PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<昏き紅血晶>ラサに消ゆ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●砂漠に消える幻想
 ラサのマーケットにて、『紅血晶』が事件を騒がせていたころ――。
 レナヴィスカ頭領、イルナス・フィンナは、血気にはやる部下たちの制御に手を焼いていた。
「頭領。私たちももう、我慢がなりません……!」
 そういって進言をする部下に、イルナスは額を抑えていた。
 レナヴィスカは、ラサの砂漠に住まう幻想種たちを束ねた組織である。必然というか、そのために参加者は『幻想種』が多い。深緑のそれと性質を同じくする幻想種たちは、ラサの傭兵にしては『穏やか』ではある。そのため、これ程までに『怒りをあらわにする』ことは、珍しいといっていいだろう。
「此度の幻想種の行方不明事件。これはまた、ザントマンの件を思い起こさせるようなものです!」
 そう。紅血晶の事件と時を同じくして広まっている事件。それは、砂漠に住まう幻想種を狙った、誘拐・行方不明事件であった。
 ザントマン、というワードに心当たりがあるものもいるだろう。といっても、あの悪辣な肉腫のそれではなく、人の悪意より生まれた、『奴隷商人・ザントマン』だ。
 今から三年ほど前。『熱砂の恋心』とも呼ばれる一連の事件は、深緑とラサの深き『想い』のなせる事件であった。その事件の影で暗躍したのが、『奴隷商人ザントマン』である。このザントマンは、おとぎ話のそれ同様、眠りの粉を用いて幻想種たちの意識を奪い、誘拐し、奴隷として売りさばいた。
 その事件の根は深く、未だにラサへ良い印象を抱かない幻想種もいるだろう。それはいい。それはいずれ、時と礼節を以て解決しなければならなことだ。問題は。
「クエンリィ、あなたは、またザントマンが現れたと?」
 イルナスの言葉に、部下の幻想種の女性――クエンリィはうなづく。
「間違いありません。手口は全く似通っています。意識を失わせる謎の薬物。狙われるのは幻想種だけ……」
「紅血晶の事件なら」
 眼鏡をかけた幻想種の女性が言う。ポップルという名だ。
「もっと広範です。無差別といってもいい。ですが、幻想種をことさらに狙うこのものは、何かが違います……」
 ふむん、とイルナスがうなづいた。確かにそれは、その通りといえた――いや、それもまだ『断言するには早い』。根は同じで、枝葉が異なる事件、という可能性もある。
「……それに、深緑からはぐれ物の幻想種たちが顔を出したといううわさもあります。エーニュとか言ったかしら」
「ザントマン事件で過激派になった、テロリストたちです。ラサの商人を暗殺しようとした……」
 ポップル、そして続くクエンリィの言葉に、イルナスは眉をひそめた。
「彼らが下手人だと?」
「わかりません。建前上、エーニュは幻想種の民族主義を謳っていますから」
 ポップルの言う通り、エーニュとは、先の深緑の戦いにも姿を現せた、民族主義者的なテロリストである。冠位魔種による新緑襲撃の際、漁夫の利を得る形で攻撃を仕掛け、イレギュラーズたちにより撃退された。その後は大人しくしていたと思ったが……。
「なんにしても、あなた達だけでは危険すぎます。
 そうですね、調査を行うにしても……ローレットをかませた方が無難でしょう」
「私たちが信用できないのですか?」
 クエンリィがわずかにむっとして言うのへ、イルナスは頭を振った。
「いいえ。手数は多い方がよい、ということです。
 ポップル、あなたはクエンリィの手綱をしっかり握って」
「了解しました」
「間髪入れずに頷いた!」
 クエンリィがむっとした様子を隠さずにそういう。ポップルは「いつものことですから」といいつつ、
「ひとまず市井の調査を行います……それでいいでしょうか?」
「もちろんです」
 イルナスがうなづく。
「クエンリィ、無茶はしないように。ポップルも、です。
 いいですか。もしまたザントマンのような大規模な事件なら、それこそ『しっぽをつかんだ程度では殺せない』のですから。
 確実に首根っこを摑まえて、そのそっ首を落とす。そのためにも、今はまだ、大人しく。ね?」
 その言葉に、クエンリィはうなづく。ポップルも、静かにうなづいた。

 イルナス・フィンナ直々の依頼。そう聞いて受けたあなたたちにとって、現れたクエンリィという女性はいささか子供っぽく見えた。イルナス直々に何かを任されるには経験不足のように見えたということだ。ポップルという眼鏡の女性は、そのサポート役というか、二人で一人前、といったところだろう。
「なにか?」
 むっ、とした様子のクエンリィに、あなたは頭を振った。半人前に半人前だというと得てして機嫌を悪くするものなので、黙っておくことにしよう。
「クエンリィ、威嚇しないで」
 ポップルがため息をついた。
「ご協力感謝します。イレギュラーズの皆さん。
 私はポップル・ポップス。こっちの子は、クエンリィ・メゼリ」
「よろしく!」
 ひらひらと手を振るクエンリィに、あなたは軽く頭を下げて見せた。
「さて、お話は聞いていますね? 昨今幻想種が狙って誘拐されているようです。まるで、かつてのザントマンの手口の様に。
 私たちはそれを調査したいのですが、皆さんにも手を借りたい……ということです」
「調査はいいが」
 仲間のイレギュラーズが言う。
「何か目当てはあるのか?」
「街のはずれに倉庫があるの」
 クエンリィが言った。
「誰も使ってないような倉庫。でも、最近、何者かが出入りしてるって噂があって」
「そこの調査ですか」
 仲間のイレギュラーズがうなづく。
「何が出るか出ないかは、まだわからないのですね?」
「何かが出ては、私たちでは対処できない可能性もあります」
 ポップルが言うのへ、クエンリィが不機嫌そうに口を尖らせたことに気付く。半人前とか実力不足とかは、この子にはNGワードだろう。
「……近頃は、紅血晶の事件もあります。もしかしたら、それに連なっているかもしれない……となると」
「なるほど。手はいくらあっても足りないか」
 イレギュラーズの一人がそういうのへ、あなたもうなづいた。
「じゃ、早速行きましょ」
 クエンリィが言う。
「さっさと解決して、幻想種(みんな)の不安を取り除いてあげないと」
 まだまだ血気盛んな彼女だったが、仲間のことを想う気持ちは間違いなくあるのだろう。そしてそれは、イレギュラーズたちも同様。無辜の民の不安を解決してやりたいという、そういう気持ちはあった。

「……やはり、ここに同胞が連れ去られていたのか」
 そういう幻想種の男は、実にラフな格好をしていた。どこにでも紛れ込めるような、そんなかっこう。
 近くには、近代的な『銃器』を装備した数名の幻想種たちの姿があった。何れも『何の変哲もないかっこう』をしていたが、しかしその目には『何か狂気的な』色が浮かんでいる。
「ザントマンの再来か……ラサの商人どもは、やはり我々を商品としか見ていないということだろう」
「やりましょう」
 部下の一人が声を上げる。
「同胞を助け出すのです……ぐずぐずしていては、ローレットやレナヴィスカの連中がかぎつけてくるかもしれません」
「そうだな。行くぞ。これは正しき戦いである……!」
 決起するように、幻想種たちは銃器を構えた。
 飛び出す。薄暗い倉庫に、武装した人間種たちの姿があった。
「なんだ、テメェら……!?」
 人間種の男が叫ぶ。武装した幻想種の男が答えた。
「吾らエーニュである! 同胞の解放のため現れた!」
 『エーニュ』。イルナスたちの危惧した、幻想種の民族主義者……ありていに言ってしまえば、テロリストであると思ってもらって間違いはない。
 彼らの心は、同志の解放に燃えていた。だが、彼らに解放されることが即座に良いことになるとは言いづらかった。彼らに『同胞』として迎え入れられ、戦士として教育される可能性は十分にあったからだ。この段階では、仮にどちらの手に落ちたとしても、さらわれた幻想種たちにはろくな未来が待っていないことは目に見えていた。
 だが……。
「そこまでだ!」
 だん、と大きな音を立てて正面の扉が開く。そこには、あなたたち――ローレット・イレギュラーズたちの姿があったのだ!
「ローレットだと!?」
 どちらの陣営ともなく、声を上げる。
「くそ、奴らに商品を奪わせるわけにはいかねぇ!」
 人間種の男が叫び、
「ローレットは我々の敵だ! 彼らに同胞を奪わせるわけにはいかない!」
 幻想種の男が叫ぶ。
「……随分嫌われたわね、私たち」
 クエンリィがそういうのへ、あなたも苦笑した。どうもこれは、三つ巴……というより、両方の陣営を討伐しなけばならなくなりそうだ。
 あなたは、仲間たちとともに目配せをする、武器を構えた。倉庫の奥には、さらわれてきたのであろう、幻想種たちの姿がある。薬か何かで眠らされているのか? 心配だが、今はこの敵たちを倒さなければならない。
 あなたは意を決すると、戦いの場に身を投じることとなる――!

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 期せずの三つ巴です。

●成功条件
 さらわれた幻想種3名の救出

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●状況
 レナヴィスカ頭領、イルナスから、『幻想種誘拐事件』の調査を依頼された皆さん。
 同行者として、レナヴィスカのクエンリィとポップルという女性とともに町はずれの倉庫に向かった皆さんが目にしたのは、幻想種をさらってであろう人間種の男たちと、『エーニュ』と名乗る、幻想種テロリストの一派でした。
 全員が全員を敵対視している状態です。三つ巴……ですが、皆さんは両方の陣営を確実に撃破しなければなりません。そうしなければ、さらわれた幻想種たちがどうなるか、想像するに難くはないのです。
 作戦結構タイミングは昼。倉庫内は日の光があるため明るいですが、暗視のようなスキルがあればさらに有利に働くと思います。
 倉庫内は十分に広く、特にペナルティなどは存在しません。

●エネミーデータ
 人間種の傭兵たち ×15
  刀剣類で武装した、人間種の傭兵たちです。BSとしては出血などに注意。
  単体での戦闘能力はイレギュラーズである皆さんに比べるべくもないですが、とにかく数の多さと、乱戦状態なことに注意が必要です。
  敵2陣営は協力体制などは敷いてきませんが、『予期せぬ連携』などで、集中砲火を受ける可能性は十分にあります。

 エーニュ兵士たち ×15
  銃などで武装した、幻想種のテロリストたちです。主に中距離~遠距離での攻撃を行ってきます。
  単体での戦闘能力は、さほど高くない、という所と、数と乱戦状態であることは、傭兵たちと同様の注意点です。
  こちらが下手に目立てば、両陣営から集中砲火を食らう可能性もあります。うまいこと敵をコントロールできればいいのですが。

●味方NPC
 クエンリィ&ポップル
  レナヴィスカの傭兵です。弓を使用した遠距離攻撃が得てです。
  半人前ではあるため、皆さんよりかは戦闘能力としては頼りないといえます。
  特に指示がなければ皆さんの援護を行いますので、ちょっとしたバフ要員みたいに思ってくだされば大丈夫です。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングを、お待ちしております。

  • <昏き紅血晶>ラサに消ゆ完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年02月26日 22時06分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)
虹色
マルク・シリング(p3p001309)
軍師
新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手
恋屍・愛無(p3p007296)
終焉の獣
ヴェルグリーズ(p3p008566)
約束の瓊剣
トール=アシェンプテル(p3p010816)
男の矜持

リプレイ

●三つ巴、あるいは二正面作戦
「吾らエーニュである! 同胞の解放のため現れた!」
 倉庫内に、声が響いた。銃器で武装した幻想種の男女が、裏口から入り込み、人間種の傭兵たちと対峙する。
「なんだぁ? てめぇら」
 傭兵の男がそういうのへ、部下らしき男が声を上げた。
「ザントマン以降、深緑あたりで暴れてるっていうテロリストです」
 ははぁ、と声を上げる。
「民族主義者の連中か。で、御涙頂戴にも同胞の解放ってことかね。
 いいじゃねぇか、こちらとしては、商品が増えた」
 そういう傭兵の男へ、エーニュ部隊のリーダーらしき男が叫ぶ。
「やはり、ラサの人間は腐りきっているようだな……! ここで征伐させてもらう!」
 まさに一触即発――ほんのわずかなきっかけで、戦いの口火は切られるだろう――。

(うへえ、面倒なことになった……)
 胸中でそうつぶやくのは、『いにしえと今の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)である。
 倉庫入り口、内部をこっそりと覗いてみれば、いまにもかみつきあいそうな二勢力が牙をむき出しで威嚇しあっている。はぁ、と嘆息しつつ、「静かにね?」と念を押して、仲間たちに内部を覗き見るように促した。
「ああ」
 『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)が複雑そうな顔をした。
「これは……三つ巴っていうか、二正面作戦になるやつだ」
「ちょっとまって、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ?」
 一応、声を抑えてくれたクエンリィがいう。
「すぐ助けに行かないと!」
「駄目です」
 今にも飛び出しそうなクエンリィを、ポップルが首根っこを押さえた。
「ですよね?」
 そう尋ねるポップルに、『浮遊島の大使』マルク・シリング(p3p001309)はうなづいた。
「うん。ここで下手に突っ込んだら、両方の標的になりかねないからね」
 イレギュラーズとなれば、相応に目立つ存在だ。そうなれば、敵両者が、まずはイレギュラーズを叩く、という、予期せぬ連携を図ってくる可能性は十分以上に考えられる。
「敵の数は脅威だ。ここは乱戦に持ち込むべきだともう」
「つ、捕まってる人たちはどうするの?」
「彼らにとって、幻想種は助け出す目標、あるいは守るべき商品だ」
 マルクが言った。
「手は出せないよ。だから、逆にこの状況なら安全が確保されているんだ」
 なるほど、とクエンリィがうなづいた。
「だから、二人も今は我慢してね?」
 アクセルが言うのへ、クエンリィがうなづく。
「わかった……うん。あなたたちの言うことは、正しい」
「ありがと!」
 そういうクエンリィに、アクセルが笑った。
「そのうえで……ここは確実に、乱戦に持ち込みたいな」
 『よをつむぐもの』新道 風牙(p3p005012)がそういう。
「今はにらみ合ってるけど、言い方は悪いけどさっさと暴発してもらいたいな。さて、どうしよう?」
「きっかけがあればいいんですよね?」
 『女装バレは死活問題』トール=アシェンプテル(p3p010816)がいった。
「例えば……声で誘導してみるとか?」
「煽ってみるか。なるほど」
 風牙がうなづく。「えーと、それじゃあ」と声を上げて、
「オレがエーニュの方を煽るから、トールは傭兵の方を煽る。どうだ?」
「え、私が傭兵側なんですか?」
 むむ、とトールが中を覗き込んだ。それなりの年齢の男しかいないように感じるが。うーん、いろいろと死活問題に片足を突っ込んでしまったような気がする。
「えーと、うーん……わかりました。自信はないですけど。
 では、突入後に、煽ることとします。口火を切るのは、風牙さんにお願いできますか?」
「おっけーだ。エーニュの方が暴発しやすそうだからな……こほん」
 と、咳払い。そのまま、思いっきり叫んでみせた。
「うわー! よく見るとあの傭兵たち、極悪犯罪の常習犯じゃないかー!
 今回もきっと、幻想種たちに口では言えないような酷いことをしようとしてるに違いないー!!」
 そのあまりにも棒読みといえば棒読みな感じに、アリアが思わず目を丸くした。もうちょっと演技というものを。まぁ、もののついでだ。自分もせっかくだから煽ろう、と、アリアはギフトを利用して、ここに来るまでに聞いた野太い商人の声を再現して見せた。
「おい、何してんだ! 商品が奴らに持って行かれちまうぞ!」
 さすがに二回も煽られては、両者とも暴発しかねない。特に、不安定なエーニュは、風牙、アリアの言葉にすぐさま反応した。
「させるな! 攻撃開始!」
 すぐに、内部で銃弾が響く音が。そして、刃が振るわれる音が聞こえる。
「お見事」
 『暴食の黒』恋屍・愛無(p3p007296)が声を上げた。
「とはいえ、こちらものんびりはしていられないな。
 一拍を置いてから突入しよう。その方が、奴らもより混戦状態になっているだろう」
 愛無は、うん、とうなづいてから続けた。
「つまり、一拍の余裕が、こちらにはあるということだ。利用しない手はないな」
「そうね。準備はしっかりしてから行きましょう?」
 そういって、柔らかに『白き寓話』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)は笑う。この状況においても、イレギュラーズたちは冷静さを欠いてはいなかった。油断しているわけでも、敵を舐めているわけでもない。ただ、冷静さを失わないということが、彼らが歴戦の勇士であることの証拠であり、それが半人前である自分たちとは違うのだと、ポップルはもちろん、クエンリィもなんとなく理解してこれた。だから、
「私も、簡単な守護のおまじないらできるわ。皆に少しでも力になれると思う」
 クエンリィは、生意気な態度を控えて、イレギュラーズたちにしっかりと協力することを態度で示した。『桜舞の暉剣』ヴェルグリーズ(p3p008566)は、穏やかにうなづいた。
「うん、ありがとう。二人は、そのまま、俺たちのサポートを頼むよ。
 敵の数は多いからね。最悪は、二人だけでも逃げるんだよ?」
 やはり、冷静さ、先の先まで見据えているのがイレギュラーズというものなのだろう。クエンリィとポップルは、イレギュラーズたちに信頼のまなざしを向けて頷いた。
「さて、じゃあ、行こうか。皆。
 これでようやく、乱戦状態からスタートだ」
 ともすれば、二正面作戦になる状況を、イレギュラーズたちは乱戦の状態に整えた、ともいえる。果たしてその判断は吉と出るか凶と出るか。それは、もうすぐ、証明されるのだった。

●倉庫内の激戦
 ――だん、と正面の扉が力強く開かれる。内部を覗いてみれば、既に団子状態の敵たちがつかみあっているのが見える。
「ちっ、なんだ!?」
 傭兵の一人が、闖入者であるイレギュラーズたちに視線を向け、顔をしかめた。
「くそ、あいつらローレットだ! 幻想種はレナヴィスカか!?」
「なんだと!?」
 一方で、エーニュ側も叫ぶ。
「奴らはラサに与する裏切り者たちだ! ここでしとめろ!」
「商品を奪わせるな! 両方ともここで殺せ!」
 エーニュ、傭兵たち、両者からほぼ同意の言葉があげられるのへ、クエンリィは、うへぇ、とため息をついた。
「……随分嫌われたわね、私たち」
「人攫いとテロリストの双方に嫌われてるってことは、僕たちの活動が正しいという証左じゃないかな」
 マルクがテレパスで直接おのれの意思を伝える。その意図を理解したクエンリィが、うなづいた。
「トールさん、予定通りに頼むよ。引っ搔き回してほしい」
 マルクがそう『想う』のへ、視線を合わせていたトールがうなづき、『想う』。
「任せてください」
 トールは巧みに気配を消すと、既に戦いの始まっていた混乱の渦の中へと入りこんでいった。一方で、イレギュラーズたちもここでぼさっとしているつもりはない。すでに戦端は開かれている。そのための下準備も、既に行っていたのだ。
「今から全員が、こちらに集中砲火……なんて状態にはならないと思う」
 アリアが『想う』のを、マルクがうなづき、意志を伝える。
「そのとおり。だから、ここからは乱戦だ。それはたぶん、僕たちがとりうる最善の戦法になる。
 それに、動けない幻想種3人を抱えて戦闘から離脱するのは難しいね。きっちり両勢力を制圧してから救助しよう」
 仲間たちはうなづいた。
「よし、じゃあ行くぞ!」
 風牙が『声を上げた』。これから仕掛けるぞ、という誘導。同時に、風牙は倉庫を駆け抜け、エーニュに対して仕掛けた。もし、敵の予期せぬ連携が成立していたならば、傭兵たちが前衛に、エーニュたちが後衛に、という、シンプルながらも少々厄介な状況に追い込まれていただろう。そして、ここから『劣勢に陥った敵が連携しないよう』に、あらかじめ厄介な後衛になりそうなエーニュを先に潰しておく。それが風牙のねらいである。
「来いよエーニュの腰抜け野郎ども! 銃なんか捨ててかかって来い!!」
 同時に――傭兵たちの間から声が上がった。というのも、これは紛れ込んでいたトールの発した声だった。傭兵たちは騙されなかったとしても、エーニュはその声に、自分たちが集中砲火を受けているものと錯覚しただろう。これで彼らは防戦一方となる。傭兵の一部はイレギュラーズとも交戦しているため、完全にその通りではないが、予期せぬ連携は、まったく予期せぬことに、傭兵とイレギュラーズ、という形でエーニュに襲い掛かることとなっていた。
「でやぁぁぁぁっ!」
 風牙の槍が、旋風のごとくエーニュ兵士に迫る! とっさにライフルで受け止めたが、その上から叩きつけられる衝撃は殺せない!
「うわっ!?」
 悲鳴をあげながら、エーニュの兵士が吹っ飛ばされていく。同時に、傭兵がエーニュに殴りかかった。
「ちょうどいい! 奴らからやれ!」
「ありがたいことだが、しかし微妙な気持ちになるな。
 ああ、ちなみにこちらは、君たちにも容赦はしない」
 ふむん、と愛無が唸りつつ、その怪物のごとく変質した腕を振るった。荒れ狂う暴風が吹き荒れる――これはもちろん比喩だが、まさにそうとした例えようのない、強烈な一撃! それは周囲の存在を、エーニュだろうが傭兵だろうが、区別なく薙ぎ払った!
「この地に悪徳を栄えさせようとするならば、どちらであろうと、ここで沈んでもらう」
「くそっ、と、とにかく目に付くやつから攻撃しろ!」
 乱戦は続く。が、前述したとおり、もっとも狙われていたのはエーニュたちだ。また一人、イレギュラーズたちの攻撃によって吹っ飛ばされ、倉庫の壁に叩きつけられて意識を失うエーニュ兵士がいた。
「やれやれ、紅血晶の事件でも大変なのに、幻想種の誘拐に、テロリストに――」
 ヴェルグリーズが、両刃の刀を流麗に振るいながら、声を上げる。その刃が一筋、中空に線を描くたびに、悪しきものは独り、また一人と斃れていくのだ。
「厄介ごとを増やさないでほしいな。もしかして、裏でつながっているのかな?」
「そうね。まだ何とも言えないけれど――」
 ヴァイスが柔らかく微笑みながら、その手をゆるりと差し出す。握られた儀式短剣から、魔光が輝き、それはさながら宙を走る刃と化して、傭兵の一人を切り裂いた。
「枝と葉は別々でも、幹は一本なのかもしれないわねぇ」
「タイミングが似通いすぎている。偶然というには――」
 あまりにも、できすぎていた。紅血晶。再動したかのような奴隷商人ザントマンの残滓。そして、深緑からわざわざ出向いてきたテロリスト――。
「大変ね。とっても。
 でも、今は、ちゃんとあの子たちを助けられるように」
 そういって、ヴァイスが視線を送るのは、気絶したのだろうか、意識を失った、さらわれた幻想種たちだ。
「がんばりましょう?
 ちゃんと助けてあげられるように……というのは、傲慢なのかしらね。
 自分たちも、彼らみたいに他人を害することばかり気にしないようにしなくっちゃ」
「傲慢かもしれないけれど……いいや、きっと、最良を勝ち取るには、わがままなくらいじゃないとね?」
 ヴェルグリーズがそういうのへ、
「ふふ。きっと、そう」
 ヴァイスは笑う。一方、マルクがその手を振るえば、混沌の泥が傭兵たちを洗い流すように打ち据えた。
「よし、こっちだ」
 マルクが誘導するように走り出すのへ、傭兵たちが迫る。その傭兵たちを、アクセルが放つ神聖なる裁きの光が、次々と打ち貫いていく。
「さんきゅー、マルク! 万が一にも、さらわれてきた人たちを巻き込みたくないからね!」
「うん、その通りだ」
 マルクが再度、混沌の泥を放った。アクセルの言葉通りに、被害者たちから離すように、押し流す。体勢を崩したところを、アクセルがとどめとばかりの一撃を加えて、その意識を刈り取った。
「命まではとらないよ! 君たちの背後事情も知りたいからね!」
「そうだね」
 アリアが言葉を続ける。
「教えてほしいね。
 幻想種さん捕まえて何する気だったの? 売るの?」
「『俺たちは』な!」
 傭兵が叫び、アリアに襲い掛かった。斬撃を、アリアは受け止める。僅かに走る痛みに、少しだけ顔をしかめた。
「どこに売るのかな~? 教えてくれない?」
「知ってどうするよ! お前も一緒に売ってくれってか?」
「あは! つまらない冗談!」
 アリアがその手を握りこむと、強烈な魔力がその拳に巻き起こる。殴りつけるように、叩きつける。フルルーン・ブラスター。極限まで凝縮した魔力の、ゼロ距離攻撃! 衝撃に吹っ飛ばされた傭兵が、そのまま壁に叩きつけられて意識を失う。
「怖~」
 そういって笑ってみせるアクセルにアリアは肩をすくめてみせた。
「そりゃね。さすがに怒るよ?」
 アリアの言う通りだろう。やはり、人をさらい、どこぞへ売り飛ばすなどあってはならないことなのだから。
 さて、おおむねとしては、敵はエーニュから真っ先に壊滅状態に陥っていた。
「くそっ、やはりラサは、悪徳が栄えるのか……!」
 悔し気の呻くエーニュの男に、トールは輝剣を振りかざした。
「何を言うんですか! 報告によれば、ろくでもないことをしてるのはそっちでしょう!?」
「先に手を出したのはそちらだ! 我々幻想種を食い物にしているのは、ラサであり、お前たちローレットだ!」
 叫ぶように、あるいは駄々をこねるように、男が銃を放つ。トールはその銃撃を輝剣で受け止め、
「だからって、罪のない人を傷つけだしたら、ダメじゃないですか!」
 一気に接敵すると、その刃を振り下ろした。光の軌跡が、男を切り裂く。ぐわ、と悲鳴を上げて、男は倒れ伏した。
「こっちは全部です! あとは――」
「了解! 傭兵たちだけだ!」
 風牙が叫び、その槍で目の前にいた傭兵の男を殴り飛ばした。倉庫に転がっていた建築資材の山に、吹っ飛ばされた男が叩きつけられる。残りは傭兵たちだけ、ではあるが、この状況ではすでに壊滅状態に近い。もとより、エーニュと傭兵同士でつぶしあい、そこにローレットが乱入したわけだ。うまく立ち回ったイレギュラーズたちを迎撃できるような戦力などは、残っていない。
「くそっ! 儲け話を前にしてやられてたまるかってんだ!」
 傭兵が雄たけびを上げて、風牙に迫る。振り下ろされた刃を、槍で受け止める。
「まったく、真面目に傭兵やってればよかったんだ」
 あきれたように言う、風牙。そのまま身をかわしつつ、横なぎに槍を振るう。横腹を叩きつけられた傭兵が、げ、と息を吐いてぶっ倒れた。
「まぁ、この期に及んで逃げないのは、さすがはラサの傭兵とほめておこうか」
 愛無が感心したように言う。
「傭兵は契約を守るものだものな。
 ……まさか、リスク管理もできない間抜けというわけではないだろう?」
「言わせておけばよ!」
 切りかかる傭兵に、愛無はその爪を振るった。名工の刃よりも鋭いそれが、傭兵の持った剣と、ライトアーマーを切り裂き、意識も刈り取って見せた。
「ふむ。こんなところで終わりか」
 その言葉通り、既に倉庫内に抵抗する者はいない。マルクがうなづくと、
「よし。被害者の三人は無事かな?」
 尋ねる。答えたのは、ヴァイスだ。
「ええ、ええ。眠っているみたい。
 たしか、眠りの粉、があったのよね?」
「ザントマンの時のですね」
 ポップルが答えた。
「あの時と、似ていますね……ただ、ザントマンの眠り粉とは違うもののようですが」
「やっぱり、紅血晶の関係かな?」
 アクセルが尋ねる。
「時期的に、それを疑うのは自然だと思うけど」
「うん……やっぱり、根っこはつながっている、ってやつだとおもうよ?」
 アリアが頷いた。
「そうなると、どうにも、複数のラインで話が動いているように思えるね」
 ヴェルグリーズが言った。
「紅血晶そのものを利用する敵。それに関連する技術で、私腹を肥やそうとする敵……かな?」
「ラサも大変なんですね……」
 トールが肩を落としながら言った。
「エーニュたちの動きも気になります。
 また大きな戦いになりそうですね……」
「けど、どんな奴がどんな事件を起こしても、絶対に解決しないとな」
 風牙がそういうのへ、仲間たちはうなづいた。
 果たして未だ、事件の全容は見えずとも。
 ひとまず、ここに三人の幻想種たちを、無事に助け出すことができた。
 それは間違いなく、イレギュラーズたちの勝ち得た成果であり、平和への第一歩に違いないのだ――。

成否

成功

MVP

ヴェルグリーズ(p3p008566)
約束の瓊剣

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 被害者であった三人の幻想種は、後ほど医療機関に搬送され、意識を取り戻したようです。
 また、生き残った傭兵たちとエーニュの兵士たちは、何れも拘束され、後々に取り調べを受ける模様です。

PAGETOPPAGEBOTTOM