シナリオ詳細
<黄昏の園>輝き満ちる夜に星は在りて
オープニング
●輝きの夜に
如何に花や植物が咲き乱れようと、夜の闇の中では何も見えまい。
如何に空に星が輝こうと、昼の光の中では何も見えまい。
けれど、どちらも確かにそこに在りて。しかし、星は世界の何処にあっても見える。
見え方こそ違えど星は様々なものを語り掛ける。
故に、『天智竜』アルテイアは思うのだ。
「全ては天にある。それを真に読み解けるのは、竜種である私たちでしょう」
竜種ゆえの奢りもあるだろうが、アルテイアは本気でそう考えている。
星が示すものを読み解けるのは、自分たち……いや、自分だけだと。
その唯一なる手法はこの世で自分だけが持ちうる秘術だと、そう考えているのだ。
事実、アルテイアの星詠みは人間の持ちうるそれとは根本から異なるものだ。
実際には天地のひっくり返る確率ほどに有り得ないが……もし、万が一、アルテイアの星詠みの手法を教わることができたとして、誰にも理解できないに違いない。
それほどに独特の理論で構成されたそれは……出鱈目ではなく、意外にも精度の高いものであるらしい。
事実、アルテイアは星を見て不快そうに目を細める。
「邪魔が入る……へスペリデスに、来る? そうですか……」
もしそうならば、少し撫でてやるのもいい。
アルテイアは、そう小さく呟いていた。
●ヘスペリデスへ
ラドネスチタによる『選別』をうけ、イレギュラーズが辿り着いたのは『ヘスペリデス』と竜種達の呼ぶ緑豊かな場所であった。
この場所は『冠位暴食』ベルゼー・グラトニオスが竜種と人の架け橋となるべく作り上げたらしい。
人の営みを真似して作った遺跡は不格好。咲く花はデザストルの特有の名も知らぬ花。
覇竜とはこのような未知だと再度突き付けるようなこの場所はされど、不器用で不可解な感情を形にしたかのようでもあった。
いつか滅びに向かうのだというこの場所において……やるべきことは、幾つも存在する。
「『女神の欠片』……か」
『花護竜』テロニュクスと『魔種・白堊』がベルゼー・グラトニオスの苦しみを少しでも和らげるためにイレギュラーズに協力を要請したというモノの名前を『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)は呟く。
勿論、何処まで信じていいものかは分からないが……女神の欠片は様々なものに形を変えているという。
たとえばそれは亜竜の卵にであったり、あるいは竜種の鱗にくっついていたり。
勿論そのようなもの、命懸けになることは確かだが……多少ではあるがもう少し生き残れる確率が高いものもある。
それがヘスペリデスの岩の1つに刺さっているという短剣「星屑の短剣」である。
夜に輝くというその短剣は武器としては実用に耐えうるものではないらしいが、キラキラと美しく光物が好きな亜竜ホムラガラスがそれを守っているという。
また、『天智竜』アルテイアもその輝きを認め定期的に見に来るというが……つまるところ、最低でもホムラガラスを撃破し、アルテイアの攻撃から生き残らなければいけないということにもなるだろう。
それでも、やらねばならない。それが未来に繋がるというのであれば……!
- <黄昏の園>輝き満ちる夜に星は在りて完了
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2023年05月06日 22時35分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●ヘスペリデスにて
緑豊かで穏やかな場所、ヘスペリデス。
夜になってもなお美しいその場所に、『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)たちは立っていた。
「『女神の欠片』……夜に輝く星屑の短剣。良いなぁ、興味深い……! アルテイアも気になるけど…絶対短剣をゲットするよ!」
自ら光り輝くというその短剣は、このヘスペリデスの何処かにあるという。
だからこそヨゾラは光と水の刻印の魔晶石による暗視(弱)やハイセンスを駆使し、鳥のファミリアーとヨゾラのギフトである「興味への道しるべ」も使用していた。
「夜に輝く星屑の短剣……星や星空に憧れる僕としてはすっごくわくわくする……!」
そう、女神の欠片が姿を変えたという星屑の短剣は、ヨゾラの琴線に触れるものであったらしい。
「女神の欠片ねぇ。冠位暴食の暴走に対抗しうる女神とはどんなモノだったのやら。アルテイアを始め、将星種のどれくらいがこのアーティファクトを認知しているのだろうね? それにしても占星術か。魔術師の端くれとしては蒐集しておきたいところだが、竜種相手では教えを乞うのに相当難儀しそうよなあ。ヒヒ」
『闇之雲』武器商人(p3p001107)も広域俯瞰と暗視を使いながらヘスペリデスを見回す。何が潜んでいるか分からないこの場所であちこちに視線を向けるのはそれなりにリスクもはらむが、今回の目的となる星屑の短剣は夜の闇の中では目立つような代物だ。この捜索方法が一番無難だろう。
「ヘスペリデス……ふふっ、この光景を見られただけでも、あの森を突破した苦労が報われるというものだ。やはり冒険というのは良いね。この感動は忘れられないとも」
『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)も静かに周囲を見回し、『雨宿りのこげねこメイド』クーア・M・サキュバス(p3p003529)もエネミーサーチを使いながらモンスターの襲撃を警戒する。
クーアとしてはベルゼーに対してはなんとも一言では言えない気持ちを抱いている。
(竜王ベルゼー……この期に及べば流石に肚を括ってくると思っていたのですが。よもや本気で己の有り様(原罪)にすら抗う心積もりだとは。しかし、ならば、そんなの、協力しない訳にはいかないじゃないですか)
この女神の欠片集めがどのように転がるかは分からないが……クーアとしては、今後の為の第一歩といったところだ。
「冒険は未知との遭遇。こげねこメイドとして、備えはばっちりしているのです」
「大事なことだな」
『約束の瓊剣』ヴェルグリーズ(p3p008566)も闇の帳を発動させながら慎重に探す。
星屑の短剣が光るのもそうだが、亜竜ホムラガラスが守っているという情報も忘れてはならない。
そのモンスターを探すのも1つの助けになるとヴェルグリーズにはよく分かっていた。
「花園で宝探しか、冠位魔種や竜種が関わっていなければ微笑ましい依頼なのだけどね。どちらにせよこの場所を知らなければいけないしね。女神の欠片とやら、必要ということなら集めてみせようじゃないか」
「『女神の欠片』ねぇ」
『Stargazer』ファニー(p3p010255)も、そう呟く。
「事情は理解したが、女神ってどこの女神だよ、とか。その『星屑の短剣』とやらもどう使うのか、とか。気になることは色々あるが、ま、やれってんならやるしかねぇか。アルテイアの星詠みにも興味があるしな」
ファニーもまたファミリアーで烏を召喚。暗視に透視、超視力を共有しながら星屑の短剣を探していた。
「ホムラガラスとかいう真っ赤なカラスに似た亜竜とやらが守っているらしいから、そっちを探したほうが早いかもな」
どちらを目印にするにせよ、上手く見つかるならそれでいいが……やがてヨゾラが「見つけた」と声をあげる。
そこには確かに飛翔するホムラガラスと……輝く、岩に刺さった短剣。
そして……1人の、亜竜種にも見える女の姿。その姿に、ヨゾラは何かを感じ取った。もしや、あれは。
「アルテイア……また会ったね」
「今、何か虫が鳴いたような気がしたけれど。もしかして私の名を呼んだのかしら?」
そう、『天智竜』アルテイア。そこにいた女は、まさにその竜種と持つ雰囲気が同じだったのだ。
「私の名を知るということは、何処かで私に会って生き残ったのでしょうけど。さて……こんなところで何をしているのかしら。ああ、いいえ。言う必要はないわ。その光っている短剣……それでしょう?」
「渡してくれる、と?」
ヴェルグリーズが聞けば、アルテイアは優雅に微笑む。
「別に興味はないわ。勝手に持っていけばいい……まあ、貴方達が生き残ればだけれども」
その様子を見て、ヴェルグリーズは気付く。
元々アルテイアに対してもあくまで礼は尽くす形で通そうと思っていたヴェルグリーズだった。
竜種を正面から相手取る気も無ければ場を荒らす気も無いからだ。
星を詠む竜か、それだけを聞くととても素敵な感性の持ち主だよね。いつか星の話を聞かせてほしい……なんて思ったりもするけれど、お近づきになるには今回はちょっと難しそう……かな? と、そんなことも考えていたのだ。
そして事実、アルテイアは高い知能を持っている。その上で……此方に対して、然程の興味も持っていない。
「アンタがアルテイアか。俺様は星を観るのが好きでな、竜種様の星詠みとやらを是非とも見せてくれよ!」
「そう? なら見せてあげましょう。その後生きているとも思えないけども」
アルテイアとファニーが、ゆっくりとその指を動かして。
『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)もまた、避けられない戦いを前に心を鎮めていく。
「星。太陽に空が照らされ見えない時でも、雲に覆われ空が曇ったときでも確かにそこにあるもの。……遠くの星から来た男として。眺めるだけであった星に辿り着いてみせた時代の存在として。星を眺める浪漫の分かる人を傷つけたくはないでありますが……それでも」
サプレッション・ユニットは、いつでも戦闘態勢だ。
「宇宙保安官! ムサシ・セルブライト見参! 星屑の短剣……頂戴していく!」
『誰が為に』天之空・ミーナ(p3p005003)もまた希望の剣 『誠』を引き抜き、いつでも動けるようにする。
「さあ、やろう。私たちの目的は最初から明確だ」
●星屑の短剣
まず真っ先に飛び出したのはムサシだ。優先度の問題もあるが……アルテイアを放っておくことが良いことに繋がるとは1ミリも思わないからだ。
放つのは覇竜穿撃。不可能なる幻想を穿つ竜撃の一手にしかし、アルテイアは涼しい表情だ。
「星を眺め、情報を得る……そういった面では確かに、今の人類はまだ貴方達竜には叶わない……」
だからこそ、ムサシは言葉を混ぜていく。届かないかもしれないが、それでもだ。
「でも。人はいつか、星を眺めるだけじゃない、星に辿り着く日が来る……! この世界でも、いつしかそうやって星に着く日が来ると自分は信じている! ……浪漫あるお話でしょう?」
「力無き言葉は虫の囀りにしか聞こえないわね」
「なるほど、言う通りだ」
そこにファニーが、焼き焦がす三番星をアルテイアへと降らせる。
「星よ、星よ、さぁ、願いを聞き届けておくれ。歌うように、踊るように、願いに応えておくれ」
「ヒヒ、なんともまあ。死がそこにあるのを感じるねぇ!」
武器商人も衒罪の呼び声を発動させながらそんな声をあげる。強い。それが肌感覚で理解できてしまう。
此方を捻り潰せるだけの力を持っていることも、だ。幸いなのは、コレを倒さなければいけないという話ではないということだろうか?
「さあ、まずはこれから生き残ってみせなさい。流れる星々の光……スターライト」
天より降り注ぐ輝く星がファニーたちへと降り注ぎ、即座にゼフィラのコーパス・C・キャロルが響き渡る。
「嗚呼、アンタの星は、とても眩くて、とても苛烈で、とても綺麗だ! もっと見せてくれよ! その星の煌めきを!」
ファニーのそんな声が響くが……事実、凄まじい威力だ。
「これが竜の叡智……か」
アルテイアの技の凄まじい威力を前に、ゼフィラはそう言わざるを得ない。
「星読みの智慧、興味深いね。学者の端くれとして多少は心得ているが、先人の積み上げてきたものには遠く及ぶまい。竜達の見る星は如何なるものか、是非ともご教授願いたいが……まずはこの場を生き残るために全力を尽くそうか」
そう、これほどの竜種を相手にしながらも、今日の主役はゼフィラたちではない。何故ならば今日の目的は星屑の剣。
そしてそれを守るはホムラガラスたちだ。
「本当に綺麗……星空の竜、なんだね……っと、対ホムラガラスに専念しないと!」
ヨゾラもアルテイアの技に感嘆しながらも集中しようとする。短剣や岩の周囲に保護結界を使用してもいるが、万が一がないとは限らないのだから。
「アルテイアも滅茶苦茶気になるけど奴等を倒さないと短剣自体得られないからね……!」
放つは星空の泥。いつ増援が来てもおかしくないこの状況では、速攻が求められているのだ。
「君達も綺麗な星とかきらきらした物大好きなんだろうけど……ごめんね! 飲み込め、泥よ。星空の海よ……!」
そして傷ついたホムラガラスを各個撃破すべく、クーアのジャミル・タクティールが叩き込まれていく。
「何がホムラガラスですかこちとらこげねこなのです。燃ゆる紅蓮は我が領分、火力で負けてたまるものですか!」
今はとにかく体力勝負。そして体力気力が尽きるまで粘り切るつもりでもあった。
「燃え落ちる寸前、最後に残る復讐の焔こそが我が神髄。さあ、私と遊び尽くしましょう?」
どの程度ホムラガラスが星屑の短剣に執着しているかは知らないが、ねこの執着をなめられても困る。
つまりは、そういうことで。
「なんであれ、カラスって名付けたんだろうなぁ……カラスに近いからってそんな可愛いもんでもないだろうに。いや、カラスは可愛くはないけどな」
ミーアもそう呟きながらH・ブランディッシュを叩き込んでいく。まあ、確かにカラスと呼ぶにはデカいし怖すぎるが、ならばどう呼ぶかと聞かれれば悩むところではある。ミーナ自身聞かれれば熟慮して「……カラス?」と答えそうではあった。
ともかく、あの短剣を奪取するのが今回の任務……なのだが。まだ足りない。そう、あと一手足りていない……!
だからこそ、そこに飛びこむのはヴェルグリーズだ。
ナイアガラデッドエンドからの斬影千手がホムラガラスに叩き込まれ……瞬間、確かに「道」が出来た。
「ミーナさん、今……!」
「ああ!」
クーアの援護を受け、ミーナは走る。制御不能なブリンクスターを起動させ、岩に刺さる星屑の短剣を握る。
輝くその短剣を、引き抜いて。
「悪いが今回は、お前達と命のやり取りをする気はないんだ。私達の未来、何よりベルゼーの未来に繋げる為にこいつは貰っていくぜ!」
「……ベルゼーの未来、ねえ」
「!今であります!今が撤退の時であります!」
アルテイアの動きが一瞬止まった隙にムサシが叫び、全員が撤退準備に入る。
「悪いね、目的は果たさせて貰うよ」
「今回は、お前達と命のやり取りをする気はないんだ。私達の未来、何よりベルゼーの未来に繋げる為にこいつは貰っていくぜ!」
「俺様の名はファニーだ! 頭の隅にでも置いといてくれ!」
「殿は勤めるよ。さあさあ、撤退といこうか」
ゼフィラとミーナ、そしてファニーと武器商人もそう声をあげ、全員が走って逃げていく。
そうして逃げて、逃げて。残ったホムラガラスはおろか、アルテイアも追ってはこない。
……逃げ切れた。そう実感がわいてくると、ミーナは握っていた星屑の短剣をじっと見る。
美しい短剣だ。星屑から削りだしたかのような輝きを持ち、しかし武器の持つ「凄み」のようなものは一切感じない。
「『女神の欠片』……夜に輝く、星屑の短剣」
ミーナから受け取り、ヨゾラもその輝きを確かめる。どういう理屈で輝いているかは分からないが、その名の通りに星の輝きを秘めたかのような美しさだ。星というものが持つ側面のうち、美しさだけを切り取ったかのようでもある。
1回手に持ってみたくも、夜の輝きを見たくもあると考えていたヨゾラにとって、充分以上満足できるものだった。
「……ないとは思いますが、ここまでやって善意が何かしら裏目に出たら嫌なのですし」
ゼフィラは星屑の短剣にアナザーアナライズをかけてみるが、情報は特に取得できない。
やはり女神の欠片などという代物であれば成功率が極端に低いの……かもしれない。
「他にも星に絡む女神の欠片もあるのかな?」
「分からんでありますが……これで任務成功でありますね」
ムサシも安心したようにそう呟く。中々にハードな仕事ではあったが……「女神の欠片」の1つ「星屑の短剣」、ゲットである。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
「女神の欠片」の1つ「星屑の短剣」をゲットしました!
GMコメント
ヘスペリデスの中にある岩に刺さった女神の欠片「星屑の短剣」を無事に持って帰りましょう。
星屑の短剣自体は武器としては役に立ちません。綺麗なだけです。
風光明媚にして前人未踏、ピュニシオンの森や前回の黒い風吹き荒れる場所と比べると視界も良好ですが、その分空から何かがやってくる可能性も高まります。
星屑の短剣を手に入れたら依頼は成功となりますので無茶はやめましょう。
●出てくる敵
・ホムラガラス×8(戦況により増援あり)
全長1mほどの真っ赤なカラスにも似た亜竜。
赤い羽根のようなオーラの塊を範囲内の敵に放つ「焔の羽根」と炎を纏い突貫しダメージを与える「焔舞」を使用するようです。
・『天智竜』アルテイア
最強生物である竜種にして将星種『レグルス』。今回は亜竜種の女性に似た姿をしているようです。
性格は非常に冷静で知的。尊大で傲慢なのは変わらないのですが、深い知識を下敷きにしている為か突発的な行動をあまりせず「一歩引く冷静さ」をも兼ね備えています。
どうやらある種の星詠みの知識も所持しているようで、その精度は兎も角そうした浪漫を楽しむ洒落っ気も持ち合わせているようです。
ただ、竜種としての星詠みは人間の星詠みとはあらゆる要素が違うのでそこで意気投合する……などといったことは無謀でしょう。
自分を中心とした範囲に輝く「星」を降らせるメテオライト、指定した1人に天空より破壊の流星を降らせる「スターライト」、指先から星の輝きの如きレーザーを放つ「トゥインクルスター」を使ってくるようです。皆さんが亜竜を倒し切ると飽きて撤退します。
●情報精度
このシナリオの情報精度はDです。
多くの情報は断片的であるか、あてにならないものです。
様々な情報を疑い、不測の事態に備えて下さい。
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