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シナリオ詳細

<鉄と血と>猛り燃ゆるワルキューレ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 鉄帝国の冬は未だ明けず。
 されど長きに渡った戦乱の末、六大派閥は共通の目的に向けて確実に歩を進めている。
 帝政派とザーバ派は合流し、アーカーシュや北辰連合もまた帝都へと進路を取る。
 翻って、帝都に存在するラド・バウでは防衛体制が整い、革命派も地下道より攻撃を開始した。
 こうして始まった帝都『スチールグラード』攻略戦は厳冬の冷たさの中に燃え上がる。
「ふむ、まさか私もこちら側でこの町にいるとはな」
 クレイモアを握りブリュンヒルデが小さくそういうのが聞こえて、アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)はそちらを向いた。
「なんだ、まだ未練でもあるのか?」
「ふ、まさか――君達とやり合えないことは多少の気持ちもあるが。
 なに――これから戦う奴の事を思えばそんなことは気にならないさ」
 そう言ってブリュンヒルデが獰猛な笑みを浮かべた。
 ブリュンヒルデは少し前まで『新時代英雄隊(ジェルヴォプリノシェーニエ)』に属す賞金稼ぎだった。
 強者との戦いを好み、強者たるイレギュラーズが本気で来てくれるから新時代英雄隊に属し続けてきた程度には、それだけしか興味がない女だった。
 結局、その気質がイレギュラーズ側への内応を懸念されて僻地に追いやられていた所をイレギュラーズが手を組むことを提案した形だった。
「イリダールと言ったか。彼はそんなに強いのか?」
 結月 沙耶(p3p009126)が問うてみれば、ブリュンヒルデは暫し目を伏せて考え込む。
「――まぁ、そうだな。魔種というのだろう? あの連中だ。
 強いには強いさ。実のところ、『私も一度は負けている』」
「おおーブリュンヒルデより強いのか?」
 熾煇(p3p010425)が言えば、ブリュンヒルデは挑戦的に笑う。
「あぁ、強い。新時代英雄隊の連中が私に英雄狩りを試みた直後だったから疲弊していた――などと言い訳できんぐらいには強い」
 爛々と輝く双眸には強者を好む気質がありありと映っている。
「そんなになのかー」
「魔種……だったか、ならそれぐらいであってくれなくては――という気もするがな」
「怖気づく――わけもないんだろ? お前みたいな奴がやられっ放しで済ますわけがない」
 アルヴァの問いにブリュンヒルデが「当然」と短く答えるのも分かり切っていたことか。
「ブリュンヒルデも紫炎隊も前より強くなったってとこ見せてやりたいなー」
 熾煇がそう言えばブリュンヒルデも強く頷くものだ。
「そのような相手であれば、なおのこと油断はできないな。
 ……それで、イリダールはどの辺りにいるか分かるのだろうか?」
 沙耶はふと問いかけた。
 帝都決戦、イリダールが帝国の中佐であるのなら、帝都にいない方がおかしいが――
「あぁ――それなら1つ思い浮かぶところがある」
 そういうとブリュンヒルデが着いてこい――とばかりに走り出した。


 スチールグラード内部を駆け抜けていく。
 硝煙の臭い、血の臭い、爆裂音や破砕音。それらの痕跡と思しき破壊された街並み。
 それらを突っ切るようにしてイレギュラーズが辿り着いたのは帝都の一角、ドーム状の建造物。
 敷地内に入れば突如として空気が変わる。
「誰かと思えばじゃじゃ馬ブリュンヒルデじゃねえの」
 声がした方を向けば、そこには偉丈夫が立っている。
 熊を思わせる体格に巨大なガントレットが握りしめるのは幅広の大斧。
「健勝で何よりだよイリダール」
「ぞろぞろと連れてんのはローレットか……なるほどなぁ、てめぇは結局裏切ったってわけだ」
 刹那、イリダールのガントレットから冷気が溢れだし、大斧からは強烈な稲光がスパークする。
「ローレットと争うのはいつでもできるが、お前への再戦は今日限りになりそうでな。
 ――再戦と行こう、イリダール」
 闘志を溢れさせるブリュンヒルデはその背に炎の翼を纏い、手足からも紫炎が溢れ出す。
「お呼びだぜ、ワルキューレ!」
 イリダールが笑った直後、戦場にそれらが姿を見せた。
 パワードスーツに身を包んだ人型のナニカは、頭部に1つしかない目を以ってイレギュラーズを見下ろし敵意をむき出しにした。

GMコメント

 そんなわけでこんばんは、春野紅葉です。
 ブリュンヒルデと一緒に魔種戦です。

●オーダー
【1】『戦冽雷斧』イリダールの撃破
【2】人工精霊『ワルキューレ』の撃破

●フィールドデータ
 スチールグラードにある一角。
 聖域を思わせる不思議な空気の漂う謎の場所。
 その手の存在に縁ある者であれば低級の精霊たちが怯えているのが分かります。

●エネミーデータ
・『戦冽雷斧』イリダール
 新皇帝派の魔種です。
 ブリュンヒルデが肉ダルマと表現するにぴったりな筋骨隆々とした大男。
 古代兵器と思われるガントレットと大斧を持ちます。

 多彩な範囲攻撃と【凍結】系列、【痺れ】系列のBSを駆使する他、【邪道】効果もありそうです。
 極限まで集束させた雷を撃ち込む単体攻撃は警戒にたる一撃と言えます。
 また、幾つかの技には【必殺】効果もある様子。

 HP、物攻、命中は非常に高く、EXAも高めな一方、反応、抵抗、防技はやや低め。

・人工精霊『ワルキューレ』〔デザイン:ゲイラホズ〕
 パワードスーツに人工的に作り出された精霊擬きが埋め込まれたもの。
 古代技術の一種と思われます。人工精霊には意思はなく、感情もありません。
 ただ戦闘用に作り出されたモンスターです。

 槍と盾を装備し、機械的な翼をもつ姿は戦乙女を彷彿とさせます。
 機動、反応、命中が高く、HPと防技もそこそこ高め。
 純火力はそれほど高くはありませんが【封殺】付の【スプラッシュ】攻撃を持ちます。
 反面、単体攻撃しか持っていません。

・人工精霊『ワルキューレ』〔デザイン:ランドグリーズ〕
 パワードスーツに人工的に作り出された精霊擬きが埋め込まれたもの。
 古代技術の一種と思われます。人工精霊には意思はなく、感情もありません。
 ただ戦闘用に作り出されたモンスターです。

 機械的な翼をもつ姿は戦乙女を彷彿とさせます。
 ゲイラホズとは異なり、武器は長剣、盾は持っていません。

 物攻、HP、命中、反応がそこそこ高め。
 純火力が高く、【出血】系列のBS、【ブレイク】を用います。
 ゲイラホズ同様に単体攻撃しか持ちません。

・人工精霊『ワルキューレ』〔デザイン:フリスト〕
 パワードスーツに人工的に作り出された精霊擬きが埋め込まれたもの。
 古代技術の一種と思われます。人工精霊には意思はなく、感情もありません。
 ただ戦闘用に作り出されたモンスターです。

 機械的な翼をもつ姿は戦乙女を彷彿とさせます。
 前述2体とは異なり、武器は弓矢、盾は持っていません。

 神攻、命中、反応がそこそこ高め。
 純火力はランドグリーズ未満、ゲイラホズ以上。
 【乱れ】系列、【足止め】系列のBSを用います。
 この個体のみ範囲攻撃を持ちます。

●友軍データ
・『紫炎』ブリュンヒルデ
 『新時代英雄隊(ジェルヴォプリノシェーニエ)』に属していた賞金稼ぎ。
 新時代英雄隊によって『英雄狩り(一般人や子供へ行われる苛烈な訓練や労働)』に遭い、
 実力で自分を攫った連中を撫で斬りにして地位を継承した武闘派です。
 上記の英雄狩りを撫で斬りにした直後にイリダール及び人工精霊の襲撃を受けて敗北したとのこと。

 ハイエスタ系の部族を出身とする人間種の女性。
 武器は魔力の籠ったクレイモア風の大剣です。
 今回は全力モード、一族の始祖たる戦乙女の力を全開にしています。

 炎を纏った剣は【火炎】系列や【乱れ】系列のBSを持ちます。
 戦闘スタイルは【堅実】かつ【追撃】を駆使し、
 また【復讐】、【覇道の精神】のパッシヴを持ちます。
 一番の大技は【背水】属性です。

 HP、防技、抵抗、物攻、命中が高め。
 なお、今回はパッシブで【加速】【時限】【ダメージ】が付与されています。
 攻めれば攻めるほど強くなる代わり、突然にガス欠を起こします。

・紫炎隊×5
 ブリュンヒルデの手で『英雄狩り』に遭った元一般人の訓練兵達。
 攫われてきた可哀想な人々というよりは真っ当に苛烈な訓練を潜り抜けてきた勇士達です。
 恐らくは元々は恩賞目当ての人物や家族を守るため等、自ら進んで属した人々です。
 皆さんに合流した後、訓練を受けて練度と士気が上がっています。
 皆さんの指示があれば従ってくれます。何もなければブリュンヒルデのサポートを行います。

 軽装備の甲冑に身を包んでいます。
 長剣と盾を装備した前衛2人、杖を装備した魔導師の後衛が3人。

 前衛タイプは肉薄して【火炎】系列や【出血】系列、
 【スプラッシュ】を駆使した単体攻撃を行います。

 後衛タイプは中~超遠距離で【火炎】系列や【足止め】系列、
 【窒息】系列の範囲攻撃を行います。

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <鉄と血と>猛り燃ゆるワルキューレ完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2023年03月21日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

セララ(p3p000273)
魔法騎士
ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)
キミと、手を繋ぐ
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
アルヴィ=ド=ラフス(p3p007360)
航空指揮
ウルリカ(p3p007777)
高速機動の戦乙女
シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)
天下無双の貴族騎士
結月 沙耶(p3p009126)
怪盗乱麻
熾煇(p3p010425)
紲家のペット枠

リプレイ


「ボクはセララ! 『魔法騎士』セララ」
「鉄帝軍人ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク」
「ふたり合わせて!」
「「魔法騎士セララ&マリー参上! 鉄帝の平和はボク達が守る!」」」
「――であります」
 格好良くポーズを決めたのは『魔法騎士』セララ(p3p000273)と『キミと、手を繋ぐ』ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)である。
「我こそは『金獅子』ヴァイセンブルクが末娘。ハイデマリー! さぁ、鉄帝の民のため! 立ち上がれ兵よ!」
 ハイデマリーは自らの家名を宣言して鼓舞するように告げた。
「ここで我々が敗れればそれだけ被害を被るのは民であります!
 気概を見せよ! 意地を見せよ! 意気を見せよ! 金色の獅子の名のもとに!!!
「ボク達が負ければ鉄帝は滅ぶ。ボク達はこの国の人々の希望なんだ。
 もちろん、共闘してくれるキミ達もね。だから魔種に勝利し、鉄帝を救って本当の英雄になろう!」
 セララは愛剣を掲げて紫炎隊を鼓舞するように告げる。
「元気なこったな、ローレットってのも」
 冷や水を浴びせるような嘲りを含んだ声でイリダールが笑う。
(どいつもこいつも命を勝手に弄びやがって。全く、腹がたつ。
 ……こんなことで怒るなんざ、私も神の立場に慣れちまったもんだな……やれやれ)
 人工精霊たちを見ながら『紅矢の守護者』天之空・ミーナ(p3p005003)は思う。
「なぁ、あんた名前は?」
「デリーです。よろしくお願いします」
 紫炎隊から1人やってきた少年――デリーへ声をかければ少し緊張した様子でそんな答えが返ってくる。
「良い名前だ。じゃあ、デリー。私らであいつを止めるぞ。挟み撃ちだ。いけるな?」
 小声で言ってやれば赤毛のデリーは頷いて見せる。
「なぁブリュンヒルデ、俺とお前ならどっちが強い?
 何、団体戦の話じゃあなくて、タイマンで戦ったときの話だ」
 『航空猟兵』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)は魔種を見据えたままにブリュンヒルデへと声をかけた。
「さぁ? どうだろうな。負けてやるつもりはないが」
「それじゃあ質問を変えよう、イリダールは俺を倒せると思うか?」
「どうした、まさか怖気づいたわけでもあるまい」
「深い意味なんてない。参考程度に聞いてみただけさ」
「そうか――少なくとも君を容易く撃ち落とせはしないだろうな」
「それだけ聞ければ充分だ」
(戦乙女……ハイエスタの部族とは、なんだかんだで縁がありますね。
 敵に模される程には有名な逸話があるのでしょう。
 皇帝が男性に対して、戦乙女という対比も、大昔には何か別の伝説があったのでしょうね)
 宙に浮かぶ人工精霊を見渡して『高速機動の戦乙女』ウルリカ(p3p007777)は思う。
「少しだけ親近感が湧きますね? 戦闘用の人工物というのは」
 ぽつりと漏らした一言は誰にあてるでもなく。
「まさか君と共に戦う日が来るとは……頼むぞ、ブリュンヒルデ」
 そう言うのは『先導者たらん』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)だ。
「言われずともだ。こちらこそ、頼むぞ」
 そう言って笑ったブリュンヒルデが増す増す出力をあげて行く。
「ブリュンヒルデが一緒に戦ってくれるとは、これほど心強い味方もいないというものだ。
 さて、ブリュンヒルデの本懐、イリダールの撃破……始めようじゃないか。
 今の私達は乗っているからな多分!」
「こちらこそ、貴殿らがいるのは随分と心強い」
 『奪うは人心までも』結月 沙耶(p3p009126)が言えばブリュンヒルデもこくりと頷くものである。
「お、ブリュンヒルデは最初から全力か。そんなに嫌いかイリダールが。俺も嫌いだが。
 ブリュンヒルデが全力出すなら、俺もいつものドラゴンの姿はやめとくか」
 『紲家のペット枠』熾煇(p3p010425)は白銀の髪と灼眼を持つ白皙の少年の姿を取って大太刀を抜いた。
「ブリュンヒルデ、まずはあのワルキューレとかいうのを倒すぞ。
 お前は戦闘が長引くほど強くなるからな。
 それに、最初に大物やるのは詰まらないだろう?」
「ウォーミングアップにはちょうどいいだろう」
「紫炎隊、この戦いが終わってもブリュンヒルデに付いていくやつは強くならないとな。
 俺と一緒に死に物狂いで戦うぞ。付いてこい」
「おう!」
 熾煇に合わせて紫炎隊も動き出せば、戦線が動き出す。


「デートを邪魔して悪いな、テメェは俺がぶちのめす」
 アルヴァは開戦の刹那に銃弾をばら撒いた。
 放たれた砲撃の雨は宛ら獣の咆哮の如く、イリダールの注意を惹きつけるに十分すぎる。
「鬱陶しい犬だなぁ……まぁいい。てめえじゃあ相手にならねえってことを教えてやる」
 背後に向かうように飛翔したアルヴァを追うようにイリダールが動き出せば。
「俺じゃ不服か? 安心しろ、徐々にそんなこと言えなくなるさ」
 アルヴァは挑発がてらにそう言って笑って見せる。
「言ってやがれ、本当にそうか試してやる!」
 ばりばりと大斧がスパークを爆ぜているのが見えた。

「ワルキューレだっけ? 強いんだろうけど、なんかつまんねーな。こんなの狩りでも何でもねーし」
 ワイバーンに跨り飛翔した熾煇は思わず呟いていた。
 振り払った焔の如き一閃を受けた人工精霊ランドグリーズに追いかけられながらワイバーンと共に吶喊しては一気に後退を繰り返していた。
 体勢を崩してランドグリーズが身動きを取れなくなった瞬間、熾煇はワイバーンの背中で立ち上がった。
 跳躍と共にランドグリーズへ肉薄、一閃を見舞う。
「紫炎隊、続けー」
 熾煇のそんな声と前後して紫炎隊たちが一斉にランドグリーズへと攻撃していく。
 それに続くようにウルリカもまた走り抜ける。
「戦闘スタイルもコンセプトも似通う、ならばあとは経験値と戦歴が物を言うのなら……
 たとえ私より上位の性能があっても、頭脳はアマチュアと言うことです」
 容赦などあるはずもなく、紡がれるは恐るべき連撃。
 壮絶極まる洗練された斬撃の乱舞はランドグリーズの傷を大いに押し広げ、その身体に不調を齎していく。

 シューヴェルトの速度もまた戦場においては圧倒的な物だった。
「ブリュンヒルデ、君も手伝ってくれると助かる」
「あぁ、あれからだな」
 厄刀『魔応』に手を置いたシューヴェルトの横でブリュンヒルデがゲイラホズを見やる。
 それに頷いてやれば、彼女が剣を構え始める。
「では僕が先に攻めかかる」
 言うや、シューヴェルトは愛刀を振り払った。
 呪詛の刃は戦場を真っすぐに貫通して駆け抜け、その守りなど振り払って斬り裂いていく。
「――全力、全壊!!」
 限界を超えて引き出したセララの魔力がその背中に光翼と化して構築されていく。
 雷雲が聖剣を打つ。壮絶なる閃光と雷鳴が戦場を劈いた。
「――ギガセララブレイク!!!!」
 雷光を纏う斬撃はそれそのものが雷の如き鋭さと斬光を描いて振り抜かれる。
 恐るべき一閃がゲイラホズの身体を真っ二つに切り分けたが如き印象を残して消えていく。
 壮絶なる傷痕は苛烈なる印象と相違ない。
「当たらなければ意味もないな」
 ゲイラホズの槍による封じ込めを天性の感覚で躱しきった沙耶はドールズパレードを呼び寄せる。
 次々に姿を見せた小型のヘリコプターらしき何かやら戦車やら歩兵たちが反撃とばかりに一斉にゲイラホズめがけて銃弾をぶちまけて行く。
 執念深く致命傷を刻む連続砲撃の後、戦闘人形たちは一斉にゲイラホズへと斬りかかっていく。
 邪剣を描く連撃は苛烈にゲイラホズを切り刻んでいく。
「ほう、凄まじいな。いやはや、貴殿らには驚かされてばかりだ。――私も少しばかりやってみようか」
 目を瞠ったブリュンヒルデがそれに続くように紫炎の一閃を振り払う。

「逃しゃしないさ。久しぶりに見せてやるよ、暗殺者のしつこさってのをよ」
 ミーナはデリーがフリストに肉薄して攻撃するのを見据え、フリストの背後へと身を翻す。
 その背中に張り付くように立ち、希望の剣を振り払う。
 美し軌跡を描く斬撃は猛烈な傷口を開いて夥しい量の血――の代わりであろう魔力を吹きださせた。
「まだまだ行くぞ」
 死神の大鎌を振り払えば、半魔半物質の大鎌は肉体を通過して内側から無数の魔力の棘が連続して肉体を貫く。
「止まっているのならただの的であります」
 ハイデマリーは挟み撃ちを試みる2人の様子を確かめ、静かに銃口をフリストへ向ける。
 白き死神はその狙いを静かに定めている。
 ハイデマリーの照準は静かに狩るべき人工精霊の動力源を中心に捉えた。
 放たれた魔弾は2つ。
 壮絶極まるコントロールより放たれた精密狙撃は鮮やかに戦場を駆け抜けフリストの加太を撃ち抜いた。
 視線が起きてハイデマリーを見る。


 雷光が柱を描く。
「はぁ、はぁ、うざってえ……だが、これで終わりだろ? なぁ、終わったよなぁ、ガキ!」
 イリダールの声を聞きながら、撃ち込まれた一撃を受け切ったアルヴァは口元を拭った。
「おいおいどうした。俺はまだピンピンしてるぜ?」
 立て直しと共に告げた挑発にイリダールが青筋を立てるのが明らかに見えた。

「ボクの方が速いみたいだね」
 剣身に雷光を纏うセララは聖剣を構えて振り抜いた。
「こっちから押し込んじゃおう!」
 雷光を引いた一閃は雷鳴さえ響かせながら戦場を切り開き、ゲイラホズの身体を痛烈に叩きつける。
 雷はその身体を襲い、その動きを封じ込めてた。
「……む」
 ブリュンヒルデが小さく呟いて愛剣を見下ろしたのをシューヴェルトは見逃さなかった。
「いったん下がれ、あとで君の出番は来る」
「あぁ、すまない」
 出力の低下した紫炎の剣を見て彼女が頷き後退し始める。
 それに合わせ、シューヴェルトは呪いの力を脚に集束させていく。
 肉薄すると共に撃ち込んだ蹴撃は呪詛を纏い、飛竜さえも地に堕とさんばかりの一撃となってフリストの身体を薙いだ。
 くの字に曲がったフリストが地面へと叩きつけられ、ふらふらと起き上がる。
「このまま片を付けよう」
 そう言った沙耶は再び機械人形を呼び起こす。
 再び飛び上がろうとするゲイラホズめがけて放たれた人形たちの砲撃がゲイラホズの身体から魔力を放出させていく。
 そのままに追撃となった人形たちの斬撃はゲイラホズの核を破砕した。

「流石にそろそろ終わりか?」
 だらりと垂れたパワードスーツや腕や胴部を見たミーナは再び希望の剣で斬撃を撃ち込んでいく。
 鮮やかに空の如き剣閃が戦場を奔り、続けざまに切り開くは紅の斬撃。
 鮮やかに切り開いた一撃はただの布石、追撃の連撃は剣閃の影より振り上げられた大鎌の一閃。
「油断するわけではありませんが、これで終わりであります」
 ハイデマリーは再び銃口をフリストへ向ける。
 相対するようにフリストがこちらに向けて矢を番えているのが見えた。
「――ならば、どちらが届くのか勝負であります」
 放たれる死神の凶弾は2発。
 それにやや遅れて放たれたフリストの矢がこちらに向かって飛翔する。
 2つの弾丸が寸分の狂いなく狙いすました場所へと撃ち込まれ、フリストの動きを阻害し、射こまれた矢はハイデマリーの身体を掠めて落ちて行く。


「へへ、お膳立てはこれくらいで、十分か?」
 イリダールへと銃床を叩きつけたアルヴァはちらりと視線を戦場に見やり、笑って見せる。
「何の話だ、ガキ!」
 ばりばりと音を立てる雷鳴の大斧にアルヴァは肩を竦めてみせる。
「あんたは終わりだってことだよ」
 そこへ仲間達の声が耳に届き始めた。
「ブリュンヒルデー、やっと一緒に戦えるな。これが終わったら俺とサシでやり合おう。
 ちゃんとお前とやり合いたいんだ。約束だぞ。イリダール相手で疲れてても文句無しだ」
 ランドグリーズを倒した熾煇は合流するやブリュンヒルデへ声をかける。
 不思議そうにするブリュンヒルデに熾煇は改め「やろう」と言えば、彼女も笑って同意する。
「――というわけで、イリダール! お前にはさっさと退場してもらうぞ!」
「はっ、どちらが退場するかな――」
 バリバリとスパークを爆ぜる大斧を振り下ろされるよりも前に熾煇は大太刀を振り抜いた。
 紅蓮の焔が如き一閃が氷を打ち破り、雷光を焼きつける。
「出し惜しみをしている場合ではなさそうだ!」
 その手に握る剣に圧倒的なまでの呪詛を纏い、シューヴェルトは真っすぐにイリダールを見据えた。
 身に宿る呪詛のみに非ず、数多培った経験を怨念に変えて1つ1つを刃に這わせていく。
 それは一時的に鬼神の如き呪いを抱く壮絶なる抜刀術。
 振り払った一閃は鮮やかに戦場を駆け抜けイリダールに痛撃を刻み、その身体を後方へと吹き飛ばす。
「ほら、自慢のワルキューレは倒されたぞ? 本当に戦乙女の名を持つにふさわしいのはどちらだろうな?」
 沙耶はイリダールへと肉薄すると同時に挑発の言葉を述べた。
「――おのれら、俺の成果を無駄にした挙句、えらそうなことを」
 イリダールが苛立ちを露わに言った。
「消し飛びやがれ!!」
 大振り振り上げた大斧を地面へ叩きつけた刹那、雷光と冷気が入り混じりながら辺り一帯へと迸る。
 強烈な雷光を纏った氷刃が周囲を切り刻み、凍てつかせ、雷撃が迸る。
 高出力なれど、拡散性を重視した大技は比較的ダメージには通じない。
「どうした、この程度か?」
 ミーナはイリダールへと肉薄したままに大鎌を振り払った。
 内側より抉り穿つ鎌の斬撃がイリダールの身体へ連撃の傷を刻み付けて行く。
「称える者のいない英雄や紛い物の戦乙女ではこれが精一杯でしょう」
 続けて飛び込んだウルリカはAAS・エアハンマーの出力を上げる。
 振り払った斬撃が衝撃波を抱いてイリダールめがけて駆け抜ける。
 それは不可視の連撃、遥かなるを切り刻む死神の大鎌。
 凶弾の狙撃にも等しき衝撃波はイリダールの身動きを封じ込めてみせた。
「セララ! 今であります!」
 ハイデマリーが声をかけるのと同時にセララが動く。
「うん! いこう、マリー!」
 それにセララが応じれば。
「魅せてみせましょう、これがコンビネーションだと――全力全開合体攻撃であります」
 その刹那にハイデマリーの凶弾が戦場を突っ切った。
 超長距離より射出された凶弾は不可視の弾丸となって続く。
 着弾するのとほぼ同時にハイデマリーが隠し玉とばかりに打ち込んだ弾丸もそれに続いていった。
「鉄帝の平和のためにも、君に利用された人々やこの子達のためにも!」
 セララの頭上へと雷雲が立ち込めて行く。
 全身を光が包み込み、光翼はそれまでで一番の輝きを放つ。
 降り注いだ雷光が聖剣を打ち、有り余った雷光は大地を迸る。
「天雷の剣! いいじゃねえか、俺の雷斧とどっちが強いか勝負してみろ!」
「全力全壊! ギガセララブレイク――!!!!」
 刹那、セララはイリダールめがけて聖剣を振り払った。
 景色を塗り替える圧倒的な雷光が戦場を塗りつぶして振り払われた。
「ぉぉぉぉ!!」
 雄叫びと同時、イリダールが大斧をこちらに振り抜いたように見え――壮絶な一撃に何かがぶつかった。
「が――げぇ……ごふっ……ば、ばかな、俺の雷斧が……砕けやがった……!?」
 刃ごと消し飛びただの棒と化した斧を見てイリダールが驚愕に目を瞠る。
「あぁ、全くだ。攻撃を当てることも出来ず、自慢の武器も壊れたな。どうする」
 沙耶は再びそう挑発するものだ。
 天性の直感を以って先の一撃を回避してみせたままに、人形兵達を嗾けていく。
 姿を見せた自動人形たちは一斉にイリダールへと吶喊を仕掛けていく。
 幾つかの兵士こそ棒になった斧で振り払われるものの、到達した兵士達が一斉に斬撃を振り払えば、痛撃の連撃が致命傷を刻んでいく。
「宝の持ち腐れですね。パワードスーツも、人造精霊も。
 そして――我々は、そんなものに負けるわけにはいかないのです」
 ウルリカはそんな言葉と共に肉薄する。
「その意義すら理解せぬ愚鈍に俺が負けるだと……!」
 激情を露わにしたイリダールの猛攻を潜り抜け、ウルリカは剣を一閃する。
 残る気力の全てを賭けた連続する斬撃は確かにイリダールの身体に傷をつけていく。
(暗殺者らしく、死神らしく。只管に、陰惨に、残酷に)
 息を殺すようにしてミーナはイリダールの背後へと回り込む。
 希望の剣を振り下ろしてイリダールの身体に傷を刻めば、そのままの勢いで再び大鎌を振り払う。
 大きな隙を作ったそこ目掛け、希望の剣を再び降り払った。
 傷口を寸分の狂いなく斬り払った斬撃がイリダールの心臓を捉えた。
「ブリュンヒルデ!」
「あぁ――分かってる。やろうか」
 熾煇はその姿を見て振り返りブリュンヒルデへ言えば――彼女が笑った。

成否

成功

MVP

アルヴィ=ド=ラフス(p3p007360)
航空指揮

状態異常

セララ(p3p000273)[重傷]
魔法騎士

あとがき

お疲れさまでしたイレギュラーズ

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