シナリオ詳細
<帰らずの森>竜に力を示せ
オープニング
●住処に入り込みし気配
(……騒がしい事よ)
覇竜、ピュニシオンの森。その森の中で、エメラルド色に輝く鱗に全身が覆われた竜種『スマラクト』が、身体を休めている。だが、己が住処としている領域の中に、本来は居るはずのない異物の侵入を察知した。
スマラクトの察知した異物とは、この森を探索しているイレギュラーズ達のことだ。
(すぐに此処から消えるかと思うておったが……)
この領域には亜竜や魔物がひしめいており、人程度が入り込んできたところで、そうそう長く居続けられるものではない。故に、スマラクトはそう考えていた。だが、この異物らはなかなか住処たる領域から消えない。そうなると、スマラクトはこの異物らの存在が気になって仕方が無くなってしまった。
この時のスマラクトの感覚を例えるならば、家の中でペットと共に暮らしていたら、羽虫が家の中に侵入してきてその羽音が鳴り続けている様なもの、と言えばわかりやすいだろうか。羽虫がペットに怯えて逃げていくか、あるいはペットが羽虫を潰すかと思っていたら、そうはならなかった、と言うわけだ。
バサリ。スマラクトは、その翼を大きく広げ、羽ばたかせる。そして、異物らが何者であるか、如何程の者であるか確かめるために、その気配のする方へと飛んだ。
●挑まれた力試し
亜竜達の集落の中で最大の規模を誇る、『フリアノン』。その相談役として出入りしていたベルゼーが『冠位暴食』であったと言う事実は、亜竜達の集落に大きな衝撃をもたらしていた。
かつてベルゼーは、良き隣人である亜竜種を害さぬ為に練達、深緑を襲撃。だが、その動きが成らなかった今、この覇竜がベルゼーの標的になると里長代行達は判断した。
ならば、ベルゼーの影が亜竜達の集落を飲み込んでしまう前に、対策を立てねばならない。
先んじて探索に出ていたフリアノンの里長である珱・琉珂は言う。
「R.O.Oでは皆、死屍累々だったんでしょ? 現実でもそうなんだけどね。
けど……森の奥に、行きましょう。この森を越えた先にオジサマが居る。……と、言っても森はほぼ手付かずだわ。
だから、危険を承知でお願いするわね。森を攻略する為のヒントのを集めて欲しい」
かくして、『帰らずの森』と呼ばれていた前人未踏の地、ピュニシオンの森での探索が始まった。
ぞわり、とする感覚が、森を探索しているしているイレギュラーズ達を襲う。それは、並の魔種などよりも遥かに強大で、魔の気配にもあるいはその逆にも偏ることのない、ただ純粋に巨大な力。
思わず身構えたイレギュラーズの前に、森の樹々の間から緑色のスーツ姿の、白髪の老爺が姿を見せた。人間の姿をとったスマラクトだ。
「……成程。儂の住処を彷徨(うろつ)いておったは、貴様らか。
ここは、貴様ら如きが生き存えられる場ではない。何が目的かは知らぬが、潔く引き返しては如何だ?」
スマラクトの表情も語調も、決して威圧的なものではない。だが、イレギュラーズ達は重苦しいプレッシャーを感じていた。
しかし、イレギュラーズ達とてそれでハイそうですかとは引き返せない。言葉が通じるのを幸いに、探索を止めるつもりはない旨と、その理由を告げた。
するとスマラクトは、白い髭を撫でつつ少々思案する様子を見せ。
「ならば、住処を彷徨かれた迷惑料代わりに、儂の戯れに付き合ってもらおう。貴様らの力を、儂に見せよ」
そう告げると、「オオオオオオ――!」と、その体躯からは想像が付かないほど巨大な咆哮を響かせた。すると、バサバサという羽音と、ドドドドと言う地響きと共に、緑色のワイバーンと二メートルを超える巨大な猪がそれぞれ十体ずつ出現し、イレギュラーズ達を取り囲む。
「儂らと三分戦う間に、此奴らを半ば以上倒した上で、半ば以上倒れることなく耐えてみせよ。
それを成し得たならば、此処を彷徨くのを許してやろう」
そう告げると、スマラクトが身構える。竜種による力試しが、始まった。
- <帰らずの森>竜に力を示せLv:40以上完了
- GM名緑城雄山
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2023年03月27日 23時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●竜種を前に
「なんと凄まじい威圧感! 見た目は老爺にしか見えぬがこれが、竜……!」
眼前に現れた老爺の姿の竜種スマラクトの、表情も語調も決して威圧的なものではない。だが、並の魔種では到底及ばない圧倒的な力の気配に、『夜砕き』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)は身体が緊張するのを咲耶は感じた。
一方で、スマラクトがイレギュラーズ達を邪剣に扱うことなく、力試しという形でこの『帰らずの森』を探索する機会をくれたことに、咲耶は感謝を感じている。
「しからば、その力試し謹んでお受けしよう!」
身体中に戦意を漲らせつつ、咲耶は応えた。
(この感じ、この人もしかして竜種!?
確かに、いきなりこんな風にお家に押しかけたら迷惑だよね……)
『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)が直感的に感じた推測は、当たっていた。スマラクトは竜種であり、その中でも将星種に属している。
そして、スマラクトが「迷惑料」として力試しを持ちかけてきたことに、焔は申し訳なさを感じていた。だが。
「ボク達は、この先に行かなくちゃいけないんだ! だから、ここは押し通らせてもらうよ!」
強い意志を込めて、焔はスマラクトに告げる。
「力が試されるというのなら、見せてあげるのだわ!
稀久理媛神の加護を受けた巫女の護りを、破れるものなら破ってみせなさい」
『蒼剣の秘書』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)は、臆せず自信満々にスマラクトに言った。
三人の言葉に、スマラクトはニィ、と笑みを浮かべた。その笑みは、一見静かで穏やかでありながら、言いようもない獰猛さを感じさせる。だが、イレギュラーズ達はそれで怯むことはなかった。
(もともと危険な覇竜に、さらに危険なこんな森があるなんてね……)
(帰らずの意味の一端を、見てる気がするな……)
『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)も『黒鎖の傭兵』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)も、竜種との遭遇と言う事実に、この森が如何に危険であるかと感じ取っていた。
この竜種を相手に話と条件が通じているだけ、幸運と見るべきではあろう。だが、いきなり竜との力比べとは、この先が思いやられる。しかも。
「ワイバーンまで、従えられんのか……」
スマラクトは、咆哮一つで十体のワイバーンとアイアンボアをこの場に呼んでいる。その事実に、マカライトは慄然とした。
「奥に進むためにも、ここでオイラ達の力を見せないとね!」
そのマカライトの背をバンバンと叩きながら、アクセルは激励した。
(竜種を相手取るのは、フェザークレスとの戦いの時以来かな)
『桜舞の暉剣』ヴェルグリーズ(p3p008566)は、過去に竜種と戦った経験を持っている。その時に戦ったフェザークレスと比べれば、スマラクトの実力は劣ってはいる。だが、竜種は竜種である。より強い竜種と戦った経験があるからと言って、慢心して良いものではなかった。
「折角もらった試しの機会、存分に活用させてもらうよ」
スマラクトを相手にどれだけやれるかが、今後竜種と戦闘するに際しての試金石となるだろう。ヴェルグリーズは、スマラクトに鋭い視線を向けた。
(迷惑かけて、ごめんなさい……!)
「んー……多分、こんなこと耳に入ったら怒られそうな気がするっスけど……。
なんかこう、怒っているように見せかけて、結構楽しんでいる気もするっスね」
スマラクトに対して申し訳なさそうにする『相賀の弟子』ユーフォニー(p3p010323)に、『青の疾風譚』ライオリット・ベンダバール(p3p010380)はこそっと耳打ちをした。
ライオリットの推測が当たっているかどうかは、わからない。ただ。
「条件としてスマラクト爺さんを倒せと言ってこないのは、温情っスね」
ライオリットはそう感じており、ユーフォニーもそれには同感だった。何にせよ、力試しを求められたのであれば、全力で応えるまでだ。
●敵を集めれども
「前方は、俺が受け持つ。マカライト殿は、後方を頼む」
「わかった。任せてくれ」
そう分担を決めたヴェルグリーズとマカライトは、ワイバーンやアイアンボアの攻撃を自分達に集中させようとした。これは、仲間への攻撃を防ぐのもそうではあるが、自分達の周囲に密集させて仲間達の範囲攻撃で一掃しようとする目的もあった。
ヴェルグリーズは名乗りを上げて回り、マカライトは内なる炎を吹き上がらせることで、ワイバーンやアイアンボアの敵意を煽り、自分達へと向けさせる。全部、とまでは行かないものの、ワイバーンやアイアンボアの大部分が、ヴェルグリーズとマカライトに敵意に満ちた獰猛な視線を向けた。
「高天原に神留り坐す――」
華蓮は祝詞を上げながら、自身の身体を強固な装甲で覆う。そして、ワイバーンやアイアンボアに集中攻撃されることになるヴェルグリーズを身を挺して護らんと、ヴェルグリーズの側に盾として侍った。
ワイバーンやアイアンボアは、敵意を煽ってきたヴェルグリーズとマカライトへと襲い掛かる。だが、ヴェルグリーズへの攻撃は華蓮によって受け止められ、マカライトへの攻撃も浅い傷を負わせるに留まった。
「それじゃ、いくッスよ!」
「上手く、集まってきてくれたね」
そのタイミングを待っていたとばかりに、ライオリットとアクセルとが動く。ライオリットは鉛を奏でる楽団の掃射を、アクセルは邪悪を灼く聖光を、ヴェルグリーズに集ったワイバーンやアイアンボアに浴びせかけた。数多の銃弾がワイバーンやアイアンボアの身体に突き刺さり、破邪の聖光が傷口もろともその身体を灼いていく。
ワイバーンもアイアンボアもその苦痛に身をよじるが、まだまだ力尽きる様子はない。
「竜種が相手でも、そう簡単に倒れてあげるつもりはないよ!」
焔はスマラクトの前に立ちはだかって、スマラクトの抑えにかかった。この中では群を抜いて力を持つ存在であるスマラクトを、自由にさせておくわけには行かない。
「ほう――意気込みは買うが、儂を相手に何処まで通じるかのう?」
ニヤリと、スマラクトが笑みを浮かべる。
(やっぱり、だ)
スマラクトの反応に、焔は確信を持った。力試しを持ちかけてくると言うことは、スマラクトは戦闘自体は嫌いではないのだろう。
ならば、少しでも強そうに見せていれば、スマラクトは焔に興味を抱き、その攻撃が皆に向かわなくなるのではと焔は考えた。――結果として、その予想は半分は当たり、半分は外れることとなる。
「成る程、この森では強くなければ生き残れぬ……と。ここに住む獣達も、かなり精強でござるな!」
ライオリットとアクセルからの攻撃を受けても未だ健在な様子の、ワイバーンやアイアンボアのタフネスに、咲耶は舌を巻いた。だが、感心してばかりはいられない。咲耶はアイアンボアの一体を見据えると、絡繰手甲・妙法鴉羽『宿儺』から刀身を展開し、邪道の極みたる殺人剣で以て斬りつけた。
連続して放たれる剣閃に、アイアンボアの身体はさらに傷ついていく。
「……きっと、絶対、大丈夫」
瞳に勇気を灯したユーフォニーは、ヴェルグリーズを巻き込まないように注意しながら、きらきらと万華鏡の如く彩りを変えながら煌めく神秘の輝きをヴェルグリーズの周囲のワイバーンやアイアンボアに放っていく。何時果てるともしれないその輝きに包まれたワイバーンやアイアンボアのうち、咲耶に斬られた一体が力尽きて倒れた。
「ふむ、なかなか……ならば、これは如何かのう?」
じっと戦況を見定めていたスマラクトは、オオオオオオ! と咆哮を上げた。その咆哮は、およそ人の身体から放てるものとは思えない音量を以て、イレギュラーズ達の心を揺さぶった。
「うっ、これは……!」
心の中にスマラクトへの畏怖と、その畏怖によるスマラクトを放置できないと言う強迫観念がわき上がるのを、華蓮は感じた。だが、華蓮は意志力でそれらをねじ伏せる。盾としての役目を放棄して、スマラクトを攻撃するわけにはいかない。
マカライト、咲耶、ヴェルグリーズ、そして元々スマラクトの抑えにあたっている焔も、心の中にざわめいてくるものに耐えた。だが、アクセル、ユーフォニー、ライオリットは怯え半ば、敵意半ばと言った眼差しを、スマラクトに向けた。
●力試し、成功
スマラクトは、咆哮によってイレギュラーズの攻撃を自身へと誘導した。その咆哮に影響されたアクセル、ユーフォニー、ライオリットは、距離を詰めてスマラクトを攻撃。スマラクトは焔を含む至近距離の四人を旋風脚で薙ぎ払ったり、あるいは焔だけを拳の連打で殴りつけたりしていった。
その結果、アクセル、ユーフォニー、ライオリット、焔は深手を負い、戦闘不能を避けるため可能性の力を費やすことになった。さらに、攻撃の手をスマラクトに取られたこともあって、ワイバーンとアイアンボアを倒していくペースが遅れていく。
ヴェルグリーズを護っていた華蓮は、スマラクトの抑えに当たっている焔と広域で状態異常を癒やせるユーフォニーのどちらを護るべきか、迷った。結果、華蓮はユーフォニーを選んだ。これは、ユーフォニーの方が自衛能力に劣ることもあるが、それ以上に複数人の状態異常を癒やせるユーフォニーがスマラクトの咆哮に束縛されると、また同じ咆哮を受けた時に立て直しが遅れると言う判断故の選択だった。
華蓮がユーフォニーの護りに入ってからは、スマラクトに咆哮を放たれてもユーフォニーが癒やしに入ったため、アクセル、ライオリット、それに加えて時々咲耶やマカライト、ヴェルグリーズが咆哮に束縛されながらも、イレギュラーズ達はワイバーンとアイアンボアを少しずつ倒していった。だが、ペースの遅れを回復できたとは言い切れず、一方でワイバーンやアイアンボアの攻撃を受け続けたヴェルグリーズとマカライトも深手を負った。
(――もう残り時間が無い……なのに、あと二体!?)
ユーフォニーも、他のイレギュラーズも、焦りを感じていた。力試しが終わるまでの時間はあと十秒ほどだが、ワイバーンは五体、アイアンボアは七体残っている。
そのうち何体かは浅くない傷を負っているとは言え、イレギュラーズ側も半数が気力を使い果たしていた。明らかに厳しい状況でありながら、ユーフォニーは笑顔を作った。最後まで諦めない、その強さを示すべく。
「このままでは、終われないッスよ!」
最も傷が深いワイバーンを狙い飛翔したライオリットが、両手の『レヴィアン・セイバー』で三度、斬りつけた。そのうち二度は固い鱗に食い止められ大きなダメージを与えることはなかったが、既に刻まれている傷に重ねるように放たれた一閃が、ワイバーンの肉を深く斬り裂く。
(まだ、護りは崩せないのだわ)
華蓮は、ユーフォニーから離れず護りを固めている。スマラクトからの攻撃があれば、ユーフォニーもライオリットもアクセルも倒れてしまいかねない。まだ力試しが終わっておらず、戦闘不能者の人数がその成否に関わる以上、ここは攻勢に出るべきではないと華蓮は判断した。
(もう、回復なんてしてる余裕は無いね!)
アクセルが立て続けに放つ破邪の聖光が、ライオリットに斬られたワイバーンの身体を灼く。特に、今刻まれたばかりの傷に邪悪を灼く聖光は、あたかも塩を塗るかの如く効いたようで、ワイバーンは苦痛に叫びを上げつつ悶えた。
ワイバーンとアイアンボアは、ヴェルグリーズとマカライトに集中攻撃を仕掛けるものの、傷は深めさせても倒すにも可能性の力を費やさせるにも至らない。
(これで……倒れて!)
焔は、『カグツチ天火』で神速の刺突を放った。その刺突から生まれた衝撃派は、ワイバーンの胴に直撃すると、その身体を大きく吹き飛ばす。吹き飛ばされて地面に墜ちたワイバーンは、ガクリと力尽きて動かなくなった。
(このままでは、間に合わぬ……誰よりも多く、技を叩き込め!)
ワイバーンが地に墜ちる間に、咲耶は手負いのアイアンボアの一体にあらん限りの連撃を仕掛けていた。限界を超えた動きに身体は痛むが、もう気にしていられる余裕は無い。一閃、二閃、三閃、四閃。宿儺から展開している刀身が、アイアンボアの毛皮を斬り裂き、その身体に傷を刻んでいく。
「助けて! 係長!」
ユーフォニーは咲耶に斬られたアイアンボアから距離を取ると、万能遠距離攻撃係長『今井さん』を喚び出し、彼が着けている左耳の紅い耳飾りを通じて魔力を供給した。今井さんはその魔力を無数の書類へと換えて、アイアンボアに叩き付ける。書類の一枚一枚は軽いが、無数にともなればその質量は重く、圧は強くなる。アイアンボアの身体が、グラリ、と大きくよろめいた。
(届け、届け――!)
今井さんの書類が止んだ刹那、ヴェルグリーズが『神々廻剱・写し』を力の限り振るう。三度の剣閃が、アイアンボアの身体を斬り裂いた。アイアンボアの身体がさらに大きくよろめくが、アイアンボアは辛うじて倒れることなく踏みとどまる。
(間に合え……っ!)
マカライトは、身体から生えている六本の鎖で、『門』を形成する。その門から召喚された、鎖で形作られた巨人『タルタロス』の腕が、アイアンボアを横殴りに殴りつけた。アイアンボアの身体は横にドウ、と倒れ、動かなくなる。
(条件の片方は満たしおったか――だが、もう片方は如何かのう?)
スマラクトは、片脚で強く地面を踏み込んだ。震脚である。ズシン、と人の脚が発したとは思えない程の轟音が響くと共に、一帯に衝撃波が走る。この衝撃波を受けてアクセルとライオリットが力尽きてしまった。だが。
「ふぅむ……行けると思うたが、届かなんだか」
倒れたのは、二人だけ。つまり、イレギュラーズ達の力試しは成功した。
●探索の許しは下りた
力試しが終わり、住処に踏み入ったことを謝罪しようとするイレギュラーズ達を制し、スマラクトは倒れた者を介抱するよう促した。イレギュラーズ達がそれに従いアクセルとライオリットを介抱している間に、スマラクトも倒れたワイバーンやアイアンボア達を介抱していく。
双方の介抱が落ち着いたところで、イレギュラーズ達はスマラクトの住処に踏み入ったことを謝罪した。
「でも、この先にいるかもしれない人に会わせてあげたいお友達がいるんだ」
焔の言う「お友達」は、フリアノンの里長である珱・琉珂のことだ。
「そのために、ここを通らせて下さい! お願いします!」
「貴様らは、儂の出した条件を満たし、力を見せた。ならば、好きに通るが良い」
焔の懇願にスマラクトは応えると、大きな咆哮を立て続けに上げた。
「これで、余程の命知らずでない限り、我の住処にいる者が貴様らを襲うことはあるまい」
「……もしや、この力試しは拙者達の身を気遣っての事でござったか?」
咲耶は、自身の推測を口にした。竜の姿で戦えば良いものをわざわざ人の姿を取って戦うとは、スマラクトは人間に好意的な竜種なのではないかと、咲耶は考えている。
「ふん。ここに住む者が迂闊に貴様らに突きかかって傷つくのを、見たくないだけの事よ」
だが、スマラクトはその問いには答えず、鼻を鳴らしてそう返した。
「俺達も、ここに住む者を無闇に傷つけるつもりはない。
無理やり追い出すことも出来ただろうに、試しの機会をくれたこと、感謝する」
そんなスマラクトに、ヴェルグリーズは敬意を込めて礼を述べた。それに対して、スマラクトはただ「ふん」とだけ鼻を鳴らして視線を逸らした。
「何か、照れてない?」
「……もしかして、ツンデレってやつッスかね?」
そんなスマラクトの様子に、アクセルとライオリットがひそひそと小声で話す。スマラクトはアクセルとライオリットの方を睨んだが、特に何も言わなかった。
「迷惑をかけたお詫びとして、この荷馬車の食糧をプレゼントするのだわ。
海洋で採れたお魚の干物とか、如何かしら?」
「ほほう、それは興味あるのう」
「他に、お肉もあるのだわ」
「ふむ。野菜や果物は?」
「それも、あるのだわ」
華蓮の申し出に、スマラクトは興味津々な様子を見せながら、幾つか尋ねた。そしてスマラクトは、海産物は料理して自身に、肉はワイバーンに、野菜や果物はアイアンボアに出すよう、華蓮に告げる。
(ワイバーンすら従えているのは、力だけが理由ではないってことか)
譲られた食糧を独り占めするのではなく、共に戦ったワイバーンやアイアンボアにも分け与えていることに、マカライトはスマラクトの器を見たような気がした。
華蓮が海産物を料理している間、イレギュラーズ達はこの森の奥のことについて何か知らないかとスマラクトに尋ねた。だが。
「それは、貴様ら自身で知るべき事であろう?」
スマラクトは、そう言って問いへの回答を拒否。
スマラクトやワイバーン、アイアンボアらが食事する間、ユーフォニーは彼らを微笑ましく眺めていた。
(みなさんのことをもっと知りたい……仲良くしたい。もしかしたら、その方法を探っていけるのかも知れません)
自身にとって始まりの地である覇竜のことが、ユーフォニーは好きだ。だからこそ、そこに住む者達とは仲良くしたい。もしかしたらこの願いは叶うのかも知れないと、ユーフォニーは眼前の光景に希望を抱くのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
シナリオへのご参加、ありがとうございました。力試しは成功し、皆さんはスマラクトに認められました。以降、彼が住処とする領域においては、ある程度安全に探索することが出来るようになりました(危険が完全になくなるわけではありません)。
MVPは、スマラクトの抑えに当たった、焔さんにお贈りします。
それでは、お疲れ様でした!
GMコメント
こんにちは、緑城雄山です。今回は覇竜における、<帰らずの森>のシナリオをお送りします。
ピュニシオンの森の探索が始まりましたが、そのとある一帯に住む竜種『スマラクト』が力試しを挑んできました。
この一帯を探索するためにも、スマラクトに皆さんの実力を示して下さい。
●成功条件
以下の、両方の達成
・18ターン終了時の、イレギュラーズ側の戦闘不能者が、4名以内
・同時点で、フォレストワイバーン、アイアンボア計20体のうち、10体以上が戦闘不能
●情報精度
このシナリオの情報精度はC-です。
不測の事態を警戒して下さい。
●ロケーション
ピュニシオンの森。スマラクトの棲む領域。時間は昼間、天候は晴天。
森としてはそこそこ開けてはいますが、それでも邪魔になる樹々はあるため、中距離以遠の遠距離攻撃は距離に応じて命中にペナルティーがかかります。
●初期配置
イレギュラーズは、一カ所に固まっています。
スマラクト、フォレストワイバーン、アイアンボアは、イレギュラーズ達の中心から半径40メートルの円周上に、満遍なく散開しています。
●スマラクト ✕1
この一帯を住処とする竜種です。竜種としての種類は、将星種『レグルス』。
皆さんの前には、緑色のスーツを着た老爺の姿で現れます。
武具は装備することなく、主に格闘戦で戦ってくるようです。
その他、能力の詳細は不明です。
●フォレストワイバーン ✕10
森の環境に適応したワイバーンです。森の中でも何事もないかのように俊敏に飛び回ります。
【移】付きの牙や爪、あるいは尾で攻撃してきます。
能力傾向としてはスピード型ですが、生命力や防御技術は侮れません。
【飛行】を有しており、マークやブロックは飛んで(空中でされた場合でも上下に高度を変えて)抜けてくるので意味を持ちません。
●アイアンボア ✕10
体高2メートル以上になる巨大猪です。その名のとおり、鋼のように固い毛皮と堅牢な肉体、強靱な生命力を持ちます。
【移】【飛】付きの突進は脅威でしょう。
能力傾向としてはパワー型ですが、反応は悪くないですし移動力は高めです。
巨体であるため、マークやブロックには複数人を要します。
それでは、皆さんのご参加をお待ちしております。
Tweet