シナリオ詳細
<Backdoor>Lost city - Astrological:02
オープニング
●『現実世界』
「館長」
緊張を滲ませたその声音にクレカは小さく頷いた。
ここは境界図書館。果ての迷宮にて見つかった異界との接続地。混沌世界より他の世界を観測できる場所である。
あくまでも観測だけであったのは、旅人が自らの世界に帰還出来ないことを意味している。
このクレカとて『異界からの漂流物』だ。
旅人と呼んでも遜色ない存在ではあるが古のオーパーツが異界より流れ着き、境界図書館で観測された際に『混沌世界に飲み込まれ』て命を帯びた『秘宝種』
少女――そのボディは少女をイメージして作られている――の故郷は異界であり、彼女は人造生命体だ。
偶然、複合的な干渉が行なわれた際にこの地に踏み入れていたペリカ・ロズィーアンの外見を模したアンドロイドが生れ落ちた事。
少女の内股に刻まれていた『K-00カ号』という小さな文字から自身を『クレカ』と名乗るようになった事は余り公にはしていない。
そんな一人の『人形』は実感を帯びて、応えた。
「――列星十二宮(サイン・エレメント)は、確かに変化してる」
練達が旅人達が大いなる目的である『元世界回帰』の為に混沌の法則研究のために作り上げた『Project:IDEA』
そのシステム暴走によりゲーム仕掛けのRapid Origin Onlineはバクを自動増殖させながら第二の混沌世界を作り上げた。
その内部、積み上げられたバクがR.O.Oの底にこびり付いた。本来ならばデリートされる情報は僅かな断片ずつ蓄積されてコミュニティを形成したのだ。
フィールド設定の際に使用されたテストデータ。テストサーバで稼働していたワールド設定。其れ等は一度はサーバー上から消去されネクストによって上書きされた筈であった――だが、それはマザーも観測し得ない領域に残ってしまっていた。
斯うして積み重なったデータは『電脳廃棄都市』と呼ばれるに相応しいだけの量を誇る。
冷蔵庫の扉から、地底遺跡から、ダンジョンの宝箱から。何処からともなく此の土地に入り込む事の出来るのだ。
その地の名を――電脳廃棄都市ORphan(Other R.O.O phantom)。
「ORphanから『境界<ロストシティ>』に渡った、と聞いてる」
「うん。それで、イレギュラーズが現実側にも影響があるか確認してたでしょう?」
ポルックスとカストルは聞きかじった情報を整理しながら目の前で『異界観測』をしているクレカの背中に声を掛けた。
「してた」
「パラディーゾっていうバグ達がある程度の情報を調べてくれてたから、こっちも理解が早かったの。
イレギュラーズが境界でコレまで活動してきたことで『境界深度』が高まってたから、R.O.Oと境界<ロストシティ>がリンクしてるの」
「うん」
つまりは、『ライブノベル』を観測するイレギュラーズ達を始め、境界へと様々なアプローチを行なってきたイレギュラーズによって『境界親和度(境界深度)』が高まったことでR.O.Oに存在するORphanとのパスが繋がっているのだ。
偶然にもパラディーゾ・星巫女が見付けたい世界がポルックスとカストルのものであったこと。
偶然にもライブノベル側からまだ観測できる領域で『変化』の確認が取れたこと。
これは大きな一歩になる。クレカは一冊の本を手に取った。
「クレカ。それ」
「……『多分』、わたしの故郷……記憶は、ない。
この世界はもうすぐ混沌に吸収される。『ジェーン・ドゥ』の黄金色の昼下がりみたいな、混沌が飲み込んでしまう世界の欠片」
さあとポルックスから血の気が引いた。
世界を呑み喰らうというのは簡単なことではない。混沌世界に近付きすぎた異世界が『接続』された後、境界に飲み込まれて変化してしまうのだ。その地に棲まう者達も全て滅びに向かって行く。
「それ……」
「うん、放置、していると……この世界に『異世界』が侵蝕して、侵略を開始する、とおもう。
その前に、止めなきゃならないけど……あと一歩届かないの」
「境界への『接続』が?」
「うん。繋ぐなら……ポルックス、カストル、二人の世界を救うことも、できる、とおもう」
双子は顔を見合わせてから、一つ思い当たった。
――星の魔物。邪神と名乗った娘と、ルル・シャドウと名乗る娘が追掛ける『十二宮』に棲まう世界崩壊の化身。
「ほしのまものを、捕まえて『データ・カプセル』を此処まで、持ってきて貰う」
「出来るの? そんなこと」
クレカは後方をちら、と見遣った。境界図書館の入り口には『異界からの転移者(イレギュラーズ)』である練達の塔主の一角、佐伯・操が立っていた。
●
M.Saeki : それでは頼もう。
「……権限者に見守られるのは居心地が悪いのですが」
パラディーゾ・星巫女のつぶやきに空が笑った気配がした。システム管理権限を有する佐伯・操女史がORphanを覗いているのだ。
本来ならばこの様な場所を見付けた時点で操などはデータを廃棄し、バグの温床をクリアにしなくてはならないのだが今回は不問にするらしい。曰く、マザーへの影響が少ない上にエラーコードが表面上に見えていないからだそうだ。
「で、何するかもう一度言いなさいよ」
唇を尖らせるパラディーゾ・クオリアは俯くパラディーゾ・ビブリオフォリアを気遣っているかのようである。
彼女の体にはノイズが走り、データの構築が縺れているのは確かだ。操は「もうすぐデータが解け消滅するかも知れない」とその状況を見て告げて居た。
「ビブリオフォリア……」
「……良いのです。これが、最後の旅ですから」
呟いたビブリオフォリアにクオリアは嘆息してから上空のメッセージを見上げていた。
M.Saeki : まずは境界<ロストシティ>へと移動して貰う。
私も観測したが、列星十二宮(サイン・エレメント)の先は『宝瓶宮』以外存在していない。
「それは……?」
不安げに見上げるビブリオフォリアの言葉に繋がるようにパラディーゾ・影歩きは凜とした声音で「ほしのまもの、ですか」と問うた。
M.Saeki : ほしのまものが他の宮を『破壊』している。その力は強大だ。だが――
「ワタクシから別たれた邪神が『ほしのまもの』を喰らおうとしている、のですね。
漸く合点が行きました。ワタクシは善性の生き物ではない。パラディーゾであるワタクシは精々R.O.Oでの滅びを促す存在であった筈――ですが、『邪神』は……」
「オイオイ、『影歩き(ヴィオ)』。どーいうコトなんだよ?」
問うたのは桃花(p3x000016)であった。その傍には不安げな表情の桜陽炎(p3x007979)と『自らの分身を疑っていた』空梅雨(p3x007470)も立っている。
「空梅雨(ワタクシ)の言う通り、影歩き(ワタクシ)はこの世界を滅ぼすために存在していました。
ええ、マザーだ、黄泉ちゃんだ、という存在は気に食いません。ワタクシを道具のように使う時点で……ふふ……」
「けれど、邪神は違う、のですね」
「ええ。邪神は『元の世界へ戻ろう』としているのでしょう?」
M.Saeki: 恐らくは――
「元の世界、ですか?」
桜陽炎はぱちくりと瞬いた。異世界の獣を『バグデータ』がその身に蓄える。それがどの様な影響を齎すのかは分からない。
邪神は『ほしのまもの』を自らの糧にすることで元世界に回帰出来ると考えたのだろう。この世界では邪神であれども少女の肉体に内在する『混沌法則』に則った生物でしかない。その枠から外れるならば、元世界に戻る事こそが一番だ。
「ほしのまものにはそんな能力があるの?」
P.P.(p3x004937)はチケットを振り回しながら問うた。まじまじとチケットを見詰めていた指差・ヨシカ(p3x009033)は「信じられないわ」と呟く。
M.Saeki: 申し訳ないが今までの活動歴やデータの検証をした。クレカと共にある程度の論を構築することも出来た。
邪神の考えは概ね正解だ。私にとっても気にはなるが、使用用途が限られている可能性が大きい。
「使用用途、ですか?」
ドウ(p3x000172)が首を傾げれば同じようにビブリオフォリアも首を傾げている。
何方も好奇心が先に立ったのだろう。『知識の宝庫(のうみそ)』にインプットしておいても悪くはない情報だ。
「あー。帰れる、訳やなくて、干渉しかできへんってことか?」
指先をぱちんと弾いた入江・星(p3x008000)に「どっちも同じに思えたけど、違うのね?」とヨシカはぱちくりと瞬いた。
「モチ、せやろ? 操ちゃん」
M.Saeki : ああ。あくまでも混沌世界の人間だ。命の残量(パンドラ)も法則も存在しているだろう。
だが、『ほしのまもの』の――世界を滅ぼす生物の力を駆使すれば異世界へと繋ぐことが出来る。
異世界に混沌世界の住民として大いに干渉し、あちら側からの侵略にも対処が出来る筈だ。
「侵略とは物騒ですね。……まさか、思い当たることが?」
桜陽炎の問い掛けに操は『ある』とだけ返した。操のナビゲーションも境界<ロストシティ>では難しい。
M.Saeki : もしも、邪神達に『ほしのまもの』を奪われた場合、彼女達を生け捕りにして欲しい。
私がその為のアイテムを準備した。星巫女とクオリアに持たせている。使い方は聞いて欲しい。
「ええ。確かに受け取っております」
「……二個しかないのよね。詰まりチャンスは二度ってこと?」
操が「そうだ」と頷いた。クオリアからすればイレギュラーズに協力する理由は無いのだが、ビブリオフォリアが『最期まで見届けたい』というならば仕方がない。
「……仕方ないわね、それじゃ、行きましょうか」
●『邪神』
「ルル」
邪神と呼ばれた娘は静かに声を掛けた。便宜上、女はヴィオとルル・シャドウに呼ばれている。
「『ほしのまもの』をやっぱり喰う事に決めましたか? 手伝っても良いですよ、ヴィオがそうしたいなら」
「ワタクシがダメだった場合はルルが食べて欲しい物ですが」
邪神は嘆息しながら列車に乗っていた。イレギュラーズ達よりも一足早く『宝瓶宮』に辿り着けそうなのだ。
ルル・シャドウは脚をぶらぶらとさせながら「それもアリですかねぇ」と呟く。
「ルル・シャドウちゃんが先に『ほしのまもの』を食べたら、ヴィオはきっと、取り込んでしまうでしょう?」
「ええ、そうなるかもしれませんね」
「嘘つき、ヴィオはそんなこと出来ない」
ルル・シャドウはにやにやと笑った。『乙女』が門を開けてから、『ほしのまもの』の本体の出方をルル・シャドウは見ていた。
存在している『宮』を破壊し、喰らい守護者は慌てた様に他に逃げ出して行く。
宝瓶宮には幾人かの守護者が隠れていることだろう。
このまま『ほしのまもの』を放置していれば、宮は全て破壊され、この世界は消滅するのだろう。
「全く以て酷いと思いません?
世界を破壊する獣を捕まえて喰らって正義のヒーローになった後、拙者達に待ち受けるのって敵キャラって役割なの。
感謝して、感謝して、感謝しまくって貰っても良いくらいなのになー。ルル・シャドウちゃん、サイコー! って」
「……別に感謝などされずとも、我が侭に生きているだけではありませんか」
「あはは、ヴィオサイコー」
「……ルルもですよ」
にんまりと笑ってからルル・シャドウは『邪神』の頬に触れた。
「ヴィオが死ぬときはルル・シャドウが看取ってあげますよ。ほしのまものをヴィオが食べれなかったらルル・シャドウが食べてあげる。
その為に、此処まで追掛けてきたんだから。だって――『親友』でしょ?」
- <Backdoor>Lost city - Astrological:02完了
- GM名夏あかね
- 種別長編
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年05月31日 22時05分
- 参加人数20/20人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 20 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
(サポートPC3人)参加者一覧(20人)
リプレイ
●
――ねえ、ビブリオフォリア、何を見てるの?
一冊の本を抱き締めていた少女は顔を上げた。《クオリア》は何時だって不満げな顔をして居る。
《私》が他の誰かに夢を託す決断をしたのが気に食わないのだ。それでも、彼女は《私》の決定に口を挟む事は無い。
この本(せかい)に、行って貰おうと思うのです。もう一人の《私》なら、とても喜んでくれると思うから。
――それは、アンタじゃだめなの? アンタが望めば星の魔物を捕まえて……。
優しいひと。誰よりも、《私達》を大切にしてくれる。《私達》が所詮はバグデータであっても、このひとにとっては真実であったのだろうから。
だめです。だめですよ。そんなことをして、《私》が場を見だしてはならないの。
大丈夫。もう一人の《私》の方が、この世界(ものがたり)にはよく合っているから。
――……タイトル、なんていうの?
この本の名前は、――
●
終着点へと至る前に。列車に飛び乗った『雪風』玲(p3p006862)が間に合ったと汗を拭った。
タタン、タタタン、リズミカルなその音に耳を傾けながら気を取り直して仁王立ち。
「にゃーっはっはっは! また列車がでておったからノリで乗ってしまったが……これは何処へ向かっておるのじゃったかのう?」
「宝瓶宮よ」
蹴りをかました『クオリア』に玲が「おあー」と情けない声を上げる。列星十二宮(サイン・エレメント)は中央タワーの周辺を廻る十二の宮からなるらしい。だが、その半数が星くずのように崩れ去り、見る影もない。
「悉く、破壊され尽くしている光景を見ると何とも言えないな。
そもそも、これはポルックスとカストルの世界――『異世界(ライブノベル)』に相互影響があるんだ。境界で確認しても景色は同じだろう」
淡々と書物を手にそう言ったのは『貧乏籤』回言世界(p3p007315)であった。境界深度に最も造詣が深く、境界図書館にもよく出入りする回言世界にとって、双子の境界案内人(ホライゾンシーカー)にとっての故郷(せかい)を護れるのであればそれに全力を尽くすだけが活動の意義ともなる。
「しかし……境界<ロストシティ>」
ぽつりと呟いた。それは境界図書館から覗くライブノベルと似て非なるものであるか。
混沌世界へと近しい異世界への干渉を行なう事が出来る。その根源にある条件は定かではないが、そうした事象を用いることで旅人達が元世界へと回帰する足掛かりになるという荒唐無稽な話を夢想してしまう程度に、回言世界も期待したことではある。
「……だが、どうもそう簡単な話でもないらしい」
「元の世界に戻りたい……それは個人としては応援したくなりますね。自分だって帰れるなら一時的に帰りたい」
ぎゅう、とズボンを握り締めた『不転の境界』梨尾(p3p000561)へと影歩きは「理由によっては、応援できないことではありませんか」とぞうっとうる声音で言った。
「そう、かもしれない。……たった一目でも良いから大切な人の今を、安否を確認したいという気持とは大きく違うのかもしれません」
「ええ。ワタクシはそんな可愛らしい理由で元世界に戻ろうなどと考えていませんもの。ねえ?」
ちら、と影歩きが後方を見詰め遣った。『himechan』空梅雨(p3p007470)はぐ、と息を呑んで視線を逸らす。
当たり前だ――そんな『穏やかな生命体』ではない。影歩きも、空梅雨も、邪神も。元の世界に何が存在し、それが混沌世界に影響を及ぼした場合に起こり得る危機を三者三様、考えては居るからだ。
「……ううん、邪神さんの考えはわかりません。けど、懸念点は多そうです。
異世界に干渉するほどの力なら、干渉中に制御できなくなるかもしれない。食べたのにいずれ再生して腹の中から出てくるかもしれないですよね」
「縺昴≧縺九b縺励l縺ェ縺???溘〒繧ゅ◎繧後▲縺ヲ縺ィ縺」縺ヲ繧る擇逋ス縺??」
――そうかもしれないね。それってとっても面白い。
梨尾へとそう言葉をほにゃほにゃと紡いだのは『不明なエラーを検出しました』縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧(p3p001107)であった。
境界への干渉、侵略による対処。それは現実世界でのことだと言うが実に焦臭い。
(……それはそうと……足りてないデータの補完ができるのか、ああいうのを取り込んだら。
我の存在強度も上がらないかな。どうだろねぇ……美味しいかな? ああ、興味が湧いてきた)
淡々と考えて居た縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧の思考を読むかのようにクオリアが持たされていた端末から声が響く。
M.Saeki:お前達のデータに影響がある。最悪、藻屑になるから喰わないように。
「えっ」
腹を思わず抑えた『わるいこ』きうりん(p3p008356)に「悪い子だな」と佐伯・操が嘆息した。
M.Saeki:寧ろきうりんが食べて居たからこそORphanに気付いたんだ。少量なら影響はないだろうが――
「……バグデータがほしのまものを食べた場合はデータは壊れない、ってことで宜しいのですか?」
先程まで、R.O.Oでの一件が一通り終った後RP(ロールプレイ)をするのも、と戸惑っていた『神刀付喪』壱狐(p3p008364)は不安げに問うた。
バグデータに当たるルル・シャドウや邪神が『ほしのまもの』を食べた場合、何が起るかは未確定だ。
操が考え倦ねるように唸る声を聞き空梅雨の傍に座っていた『夜桜華舞』桜陽炎(p3p007979)は「佐伯先生」と澄んだ声で呼び掛けた。
「ほしのまものを喰らった先で、……推論ですが、倒されることで、私たちのアクセスによって消えることとなる。
それを『世界から消失』ととらえ、干渉の力で『完全に渡ろう』とした……? 考えすぎでしょうか」
M.Saeki:有り得なくはないな。プレイヤーデータを保持するイレギュラーズとバグ増殖NPCは別物だからね。
……あと、考え得るは――
ほしのまものとは、即ちポルックスとカストルにとっての現実。境界図書館の先に存在する異世界(ライブノベル)の登場人物だ。
境界<ロストシティ>からそうやって干渉できるようになって居る次点で、元世界に何かが起っている可能性がある。
ほしのまものを此処で誰かが喰らうか斃すか、『封印』してしまえば、双子の世界は救われることとなろう。だが、そこに働く世界を保持する強制力が大きく作用し邪神達を元世界に回帰させる可能性もある。
「なんにしても、や。めっちゃクライマックス感あるなあ。
巨大な『ほしのまもの』! 行く先は滅び、崩れていく世界! それから――現実にまで影響を及ぼすことが確定している現状。
それって放置は出来へん、し……ま、今更パラディーゾ達を放置してさよならバイバイとは行かへんしな」
『根性、見せたれや』入江・星(p3p008000)がちらりと見遣ったのはビブリオフォリアであった。データが霞み、壊れかけている。
その隣で目を伏せて手を繋いでいた『物語の娘』ドウ(p3p000172)はビブリオフォリアと瓜二つである。
(……まあ、パラディーゾが消えるんは本来は在りがたいこと何やろうけど、こう……遣る瀬なくはなるわなあ)
パラディーゾとは現実世界では『魔種』として換算される。所謂、世界を崩壊させる可能性のあるバグ・データだ。
何故、ビブリオフォリアだけが崩れ去る危機に瀕しているのか。それは簡単だ。彼女と同行しているパラディーゾは成り立ちが違う。
「……」
唇を噤んでビブリオフォリアを見詰めるクオリアの視線に気付いてから『いとしき声』P.P.(p3p004937)は壁を殴りたいほどに苛々していた。
「あの2体の邪神がほしのまものを喰らって何をしたいのか分からないけど、どうせ碌な事じゃないわよね、きっと。だったら止めないと。でしょ?」
「……ええ」
幼く、小さな娘P.P.。そんな彼女と瓜二つの『同じ顔』のクオリアは今や暗い表情をしている。
(……何なのよ、こいつ。苛々する。苛々する理由だって、同じ顔のこいつがあたしじゃないからじゃない。
だって『あたしはこんなに弱くない』もの。
仲間が消えかけていて、それでもメソメソしているだけってんなら、もうこいつの事はどうでもいいわ。クソハデスめ、ちゃんとコピーしろってんのよ!)
憤ったP.P.を一瞥してからクオリアがざらりと唇を動かした。
「家族だと思っていたのよね。家族だから、ずっと一緒であたしが護ってやろうと思ってた。
けど――ビブリオフォリアはなんて行ったか分かる? ドウには言わないで頂戴よ」
クオリアに囁かれてからP.P.は顔を上げ、目を見開いた。
莫迦野郎、そんなところだけ『あたし』になるんじゃない。家族の願いと自分の我が侭で悩むんじゃない。
無償の愛情を前に、戸惑って俯くんじゃない。あんたが、そんなとこだけあたしだから――ああ、もう、クソハデス!
――ここで消え去って小さなデータになったら『封印具』にこっそり忍び込ませて外に連れ出して欲しいんです。
データになれば、もっともっと、ドウと広い世界を見れるでしょう。……だから、これは秘密ですよ。
●
「いや、ホントビックリするのよね」
いつの間にか別世界との話しになって、更には存亡を定める事になろうとは。『プリンセスセレナーデ』指差・ヨシカ(p3p009033)はぼそりと呟いた。
マルチバースというやつなのか、それとも。練達生まれの彼女は「何にせよ、ゲームだからって失敗してもオーケーなんて所はとうに終わっちゃったワケね」と呟いた。視線の先には俯いている定がいる。太陽と出会えず、俯いていた彼が陽の光を浴びる機会があるならば、屹度今だ。
「……」
俯いた彼を一瞥してから『夜告鳥の幻影』イズル(p3p008599)は「さて、もう少しで到着だね」と座席から腰を浮かせた。
「確かに。……もう少しだね。心がざわざわするよ、パラディーゾ達との冒険の果てがどうなるのかも」
タハト・タラトの嬉しそうな声音を聞きながら、イズルはやや眉を寄せた。彼はパラディーゾに興味を有している。ORphanにだって勿論興味があるのだろう。存在し得なかったパラディーゾを注視する彼に他の用事を頼むのは申し訳ないともイズルは考えて居たが、致し方がない。
「……此処から先に進めば本来は宮を納めていた『守護者』達が居るはず何だ。タハトさんは『守護者』達のカバーに廻って貰える?」
「……オレが?」
「うん。私にとってはキミも大切な友人だよ、多少の無理はしても、無茶はなるべく避けて貰えると嬉しいな。……そう言っても、彼は全然聞いてくれないのだけどね」
イズルの脳裏に過ったのは恋人の姿だった。存分に前のめりで、存分に勢いが良く、彼のパラディーゾは『姫君』の騎士として戦っていた事だろう。
どちらかと言えば騎士が護った姫君の『子供達』であるビブリオフォリアのことだって気がかりであったのだ。
「……その時が来るかも知れないから、彼女の事も、見て居てほしい」
「そういうことなら分かった。まあ、オレも此処まで来たんだからちゃんと良い子にするよ」
笑って見せたタハトにイズルは大きく頷いた。列車が進み行く。もう少しで到着するのであろう列車の進行速度が遅くなってきたことをその身で感じながら『仮想世界の冒険者』カノン(p3p008357)ははあと息を吐いた。
「世界を、星を喰らう魔物と更にそれを狙う『邪神』……全く、スケールが大き過ぎます。
少しはこの景色に浸りたいですが、どちらも放置出来はしないでしょう。
力を尽くして被害を抑えたい所です……世界も、守護者達も、勿論パラディーゾも」
ぎゅう、と杖を握り締める。冒険者の心得を胸にしていたカノンは『冒険者』としてこの世界を練り歩きたくもあった。
だが、そんな時間さえも惜しいと思える光景だ。砕かれた宮の破片を避けるように列車が大きく揺らぐ。
「うわ、頭打って死んじゃう」
そんな風に叫んだのは『デスカウント数がぶっちぎる』きうりんだった。頭を打ったり段差から落ちたくらいでも死んでしまうと叫んだ彼女の脇腹を玲が「えいえい!」と突いてみる。
「なんだかわくわくしてきたのう!」
「ええ。わくわく……というか、『神様』の所業と呼ぶべき事象で興味はありますね」
大きなクマさんを抱き締めていた『闘神』ハルツフィーネ(p3p001701)はアクアマリンの眸をぱちりと瞬かせた。
座席にぎゅうぎゅうと詰められていたクマさんはやや苦しげだがそんな状況も愛らしい。可愛いクマさんを抱き締めるハルツフィーネはクマさんの埃をささっと払う。
「この世界で皆さんが何かしているとは聞いてましたが。ほしのまもの、そして邪神ですか。
世界を食べる……なんでそんなことをするのか、できるのか。神様のやることはよくわかりませんが。
そういう悪いことをするのをめっ、して捕まえるというなら……クマさんの得意分野、です。がんばりましょう、ね」
そう。『世界を滅ぼす』力を持って、『全てを食べてしまう』ほしのまもの。それがこの世界由来の存在なのか、それとも――
「ほしのまもの、というネーミングは列星十二宮(サイン・エレメント)のモノだけれド、その存在その者は別個だったりしてネ」
にたりと笑った『屋上の約束』アイ(p3p000277)にハルツフィーネはぱちりと瞬いた。
「だから、神様なんて言ったんだろウ?」
「はい。……神様、は、居ます」
混沌世界は様々な世界を受け入れ喰らうと言われていた。
だからこそ――『混沌世界が様々な異世界を吸収するために引き合った』時に生まれたエネルギーが実体化したのではないか、と。そう考えたのだ。
「ふぅム、ふぅムふぅム……ウンウン、ほしのまもノ……現実世界……これが何かの足掛かりに成れば良いんだけれどねェ。
異世界と混沌を繋グ、その足掛かりになる可能性もありそうだシ? ……僕自身、双方行き来できる方法は知りたいしサ」
行き来できる可能性は定かではない。だが、アイの脳裏に過ったのはジェーン・ドゥと名乗って居た『名無しの少女』だった。
アリスとも呼ばれたバグエネミー。至高であると自らの存在を定義した彼女は『混沌世界に吸収され自身の故郷が喪われる前にマザーが拾い上げたデータ』であったではないか。
(あ、嫌なこと考えついた――)
『雷陣を纏い』桃花(p3p000016)の表情がそんな風に変わった事を『ご安全に!プリンセス』現場・ネイコ(p3p008689)は見逃さなかった。
「って、顔してる」
「ゲ」
桃花にネイコが笑いかける。『Lightning-Magus』Teth=Steiner(p3p002831)は「同じ感想が産まれた」と一連の話を聞いていて俯いた『絶対妹黙示録』ルージュ(p3p009532)を見遣った。
「アリスねー……」
ぽつり、と呟いた。アリス。彼女が生きた意味があったなら。
ドウだって、ビブリオフォリアだって、『ほしのまもの』とは何かの推測を立てることが叶って仕舞った。
つまり、境界<ロストシティ>とは。
ライブノベルなどで干渉される異世界の中で、今、まさに混沌世界に飲み込まれんとする『不可避の力』に干渉する事が出来ているということではないか。
境界深度が高まったことで、最も接近し、混沌世界の一部になろうとした異世界の内部へと渡ることが出来て居る。
世界が滅ぼされんとしているのは混沌世界が全てを飲み込み食らい付くしてしまうからなのだろう。世界が世界を喰らう事で存続する。まるで意味の分からない荒唐無稽な神様の遊びでしかない。
「成程な。『ほしのまもの』はそれが実体化した奴だから、持ち帰って境界図書館で使えば、R.O.Oで観測しなくとも『渡れる』ってワケか。
ただし、壊れかけた世界……いや、もはや飲み込まれる世界に対してだけの話なのだろうけれどな」
Tethは相変わらず愉快なことを考えるモノだと此方を覗き見ている実践の塔の塔主と――先程からもの凄く喧しく賑やかな声を響かせる想像の塔の塔主――の事を考えてから嘆息して見せたのであった。
●
宝瓶宮へと列車が到達し汽笛を幾らか響かせてから、去って行く。終着駅にしては伽藍堂とした無人駅という印象を最初は受けたが――
「あ、やぁっぱり来たじゃないですか。拙者の言う通りですよね? ねー、ヴィオちゃん!」
にんまりと微笑んだルル・シャドウに呼び掛けられてから邪神はゆらりとその体を動かした。振り返った彼女の支線から遁れるようにビブリオフォリアが身を隠す。
「ビブリオフォリア……?」
ドウはそっと彼女の手を握り締めた。ドウは自身の方針を定めている、それは自分自身のコピーであるビブリオフォリアの成したいことを手伝う事だった。その邪魔になるモノを打ち払う剣となる事を決めたのだ。
「ドウ……、良いですか? 私は――」
彼女の目的が、どうしたって苦しくなるのだ。助かって欲しいと願えども、クオリアにもドウにも同じ事を告げて居る。
つまり、二人が協力して『ビブリオフォリア』のデータを秘密裏に持ち出したいのだという。細やかな秘密、それは咎められるモノではないだろう。消え去るはずだったデータの欠片をこっそりと拝借するだけだ。
(……現実の私と、外の世界をみたいだなんて、本当に)
自身から分かたれたもう一人の『私』。それがパラディーゾ『ドウ』いや、『ビブリオフォリア』と名乗った本の虫。
異なる場所で生まれ、、異なる道を歩み、異なる運命を見つけ、ここへと至った。彼女の終着点は、彼女が定めている。
「……あれが、『ほしのまもの』……?」
でかいと呟いた定の姿を見付けてからドウはビブリオフォリアに付き添って彼の元へと向かった。
「この世界の定君。突然、すみません。あちらの定君とは全く違う生き方をしていたのだと思いますが……こちらの世界でも変わらず、心優しい子ですね」
「エッ、あ……いや、ただ……さ、寂しいだろ」
定はぽつりと呟いた。ビブリオフォリアは定には目的を話さないのだろう。彼はその為に頑張ってしまうと識っているからだ。
「そうですね」
微笑んでからドウは肩を竦めた。穏やかな時間を今は過ごし続ける訳にも行かないか。
「よぉし~ビブリオフォリアがぁ旅の終点に悔いなく辿り着けるためにぃ。
パラディーゾのみんながぁ新たな可能性を掴めるためにぃ。邪神の二人がどんな結末であれ共に眠れるためにぃ。エイラぁ頑張るんだよ〜」
にんまりと笑った『水底に揺蕩う月の花』エイラ(p3p008595)の穏やかな声音に桃花はまじまじと眼前を凝視した。
邪神も、ルル・シャドウも自身達から分かたれた存在だ。それが『友人』を得て、どの様に変化したかなんて説明されなくったって理解している。
(そうだよな。『影歩き』も『邪神』もヴィオとしか思えネーんだよ。だったら、邪神が『ルル』をどうしたいかなんて――さァ!)
最後の最後に、彼女が『邪悪なだけの塊』ではなく『友人を得てしまったヴァイオレット』であったなら。屹度、ルル・シャドウにどうするかなんて分かりきっていた。狂って居ても狂いきれない。狂いきれないからこそ、苦悩する。人と邪のハーフの娘。
「やーっと追いついたゼこのヤロー。この感謝感激可愛い桃花チャンから作られたのがテメーみてーなヤツでこっちは風評被害なんだヨ!
聖女ルルといいテメーといい! 世間が桃花チャンのカワイさに嫉妬して逆風ばっかだゼ!」
びしりと指差した桃花に「いやいや、正当な評価では?」と嘲るようにルル・シャドウが返す。
その反応そのものも確かに――と考えてから、『桃花』ではない『夢見』も色々居たからだと言う風に判断しておくことにした。酒を呷って、器物破損を繰返す夢見達の所為にしておこう。
――それは置いておいて。
「ほしのまものは超絶美少女の桃花チャンと可愛い仲間達が頂くゼ! テメーはおとなしくしてな! 大人しくシネーなら殴る!」
「ヴィオの邪魔をするなら拙者を倒してからにするんですね!」
踏ん反り返ったルル・シャドウよりも先に『邪神』が動いた。『ほしのまもの』は巨大なる生物だ。邪神が喰らう事を目的にしているならば、それを食い止めたいというのがルージュの考えだった。
「わりーな、ねーちゃん達。正直、何が正しいかは、おれも判ってはねーけど……。
最悪ほしのまものをかじらせる事は後からでもできるけど、ねーちゃん達を封印したら何か元に戻せねー気がすんだよな。
だから、封印はせずにボコボコにして縛って連れてかせてもらうぜ!!」
「戻る道なんてないのに」
ぼそりとルル・シャドウが呟いたがルージュは意味を図りかねると行ったように眉を顰めた。
ほしのまものを吸収させてしまえば、邪神達を封印する必要が出てくる。それを防ぐ為にも、先んじて邪神とルル・シャドウを倒したいというのがルージュの考えだ。勿論、それでほしのまものを封印しきるのが難しいのは確かである。
「――それじゃ、ホントの本番の前にまた一つ世界を救う戦いを始めるとしよっか!」
にんまりと笑ったネイコは笑顔で手を天へと向ける。
プリンセスチャージ! 『ご安全に! プリティ☆プリンセス』となるべく武装を身に着けて世界平和のために彼女は戦うのだ。
「こっちはこっちで何とかしておくから、先ずはそっちの相手は任せたよ?」
「ええ、大物をなんとかしなくっちゃね」
ほしのまものへ向けてアンカーを打ち込み、至近距離へと近付かんとするヨシカはくるりと振り返った。
所在なさげにビブリオフォリアの背中を追っている定が立っている。遣ることは山盛りだ。だと、言うのに『僕』は何をしているのか。
「ボーっとしてないで何かしなさいよね、男の子でしょう!」
「ッ、あ、え、でも……」
でも、でも、だって、でもないとヨシカは叫んだ。至近距離で見たほしのまものはぶよぶよとしており青い躯の内側にうっすらと星が浮かんでいる。
ヨシカと共にほしもまものを引付けるが為、ネイコはエフェクトを刀に纏わせた。
「行くよ、プリンセスストライクっ!」
舞い散る星くずの下を器用に走り抜けていくのはイズルだった。パラディーゾと、そうであったバグデータと、それから――『元』が同一であった者達の此処の考え。イズルにとっての『ヒト』とは即ち自我の有無だ。それはつまり、ここにいる『全員』がそれぞれの思いを抱いた『ヒト』なのだが。
(それは必ずしも仲良くできるという意味にはならないのだよねえ、ヒトというものは難しいね。
いいや、もしかすれば……だからこそ『ヒト』なのかもしれないね)
データの解析を行なっていたイズルは「いやさ、それって先に言って貰っても良かったよね?」と邪神へと問い掛ける。
彼女はデータを補完し、保管する。分離したからこそ開いた穴にほしのまものを蓄積させているのだろう。器だ。
そうあるように作られた自我のある器。つまり、彼女の存在と考えとは裏腹にゲームデータ的には『封印を行なう事が正しい』と解説テキストには示しているかのようである。
「けれど、それに抗うのも我々『ヒト』だからね」
肩を竦めてからイズルは邪神とルル・シャドウを見詰めた。邪神の周辺には無数のタロットカードが浮かび上がる。黒き靄と共に、一枚のカードを引き抜く彼女の唇が吊り上がる。
「さて、占いましょうか――?」
「ええ、占ってください! けれど! 私達が言うのも何ですが、厄介過ぎるイレギュラーは見逃せません!」
此の儘、何気なく喰わせてしまえば邪神やルル・シャドウは強化されてしまう可能性がある。厄介すぎる『厄介』を許せやしないとカノンは冒険精神を奮い立たせた。
ほしのまものと邪神の間に滑り込んだカノンは模倣する。『アナザーリバースアクセラレーション』――異世界の自分の力をその身に宿し、叩き込んだのは妨害魔法。
ほしのまものを捕えるならば、周辺のほしくずや邪神達への行動を出来うる限り妨害しておかねばならないか。縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧は『譛?菴朱剞縺ョ諢乗?晉鮪騾』を利用してほしのまものとの対話を試みた。
予期せぬエラーでその姿を得ている縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧にとって意思の疎通は手を焼くが慣れれば案外スムーズだ。
『世界のリセット したら 他にしたいこと、ある?』
静まり返っている。何の声も言葉も聞こえない。星は「あいつ、からっぽなんかなあ」と呟いた。
「聞こえてへんのかな? 大丈夫? ほしのまものくん? ちゃん?
どうして沢山食べてどうしたいんやろなぁ? もしかして、『口』が必要なんかな。なんか細工せなあかん……?
その辺が割とあやふやでなぁ。さっきの操ちゃんの侵略云々の話もあるし、可能ならキチッとわかった上で警戒しときたい所やけど。
……その辺とか知ってるんかなぁ。星の声、とは違うけれど似たようなものではあるんやろうし。テレパシーもあかんねやろ?」
星はううんと首を捻った。確かに世界への侵略も、侵食も気にはなる。「色んな世界にいけるなら興味あるかも☆」と微笑んでいた『叫ぶ流星』ナハトスター・ウィッシュ・ねこ(p3p000916)とて、ポルックスとカストルの世界を護る一助になるのならば協力したいと考えて居た。
「うーん? 何にも言わないね?」
ぴょんと踊るようにほしくずを相手にする。久々の星猫魔法は流れ星に乗った猫たちと共に降り注ぐ。星達のの饗宴。
美しく鮮やかな世界の中でナハトスターは不思議そうにほしのまものを見詰めていた。
「何だろうねえ?」
「さて、運命(さだめ)はどう示したかのう。……まあ、よい、これは妾の気紛れであり運命という流れの中の紛れでもあろう」
口元をそっと隠すように指先を当てた『秘すれば花なり』フー・タオ(p3p008299)が道士服を思わせるドレスを揺らがせる。
影は、フーの力となった。邪神の影と混ざり合って砕かんとする圧力。邪神とルル・シャドウの足止めは必須事項であると識っている。
「さて、影よ、星を喰らえ」
「わ、わ、真っ暗になっちゃうね!」
ナハトスターの声にエイラが振り返り「わぁ~~、真っ暗だねぇ~~」と微笑んだ。ほしのまものは上位存在だ。世界の何かを識っている。
だからこそ、ほしのまものに問い掛ける者達が居るのだ。その一助になるべきだろうか。
「チャンスは二度……いいや、一度だ。"どっかの誰かさんが消える前に封印を成功させるチャンス"が二度もあると思うか?」
Tethの問い掛けにP.P.は「ないわ」としれっと応えた。ない。あったとしても『ない』とP.P.は応えることだろう。
「そうだな……まぁ、実際にはあるかもしれねぇ。だがな。そんな余裕の持ち方は、時として致命的になりかねないぜ。
――まぁ、そういう事で、さっさとボコしてKOしてくっから。封印は頼むぜ、パラディーゾさんよ!」
走るTethに続いてP.P.は走り出した。『あたし』を眺めて居たその眸には未だに苛立ちばかりが滲んでいる。
「ヴィオにルルだっけ?」
――人生の終わり方というのは沢山ある。
『アリっち』にも言ったことだ。きうりんはめでたしめでたしが嫌いだ。本当の本当にめでたかったかなんて、人生の最後まで分からない。
命の終わりの日に、ちゃんと幸せだったと笑って言えるようなゴールに辿り着きたい。模索したい。ただ、そんなことはある意味でどうでも良いのだけれど。
「……ま、君たちの終活手伝ってあげるよ。ひとりぼっちは嫌だもんね。
処女宮でのこと覚えてる? 私のお腹にもほしのまもの入ってるんだぜ?」
腹を撫でてきうりんは笑った。腹をかっさばけば『出てくる』かもしれないと笑みを浮かべたその表情は悪辣な気配を乗せる。
どう出るかな。どう出てもいいよ。なんにせよ、こっちを向かせてあげるから。だから、こっちを見れば良い。
ほしのまものを食べたらデータが破損する? なんぼのモノだときうりんはほしのまものに手を伸ばした。
強かに邪神が滑り込む「やらせはしない」と低く囁くような声を上げて。
「差し上げることは出来ません」
壱狐が『自身の本体』たる神刀を振り下ろした。知識を活かして眼前のバグデータを見る。どうやら邪神の方が欠陥がある。それは『分かたれた存在』であったからだろうか。
大地を蹴って、壱狐は陽光の如き攻撃を重視した構えを捕った。するりと走り抜け、接近する。
「それは、こちらの得物です」
「同じ言葉をお返ししても?」
邪神の『データ』を攻撃するが如く壱狐は無数の攻撃を叩き付けた。此処で死んだとて大して問題は無い。
死に関して軽く扱えるのがR.O.Oだ。データであるその体は神をも『切り裂く』が為に最大の一撃を叩き込んだ。
「星でも神でも斬って押し徹る、そう念じて打った刀ですからね!」
リスポーンできるなら、問題なんて無かった。ぐん、と身を捻った壱狐を狙う一撃を遮るようにカノンが魔力を放つ。
「何があったって、厄介事を見過ごせないのです!」
冒険者は、無数の世界を渡り歩く。ああ、確かに『異世界渡航』は魅力的だがそれ以上に問題点は山積みだ。
どうして一部世界に干渉できてしまうのか、それが気になって堪らないのだ。うずうずと知的好奇心を揺らがせながらカノンは邪神と向き合い続ける。
「……さて、食事中に無粋ではございますが。少し遊びませんか、"邪神"さん、"ルル"さん。」
邪神はきうりんを見て居る。その食事を食い止めることだけに注力して居る。ルル・シャドウは桜陽炎を振り返った。
「あ、今忙しいんで」
「キャッチじゃネーんだヨ!」
桃花は思わずそう言った。ルルシャドウはからからと笑う。桃花は勢い良く距離を詰め、雷気功をその喉元へと叩き着ける。
「Hey! 鬼サンこちら!」
武器など必要は無かった。桃花の思念に反応する液体式超小型火炎放射炉から手を離し、現実世界でも培った体術を叩き込む。
「ベツにお前らにゃ恨みはネーから大人しくしてりゃ殺しはシネーヨ。
特に『邪神』チャンについては桃花チャンも出来りゃあ戦いたくネーからナ!」
「じゃあ、ヴィオを虐めるのやめません? 拙者も困っちゃうなー」
「全然困ってネーダロ!」
邪神には友人を感じて仕方が無かった。だが、ルル・シャドウは腹が立つため何度か殴っておこうというのが桃花の考えだ。
「『邪神』もルル・シャドウもモーチット平和的な解決を考えて貰えネーもんかネ? ドーシテモ悪い手段取らなきゃナラネーって理由もネーだロ?」
「いいえ、ワタクシたちは――」
桃花は真っ向から邪神を見詰めた。分離したパラディーゾ。不完全なバグデータ。それが二人を表している。
「……データが壊れてるとか、バグだから足りねえって事ダガ……。
ほしのまものを食えばなんとかなるんなら正常なデータかデカイデータ量を食えば何とかなるんだよナ?
じゃあ桃花チャンを食えヨ。
桃花チャンはもうログインできネーようになるカモだが見捨てるのも気分よくネーシナ。
『邪神』はシラネーがルル・シャドウはまぁまぁ成功の目もあるんじゃネーカ?」
時間稼ぎになりやしないかと桃花が声を掛ければルル・シャドウはからからと笑った。
「いりません」
「なんで」
「拙者、やりたいことがあるので」
適当に掴んでいた『ほしのまもの』の欠片を囓ってから、ルル・シャドウは笑った。
「聞きたいことあれば拙者の口を使って答えますよ、『ほしのまもの』が!」
――メッセンジャーの役割を果たしてやるとは至れり尽くせりだ。桃花は「ばーか」とルル・シャドウを罵ったが彼女は意地悪く笑うだけだった。
だって、意地が悪いんだ。桃花(わたし)がそんな事を望むから拙者(わたし)はこんな事をする。
識ってるだろ、桃花(わたし)。拙者(わたし)は案外友達思いなんですよ。
●
「オヤ、怪我はないかい守護者諸君! 怪我が無いなら何よりサ! フフ、大丈夫、君達は僕らが護るヨ!」
「任せて欲しい」
タハルと共に守護者の保護に当たっていたアイはウィンクを一つ。ほしくずたちを撃破しながらもアイの眸はほしの魔物を見据えていた。
「さあ、ルル君の『お口』を借りて話せるんだったかナ?
どのみち僕らは戦う事は請負!ならば話しながら戦うのも時には一興、違うかナ!?
世界のリセットが目的ならバ、どのみちお話の機会も今夜限りかもしれないだろウ?」
「『ええ、そのようですね』」
ルル・シャドウの唇から、ルル・シャドウではない誰かの声がした。アイの躯を薙ぎ払ったルル・シャドウの腕。直ぐさまに復活し、最戦闘に戻ったアイを見てルル・シャドウが首を傾いだ。
「……『復活……、玩具のようですね』」
ほしのまものはルル・シャドウの口を借りながらプリティ☆プリンセスを相手取る。梨尾は「ほしのまもの」と呼び掛けた。
「聞いても良いですか? ……あなたは食べられる事で何らかの影響を及ぼすのですか?
体内から洗脳や寄生とかも上位存在ならありそうですし……。
干渉した時に異世界の空気に含まれている細菌、ウイルスなどが元の世界で猛威を振るうかもしれない
地獄への道は勢で舗装されているとも言いますし。帰る場所が酷い事になったり、最悪跡形も無くなったりしたら嫌じゃないですか!」
「『いいえ、私はあなたの中の人間の世界にも影響を及ぼしません』」
ルル・シャドウを相手にしていた梨尾は「どうして、そう言い切れるんですか?」と問うた。前線で引き寄せ、ルル・シャドウをこの場に留める係を梨尾は担っている。
不思議がって問うた梨尾にほしのまものは嘸おかしそうに笑って見せた。
「『あなたの世界は混沌にそれ程近くはないでしょう』」
「……近く、ない?」
「『わたしはただの星を滅ぼすための機構』――ああ、面倒くさいんじゃないですか!? つまり、喰われそうな世界じゃないってことですよね」
ルル・シャドウが突如として自身の口を借りているほしのまものに問い掛けた。一人が二人で話している。そんな光景にぱちくりと梨尾は瞬く。
「上位存在? だと聞きました。よくわからないですがえらいのでしょう。
だからと言って、今世界に住む人……いえ、全ての存在の何もかもを奪う横暴を、何故行うのですか?」
ハルツフィーネは梨尾の疑問を引き継ぐように、静かに問うた。横暴ではある、だが、理由があるのならば聞いておかねばならない――最も、理由がなんでアレハルツフィーネはほしのまものの行いには否定的だ。
強大な敵と戦えることを楽しむクマさんとハルツフィーネ。第二ラウンドとして戻ってきたハルツフィーネは世界法則の一部を掌握したように『クマさんは最高だ』と声高に叫ぶ一撃を叩き込む。
「『世界が吸い込まれる前に、せめて世界を壊さなくてはならない』」
「……それが破滅、とでも?」
ハルツフィーネの指先がピクリと動いた。正しく横暴で傲慢な神のような言葉だ。脳裏に浮かんだのは故郷を蹂躙する『異世界』である。
事情は違うが、行いとしては似ている。世界を全て更地に変えてしまわんとするまものと、世界を全て修正しようとする使徒たち。
「『定められた破滅に従うだけ。わたしはそうなすべく産み出された存在だ』」
「……成程、大凡は、理解しました。けど、納得は、していません」
クマさんが勢い良くほしのまものを殴りつけた。別に倒してしまって――は、いけないためセーブをしているが、ほしのまものは思ったよりも強靱だ。
易々と喰らうていたきうりん曰く『喰うのは出来るけど腹が爆発しそう』だという。ルル・シャドウを見て居る内に理解したが佐伯操が食べない方が良いと言ったのはデータが乗っ取られ上書きされる可能性があったからか。
きうりんを殺すべく立ち回る邪神は何故か、彼女に喰わさぬ事だけに躍起だ。「どうして、そんなに邪魔するのさ」と唇を尖らせた彼女へ「ワタクシのものです」と彼女はそれだけを告げる。
(――何か、理由があるのでしょうか)
桜陽炎はまじまじと邪神を見て居た。『彼女』の行動を見て居るとどうしようもなく、考えてしまうことがある。
きうりんと縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧を相手にしている邪神。まるで此方に目を向けず、只管に戦う彼女。
縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧がいただきます、と口を開いた。あんぐりと大口開いて喰らおうとした『ほしのまもの』は何の味もしない。
無味無臭。そう呼ぶべきか。決して美味しくもなかったが多く摂取するべきではないと操から指摘されていた。
「これ、あんまりおいしくないよね」ときうりんがほしのまものを指差した。
『おいしくないね』
「うん。本当の味じゃないんだろうね」
空っぽのデータを腹に詰め込むようだときうりんはそう言った。縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧はそうなのだろうと頷く。
ああ、だって、本来は『外』の生き物なのだ。現実であれを喰らえばどのような味がするのだろう。
……現実では食べられないけれど。『混沌』の外に存在するくせに『混沌』に喰われてしまう世界。識りたい味わいを此処で食べられず好奇心を満たせなかったのは残念だけれど――成り立ちだけは納得できた。
「救い、倒されるために……確かに物語であれば主人公ですね。そう、『後の世界に責任を持たない』終わり方の。
本ならばそれで終わることも素晴らしいのでしょう。けれど、この世界は続いていて、そしてこれからも、『続く』。
終わらせなどしないために、ここまで来たのです―――そうでしょう、……『影歩き』?」
「ええ、……ワタクシは一つ分かって居る事はありますよ」
にこりと微笑んだ影歩きを守り抜く事を桜陽炎は念頭に置いていた。それがツユ――空梅雨にとっては望まれぬ行動であったとしても。
(らしくない、後を託すなんて……)
邪神が倒れたならばルル・シャドウに全てを託すつもりだったのだろう。影歩きも、それに何となく観ず居ている。
「『世界を壊す力』『元の世界への渡航』……それだけの為に二人で居る事が、どうにも不自然です」
「疑り深いのですね、ワタクシは」
空梅雨の眉が吊り上がった。
桃花は優しい、ああ、けれど――彼女はワタクシを勘違いしているのだ。ワタクシは優しくもない、善性の生き物でもない。悪辣であらねばならない。
桜陽炎は優しい、ああ、けれど――貴女の慈悲の刃はワタクシとは違う。ワタクシは死んでしまったって仕方が無い存在なのだから。
「邪神、あなたは……本当は何を願っている?
倒す間際に、聞いておきたい。『ワタクシ』から分かたれた者として、何を想い、願ったのか」
「『ワタクシ』に聞かずでも分かって居るのではないのですか?」
邪神が唇を吊り上げた。心がわざめく。現実世界では彼女は分かたれていない。桜陽炎が考えたように『完全に渡れる』のか――それとも。
「邪神の目的は、元世界への回帰……ならば、ルル・シャドウがほしのまものを喰らおうとするのは何故?
それだけが目的ならば、ルルに後を託す事は不自然です。邪神……もしかして、『影歩き』は――」
ゆっくりと振り返った空梅雨の視線に応えるように影歩きは「あのAIが想像するワタクシって案外優しいのですよ」と囁いた。
「ツユ、護ると決めた中に彼女が存在している。此処は譲れないのです。ですが……」
「ええ、良いのです。サクラ。ワタクシだって、思う事がある、サクラだってそう」
空梅雨はほしのまものを放置しても、影歩きが同化したとしても、世界が滅びる可能性を識っている。だからこそ、桜陽炎の言う通りの行動を行なおうとしているのか。
ただ、それが世界渡航に繋がるわけではないのだろう。けれど――邪神と影歩きはふたりでひとつ、分かたれたと言えども欠けたデータは勿論存在している。
「……ルル・シャドウは、『ワタクシ』に同化するつもりですか。欠けたバグデータから『影歩き』もビブリオフォリアのように消失する可能性がある。それだけ縺れたパラディーゾというデータの損壊は言葉にもし得ないものだった?」
「あはは、バレてるじゃないですか、どうするんですか、ヴィオ」
「……ルルを、ワタクシを、生き残らせたいというならば『封印』を行なえば良いのです。
ワタクシとルルは所詮は世界を滅ぼすために産み出された存在でしかない。ほしのまものを腹の中に巣食わせたのだから『ワタクシたちをどうにかするしかない』でしょう?」
きうりんははっと顔を上げてから「あーね」と何かに納得したように頷いた。
「そうだよね、私達って『死んだってもう一度がある』。けれど、パラディーゾも、NPCも、死んだら二度はないんだよね。残酷だ」
きうりんは自爆スイッチを連打してデスカウントを重ね立っても良かった。屹度、この場できうりんが一撃でも叩き込めば、二人を殺す事が出来ると気付いて仕舞った。
きうりんの力を持ってしてもほしのまものを倒しきる事は出来なかったが――『きうりんが食べ』て影歩きとルル・シャドウが囓ったことで、その力は分担された。
「嫌らしいことだよね。けど、現実に侵食? ちょっとやってみたいじゃん。
自分じゃない自分で現実に出ることができたら、もっと面白いことが出来そう。だめか。
……ま、食べ過ぎたら最悪私ごと封印すりゃいんじゃない? って感じだったんだけど、だめかあ」
きうりんはへらりと笑った。
●
――ねーちゃんたちを、倒すと悪い影響があるのか。
それとも、ねーちゃんたちに『取り込ませた方が』いいのか。
悩ましげであったルージュは「封印しようとしてる、素直にそう思ってるんだ」とほしのまものへと告げた。
「言わないのもフェアじゃない。ねーちゃん達を封印したらねーちゃんたちはどうなる?」
M.Saeki:私を信じて欲しい。
「操ねーちゃんを信じていいんだな」
ルージュは縋るような声音でそう言った。もう二度と、自分の手で何かを喪いたくは無い。
ほしのまものを吸収することに意味を見出せる。それだけでいい。『邪神とルル・シャドウ』を倒しきらずに封印した場合はそのデータをサルベージする可能性もある。
(心置きなく殺すか、それとも……って事だよな)
まものが弱体化している。封印し、それをデータとして境界図書館に持っていくことで『ほしのまものという世界への強制力を有する存在』を利用して渡航する。そのハブとしてルル・シャドウを利用するならば――
「ああ、もう。勝てるかどうかもわかんねーしな、ぐだぐだ悩みのは止めて最後は出たとこ勝負だぜ!!
ねーちゃんたちも覚悟しろよ! 何が起ったって『最期はハッピーエンド』にしてやるからな!」
細かいことを考えたくはない。邪神とルル・シャドウが少し吸収してしまったならばこれ以上はないように殴って殴って殴るだけだ。
ルージュの愛は叩き着けられる。ルージュの愛は、誰よりも晴れやかであるべきだ。
ルージュの愛は、『絶対的な妹』による、『ねーちゃんとにーちゃん』へのメッセージなのだから。
「……このゆりかごが生まれた理由が分からないまま消し去るなんてコト、させてあげない」
データを奪っても、死んでしまえば『消化』される歯痒さを感じながらヨシカはふと、思い当たった。
星を喰らうたのはこの世界が『星の世界』だったからだ。混沌世界に飲み込まれていく境界<ロストシティ>。
「ねえ、ほしのまもの。あなたは『この世界が消え去るから』破壊しているのでしょう?
他の消え行く世界を救える可能性は、あるの? あなたが壊して平らげて作り直していくならば……飲み込まれた世界はどうなるの?」
「『壊して世界が咀嚼したら、また、似通った存在が生まれる可能性があるでしょう。
――勿論、わたしと同じような存在が消え失せてしまえば消え行く世界は救われる。『わたしが封印されれば』混沌は飲み込むことをやめるでしょう」
「……その場合、どうなるのかしら」
ヨシカの問い掛けにルル・シャドウの唇を借り受けていたほしのまものは淡々と答えた。
「『わたしの存在はなかったことになり、全てが元通りになる。その代り、二度とはこの世界には影響は及ぼせなくなるでしょう』」
世界の存在が離れていくという事か、とネイコは認識していた。ほしくずを払い除け、邪神とルル・シャドウがぎりぎりの所で粘っていることを知る。
邪神を護ろうとするルル・シャドウはほしのまものとの対話に必要不可欠な存在だったからだ。
「やれるのが妾! できるのが妾! 何故なら最強だからのう! それにしても気が利かんのう、茶の一杯くらい出さぬか」
胸を張った玲。封印できるまで戦い続けてやると玲は考えて居た。
「境界<ロストシティ>の他愛もない話をしてもよいかの?」
「『何を聞きたいのでしょうか』」
「このORphanから干渉できる境界<ロストシティ>は全て混沌に近く、取り込まれそうになった世界ということかのう?」
玲の問い掛けにルル・シャドウの口を借りてほしのまものは「そのとおり」だと頷いた。
「ならば、アリス……ジェーン・ドゥの世界は?」
「『勿論、出来たでしょう』」
ぴくりと回言世界とルージュの肩が動いた。
「成程……。異世界に与える影響の度合いは?
どこまで影響を与えることができるのか、或いは逆に絶対に与えられない影響が無いか……とか。
興味があるから暇潰し程度に話してくれるとありがたいんだが。リセットする目的が混沌世界が異世界を取り込んでいるという事も理解した」
だからこそ『混沌』という名前なのかと回言世界は静かに問うて。一芸に特化し、優先するべき守護者達を守り抜くと決めたのはここで守護者達が死んでしまえば現実に戻って世界を覗いても同じ事象が起ると判断したからだ。
「どんだけボロボロになろうとも、ガンッガンに圧力を掛けまくって邪魔してやる!
消えかかっているアイツの前で、失敗なんて出来る訳ねぇだろ? なぁ!! だから、許さねェよ!」
Tethが吼えた。『邪神』のデータに揺らぐ。パラディーゾ達を支援すると決めたからだ。
ビブリオフォリアの決心を台無しにしてたまるものか。
「そんなに腹ペコなら、俺様の雷撃フルコースをたっぷりと喰らわせてやる。俺様の奢りだ。遠慮せずに全部喰らっていきやがれ!」
「ワタクシは邪神なのですよ」
「知ってるで。けど、邪神が喰おうとしてるのは『水瓶の座以降は全部喰った』おっかないやつや。
だから、こんなに苦戦してる。せやろ? それに、さっきから星星言われてむず痒いねん」
困ったわあと肩を竦めた星は星巫女やクオリアと共にほしくずを相手していた。と、言えども星巫女は黙りこくって淡々とほしのまものを見詰めるだけだ。
「なあ、星巫女……どないしたん?」
「……いえ、羨ましいな、と思いました」
羨ましいと言葉を返す星へ星巫女は肩を竦める。諦観に寄り添っていた女は、静かに声音を震わせる。
邪神とルル・シャドウには定められた終わりがある。この世界を救うならば少なくとも二人を倒しきるしかない。
カノンが「退いて欲しかったのですが」とも告げて居たが、それは無理な存在だったのだろうから。
「私達はデータです。それも、歪んだ形で生み出されたバグ。ORphanの中で過ごし続けて……此処に居たって良く分かりました。
人間とは、目的を得なくては生きていけない。この『私』は何処にも存在の意義を見出せなかったのでしょう」
伽藍堂のままで星々に魅入られるように過ごしていた。この美しい星空を守りたいと願ったことだけが『星巫女の存在理由』になったのだから。
「それじゃ、あかんの?」
星は問うた。星巫女が不思議そうな顔をする。
「……この星空、護って、外を見てきたる。また、それを教えたっても構わんし」
「『私』は、随分と前を向けるようになったのですね」
むず痒いと星はまたも肩を竦めた。眩い光の中を邪神が駆け抜けていく。カノンの魔力が光を放つ。
友人の顔面を殴る経験をした事があるだろうか。P.P.は少なくとも『良い気分じゃない』と応えるだろう。
別人であったとしても友人の顔をした二人。そんなものを殴ってスカッとしましたとは言い出すわけがない。
「ねえ、食べちゃったからあんたらを倒さなくっちゃならないことは分かったわ。摘まみ食いなんて手癖が悪いわね」
「優しさですよ! その方が憂いなくぶっ殺せるでしょう?」
笑ったルル・シャドウにP.P.は「うるせえな」と呟いた。確かにそうだ、憂いなく倒せる。きうりんは取りあえずの自爆スイッチをしていたが――P.P.はデカブツを前にしてからクオリアを蹴った。
「あたしってそんな顔してる?」
「……何を云ってるのよ」
「……与えられてばかりの『リア・クォーツ』には、道を切り拓く力は無いと?」
クオリアはP.P.を見て居る。ビブリオフォリアが死に至る。それを目前としてクオリアは指を咥えてみているだけなのか。
「あたしはやってきたわ。時に扉を蹴り飛ばして抉じ開けたり、時に分からず屋に頭突きしたり、失いたくないモノを護る為にいつだって全力で。
――あたしに出来てお前に出来ない訳ないでしょうが!
仲間を救いたいなら行動しろ、可能性を探せ。情報があるなら教えろ、手が必要なら言え」
「……」
「勘違いしないでよ。メソメソしているお前の顔見ていると、吐き気がするのよ」
外方を向いたP.P.は『ビブリオフォリア』の考えを識っていた。もしも、それを手伝うとクオリアが決めるならば手を貸す。
ドウはクオリアの出方を見ている。リア・クォーツならば我武者羅にビブリオフォリアが封印を肩代わりすることさえ拒絶するだろう。
「どうすんだよ! 『あたし』!」
P.P.の発破を聞いてからクオリアはすう、と息を吸った。
「ビブリオフォリア、アンタが封印するとき、必ずデータの欠片を入れなさい。それを持ちだして貰う。アンタが外に出るならそれしかない」
クオリアの眸には信念が宿っていた。ビブリオフォリアが封印を成して、クオリアを護ろうとする。それを拒絶しちゃならない。
愛している。母のように、深く。それこそ、家族の情だった。
血の繋がりが無くったって家族というモノは成り立つと『このリア・クォーツ』は信じている。
「アンタを連れて出てあげる。アンタの欠片をアタシにも頂戴。必ず、アンタの望みを叶えて……あとクソハデスをぶん殴って、データを復旧でもさせてやる!」
叫んだクオリアに「やればできるじゃない」とP.P.はその肩を勢い良く叩いた。
「さ、そろそろクライマックスにしようじゃないか!」
Tethが走り抜ける。その傍で星は「支援したるから、カッコイイの待っときや!」と明るい声音で発破を掛けた。
ああ、そうだ。時間を掛けすぎてはいけない。邪神のデータが揺らぐ。突き刺した刃を引き抜いた壱狐は「死ぬために、此処に来たのですか」と問うた。
「いいえ?」
「目的を語るつもりもないのですか」
「ワタクシは邪神ですから」
全てを推測で終らさなければ『優しい何か』と思われることは耐えられない。くつくつと喉を鳴らして笑った女のデータが揺らぐ。
影歩きは桜陽炎に「ワタクシの欠けたデータが……」とぽつりと呟いた。邪神が消え失せて『邪なる気配』のない『人間である影歩き』だけが残されたのか。空梅雨は何も言えないときゅ、と唇を引き結ぶ。
「……こうなってしまうのですね」
ルル・シャドウだけを見詰めていたカノンの肩を叩いてからTethは「ルルは自我はあるのか」と問うた。
「『どうでしょう。結構食べてしまいました』」
「……彼女事、封印に行きます」
前へと歩み出るビブリオフォリアにドウは頷いた。封印を手伝うというならば、その手助けをしたいと考えて居たからだ。
ルージュが「ねーちゃん」とビブリオフォリアを呼び掛けた。にぃと唇を吊り上げてから、手を振る。
「ねーちゃんが決めた事だもんな。絶対大丈夫だ」
「……ビブリオフォリアさん。あなたは消滅するのではなく、死に至るんだ。
誰もが違う輝きを抱えた星。似た輝きはあっても同一ではなく、あなたの代わりはどこにもいない
『私の』ではなかった彼がそうであったように、あなたは『あなた』として記憶に刻まれた」
ビブリオフォリアはおかしそうに笑ってから肩を竦めた。
パラディーゾでも、人間だと、そう言ってくれるのだと。ころころと声音が転がっている。
「ここで終わりにしましょうか!」
壱狐は静かにそう言った。ほしのまものをその身に宿したルル・シャドウごと封印すればいい。
「確りと目に焼き付けていけよ、ビブリオフォリア。消えても忘れられねぇくらいにな!」
背を押すTethにビブリオフォリアは頷いて、微笑んだ。ヨシカとネイコが足止めをしてくれている。
封印アイテムを手にした、それはガラス色の花のようだった。まるで――母の愛のような。
「ビブリオフォリア――!」
あなたが、願うなら。ドウは蒼を身に纏う。
此処には白馬の王子様も、美しい物語の終わりもないのかも知れない。
ただ、夢見ることは間違いではないでしょう?
この世界では奇跡なんてない。この世界では死とは即ち消滅だった。
「行って!」
喉の奥から声を引き絞った。ドウの白い掌が、ビブリオフォリアの背を押した。
ばちん、と音が立つ。データが崩れていく前に。
見送る事しか出来ない自分が、見届けるまでの『物語』。
貴女が去ってしまった後の、貴女が成したコトの結末を。
貴女の、貴女達の物語のエピローグ――貴女と、貴女達の生が、意味のあるモノであったと。
「ドウ、これを!」
ほしのまものの中から一冊の本を抜き取ってビブリオフォリアが叫んだ。
データが霞む。バグに塗れた肉体を抱き締めるようにクオリアがビブリオフォリアを抱き締める。
「ねえ」
きうりんはビブリオフォリアを見て居た。『もっとも死に近かった娘』と『もっとも死に躊躇がない娘』が見つめ合う。
「で、最期まで見てどうだったの? 面白かった?」
「ええ、とっても――けれど、連れて行ってくれますか」
封印用のアイテムがビブリオフォリアの手から、ドウへと投げ渡される。
その中に、ルル・シャドウとほしのまもの――それから、ビブリオフォリアの少しの欠片が残っている。
「自我ある私の物語はここでお終い。けれど、もっと、素敵な世界を『私』が見てくれる」
――世界で一番幸せになるきうりんは敢て、めでたしとは紡がなかった。
ドウを見詰めながらビブリオフォリアの姿が掻き消えていく。
私は、私だ。
貴女は、私で、私は貴女だ。けれど、違った存在として息づいていた。息をしてしまった。
私を摘まみ上げて、外へと連れ出してくれるならば――どうか、泣かないで『私』。
貴女と冒険が出来ただけで、有り得やしない物語を見れただけで幸せだったから。
●
境界図書館へとデータを運ぶ事に決めたイレギュラーズを待ち受けていたクレカは「欠片がある」とひとつ拾い上げた。
それがビブリオフォリアであったことは問題ではない。ほしのまものの封印に混ざり込んだルル・シャドウの気配を操が制御してくれていることも問題ではない。
ただ、『一冊の本(ライブノベル)』の中身を彼女が読み上げたことだけが印象的だったのだ。
物語の始まりだけ、こっそりとビブリオフォリアは教えてくれた。
舞台は『プーレルジール』と呼ばれた地域だった。程近くに棲まう豪族クラウディウス氏族による統治を受けた美しい高原だった。
スラン・ロウにも程近く、長閑な平原地帯の光景がありありと浮かんでくる。
その地に過ごす一人の少年が剣を手に世界を旅するお話だった。
――けれど、お話は途中で途切れている。その本は徐々に、徐々に蝕まれるように消えていく。
少年が、『誰か』に出会って手を差し伸べた。
――俺の名前はアイオン。ただの旅人だ、宜しく。
「……アイオン」
クレカは呟いた。
それは――『勇者王』と同じ名前では、なかっただろうか。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
お疲れ様でした。『プーレルジール』については、また境界図書館より皆さんへご案内させてくださいね。
GMコメント
夏あかねです。R.O.Oから『異世界』へ。
『Astrological』第二回目。最終回、ですが『新しい可能性』に繋がって行くシナリオです。
(R.O.Oでのシナリオになりますが続く展開<Backdoor>は『境界』を舞台にしたものとなります)
●Backdoor(R.O.O Buggy Program)シリーズとは?
特設page:https://rev1.reversion.jp/page/backdoor_long
電脳廃棄都市ORphan(Other R.O.O phantom)と呼ばれるR.O.Oのバグデータ領域を舞台にしたシナリオ群です。
『Lost city』一連シリーズでは果ての迷宮内部に存在する境界図書館で観測可能なライブノベルの世界への物理干渉が『可能』となっているのでは――という謎を追って行きます。
『境界<ロストシティ>』と呼ばれたライブノベル等の異世界のデータが不安定な状態(エラーコード)で『本当に存在する異なる世界(混沌世界ではない他の異世界)』へと干渉可能であったならば……?
その先に待ち受けているのは現実での活動です。その足掛かりを見付けましょう。
●目的
・宝瓶宮にて『ほしのまもの』を捕まえる
※邪神もしくはルル・シャドウが『ほしのまもの』を先に取り込んでいる場合はその対象を捕縛する事が成功条件となる。
●境界世界『列星十二宮(サイン・エレメント)』
境界案内人(ホライゾンシーカー)であるポルックス・ジェミニ&カストル・ジェミニの故郷。
現実世界ではイレギュラーズが境界世界で活動することで世界に蓄積する境界深度が高まった結果、クレカと協力することで『混沌に影響を与える異世界』に干渉することができたそうです。R.O.Oはその結果を集積し、ORphanから異世界として渡ることが出来たようですが……。
皓い星々が瞬く世界。宇宙空間を思わせます。中央には白いタワーが、そして移動は列車で行われます。
その名前の通り十二の宮がタワーの周囲には連なっており、それぞれの探索を行う事ができそうです。
……どうやら、天秤宮から先は『全て星の魔物』に喰われてしまっており辛うじて訪れることの出来る『宝瓶宮』に降り立つことが出来そうです。
・星詠人(テトラビブロス)
境界案内人(ホライゾンシーカー)であるポルックス・ジェミニ&カストル・ジェミニの正確な種族。
●フィールド
列車は当日券の往復チケットのみ。
『宝瓶宮』です。巨大な水瓶が天に存在し、水が溢れ出てきている風光明媚な場所です。周辺は星空が広がっており、足場は白い大理石。
奥まった場所には幾人かの『守護者』が隠れているようです。
赤い蠍にケンタウロスの男性、四足歩行をする魚と水瓶を抱きかかえた女性、リボンを結わえた幼い人魚がいるようですね。
場所を追われた守護者が宝瓶宮の守護者である水瓶の女性『アルバリ』に頼ったようです。
この空間には『ほしのまもの』と『邪神、ルル・シャドウ』が存在しています。
戦闘が中心のようですが、それ以外にも気になることはありそうですね……。
ほしのまものは上位存在ですので、何かこれからについて質問すればお戯れでお返事してくれるかも知れません。
※戦闘時には『宝瓶宮』にての復活可能です。デスカウントは通常のR.O.Oシナリオと同じようにカウントされます。
また、特異な空間であるためか『デスカウント』の数だけ攻撃力などが上昇する可能性があります。
●封印アイテム 2個
ほしのまものが戦闘不能になる、もしくは『邪神、ルル・シャドウがほしのまものを食べた』後に使用可能です。
封印には数ターンを有します。また、強いバグデータによる強制力が必要になるため、封印を行なう際にはパラディーゾ達の協力が必要不可欠です。
(但し、それでデータが削れる可能性があるため、クオリアはあまり使用したがりません。ビブリオフォリアが代わりに協力したがるかも知れません)
2個あるため、半分ずつ食べたルル・シャドウと邪神を封印することも可能でしょう。
封印アイテムを使用中に封印を行なおうとしている対象が戦闘不能になった場合は封印は失敗します。
(封印後は現実の『境界図書館』へと持ち込むこととなります。操とご一緒に)
●登場人物
・ほしのまもの
この世界に住まうという『星を喰らう魔物』のことです。腹に星空を有する巨大な怪獣です。
人語を有しています。目的は世界のリセットです。『列星十二宮』を喰らい、全てを飲み込んでしまう上位存在です。
境界<ロストシティ>について何か知っているようですが……。
ほしのまものそのものを封印するのは非常に難しくなります。戦闘不能状態に出来れば容易に封印できるはずです。
ですが、その前に『邪神、ルル・シャドウ』の何れかがほしのまものを吸収する可能性もあります。
非常に強力なユニットです。戦闘が必須となります。
・ほしくず
ほしのまものから別たれて現れる分身体。所謂、ザコ敵に相応します。
守護者達をおそう可能性がありますので、護ってあげてください。
・邪神
便宜上そう呼ぶエネミーです。姿はヴァイオレットさんに酷似しています。
邪神は『ほしのまもの』を少しずつ腹に蓄えようとしています。
戦闘不能まで行かずともパラディーゾであった能力から足りていないデータを保管するように喰らうことが可能です。
つまり、邪神が自由自在に動き回っているときは、ほしのまもの単体を封印するより喰らい尽くす方が早い可能性があります。
・ルル・シャドウ
邪神と一緒に行動しようとしている『邪神』。殺意、殺意!
目的の第一は邪神(ヴィオ)がほしのまものを食べる事ですが、無理そうな場合はルル・シャドウが食べます。
・パラディーゾ『影歩き』
・パラディーゾ『星巫女』
・パラディーゾ『クオリア』
戦闘に参加します。出自的には安定している状態ですので、守護者の保護なども行なってくれるはずです。
ある程度の指示は聞いてくれそうです。また、『封印アイテム』を星巫女とクオリアが有しています。
・パラディーゾ『ビブリオフォリア』
戦闘には不参加です。もう消えかかっています。最後まで見ていたいようです。
・越智内 定
ビブリオフォリアのサポートをして居ます。彼女が消えかけていることを知っています。
「きっと、最後まで見ていたいんだろうな、この世界のことを」
●ROOとネクストとは
練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、バグによってまるでゲームのような世界『ネクスト』を構築しています。
R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に自分専用の『アバター』を作って活動します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline3
※重要な備考『デスカウント』
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
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