を追跡し、ついにアストラ一味を追い詰めます。
ですが、アストラ一味はあきらめる様子なく、自らの理想である『自分たちの救済』を求め、皆さんに攻撃を仕掛けてきました。
アストラを気にいったらしいヴァニティアも、アストラを援護する形で、皆さんに立ちはだかります。
アストラをどのような処遇にもたらすにせよ、この場をきりぬけなければなりません。
成功条件は『無力化』になりますが、敵は全員、死亡しても問題ないものとします。
作戦決行タイミングは、満月輝く夜。
周囲は砂漠になっています。
特にペナルティは発生しませんが、暗闇への対策や、動きにくい地面への対策などがあると、より有利に動けるはずです。
●エネミーデータ
アストラ・アスター(烙印強化兵・プロト)×1
エーニュに所属している人物の一人で、イーリンさんの関係者になります。
烙印強化兵アンプルの試作品を撃ち込まれてしまっています。そのため、戦闘能力が大幅に増加しています。また、プロトタイプということで、ぎりぎり救い出せる芽があります。烙印そのものが解除できるまで彼女が自我を保っていたとすれば、自然と回復するはずです……ので、殺さずに無力化できればワンチャンあります。無論、アストラがそれを望むのであれば、殺してやるのも一つの救済です。
銃を用いた遠距離攻撃戦闘を得意とします。特に手にした銃は、烙印の影響で晶銃と化し、強力な砲撃を行う魔銃と化しています。
ヴァニティア・ヴァニティ・ヴァトラント ×1
無自覚タイフーン女の子。ラーガに騙されてエーニュのアジトに潜入し、ラーガを裏切ってアストラを助け出しました。
基本的に近距離での各党能力に優れたユニットです。アストラが遠距離ユニットなので、その穴を埋めるように、前衛を務めます。
すばしっこく、攻撃力も高い。侮れないタイプですが、なぜかファンブルの値が異様に高いです。肝心な時に破滅的な結果をもたらすことがあります。そこをついてやると楽に倒せるかもしれません。
『患者』たち(烙印強化兵・プロト) ×10
エーニュに所属していた、アストラの部下たちです。皆烙印強化兵アンプルの試作品を撃ち込まれてしまっています。そのため、戦闘能力が大幅に増加しているほか、プロトタイプ故に救い出せる芽があるのも、アストラと同様です。もちろん、殺してしまってもかまいませんが。
銃やナイフで武装した、本来はゲリラ戦を得意とするタイプです。ですが、烙印強化兵ということもあり、その戦闘能力は高めとなっています。
集団戦を得手としますので、囲まれて集中砲火を受けないように気を付けてください。一体ずつ引き付けるか、纏めて撃ちぬくかは、作戦次第です。
以上となります。
それでは、皆様のご参加とプレイングを、お待ちしております。
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