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シナリオ詳細

<泡渦の都>船上のローレライ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 海洋の沖合、ぐるぐると大きな渦が巻いているという情報より、魔種との邂逅を経て『渦の中に都』があるという情報を掴んだ特異運命座標。
 ギルド『ローレット』と海洋の関係性はと言えば、温厚なお国柄もあるが、大きな問題は――国家の性質的に貴族と王政が少しばかり火花を散らしている以外は――出ていない。
 夏祭りを経て、海洋より齎された『異様な渦』の調査を経て、女王イザベラ・パニ・アイスが下した決断は『ギルドローレット』の助力を得て、人工的発生と判断される渦の消滅だった。
「女王は皆さんを道具としている」と毒吐きながらもソルベ・ジェラート・コンテュール郷は特異運命座標へと助力を請うた。
 海種、飛行種と火花を散らす中ではあるが、国民、ひいては国家の危機に通ずるのなれば話は違う。
 どうか、特異運命座標達よ。あの渦の対処を願う。


 海種であれど、その渦には魔種が存在する以上、『水中行動が出来れど危険』は付き物だ。
「海種の皆さんなら海は慣れっこっていうかもしれないっすけど、兵は大いに越したことはないですし、『呼声』の不安もあるっす」
 同じ海種であるとしても、海種という種族単独の行動は是としないと『パサジールルメスの少女』リヴィエール・ルメス(p3n000038)は強い語調でそう言った。
「ユリーカたちと話し合ったっすけど、以前から交流のある『練達』の叡知の結晶を貸してもらって渦に乗り込む作戦を立てるのはどうかという事になったっすよ。
 今回は二手に分かれるっす。
『練達で渦の対処を行える装置』の使用許可を貰うこと。
 それから、今からお願いする『原罪の呼び声』響く渦周辺で見られる魔種の対処っす」
 リヴィエールは別働班が今、練達に向かい佐伯操より装置の使用許可を得ようとしていると告げた。
 無論、その間にこちらは『原罪の呼び声』を発する魔種の対応をしなくてはならないのだが。
「船の上で『原罪の呼び声』を発する魔種がひとり。便宜上、ローレライと呼ぶっす。
 彼女が今回のターゲットっすけど、渦に関しては他の魔種二人が存在していることが判明しているっす」
 ローレライは幽霊船の如き、襤褸の船に乗り『家族との幸福』を謳っているらしい。色欲に濡れた歌声は、その家族間での快楽を思わせる。
 彼女の歌声に誘われて魅了されれば転化する可能性があるとリヴィエールは付け加えながら他の魔種二人の情報にきゅ、とペンでしるしをつけた。
「一人は、海種を思わせる黒衣の魔種。彼は死体を集めているみたいっす。魔種の死体集めを行っていることから戦闘に参加することはなさそうっす。
 もう一人は、襤褸ドレスの死体繰り、サーカスの道化師、チェネレントラとみて間違いないっす。彼女も渦の中の古代の都を拠点としているため、今回の敵ではないっすけど……」
 ないけれど、と声を潜めるリヴィエール。チェネレントラはネクロマンサーだ。
 その性質から、船上のローレライに力を貸し、死体たちがまたも海上で『都に誘い』『魔種を護る』動きをする事が予見される。
「勿論、あたし達を都に誘いたい――その儘、魔種にしたい――という目的がチェネレントラにある事は想像に易い事っす。
 けれど、ローレットの中から魔種を出すのは……その、あたし、いやで。だから、深追いはしてほしくないっす」
 今回はあくまで海上の警備だ。原罪の呼び声を発する魔種の対処を行わなければ純種の多い海洋では被害者が出る可能性もある。
 また、海の上に居る分にはいいが、陸地に近づかれては対処に遅れる可能性もある。
 だからこそ、ローレライの討伐と周辺の屍骸たちの対処を行って欲しいとリヴィエールはそう告げた。


 つまんない、とチェネレントラは云った。
 そんなものさ、と死体集めはそう云った。
 あなたの集めた玩具を頂戴、とチェネレントラは云った。
 この玩具は『あいつ』のためさ、と死体集めはそう言った。
 なら『ローレライ』にお友達を増やしてもらいましょう、とチェネレントラは云った。
 そうすればいいじゃないか。妬ましい、また遊ぶのか、と死体集めはそう云った。

 彼女は『ローレライ』。
 父に虐げられ、母に見捨てられた憐れな娘。幸福だった家族は何処にも残ってない。
 けれど、この歌声を聞けばお父様もお母様もきっときっと帰ってくるわ。
 ねえ、謳いましょう。死体たち。
 都で待って居るチェネレントラが『一人でも持ち帰れば幸せになれるわ』って言っていたじゃない。
 ふふ、きもちいいことをしてなにがわるいのかしら?
 お父様の言っていたことは間違ってなかった。
 お母様は恥ずかしがり屋だったのね。
 ねえ、特異運命座標(いとしいひと)たち。
 歌を聞いて、歌を聞いて、歌を聞いて、歌を歌を歌を――

GMコメント

 夏です。
 同時にリリースされた<泡渦の都>と付くシナリオには同時参加できません。注意です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●船上のローレライ
 長い白髪。鱗の後。鰭の多いからだ。
 何処から見ても海種ですが、背から無数の腕が映えています。まるで祈る様に組み合わされています。
 固定砲台の様に船から動く事が出来ず、足は縫い付けられたように船に縛り付けられています。
 遠距離ファイター。歌で様々な種類のバッドステータスを付与します。幅広いレンジ、範囲での攻撃を得意とします。近接はその分苦手です。
 近接域に来た対象を海に堕とそうとする行動が見られます。
 彼女の呼び声は『家族』。そのキーワードに反応する方は呼声に惹かれる可能性が高いため注意してください。

●屍骸たち
 海の中には無数の腕。そして、ローレライの近くには20体ほどの屍骸たちです。
 彼らは近接での攻撃を得意とし、船に乗り込む事が出来た特異運命座標を集中的な攻撃を行います。
 積極的に海に落とそうとしますので注意してください。

●幽霊船
 ローレライが縛り付けられている船です。襤褸であるために足元に不安は在ります。
 また、船の下には無数の使者の腕があり、海の中へ誘わんとしてきます。

●Danger!
 当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

  • <泡渦の都>船上のローレライ完了
  • GM名夏あかね
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2018年09月29日 22時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)
旅人自称者
アリシス・シーアルジア(p3p000397)
黒のミスティリオン
サンディ・カルタ(p3p000438)
金庫破り
八田 悠(p3p000687)
あなたの世界
恋歌 鼎(p3p000741)
尋常一様
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
優穏の聲
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
大樹の精霊

リプレイ


 歌が聞こえる――どこからか、美しい歌声が。

 囂々と音立てて渦を巻いた海上。その付近に流れるは宛ら男たちを誘惑するかのような音色。寂し気なローレライ、虚ろな歌を歌って人々を魅了して渦の中へと新たな仲間を引き摺り込まんとするその姿。
「拠点を用意している……宛ら海洋王国の担当者とでも言った処でしょうか?」
 それとも、『その担当者』の為に誂えた遊び場と呼ぶべきか。『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)は悩まし気に昏く夜の気配を感じさせる海を一瞥する。
「……そんな魔種達が、この海で何をしているのか。興味深いですね」
「ああ、興味はあるけれど、海には静寂が似合う。誰のためにもならない歌は止めさせないとね?」
『尋常一様』恋歌 鼎(p3p000741)は傍らのメカ子ロリババアを小型船へと設置した。簡単な命令に従えば、不慮の事態に謎のロボットが対応してくれると踏んでの事だ。
 お父様が、お母様が、と聞こえる歌を耳にしながら『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)は表情を曇らせる。
「家族を愛していたのね、それとも――殺したいから歌うの?」
 小さく呟かれた声に、『自称・旅人』ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)は僅かに肩を竦めた。
「どう、なのでしょうね……。生憎、私には家族が居た事も家族が欲しいと思った事もありません」
 理解できないという様に髪先を弄ったヘイゼルの鼻先に潮の香りが纏わりついた。
 胴へとぐるりと巻いたロープ。『アニキ!』サンディ・カルタ(p3p000438)は落水に備えての準備を整え続ける。手にした【カルタ】を指先で弄び、接敵に備える彼の隣で 『辻ヒーラー』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)が海の魔法を秘めた指輪をじいと見下ろした。
「何を企んでるか判らないけど……絶対に止める! そうでしょう?」
 その腕に飾られたトリテレイア。『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)はやる気十分にその一言を発し、ぼんやりと向こうに見える幽霊船を眼前に映し込む。
 歌が、聞こえる。美しい歌声だ――何処からともなく響く、歌声が。
「悪趣味なコンサートはソロでやっておくれ、観客ももう充分だろう」
 ざあ、と凪ぐ風が 『祖なる現身』八田 悠(p3p000687)の髪を揺らす。
 その一声に、ぴたりと歌声が止んだ。船の上に縫い留められるように立つ女――彼女を人はローレライと呼んだ――は船へと姿を現した特異運命座標を見遣る。
 にぃ、と口元に笑みを浮かべ、わらわらと動く屍骸たちに少し待ってと強請る様に目を伏せる。
「特異運命座標(いとしいひと)――」
 囁く声音はぞお、と背筋を這いあがるものだった。その一声さえも呪われているかのようにじっとりと濡れそぼった感覚をさせる。
「血と肉と快楽の繋がりが家族だと思うなら滑稽だ、お前と家族になりたい者はイイ趣味だと思うよ。僕は御免だけどね」
 吐き捨てる様に呟いて、悠の言葉に響き渡った歌は、一斉に周囲の死骸たちを揺れ動かした。


 ゆらゆらと揺れる船の上、遠距離からの攻撃であれば屍骸たちには届くであろう。
 しかし、海面よりわらわらと現れる有象無象は何処までも面倒が過ぎる。ゲオルグが魔力で生み出した蒼き月に殺意を乗せて、輝く花弁と共に屍骸を包み込めば、呻く声が広がった。
 序で、遠距離術式を発生させるヘイゼルが【IX】で周辺をぼんやりと照らす。髪を結わえた【RedMagic】が風にゆらゆらと揺れ、彼女の脳内に組み立てられるのは屍骸を退けながら戦場に立つローレライへの道行だ。
 破壊のルーンを使用しながらアリシスはヘイゼルが告げたルートに賛同するように小さく頷く。
「その様に……」
 接敵にはそう時間はかからなかった。小鳥を駆使し上空からの布陣を確認しながら船へと乗り込む鼎に続き、ペアたる悠が船の上へと滑り込む。
 わらわらと蠢く屍骸たちを受け止めてサンディは『ぶつけると爆発するワイン瓶』を振り飾る。SSSSでしっかりとその足元を確認するサンディと連携するように船の上へと乗り込むヘイゼルは有象無象の屍骸たちが一斉に自分たちの許へと飛び込んできた感覚に襲われた。
 歌が――聞こえる。
 ローレライの歌声がぐらぐらと頭を揺れ動かす感覚がする。成程、これを純種が聞けば余りに心を揺さぶる言葉に聞こえるのだろう。
「独生独死、独去独来――独りだからこそ世界を全て楽しめるのですよ。
 求めるが故に独りの貴女を、独り独りが故に協同する私達が討つのです」
 ヘイゼルの言葉に「寂しいわ」と悲しむ様にローレライの歌が震える。耳を寄せても、只、そこには不安しかなく、イーリンの表情が僅かに歪む。
「歌えばいいわ、喉が枯れ果てるほどに――神がそれを望まれる」
 靴の裏に塗ったインク。歩けた場所の目印にぺたぺたと音を立てながら屍骸の中へと突入する彼女を補佐するようにアレクシアが与えた祝福のささやきが彼女に活力を与え続ける。
 周辺の保護と、破壊を行わぬようにと気を付けてアレクシアは障壁魔術『城』を展開させる。屍骸を誘う様に声を発し、注目をひきつけたアレクシアの傍らで彼女が落ちぬようにと補佐を行うゲオルグが己たちが乗ってきた船を護る様にどすりとその場に立ちはだかった。
「落ちぬように」
「ええ、判っているわ――さあ、勝負ね」
 挑発するように唇を釣りあがらせたアレクシア。彼女へと短尺の詠唱を与えたゲオルグの背後より悠と鼎が顔を出し、周辺敵による一斉攻撃を注意するように頷き合った。
「聞いた性質上『色欲』に縁ある者なら彼女に惹かれる可能性がある。
 生憎、僕は興味を持つつもりも同情するつもりもないけれど――」
「こんな場では誰が影響を受けるかなんてわからない。そうだね、警戒は必要だ」
 淡々と会話を重ねた二人。一斉に襲い来る攻撃を受け止めるアレクシアの体力をすぐ様に回復しながらヒールに貢献した彼女たちの背後より、攻撃を重ねるアリシスとイーリンが頷き合う。
 船の上の屍骸達はどれも統率がとれている訳ではなく、只、生者を目にして楽しんでいるといった風貌ではあるまいか。
 サンディはここで負けることははしないという様に声を発し己の勇ましい姿を見せつける様に我に続け、と声高に発した。
 その勢いに乗った儘、屍骸たちを払わんとする特異運命座標へと伸ばされる腕は確かな痛みを感じさせる。回復役であろうと関係なく周囲から無鉄砲に襲い来るそれを受け止め乍ら、厚い回復を以て支援する少女たちは『可能性』が己が足を奮い立たせることをよく知っていた。
 蒼く輝く光の花びらが海の魔力を秘めてゆらりと揺らいでいる。傍らの蒼く輝く光の鳥の声を聴きながらゲオルグはここひと度、踏ん張り時であるという様に儚く揺れる光の花弁で屍骸たちを葬った。
 己と志を共にする仲間達と決して離れれぬようにとサンディは連鎖行動を続け、流れる様に攻撃を重ね続ける。
 木箱等を駆使し、戦うフィールドを形成できぬものかと考えるサンディの眼前に迫る死骸を追い払う様にヘイゼルがぴょんと跳ねる。
「じゃじゃ馬だらけですね」
 冗句めかしたその言葉。隠者は災いを寄せ付けないが故にこの戦場では『楽し気』であった。
「勝利条件は揃った――」
 イーリンの言葉に大きく頷くはアレクシア。ゲオルグのサポートを受け、船より滑るり落ちないように立っていた彼女が肩で僅かに息をする。
 ぐん、と一気に肉薄したヘイゼルは縫い留められ動くことのできないローレライの下半身を狙い攻撃を重ねるが、その身を弾け飛ばす様に後退させる感覚に小さな舌打ちを見せる。
「大丈夫か!?」
「大丈夫。まだまだ、これからです」
 機は熟したと告げるヘイゼルに相方として動くサンディが悠々と頷いた。二人が一組となって落ちないように支援することもあってか、海上に滑り落ちるという可能性は低い。しかし、傷を負いながら激戦と化していく幽霊船の中、全員が無傷で帰るのは難しいとゲオルグは確かに悟った。
 聞こえる歌が、身を蝕む。感覚に悠の表情が僅かに歪む。
(趣味が悪い――)
 屍骸を全て惹きつけるアレクシアのサポートをしながら悠はローレライをじ、と見遣った。
「失われたモノは戻らない。変わったモノは直らない。
 ――代替を求めてるからこそ、真に欲するものは得られないんだよ」
 その言葉にローレライの口元にゆったりろ笑みが浮かぶ。
 ならば。
「――ならば、貴女が『真に欲するものに』になって?」
 誘う様なその言葉、ぞ、と背筋を奔った気配に気持ちが悪いと振り払う悠に鼎が小さく頷く。
「気分は如何? 耳が腐ったほうがマシみたいなひどい顔だね?」
「サイアク」
 吐き捨てるその言葉にくすくすと鼎が嗤う。歌で放たれる無数の行動阻害は気分さえも害するのだと悠が小さく吐き捨てる。
「ええ、船酔いに似た感覚に襲われるというもの――しかし、ここまで近ければ『貴女にとっては不利』でしょう」
 防御態勢を崩すべく放つ格闘術式で、黒き凶鳥が告げるはその死か。
 アリシスが握る戦乙女の槍の穂先がローレライへと突き刺されば、その美しい声音は叫声に変ってゆく。
 アッ―――――!
 何処までも響いたその声音。振り払う様に身を転じさせたサンディは慈悲を帯びた一撃を放ち続ける。
 周辺の屍骸を狙いながらも、完全にそれ全てを退けることが難しいとゲオルグは判断していた。動き回る無数は確かに強い。ローレライそのもののバッファーであるのかもしれないが『ローレライ』へ向かう仲間が増える程に屍骸たちが其方へ行くのを阻止する重要なる役目がそこにはあるのだ。
 超視力を超聴力を超嗅覚を全てフル稼働させ、ゲオルグは撤退の為の船が傷つけられぬ様に気を配る。
 一度でも膝をつき、ぼろぼろになる自分自身の足に力を込めたアレクシアが懸命に戦い抜くと顔を上げる。
 ダイレクトに受け止めるローレライの歌の中で、平然としているヘイゼルとその背後で攻撃を重ね続けるサンディ。
 幽霊船の構造物が保護結界の影響を受けているのかどうかを確認し、安堵の息をついたアリシスが防御態勢を崩しながらローレライを攻め立てれば、幅広い範囲に攻撃を放つことのできる魔種にとっては不利に近い状況に陥っていく。
 これが好機だと声を上げたのはイーリン。このまま攻め立てたならば――
 しかし、邪魔をする様に残る死骸たちが近寄り続ける。
 まるで、船の上から遠ざける様に屍骸たちは船上へと昇らんと手を伸ばす、登りはしないのかもしれないが少しでも『海に近寄れば襲い来るという事』か。
 ローレライを護るのではなく、『特異運命座標を海に落とすこと』を目的としたかのような行動に気付きアリシスは、一歩、後退した。
「……落ちる訳には」
 風詠みのアミュレットでふわりと浮かび上がるアリシスがイーリンの足元を補佐すれば、彼女は軋む甲板を踏み締めて屍骸たちを受け止め続ける。
 オーラソードを手にした司書は屍骸の攻撃を受け止め乍ら盤上の動きを確かに感じていた。
(ローレライはあと一押し……大丈夫、『神がそれを望まれる』のだから)
 イーリンとアレクシアを海へと押しコメントする屍骸へと衝撃を放つ鼎はくるりと振り仰ぐ。癒しの術を以て、支援を行う悠はローレライに確かに届く一太刀が『彼女が脆い』事を物語っていると口元に笑みを浮かべた。


 豪奢なドレスも、美しい声音も、その咽喉さえも、彼女を形造る全てが変貌していくように幽霊船は襤褸と化す。
 甲板の上でステップ踏んで動くヘイゼルは屍骸の群れの向こう側、ローレライの体がぐらりと揺れるその様を確かに緑の瞳に映し込んだ。
「貴女は拠点に帰ることも出来ず、海上を揺蕩う只の一人だったのですね」
 アリシスの瞳が僅かに曇る。渦の中、複数の魔種が『拠点で誰かのために動いている』という事を把握しながらも、ローレライはその為に仲間を呼ぶべくこうして磔の様に船に固定されている。
「わたしは、帰れないわ」
「その躰では渦に飲まれることも出来ず、海上で謳う事しかできないでしょう」
 アリシスの言葉にアレクシアがは、と息を飲む。強引に引き摺り込まんとする屍骸達は己たちにしか興味を持たず、船と一体となっているローレライをその儘、一人にしているではないか。
「渇望が貴女を変えたの? ずっと、一人だから」
 イーリンの声音にローレライの唇から小さなハミングが漏れ出した。それは、どんな歌とも違う、一人の少女が謳う様な優し気な音色で。
 その声音から、彼女が望んだことを知れた気がしてイーリンは小さく瞬いた。
「ねえ、特異運命座標(いとしいひとたち)――わたしと」
 一緒に来て欲しいと手繰る様に伸ばされた指先を振り払う様に離れてゆく。
「それでも、私達は生きて帰りたいんだ」
 衝撃で開かれた退路。ローレライが朽ちようと屍骸たちは未だ止まらない。魔種を倒した事で任務は完了したと告げる声を聴きながらゲオルグは振り仰ぐ。
 ローレライ。憐れな女、嗚呼、けれど、その歌はもう――

成否

成功

MVP

なし

状態異常

イーリン・ジョーンズ(p3p000854)[重傷]
流星の少女
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)[重傷]
大樹の精霊

あとがき

 お疲れさまでした。魔種討伐。
 激しい戦いとなりました。先ずは、皆様の体をお安め下さい。
 歌声の向こう側に見えた魔種の姿は、また。
 この度はご参加ありがとうございました。

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