シナリオ詳細
<晶惑のアル・イスラー>黒の盟友
オープニング
●
砂の都ラサ、ネフェルストの夜。
煌びやかな星空が群青の絨毯に散りばめられ輝く。
静かな部屋の一室には、柔らかなソファが置かれローテブルには金色の杯が置かれていた。
「最近、ヨハンナに恋の気配があるの」
紅い髪を揺らしたロウ・テイラーズの序列第一位『紅き恩寵(グレイスローズ)』レイチェル=ベルンシュタインは序列二位『蒼き誓約(ブラオアイト)』ヨハネ=ベルンハルトに微笑む。
「なるほど……」
「良いわよね。恋……特に悲恋はヨハンナの心を沢山傷付け美しく飾るわ。今が甘美であればあるだけ、それを失った時の悲しみは深くなる。その涙はきっと甘くて美味しいのでしょうね」
蒼い瞳を細め、頬を紅くするレイチェル。
二人が座るソファの向かいには序列三位『漆黒の戦望(ダークアンビジョン)』ルルフ・マルスと序列四位『紫花の聖母(マザークレマチス)』葛城春泥が居る。
「おい、集めさせてた『紅血晶』はどうする、そろそろ移した方が良いんじゃねえのか」
「そうですねぇ……移すにしてもダークアンビジョンは少し派手に動きすぎる。もう少し慎重に動かなければすぐに嗅ぎつけられますよ」
溜息をついたヨハネがルルフを見遣る。
ルルフは傭兵団『宵の狼』幹部、強欲の魔種である。己が一番強く在るため、傭兵団の他にこのロウ・テイラーズとの繋がりもあったのだ。
「うるせえ、俺のやり方に指図すんじゃねえ! 他の序列のやることに口出しはしねーのがこのロウ・テイラーズの掟なんだろうがよ」
「ええ、そうですよ。それでも『上手く』いったほうが、貴方にも都合が良いでしょう」
ヨハネの言葉に舌打ちをしたルルフはソファに深く座り直し足を組んだ。
「なるほど、なるほど」
春泥は思った、その流通を止めてしまえば何処かで必ず暴発する。
制御出来なくなった力は、より強力な暴力でねじ伏せられるのだろう。
其処には必ず『強き者』の存在が必要不可欠だ。それはイレギュラーズかもしれない。或いは他の何かかもしれない。春泥はその『強き者』がどんなものなのか確かめたい。其れ等を研究することでより強力な個体が生まれるかも知れないからだ。あわよくば己自身の手で作り出したい。
それに何やら『晶竜(キレスアッライル)』なる強敵がネフェルストに近づいているようなのだ。
強い存在というものはそれだけで興味をそそられる。
春泥はニヤリと口角を上げた。
「そういえば、白い妖精(ファータビアンカ)は具合が随分と悪そうだね?」
「…………」
『焔朱騎士(ヴァーミリオンナイト)』ディーン・ルーカス・ハートフィールドに支えられた『ファータビアンカ』と呼ばれた少年ネイト・アルウィンは春泥の言葉に息苦しそうに眉を寄せた。
「ファータビアンカは今、治療中なのですよ。紫花の聖母(マザークレマチス)。色々とね協力をして貰ってるんです。良い子ですよファータビアンカは」
ネイトの傍に寄ったヨハネは少年の頬をゆっくりと撫でる。
その瞬間こみ上げるのは恐怖と胃液だ。吐きそうになるのをディーンにしがみ付くことで耐えるネイト。
ネイトは魔種でありながらヨハネの実験体にされているらしい。ローレットの報告書を探せばネイト達との交戦の記録があるだろう。この様子ではあまり長くは保たないと春泥は視線を逸らす。
弱き者に興味は無い。
「ほら『ピオニー先生』に教えて貰ったんですよ」
ヨハネは悪友へ良い話しを持ちかけるように笑みを零した。
「宝石が体内を作り替えていく方法……今は少し準備中なので、本当の力を発揮出来ませんが、様子を見るには丁度いいかなと思いまして」
ヨハネの爪がネイトの頬に傷をつける。其処からは血の代わりに薔薇の花びらが零れ落ちた。
「へえ? そういうのあるんだ。そっちには興味あるな、廻に使えるかな……『ピオニー先生』の技術は僕も一目置いてるからね。元気にしてるかな先生」
「相変わらずですよ。ROOの一件から私はこっちに居を移したので、たまに会うんですよ。先生はあの頃と何も変わらない。とても純粋な方で……惚れ惚れしますね」
「懐かしいね……君と一緒になって色々実験(あそび)もしたなぁ」
ヨハネと春泥が『ピオニー先生』の元で技術を学んでいたのはもう何十年も前になる。
学び終えたヨハネは世界を旅し、春泥は練達へと移り、ROOの開発の折再会したのだ。
この『ロウ・テイラーズ』へ参加したのもその頃だろう。春泥が深道三家の相談役として根を張ったようにヨハネも自らの組織を作り上げたのだ。
「おい、てめえら……それでどうなんだよ。移すのに協力すんのかしないのか、嗅ぎつけられてんならヤツらも黙ってはいねえだろうが」
苛立ちを隠そうともしないルルフが声を上げる。
「おっと……忘れてました。そういう話しでしたね。では私からはこのファータビアンカを貸しましょう」
「ブラオアイトが何かするなら、僕は『何もしない』でいいね。せっかくのグラオ・クローネだものサンドバザールで『紅く』て甘い物でも買って帰るよ……じゃあね!」
手を振ってそそくさと居なくなる春泥にルルフは「道化めが」と舌打ちをした。
●
「やあ、やあ! 初めましてもそうじゃない子もこんばんは。皆のママ葛城春泥だよ!」
ラサのネフェルストにある雑多な酒場の中、爽やかな笑顔でイレギュラーズへ手を振るのはパンダフードを被った女性。練達の研究員『葛城春泥』だ。
緊張感の欠片も無い、春泥は異形の大きな手で手招きをする。
「まあ、そんなに固くならないでもいいよ。其れよりも、依頼だよ諸君」
「……依頼?」
物凄く嫌そうな、怪訝な瞳で春泥を見つめたのは恋屍・愛無(p3p007296)だ。
色々と説明すれば長くなるが、春泥と愛無は『親子』である。今は余り仲が良くない。春泥が現れる度に面倒事が増えるからだ。今回もきっとそういった面倒事を押しつけられるに違いない。
「今、ラサで噂の『紅血晶』は君達も知ってるよね? そう、あの綺麗な紅い宝石さ。鮮やかなルビーを思わせたかと思えば、宵闇の気配を感じさせる魅惑の石。見た事あるかい? そう、あるだろ? え、無い?
それで、今日はバレンタイン……あー、こっちの言い方だとそう、グラオ・クローネだ」
「グラオ・クローネがどうかしたのか?」
春泥を睨み付けるように警戒しているレイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)の問い。
これまでの春泥の所業から、どんな依頼なのか慎重に聞く必要があると警戒を強める。
「美しき冬の夜、グラオクローネの伝承を準え人々が過ごす憩いの日。恋人へのプロポーズやプレゼントの逸品にもその『紅血晶』が使われているそうじゃないか」
「え? そんな、ダメだよっ」
ぷるぷると首を振ったチック・シュテル(p3p000932)はローレットでの報告書を思い出していた。
実際にチックが見た訳では無いが、『紅血晶』によって人が変容し化け物になってしまう事が記されていたのだ。紅い石に魅入られ、追い求めて破滅していく人々。
それにこのネフェルストへ向けて巨大な影が飛翔したというのだ。
「竜ですか?」
蓮杖 綾姫(p3p008658)は春泥へ向けて顔を上げる。
「……いや、亜竜種達に言わせれば『竜種』ではないということだよ。でも、見た目は竜種そのもの」
巨大な紅血晶を身につけ、血色の花を撒き散らして飛翔する化け物。
「その肉体はちぐはぐのパッチワーク。様々な獣を混ぜ合わせて作られた生物とも呼べぬ実験体。すごく強そうで、怖いよねぇ……興味あるなぁ」
春泥の呟きにチックがハッと顔を上げる。何か良からぬ呟きが聞こえたような気がする。
「その化け物は『晶竜(キレスアッライル)』というやつだね。更に困った事に問題は続くよ。其れを皮切りに『紅血晶』が次々と人を獣に転じさせているようだ。『晶獣』と呼ばれるものだね。彼らは石に魅入られているから離そうともしない……うーん、めちゃくちゃ大変だねぇ!」
場違いなほど陽気な春泥の声が酒場の中に響いた。
「それで、その晶竜を連れてきた吸血鬼(ヴァンピーア)は『この砂の都を滅ぼし、月を君臨させましょう』とか言ってたり言って無かったりするらしいよ。月を君臨させるって、どれだけ強い力が必要なのかな、ちょっと興味あるなぁ」
「…………それで、依頼内容は何だ?」
愛無が痺れを切らしたように春泥を睨み付ける。
「そう、君達への依頼は。その『吸血鬼(ヴァンピーア)』と『晶獣』を倒して欲しいんだ。なあに、難しいものじゃない、ただ現場に行って倒してくればいい。ほら、簡単だろ? ついでにその辺にある倉庫もぶっ壊してほしいんだよね。何せ『紅血晶』が集められているって噂があるからさ。あ、でも壊すのはまずいか。回収にしよう、回収、うん」
「その情報は本当なのか?」
愛無の問いに「もちろん、信頼出来る『仲間』からの情報だからね」とウィンクしてみせる。
「僕は行かないのかって顔だね? ノンノン。僕は忙しいからね。此処に来たのは元同僚に呼び出されたからさ。たまには顔を見せてやらないとね。一応、元同僚だし。まあ……愛無がどーしても僕に来て欲しいって言うなら行ってあげてもいいけどねぇ? その代わり『対価』は頂くよ!」
ともあれ、今は『吸血鬼(ヴァンピーア)』と『晶獣』を退けることが先決だろう。
イレギュラーズは春泥と共に酒場を後にした。
- <晶惑のアル・イスラー>黒の盟友完了
- GM名もみじ
- 種別EX
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2023年03月06日 22時05分
- 参加人数10/10人
- 相談7日
- 参加費150RC
参加者 : 10 人
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参加者一覧(10人)
リプレイ
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ラピスラズリの夜空に大きな月が浮かぶ。煌々と妖艶に、照りつける月は何処か不気味なほど。
月明かりが落す影は、ひんやりとして冷たさを帯びる。
「こりゃまた大勢引き連れてぞろぞろと」
『有翼の捕食者』カイト・シャルラハ(p3p000684)は広場に集まる晶獣を一瞥した。
「ま、赤い宝石獣より赤い鳥さんのほうが強くてかっこいいんだけどな!」
羽毛で盛り上がった胸を張り、自信ありげに腰に手を置いたカイト。
「最近ロウ・テイラーズの話が入ってこないと思ってたら紅血晶絡みの方で出てくるとは……ま、やり残しも気持ち悪いと思っていた所。話を持ってきてくれて感謝してまスよ春泥氏」
メガネの奥から葛城春泥に視線を送るのは『カラーレスシビル』佐藤 美咲(p3p009818)だ。
表向きのロウ・テイラーズへの潜入調査では『色無し』では得られる情報が少なかった。
彼らは表向きは真っ当な仕立屋であったから。巧妙に秘匿されているのだろう。
されど、美咲とて00機関の諜報員である。更なる手を打ってあるのだ。
「おいおい……『吸血鬼』がネイトなんて聞いてねぇぞ、春泥」
「おや……レイチェルはあの少年と知り合いなのかい? 僕は君がネイトと知り合いだなんて知らないから、教えようも無い。まあ、やることは変わらないさ。追い払わないといけない」
事実を言っているだけなのに、春泥に言われると何故か腹立たしく思ってしまう『祝呪反魂』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)。
「ディーンも居るし、この騒動にロウ・テイラーズも関わってるのか……?」
レイチェルは春泥を注意深く警戒する。今回は『味方』だとしても油断はならないのだ。
燈堂に関わる人々と春泥の此までの行い。手放しで信頼出来るものではない。
「対価って、何を支払うンだ? 一応、聞いとこうか」
「んー? そうだねぇ。今回は『美味しいお土産』でいいよ? サンドバザールもあるし。夜だけど」
「美味しいお土産?」
怪訝そうな顔をするレイチェルの隣で『暴食の黒』恋屍・愛無(p3p007296)が春泥を睨み付ける。
「このパンダが! 僕のホームで好き勝手出来ると思うなよ!」
何を企んでいるのだと春泥に向かって愛無は声を張った。
その言葉に春泥は嫌みったらしい笑顔を向ける。
「ふふ、そんな怒ることかい? お前はラサがホームなのかー、そうか。奇遇だね! 僕も数十年前には此処を拠点としていたよ」
愛無の肩に手を置いた春泥。しまったと愛無は春泥の手を振り払う。もっと冷静で居なければ春泥に調子を狂わされてしまう。
「そもそも、お前この間ワインをやったろう。礼はいらんが味の感想くらいは欲しいのだがね。そのくらいは人としてのマナーだろう」
「うんうん、美味しかったよ。それにしてもワインって良いよね。ちょっと残ったから色々混ぜて遊んだんだよ。泣きながら絞り出すか細い悲鳴って、踏みにじりたくなるよねぇ。お前も執着してるみたいだし」
誰を、なんて聞かなくとも分かる。無性に腹立たしい。愛無の表情を見て「お前は遊び甲斐がある」と春泥は微笑んだ。
「春泥が言っていた……『吸血鬼』は。……ネイト、君の事だったんだね」
遠くに見えるネイトの姿を『燈囀の鳥』チック・シュテル(p3p000932)は見つめる。
されど、吸血鬼になった少年の様子は何処か虚ろに見えた。
以前会った時より、更に元気がないように思える。されど。
「……ラサが危ない、なるのなら。今回も彼らを止める、しなくちゃ」
ぞろぞろと現れる晶獣の奥、見知った顔に視線を上げる『厄斬奉演』蓮杖 綾姫(p3p008658)。
「ふむ……」
綾姫がかつて共に戦い、そして対峙した『焔朱騎士』ディーン・ルーカス・ハートフィールドは、誠実で誰しもが認める『正義の味方』だった。けれど、今は『白き悪魔』ネイト・アルウィンの傍に居る。
魔種であるネイトの傍に居る事は、彼の正しき道に反する筈なのに。綾姫は剣柄を握る。遠目からでも分かってしまうのだ。ディーンに『迷い』があるのだと。
「相変わらず、自分の気持ちには鈍感なんですね」
在りし日の記憶の中、正義であろうとしたディーンの苦悩を綾姫は知っているから。
「吸血鬼ね……」
じっとりとした目で『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)はネイトを睨み付ける。
妖精の血が好物である(飲んだら理性失うし、妖精道具として妖精に危害を加えるなんて論外だから基本飲まない)サイズは自分が吸血鬼だと言われても否定はしないと鎌をくるりと回す。
「……人間の体格の吸血鬼が白い妖精と言われてるのはなんか気に入らないな」
今すぐ斬り殺したいと思うけれど、それを優先するあまりに何度も悔しい思いをしてきたサイズ。
二ノ轍は踏まないと己の内側から湧き上がる殺意をねじ伏せ、冷静にと務める。
「だけど、今は紅血晶の回収に専念しないとな」
「最近『紅血晶』て言葉を耳にするようになったですが、今回のお仕事もそれ絡みなのですね」
人を変えてしまう宝石。それが街に広まれば大混乱になってしまうだろう。
「しっかり抑えなきゃ! です」
拳をぎゅっと握った『ひだまりのまもりびと』メイ(p3p010703)は宵闇の中に照らされる晶獣達を見つめた。
「この素敵な日に、素敵な贈り物。しかし、それは人の心を破滅に導く紅血晶。
悲劇の物語でも、あまりにも……ですね」
『未来への葬送』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)はメイの隣で憂う瞳を揺らす。
「それに……吸血鬼、ですか」
マリエッタは広場の奥に居るネイトへ双眸を上げた。
このラサの一連の事件は興味を惹かれる事ばかりで。
「ですが、今は貴方達の好きにさせるわけにはいきません」
ネイトやディーンの事は詳しくは知らないけれど、このネフェルストは『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)にとって大事な場所。
「ラサの遺跡調査の拠点に使ってるんだ。私の探究の邪魔はさせないよ」
ゼフィラは美咲へ向けてアイコンタクトを送る。相手がこちらの出方を伺っている今が先制のチャンス。
「まずは晶獣を減らして被害を押さえなければ」
飛び出したゼフィラに続き、イレギュラーズの攻勢が開始される――
●
ゼフィラは可能な限り多くの晶獣を巻き込む位置へとその身を滑らせた。
ネイトとディーンの二人については、見知った顔がいるのだろう。
彼らにとっても自分の言葉より、知っている者の想いの方が聞き入れ易いとゼフィラは判断した。
その為にも、ゼフィラは仲間が伝えるべき言葉を届けられるように道を開かねばならない。
「それが、この戦場での私の役目だ」
ゼフィラの周りに渦巻く魔素が鳥の形を取る。
一番に飛び出したゼフィラの視野角と同じ扇状の間合いにミニペリオンが降り注いだ。
飛び散る晶獣の身体。それでも元はゴーレムのシャグランはタフであるのだろうとゼフィラと美咲は分析する。特にシャグランは渾身を持っている。
「優先すべきは、シャグランの方ですかね」
「そうだな」
美咲とゼフィラの連携でシャグラン達より先に動いたイレギュラーズは優位に先制を取れた。
ゼフィラが攻撃したシャグランとは違う個体へと美咲は肉薄する。
それは数体の敵を巻き込む弾丸のような突撃だった。美咲へとカウンターを掛けようとするシャグランの動きが止まる。突然の衝撃に身体が思う様に動かないのだろう。美咲の思惑通り封殺する事が出来た。捉えられる範囲は少ないものかもしれない。されど、強力な技を使えぬゴーレムなど大きな的でしかないのだ。
「よし、こっちは俺に任せろ!」
美咲が飛び退いた場所へカイトが唸りを上げ羽を広げる。
カイトが三叉蒼槍を振り上げれば、赤々と焔が上空へと舞い上がった。
渦を巻いて広がるカイトの焔は敵を逃がさんと、煌々と燃える。
「ほらほら、その程度の『緋さ』じゃ俺には追いつけねえぜ?」
緋色の焔は旋風を伴い、敵を狩り尽くす爆炎と成りて戦場を穿った。
炎を身に浴びた晶獣たちはカイトに怒りを向ける。
「はは! 俺の炎はどうだ? 熱いか? ゴーレムなのに? 弱っちいなあ!」
挑発するようにカイトが笑い声を上げれば、彼に向かって晶獣が走り出した。
「人も精霊もゴーレムも変質させる宝石か」
カイトがふと思い出すのは、知り合いのザルツ・ブルガートルテのこと。年齢不詳の男を何故かカイトは思い出した。
「まあおじさんは使うのも嫌がりそうだけどな、下品な宝石だっていいそう」
宝石化すれば、飛べなくなってしまうのだろうか。
元の飛行能力があるから、問題ないのだろうか。
「赤くてきれいな宝石だけど飛べなくなるのはやべえな。頑張って攻撃避けなきゃな!」
けれど、羽根が紅い宝石になれば格好いいだろうか。そんな事をカイトは思いながら、意識は確りと戦場を向いていた。
シャグランは渾身を持っている。それは事前の情報でメイも把握していた。
だから最初は聖なる光を持って僅かでもシャグランの体力を削るのが最善の手であろう。
「できるだけ多くです……!」
この一手が、この先の戦況を変えるかもしれない。
メイは真剣な眼差しでシャグランを見据える。
サイズはネイトから視線を逸らし、晶獣へと照準を定める。
白い妖精(ファータビアンカ)と呼ばれる吸血鬼ネイトへと攻撃を繰り出したいが、いまはぐっと堪え戦術的な攻略を優先するのだ。過去の経験から学び、それを行動に移せるのはサイズが積み重ねた想いが在るからこそである。
「今はこっちが優先!」
サイズは大鎌を振り上げ魔法陣を展開する。
小さな円はやがて大きな陣となり、魔素を伴う。
渦巻く魔素を迸らせ、戦場にサイズが放つ光の軌跡が走った。
石が砕ける音と共に晶獣が地に伏す。
愛無はディーンへの道を開くために綾姫と連携し晶獣へと向かった。
「ネイトとディーンを分断します」
「了解した」
最悪、ディーン達の元への道ができればと綾姫は刀を振るう。
「小技でもそれなりに威力はでるんですよねえ! 護り蝕む病魔の一刀、穿て!」
愛無と綾姫の攻撃で破砕される晶獣達の身体。
レイチェルはカイトへと集まる晶獣を見やる。
美咲やゼフィラが導いたイレギュラーズの連携。カイトが集めた晶獣。
ディーンの抑えは愛無と綾姫が。ネイトの抑えはマリエッタとチックが其れ其れ向かう手筈だ。
サイズもメイも晶獣へと攻撃を重ねた。仲間達はきちんと役目を果たしている。
「なら、俺もそれに応えなきゃなァ!」
紅の月の加護はレイチェルに覚醒を齎す。血に塗れ欲す、それは正に吸血鬼そのもの。
焔を纏うレイチェルの背から鷲の片翼が顕現した。血に秘めた力は時としてその背に現れるのだ。
その瞳に映し出される映像は『己の傷から紅き花弁が零れる』姿だ。
つう、とレイチェルの背に汗が流れる。
「なん……だ? 今の」
――――
――
「さて、白き悪魔。そして吸血鬼の少年」
ネイトの目の前でマリエッタは指先を翳す。
「死血の魔女と踊りましょうか。この夜を……貴方達から奪い返すまで」
「……っ」
マリエッタ血印はネイトの身体に刻まれ、其処から呪いのように怒りの衝動が湧き上がった。
この戦場で立ち続けられるようにマリエッタは自身に術式を掛けている。
肩で息をするネイトの耳に昏き悲しみの音色が聞こえて来た。
それはチックの奏でる夜の旋律。ネイトの脳裏に浮かぶ数々の辛い過去。耳を塞いだネイトの指から紅い花弁が零れ落ちる。
「ネイト、ディーン。君達に会うのは、あの時の依頼振り……だね」
「チック……?」
「……その薔薇の、花弁。ねぇ、『ロウ・テイラーズ』で……何があったの」
ネイトの瞳から水晶の涙が溢れた。小さな音を立てて地面へと落ちる涙晶。
「すい、たくない……ディーンの血、吸いたくない」
駄々を捏ねるように魔力を放つネイト。どういうことだとチックは駆け寄る。
「ねえ、ネイト。……どういうこと?」
チックに縋り付いたネイトは彼の首筋へと牙を突き立てた。
「痛っ……」
「チックさん、離れてください!」
マリエッタに腕を引かれチックはネイトから離れる。
「大丈夫ですか?」
慌てて駆けよって来たメイはチックに回復を施そうとして目を見開いた。
チックの傷口から紅い花弁がひらひらと落ちたからだ。
「う……」
歯を食いしばるチックにメイは回復を施す。何らかのバッドステータスを受けたのなら癒やしの歌で回復するはずだと。されど……
「どうしてですか? 治らない?」
傷口自体は塞がった。けれど、チックの眦から零れた涙は結晶となる。
メイも知らない未知の呪いか何かなのだろう。幸い傷自体は癒す事が出来る。
「大丈夫。傷は治ってるようだ。僕は一応医療の心得があるからね、そういうのは分かるよ」
同じようにチックを覗き込んでいた春泥は朗らかに笑った。
「だったら、葛城さんにも回復はしっかり手伝って貰うです」
「ふむ……何やらきな臭い。そんなに彼が弱っているのなら此処は撤退してはどうかね?」
ディーンの抑えに回っていた愛無はネイトの様子を一瞥してそう告げる。
ネイトとディーンは既にイレギュラーズとの接点も多い。戦いに迷いがあるのではないかと愛無は踏んだのだ。恐らくその予感は当たっているのだろう。
ディーンの表情が歪む。こういう時は何か儘ならない理由がある時と相場が決まって居る。
「彼の元へ行きたければどうぞ、その時は容赦なく彼を最大火力で叩き斬りますが」
綾姫はディーンの間合いへと走り剣を弾いた。幾度かの剣檄が夜の戦場に響く。
「護るものを定めたとはいえ、まだまだお悩みのようですね!」
ディーンはネイトの為に戦っている。されど、その表情は未だ迷いがある。
「そんなのだからあんな怪しい組織にいつまでもずるずると付き合うハメになるんですよ……本当に、かつて私達の先頭で旗を振るっていた貴方はどこにいったのですか」
鍔迫り合いの最中、綾姫は小さな声でディーンへと問う。
「葛城さん、彼女は『何位』です?」
「何故、マザークレマチスの事を知っているんだ?」
相変わらず嘘が吐けないのだ、この男は。これで事実は確定的である。葛城春泥はロウ・テイラーズに所属しているのだ。
ディーンはもともと公明正大、清廉潔白を形にしたような人物だ。それがロウテイラーズの所業を許容できるはずがないと綾姫は考えを巡らせる。
「貴方が其処に居るのはネイトの為ですか? 何か他に理由があるんですか?」
綾姫とてディーンを殺したいわけではない。嘗て敵対した関係であったとはいえ。
それ以前は同じ敵を見据え背を預けた『戦友』であるのだ。
ディーンと綾姫。二人は滅んだ世界を知る唯一の生き残りだった。
憎まれているのだろうか。それを聞くにはまだディーンの心が遠い気がする。
それでも、ディーンが頼れるとするならば。
「綾姫……どうしたらいいんだ、どうしたらネイトを助けられる」
「それは……」
難しい質問だと綾姫は思う。
どうしたって、助からない命というものの中に、ネイトは含まれてしまうのだから。
●
戦場を見渡したカイトは晶獣を相手取りながらネイトへと視線を向けた。
「なーんか、あの白くてちっこいの強いんだけど危なくね?」
カイトは槍で晶獣を押し返し華麗に着地する。
「芯の通ってない強さは破滅にしかならねえぞ?」
それはネイトへ向けた言葉だ。
「ちゃんと何がしたいか、何のために強いのか持っとかねえと……」
危うい強さ。それは今にも壊れてしまいそうなガラス細工のようなもの。
敵に対して掛ける言葉では無いのかも知れないとカイトは思う。
されど、ほおっておくにはネイトは儚く危うすぎた。
美咲とゼフィラはお互いをカバーしあい戦況を優位に進めた。
特にゴーレムの晶獣については、その能力を最大限に発揮するも出来ず残り二体となっている。
敵の攻撃を防げた分、回復手を担うメイの魔力消費も押さえる事が出来た。
作戦は上手く行ったと美咲とゼフィラは実感する。
ゼフィラの攻撃が晶獣を撃ち貫き、動いている敵はごく僅かとなった。
サイズの大鎌が最後の一体を砕いた瞬間、レイチェルの前にネイトが飛んだのが見える。
腕を噛まれながらレイチェルは先程見た『未来予知』の既視感に頭を揺さぶられた。
「血が……」
紅き花弁となって地面へ落ちる。
その瞬間、耐え難い『吸血衝動』がレイチェルの身を駆け抜けた。
「はっ、……んだこれ」
元々レイチェルは吸血鬼である。常に吸血衝動を抑え生活をしている。
それがこの『無辜なる混沌の吸血鬼』という呪いに、強制的に上書きされる感覚。
――『烙印』を押される。
そう表現した方が正しいだろう。
「まさか……ネイトもこれを?」
レイチェルは苦しげにネイトとディーンを見上げる。
「……其処の騎士。ネイトの状態、普通じゃねぇぞ。前回の石の件もそうだ。明らかに弱ってる」
花弁が溢れる腕を押さえながらレイチェルは眉を寄せた。
「俺の他の言葉は信じなくても良いが、これだけは信用して欲しい。ヨハネは危険な男だ。ネイトは、ひでぇ事されてんじゃないか? この吸血衝動……俺でも抗い難い」
否、血が甘美であることを知っているレイチェルであるからこそ、耐え難いと思ってしまうのか。
膝を着いたレイチェルを庇うようにメイは手を広げる。
「ふたりとも、ここは退いてくれないですか? 引けない理由があるですか?」
「ひけない……ひいたらディーンが」
メイの瞳にはディーンとネイトはお互いを大事にしているように見えた。
しかもネイトの方は身体も精神もボロボロに見える。
「二人に必要なのは戦いではなく、休息では?」
メイの優しい言葉にディーンは心を揺さぶられた。メイの言うとおり何の為に戦っているのだろうと。ネイトがこんなにも苦しんでいるのに、戦わねばならないのか。
メイの言葉を受けディーンの殺気が減衰する。
「私もメイさんと同意見です。ネイトさんの状態は初めてあった私でさえ異常に見えます」
ネイトを牽制するようにマリエッタは血鎌を向けた。
「それにチックさんやレイチェルさんに掛けられた呪い……同じものがネイトさんにも施されているんじゃないでしょうか?」
そうなのかと問いかけるディーンの視線。ネイトは苦しげにその場に倒れ込んだ。
チックは地面に転がったネイトの傍に駆け寄る。
「……ネイト達は、どうして『ロウ・テイラーズ』にいるの? だって……ネイトに力を与えた、『蒼き誓約』──ヨハネは。君を『悪魔の子』と定めた、魔術師なのに」
その言葉にネイトは目を見開く。
「うそ……ヨハネが? あいつ、なの?」
「ああ、マールーシアの村長は魔術師がこの俺と同じような顔をしていたと言ったんだ」
認めたくないがと、吐き捨てるレイチェル。
ヨハネとレイチェルは『似て』いるらしい。まるで親子のように。
「ディーンとマールーシアで戦う、した時。最初に彼から聞いたのは……あの村の人が許せない、という気持ち。次にネイト……君と初めて会った時。君は、ディーンを傷つけたおれ達を……許せないと思っていた」
チックは力なく横たわるネイトを優しく抱きしめる。
(……いつか終わらせる、しないといけない日。来るのは、わかってる。でも……もし。少しでも永らえる……出来ると、したら)
「……二人が、もしも。ずっと一緒にいたいという願い、持っているのなら」
チックはディーンを見上げ水晶の涙を流す。
「逃げる事は……出来ない、の?」
「でき、ない」
どうしてと問うチックにネイトは縋るように「助けて」と涙晶を流す。
「ディーンが殺される。ディーンが……」
「どういう事だ?」
ネイトが告げる言葉に驚いているのはディーン自身だ。
曰く、ディーンの心臓にはヨハネの仕掛けた『呪い』があるのだという。
「僕が言うことをきかないと、ディーンの心臓を止めるって」
「くそったれが。ヨハネのやりそうなことだ」
そうやって他人を弄ぶのが好きな男なのだ。ヨハネ=ベルンハルトという輩は。
綾姫は『怒りの炎』を纏わせたディーンを見遣る。
それはイレギュラーズに対してではない。ヨハネに向けたものだ。
剣を鞘に収めたディーンはイレギュラーズの前に膝を着き胸に手を当てた。
「すまない。私は剣を向けるべき相手を見誤っていたようだ。数々の無礼を許して欲しい」
「ディーン……」
綾姫へと視線を上げたディーンは、かつて世界を救った英雄だった頃の強き眼差しを宿していた。
「この首を差し出して詫びると言いたい所だが、私にはやらねばならぬ事が出来た。その後でならこの命どうとでもしてくれて構わない」
「ディーン、やだよ。ディーン……」
力の入らない手を懸命に伸ばすネイト。白き悪魔と呼ばれた少年の命は今にも消えかかっている。
「大丈夫だネイト。お前を置いていったりはしない」
ネイトを抱き上げたディーンは何かを強く決意している様子であった。
「騎士君。妖精君の最後を穏やかなモノにしたいならば僕を頼れ。此処は僕のホームだ。追手から匿う程度は造作もない」
愛無の申し出に「考えておく」と応えるディーン。
「利用されるだけの人生など虚しいものだ。魔種であろうと関係ない。頼って来た者を見殺しにはしないのが傭兵だ。僕の団長なら、そう言っただろうからな」
ネイトを連れて去って行くディーンを呼び止めたのは春泥だ。
「僕はねその『呪い』を解く方法を知っているよ。君にヨハネをどうにかしようって、決心がついたのなら連絡を寄越すといい」
ヨハネの悪巧みを一緒に遊んでいた春泥だからこそ、その仕組みを理解できる。
「時にぱんだ。お前、本当は妖精君を助けたいのではないのかね?」
ディーンとネイトを見送る愛無は隣の春泥に問いかけた。
「月並みな表現だが『嫌いの反対は無関心』だろ? あんた意識して視界から外そうとしてるし。あんたが何を背負ってようが僕には関係ないが。世の中『らぶあんどぴーす』僕の団長なら、そう言っただろうな」
「なんだい? ママのことが気になるの?」
にやついた笑みを浮かべる春泥に苛立ちながら、愛無は続ける。
「誰かを助ける事に理由なんていらないんだと。あんただって、本当はそう思っているんだろ。『対価』が欲しいならくれてやる。あんたみたいなのは『言い訳』の理由が必要だろう」
「対価は向こうに帰ってから貰うとして。まあ……ヨハネって強いじゃない? だから、ディーンやネイト、君たちイレギュラーズがそれに打ち勝つとしたら。その『強さ』にこそ僕は興味があるだ。お前だってそうだよ愛無。一度は打ち棄てたお前が、強くなって僕の前に現れた。最高にわくわくしたね」
春泥の揺るぎなき『強さへの探究心』はかつて学友だったヨハネと対立しても構わないと思わせる程、確固たるものであるのだろう。
見上げた夜の空に、不気味なほど綺麗な月が浮かんでいた。
●
戦場となった広場の傍にある倉庫の中を覗き込むのはサイズとゼフィラだ。
「これが紅血晶か」
念のためアナザーアナライズで情報が得られるかとゼフィラは試してみる。
「トレジャーハンターとしての知識で何か分からないかな……いい加減、この宝石に踊らされるのも飽きてきたしね。謎とロマンは感じるけど、実害が大きすぎるよ、全く」
「……人の肉体、精神を侵食する危険なカースド品、紅血晶……なんとか弱点や侵食された肉体を元に戻す方法が見つかれば、色々と被害の回復になるんだが……簡単ではないよな……」
だからといって、自分がさじを投げる訳にはいかないのだとサイズは紅血晶を手に取る。
「侵食された肉体を戻す薬でも作れたらいいが……期待は難しいか」
「でもどうやって人を変えてしまうですか?」
サイズの隣ではメイが恐る恐る紅血晶の欠片を見つめた。
「魅入られたら? 傷口に触れたらそこから? 飲み込んだら? んんー……」
「ふふふ……試してみるかい? どうなってもしらないけど」
後から聞こえた声にメイは飛び上がる。振り向けば春泥が悪そうな笑みを浮かべていた。
レイチェルやチックに掛かった『呪い』のことも気になるし、メイはぷるぷると首を振った。
(……さて、なめた真似をしてくれますね葛城春泥)
美咲は紅血晶が並んだ箱を数えながら春泥を見遣る。
物証の隠蔽対策として春泥の行動を観察しているのだ。
帳票類を手に解析を試みる。これも分析班に回せばいいだろう。
「ほい、これもお願いしまス」
「分析班って……私一人じゃないですか……!」
ぷんぷんと頬を膨らませる美咲の後輩、田中 舞が帳票を受取る。
「美咲先輩はいつも投げる仕事が多い割に雑なんですよ……!!」
彼女から任された任務はこの現場の検証結果の解析。もう一つは葛城春泥の素行調査だ。
(ゴキちゃんのごとく出たり消えたりするロウ・テイラーズのこと。春泥オバサンと彼らに接点は無いのか。要は「表向き入手できる情報がどこまでか」をお猿さんでも判るように整理して美咲センパイ達に渡すことですね!)
美咲が盗撮している春泥の行動記録も調査に回される。
結果が出るのはもう少し先であるだろう。
どういう結末を辿るのか、その道行きを知らねばならないと美咲は春泥を見つめた。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
お疲れ様でした。如何だったでしょうか。
血は赤き花弁に変わり。物語は動き出します。
MVPは戦場を支え、優しい言葉をくれた方へ。
ご参加ありがとうございました。
※レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)さん、チック・シュテル(p3p000932)さんは『烙印』状態となりました。(ステータスシートの反映には別途行われます)
※特殊判定『烙印』
時間経過によって何らかの状態変化に移行する事が見込まれるキャラクター状態です。
現時点で判明しているのは、
・傷口から溢れる血は花弁に変化している
・涙は水晶に変化する
・吸血衝動を有する
・身体のどこかに薔薇などの花の烙印が浮かび上がる。
またこの状態は徐々に顕現または強くなる事が推測されています。
GMコメント
もみじです。話しは難しいですが、要は『殴れば大丈夫』です。
ラサ編行ってみましょう!
●目的
・吸血鬼(ヴァンピーア)の撃退
・晶獣の撃破
・紅血晶の回収
●ロケーション
グラオ・クローネの夜。ラサのネフェルストの一画です。
倉庫街に面した広場が戦場となります。
暗いですが、月明かりが照らしているので問題ありません。
夜なので人の気配も無いでしょう。
戦闘後、すぐ傍の倉庫を探せば紅血晶の回収が出来ます。
●敵
○『白き悪魔』ネイト・アルウィン
色欲の魔種。謎の組織『ロウ・テイラーズ』に所属する序列九位白い妖精(ファータビアンカ)。
ラサの村マールーシアで悪魔の子として迫害されていた少年。
傷だらけの身体、焼印の痕。口に出すのも悍ましい行為の数々を受けていました。
その為、情緒が幼く泣き虫で癇癪を起こしやすいです。ひな鳥のようにディーンへ依存しています。
現在は『吸血鬼(ヴァンピーア)』にされています。
序列二位の『蒼き誓約(ブラオアイト)』ヨハネ=ベルンハルトによる実験のようです。
ヨハネから実験を繰り返し施され弱体化しています。
遠距離魔法で攻撃してきます。
○『焔朱騎士』ディーン・ルーカス・ハートフィールド
旅人です。
謎の組織『ロウ・テイラーズ』に所属する序列十一位焔朱騎士(ヴァーミリオンナイト)。
以前の戦いではネイトに洗脳されていました。
現在は正気のままネイトの傍に居るようです。ネイトが成したいことを手伝いたいと思っています。
しかし、元々は善人なのでそこに苦悩が付き纏います。
鋭い剣技に加え、炎の魔法を操ります。
オールラウンダーですので注意しましょう。
ネイトの命が危ない場合は庇いながら撤退します。
○『晶獣』シャグラン・プーペ×8
紅血晶が、ラサの遺跡に眠っていたゴーレムに反応し、変質して生まれた晶獣です。
元は遺跡を守るガーディアンだったそれは、今は無差別に暴れる破壊の使徒と化しています。
強力な物理近距離攻撃を行ってきます。マッチョタイプなアタッカーです。
『渾身』を持つ攻撃を多用してくるため、万全の状態ではかなり強力ですが、徐々に息切れを起こしそうです。
○『晶獣』サン・エクラ×10
小精霊が、紅血晶に影響されて変貌してしまった小型の晶獣です。
キラキラと光る、赤い水晶で構成された姿をしています。
鋭い水晶部分による物理至~近距離戦闘を行います。
●味方
○葛城春泥
練達の研究員で、深道の相談役です。
謎の組織『ロウ・テイラーズ』に所属する序列四位紫花の聖母(マザークレマチス)でもあります。
数十年前にはヨハネ=ベルンハルトと共に『ピオニー先生』の技術を教えてもらっていたようです。
積極的な戦闘参加はしませんが自分の身は自分で守れます。
一応医療の心得があるので、イレギュラーズの回復も出来ます。
この戦場では味方です。安心してください。後から刺したり呪ったりはしないでしょう。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●Danger!
当シナリオでは『何らかの肉体への影響』を及ばす『状態変化』が付与される可能性が有り得ます。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
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