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シナリオ詳細

<カマルへの道程>炎雷の半人半虎

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●吸血鬼と晶竜
「鬱陶しきは、イレギュラーズよ……!」
 月の王国の砂漠地帯で、全身が紅血晶で出来ているかのような騎士鎧の男が、苦虫をまとめて噛み潰すような顔をしながら吐き捨てた。
 男が属する月の王国に対抗すべく、イレギュラーズ達は古宮カーマルーマの転移陣を奪い、この砂漠地帯へと押し寄せてきている。ここはまだ王宮には遠いが、イレギュラーズが月の王国に踏み入ってくることも、この砂漠地帯に橋頭堡を築こうとしていることも、男からすれば許してはおけないことだった。
 こんな事態に陥るのを防ごうと、男はローレットのラサ支部を晶竜『ルージュ・アンジュ』に襲撃させた。だが、イレギュラーズらの奮闘によりルージュ・アンジュは撃破され、ラサ支部の被害は大きなものとはならずに食い止められている。
 それでも、ラサ支部に幾ばくかの打撃は与えている。支部としての機能にも、影響は出ているはずだ。にもかかわらず、イレギュラーズ達がかくも素早く反撃に出ていることに、男は戦慄せざるを得ない。ぶるり、と男は身を震わせた。
(何だ? ――よもや、余がイレギュラーズに恐怖していると言うか?)
 ブンブンと、男が首を何度も横に振る。そのような事実、男にとっては認めがたいものだった。
 ともあれ、男にはやらねばならぬ事がある。ここと同様に、他の場所にもイレギュラーズ達を迎撃するための戦力を置いていかねばならない。そのための時間を稼ぐためにも――。
「せいぜい、ここで時間を稼ぐが良い」
 傍らにいる半人半虎の晶竜と、その前方にいる晶獣らに目をやって、男が言った。
 この半人半虎の晶竜は、大型の虎の身体をベースとして、その首から上に当たる部分に幻想種の女性の身体の腰から上があった。さらに、その頭を除く全身に、炎と雷が纏わり付いている。
 『ブリッツフランメ』と名付けられたこの晶竜がいれば、イレギュラーズに対して多少は時間が稼げるだろう。そう男が判断し、次の場所に置く戦力を調達すべく帰還しようとした、その時。
「――いた! あの男……!」
「ち、もうここまで来おったか!」
 この場にまで進行してきたイレギュラーズ達のうち、シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)が見覚えのある姿を発見して声を上げた。騎士鎧の男の方も、シキらイレギュラーズの姿を見て舌打ちをする。ラサ支部を襲撃したルージュ・アンジュが撃破された直後、二人は遭遇していた。
「せっかくここで会えたんだ――あんたを、ぶちのめす!」
「ほう……良かろう。少し、遊んでやろう」
 この場から去ろうとする騎士鎧の男に対し、シキが叫ぶ。その声にピクリと反応し、騎士鎧の男が微かに笑った。
 騎士鎧の男としては、いつまでもこの場にいる気は無い。この後も、やらねばならぬ事はあるのだ。だが、数分程度遊ぶぐらいは良いだろう。そう判断すると、全身に禍々しい気を漲らせた。
 それに呼応するかのように、ブリッツフランメも、晶獣達も、イレギュラーズ達に敵意を露わにした。

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。
 今回は、シキさんのAAから<カマルへの道程>のシナリオをお送りします。
 晶竜や晶獣を撃破し、この一帯を確保して下さい。

●成功条件
 騎士鎧の男を除く、敵の全滅


●情報精度
 このシナリオの情報精度はC-です。
 不測の事態を警戒して下さい。

●ロケーション
 月の王国。王宮を遠く望む砂漠。
 環境による戦闘へのペナルティーはありません。 

●初期配置
 騎士鎧の男、ブリッツフランメ、ポワン・トルテュ
  ↑
 約40m
  ↓
 シャグラン・プーペ、ポワン・トルテュ
  ↑
 約40m
  ↓
 イレギュラーズ

 ※イレギュラーズはいずれも一カ所に集まっているものとします。

●吸血鬼『騎士鎧の男』 ✕1
 『<晶惑のアル・イスラー>ラサ支部壊滅!? 紅き天使、襲来!』で、ローレットのラサ支部を晶竜『ルージュ・アンジュ』に襲撃させた吸血鬼です。
 全身が紅血晶で出来ているかのような、結晶質の身体をしています。
 【ステルス】持ちであることは推測されていますが、それ以外の能力については不明。
 戦況に不利を感じれば、撤退を試みます。

●晶竜『ブリッツフランメ』×1
 大型の虎を首の付け根から切断して、そこに女性の幻想種の腰から上を乗せたかのような姿の晶竜です。
 頭を除く全身に、炎と雷が纏わり付いています。
 1回の行動で、幻想種の身体による神秘攻撃と、虎の脚による物理攻撃を行ってきます。
 その攻撃には、【火炎】系BS、【痺れ】系BS、【晶化】が付随していることが想定されます。
 マークやブロックには複数人を要します。
 
●シャグラン・プーペ ✕1
 ラサの遺跡に眠っていたゴーレムが紅血晶に反応し、変質して生まれた晶獣です。全高5メートルほど。
 怪力で殴りつけてきます。攻撃力が高く堅牢ですが、動きは鈍いです。
 【弱点】や【邪道】、【乱れ】系BSを有する攻撃を使ってきます。
 巨体故に、マークやブロックには複数人を要します。

●ポワン・トルテュ ✕2
 巨大リクガメの化石が紅血晶に侵食されて誕生した、大型の水晶亀の晶獣です。
 シャグラン・プーペの付近に1体、ブリッツフランメの側に1体います。
 動きは遅いですが、シャグラン・プーペ以上に堅牢です。
 【怒り】を有する咆哮を放ったり、味方の盾になったりします。
 巨体故に、マークやブロックには複数人を要します。

●BS【晶化】
 このシナリオオリジナルのBSです。受けた者の身体を蝕み、紅い結晶へと変えて砕け散らせます。
 パンドラを持たない一般人は瞬く間に侵食されて全身が結晶化し、即座に砕け散ってしまいます。が、パンドラを有するイレギュラーズは継続ダメージを受けるだけですみます。
 BSであるため、BS無効で無効化出来ます。また、BS緩和を有している場合、そのレベルを問わずダメージを半減させることが出来ます。

●特殊判定『烙印』
 当シナリオでは肉体に影響を及ぼす状態異常『烙印』が付与される場合があります。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

 それでは、皆さんのご参加をお待ちしております。

  • <カマルへの道程>炎雷の半人半虎Lv:40以上完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2023年03月31日 22時06分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)
私のイノリ
キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド
サンディ・カルタ(p3p000438)
金庫破り
リーディア・ノイ・ヴォルク(p3p008298)
氷の狼
マッダラー=マッド=マッダラー(p3p008376)
涙を知る泥人形
リースヒース(p3p009207)
黒のステイルメイト
皿倉 咲良(p3p009816)
正義の味方

リプレイ

●吸血鬼との再会
「見つけたよ、吸血鬼の君! 次に来たって返り打ちとは言ったけど、そう悠長にするわけにもいかなくなって悪いね」
 『優しき咆哮』シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)が、騎士鎧の吸血鬼を指差しながらそう告げた。この吸血鬼は、先のグラオ・クローネの夜に晶竜をけしかけてローレットのラサ支部を襲撃させた黒幕だ。シキはその際にこの吸血鬼と遭遇しており、吸血鬼の去り際にそう告げていた。
 だが、悠長にするわけにもいかなくなったとシキが言うとおり、事態は大きく動き始めている。ローレットは月の王国への反攻に出て、吸血鬼はその進撃を遅滞させるための戦力を置きに来ていたところだ。
「準備はもう十分かい? なら、ここでぶちのめしてやる!」
「ククク……余を、ぶちのめすと? 面白い。少し、遊んでやろう」
「ずいぶんと余裕があるんだね。なんかすんごいムカつく!」
 ラサ支部襲撃の時の借りを返してやろうと闘志を漲らせるシキに、吸血鬼は嘲笑うように応じた。それが、『正義の味方』皿倉 咲良(p3p009816)の癇に障る。
 咲良としては、とにかく置かれた戦力をさっさと片付けてこの吸血鬼を何とかしたいところであった。この吸血鬼は騎士鎧を纏ってこそいるが、騎士道や正義と言った概念は全然感じることが出来ない。
「アタシたちイレギュラーズを、敵に回したことを後悔させてやるんだから!」
 正義の味方として、ちゃんと分からせる。その強い意志と共に、咲良は咆えた。
 シキ達に続くように、何人かのイレギュラーズがこの場に姿を現した。
「助けにきたよ、シキさん……」
「やあ、シキさん。先日ぶりだね、体の調子はどうかな」
 『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)と『氷狼の誓い』リーディア・ノイ・ヴォルク(p3p008298)が、シキに声をかけた。もっとも、状況が状況だけに、二人ともシキの返事は期待していない。それよりも、眼前の吸血鬼や晶竜、晶獣への対応が先決だ。
 リーディアはシキと共に、ラサ支部を襲撃した晶竜と戦っており、吸血鬼とも遭遇していた。ならば、今は吸血鬼にその報いを思い知らせる時である。
「この世に、絶対などないと言うことを。氷の狼の遠吠えを聞くがいい」
 リーディアは、普段は見せないような厳しい目つきで睨み付けつつ、吸血鬼の男に告げた。
(しかし、晶獣に晶竜、しまいには吸血鬼まで出てくるとはな……)
 眼前の敵の姿を一瞥したサイズは、内心で呆れ混じりにつぶやいた。サイズとしては紅血晶の研究をしたいところではあったが、こうも次々といろいろ出てくるようであれば、研究は進みそうにない。それでも出来る限りの研究は進めるつもりであったが、まずは眼前の敵を排除して、この場を押さえてからだ。
「話に聞くよりも、随分と悪辣そうな類の吸血鬼だな」
 『泥人形』マッダラー=マッド=マッダラー(p3p008376)は、この吸血鬼がまだまだ奥の手を持っているようだと感じていた。警戒しておくに越したことはないし、出来うることならここで確実に仕留めておきたい。
 だが、それにはイレギュラーズと吸血鬼の中間に立ちはだかる晶獣シャグラン・プーペとポワン・トルテュが邪魔だ。
「そいつらは、俺が面倒見よう」
 マッダラーは、仲間達にそう告げて邪魔な晶獣の相手を請け負った。
「頼むぜ! 奥の方は、俺が何とかするからよ!」
 『ラド・バウA級闘士』サンディ・カルタ(p3p000438)は、ポン、とマッダラーの肩を叩いて激励する。
「騎士鎧の癖に、隠れるような臆病者とは。正々堂々と蹂躙するしかあるまい」
 『無鋒剣を掲げて』リースヒース(p3p009207)が、吸血鬼の姿を見据えてそう言った。リースヒースの周囲には、霊感を持つ者しか見えないが、紅血晶に関する事件で死亡した被害者の霊魂が漂っている。この霊魂達はリースヒースが「心置きなく天に還るために手伝っては貰えぬか」と頼み込んで連れてきており、その中には晶竜のラサ支部襲撃によって落命した者達もいた。
 リースヒースの狙いは、霊魂達によって吸血鬼が隠形で隠れようとも発見することだ。特にラサ支部襲撃によって落命した者達は、直に恨みを晴らせる機会とあってその意気は軒昂だった。
(――ようし、状況は分かった。トンズラこかれる前に、サッサと終わらせよう。徹底的にな!)
 吸血鬼はラサ襲撃の際に逃げていっただけに、今回も逃走を図る可能性があると言う。それなら、逃げようとする前に終わらせればいいだけの話だ。『社長!』キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)は、獰猛な視線で吸血鬼を睨め付けた。

●炎と雷を阻む鎧
「サンディくん、サイズ、来てくれてありがと! こっちはなんとかやるから、他の敵はよろしく頼むよ!」
 そう二人に告げたシキは、咲良と共にシャグラン・プーペらの横を駆け抜けて、吸血鬼へと距離を詰める。
「ありがと咲良、そっちは任せたからねえ」
「うん、任せといて!」
「私はシキ。シキ・ナイトアッシュ。君にはお灸を据えたいと思ってたんだ」
 共に駆けた咲良に礼を述べ、吸血鬼の側にいるブリッツフランメへの対処を頼むと、シキは吸血鬼に名乗りを上げた。だが、吸血鬼はシキの名乗りを鼻で笑い、平然と受け流す。
「余に灸を据えるとは……ククク、フハハハハハ! 身の程知らずよのう。だが、強気な女は嫌いではないぞ?」
「あんたなんかに、好かれたところでね!」
 シキと吸血鬼が言い合う間に、咲良は駆け寄った勢いのまま、速度を乗せた拳をブリッツフランメの虎の部分の胴体に叩き付けた。さらに咲良は、アッパー気味に左右の拳を幻想種の部分の腹に二度、突き立てる。ブリッツフランメの巨体が、その拳によって浮き上がりかけた。
「うっ!」
 ブリッツフランメの、幻想種の頭部が小さく呻く。
「では、まずは貴様の血から味わうとしようか」
 吸血鬼は、シキの視界から一瞬にして消えた。
「一体、何処に……うっ!?」
 シキが吸血鬼の足跡を探ろうとした瞬間、吸血鬼はシキの背後を取り、その首筋にガブリと噛みつき牙を突き立てた。傷口から流れ落ちる血を、吸血鬼はゴクゴクと喉を鳴らして飲み干していく。
「ふむ……なかなか変わった味だが、悪うない」
 虚脱感を感じながらも、シキは吸血鬼を如何にか振りほどく。吸血鬼はニヤリと笑って、シキの血の味の感想を述べた。
 ブリッツフランメも反撃に出て、幻想種の身体から発した雷の魔術と、虎の脚の燃え盛る炎を纏った爪で攻撃し、咲良に浅からぬ傷を負わせた。咲良の身体が、炎と雷に苛まれる。が。
(そうなる、だろうな。なら、これで対処させてもらうぜ)
 チートコードを用いて自身を強化したキドーが、マッダラー、咲良、シキに英霊の鎧をはじめとした強化を行って回る。英霊の鎧は、咲良に纏わり付く炎と雷の影響を阻み、意味の無いものへと変える。
(さあ、どう出る? どっちでも構わないぜ。俺ぁ、嫌がらせは得意なんでね!)
 キドーは、吸血鬼とブリッツフランメがこの強化にどう出るか様子を伺った。この強化が解除されなければそれで良し。解除されればその分余計なリソースを割かせ、手間取らせたと言うことになる。結果から言えば、キドーの施した強化が解除されることはなかった。
(ナイスだ、社長殿!)
 夜闇に溶け込むような漆黒の馬車『黒現のアバンロラージ』を駆りながら、リースヒースは英雄の鎧が炎や雷を無効化する様子に心の中で快哉を叫んだ。今回は癒やし手として立ち回るリースヒースにとって、状態異常への対処が不要になるのは大きい。
 吸血鬼とブリッツフランメの前まで黒現のアバンロラージを進めたリースヒースは、その車体を中心に多数の蝶を舞わせた。生命への賛歌を思わせるその羽音は、シキと咲良の身体を包み込んで慈しみ、その傷を癒やしていった。
(まずは、こいつから着実に、だな)
 サイズは黒き大顎を喚びだすと、シャグラン・プーペへと襲い掛からせた。大顎の大きく鋭い牙が、ゴーレムの左肩口に深々と食い込んでいく。
(まだ、終わりじゃないぞ。おかわりは、たっぷりあるんだ)
 さらに、三度、大顎が喚び出される。三つの大顎はそれぞれ、ゴーレムの右肩口と左右の脇腹にガブリと噛みついていった。
(人間の脳と同じかは分からないが……)
 ブリッツフランメを射程に入れるまで前進したリーディアは、愛銃『彼岸花』の照準を幻想種の頭部に定めた。人間の脳と同じであればそれで良し。そうでなかったとしても、破壊を狙ってみる価値はある。
 彼岸花の引金を、リーディアは静かに引いた。銃口から放たれた弾丸が、生命を嘲笑うかのように、幻想種の頭部へと突き刺さる。常人ならば、即死の一撃だろう。だが、晶獣であるブリッツフランメはタフだった。ブワッと紅い梅の花弁を撒き散らしたため、確実に効いてはいるようだが、流石にこれで即死とはいかない。
「来いデカブツ。硬さで語れない泥の深みを教えてやる」
 マッダラーは掌を上に向けて手をシャグラン・プーペの方に突き出すと、指をクイ、クイと曲げながら言った。シャグラン・プーペとその側に侍るポワン・トルテュはその仕草と言葉の意味を理解したのか、頭部をはっきりとマッダラーの方へと向けた。
 それにしても、とマッダラーは思う。
(遺跡のゴーレムとは、随分と泥人形が相手をするのに申し分ない相手だ)
 その状況を楽しんででもいるかのように、マッダラーは微かに笑みを浮かべた。
「そっちは任せたぜ、マッダラー」
 そうマッダラーに声をかけながら、サンディは全力で駆けた。狙いは、ブリッツフランメとその側に侍るポワン・トルテュの敵意を自身に向けることだ。だが、その前にこの二体との距離を詰めなければならない。
 この後、サンディは自身の内から燃え上がる炎でブリッツフランメとポワン・トルテュを包み込むことによって、その敵意を自身に釘付けにすることに成功した。

●吸血鬼の離脱
「ええい、使えぬ奴らめ!」
 騎士鎧の吸血鬼は、ポワン・トルテュがマッダラーやサンディに敵意を煽られた事に憤慨した。ポワン・トルテュの役割は、ブリッツフランメやシャグラン・プーペを護り、その継戦能力を維持することにある。それがあっさりと役割を放棄させられたとなれば、せっかくここに連れてきたことも無駄になったわけで、吸血鬼が憤慨するのも無理からぬ事ではあった。
 護衛を喪ったブリッツフランメやシャグラン・プーペは、イレギュラーズの攻勢によって浅からぬ傷を負っていった。だが一方で、ブリッツフランメの敵意を引き付けていたサンディ、吸血鬼とやりあっていたシキ、シャグラン・プーペの攻撃を受け続けたマッダラーも深手を負った。
 敵の中でも、吸血鬼はやはり強敵だった。縮地でも使ったかのように瞬時に死角に入ってきた上、触れるだけでも防具が存在しないかのように生命力を奪ってくる。さらには、血を媒介にする魔術まで使ってきた。その上、攻撃は姿を消したかのようにかき消えて回避してくる。だが、完全に攻撃を回避しきれたわけでもなく、シキの放った黒き大顎の牙にかかって紅い梅の花弁を散らせてもいた。

「……ふむ、こんなところか」
 ブリッツフランメもシャグラン・プーペもイレギュラーズを斃しきれず、逆に浅からぬ傷を負わされたところで、吸血鬼は戦況に見切りを付けた。十分、遊んでやったとも言える。隠形によって姿を眩まし、離脱を図ろうとしたその刹那。
 パシャ! 咲良の投げつけたカラーボールが、吸血鬼に命中した。蛍光イエローの塗料が、月の光を浴びてありありと輝き、吸血鬼の存在をイレギュラーズ達に知らしめる。
「ぐっ、おのれ!」
 吸血鬼は、イレギュラーズ達には見えないが顔を憤怒に歪める。
「アタシたちは、基本的にめちゃくちゃしつこいし鬱陶しいんだよ! 自分だけ尻尾巻いて逃げようだなんて、絶対許さないんだから!」
 吸血鬼の側としても、それは予測していた。イレギュラーズ達を脅威に感じていたからこそ、月の王国が動くにあたってローレットのラサ支部を襲撃し、壊滅させようとしたのだ。
 咲良の連撃を、吸血鬼は回避した。だが、咲良に気を取られすぎたためにシキに対して無防備となってしまう。
「そこだね。今度こそ、逃さないって言っただろう?」
 蛍光イエローの輝きを頼りに、シキは黒き大顎を放った。大顎は黄色い輝きの周囲の空間に、ガブリと噛みつく。紅い梅の花弁が舞い散り、その牙が吸血鬼を傷つけたことを示した。
(もうトンズラかよ。だが、させねえぜ)
 月毎に捧げ物をしている、松明を掲げた女妖精の力を借りて、キドーは吸血鬼の身を竦ませにかかった。見た目には梅の花弁が飛び散っただけだが、蛍光イエローの塗料の動きはこの後、明らかに鈍っており時々止まりもした。
(逃げるなら、追うまでだ。いっそ、チェイスと洒落込むか?)
 離脱を図らんとする吸血鬼に対し、リースヒースは自身の生命を媒介として創り出した影の大剣で斬りつけた。一度大上段に振り上げられてから、一気に振り下ろされた剣閃は、手応えをリースヒースに伝えると共に、その軌道から梅の花弁を撒き散らせた。
「見下していた生き物を前に逃げ出すなんてね……吸血鬼とやらも大変な種族だね。同情するよ」
 リーディアは、吸血鬼を深追いする気はない。まだ、ブリッツフランメもシャグラン・プーペも残っている。だが、吸血鬼を追いたい仲間達のために、軽侮と憐憫を込めた口調で告げながら、蛍光イエローの真下を狙って鋼の雨を降らせた。梅の花弁が舞い、鋼の雨が命中したことを示す。
 ブリッツフランメは、爪でサンディの身体を斬り裂く。本来なら幻想種の身体も魔術を放つところであるが、そちらはキドーによって封じられていた。
(まだ、こいつらが片付いてねえが……)
 シャグラン・プーペとポワン・トルテュの相手をしていたサンディは、瞬時迷ったものの、蛍光イエローの輝きの後ろに回り込んで吸血鬼の退路を断ちに出た。
「こいつらは、俺の方で如何にかなる。だから、サイズ殿は吸血鬼の方に向かってくれ」
「わかった! 後は頼む!」
 マッダラーは、サイズに吸血鬼の方に向かうよう促しつつ、泥の腕をサイズが刻みつけた大顎の牙の傷痕を拡げるようにねじ込んだ。マッダラーは、そのまま中からシャグラン・プーペを破壊しにかかる。シャグラン・プーペのダメージは大きく、もう長くは戦えそうになかった。
 シャグラン・プーペの撃破を最優先と思い定めているサイズだったが、マッダラーの言を容れて吸血鬼の方へと向かった。立て続けに四つの黒き大顎を喚び、蛍光イエローの輝きを狙って噛みつかせる。ブワワワッ、と梅の花弁が大量に舞った。

●晶獣と晶竜は斃れり
 サンディに退路を断たれた形となった吸血鬼だったが、戦場からの離脱には成功した。吸血鬼は空中に退路を見出し、飛翔してサンディを振り切った。蛍光イエローの輝きは、そのまま高度を上げていく。飛行できるサイズやリースヒース以外が手出しできない高度にまで蛍光イエローの輝きが至ると、イレギュラーズ達も追撃を断念せざるを得なくなった。
 シキをはじめ、イレギュラーズ達は吸血鬼を逃がしたことを悔しがる。だが、残るブリッツフランメ、シャグラン・プーペ、ポワン・トルテュを撃破してこの地を押さえたことで、一応は良しとした。

成否

成功

MVP

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!

状態異常

シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)[重傷]
私のイノリ
サンディ・カルタ(p3p000438)[重傷]
金庫破り
マッダラー=マッド=マッダラー(p3p008376)[重傷]
涙を知る泥人形

あとがき

 シナリオへのご参加、ありがとうございました。吸血鬼には逃げられましたが、ブリッツフランメと晶獣は撃破され、イレギュラーズ達はこの場を確保する事が出来ました。
 MVPは、BS無効とブリッツフランメへの封印で味方の被害軽減に貢献したとして、キドーさんにお贈りします。キドーさんの封印がなければ、幻想種の身体による範囲魔術に巻き込まれたとして咲良さんにも重傷判定を出していたところでしたし、サンディさんもパンドラ復活を余儀なくされていたことでしょう。
 「嫌がらせは得意なんでね!」と言う言葉がよく染みました。ぐぎぎ。

 それでは、お疲れ様でした!

●運営による追記
※シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)さんは『烙印』状態となりました。(ステータスシートの反映には別途行われます)
※特殊判定『烙印』
 時間経過によって何らかの状態変化に移行する事が見込まれるキャラクター状態です。
 現時点で判明しているのは、
 ・傷口から溢れる血は花弁に変化している
 ・涙は水晶に変化する
 ・吸血衝動を有する
 ・身体のどこかに薔薇などの花の烙印が浮かび上がる。
 またこの状態は徐々に顕現または強くなる事が推測されています

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