PandoraPartyProject

シナリオ詳細

イレギュラー&イレギュラーズ

完了

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●イレギュラー・デイ
 特別な日では無いのだ。
 日々を過ごしていれば幾らでも出会う一日だ。
『危急の用事は無く、ローレットの仕事も限定的な』。
 積極的に休もうと思えば休める程度の消極的な休日に過ぎない。
 だが、結論から言えばこの一日は少しだけ『特別』である。
 神ならぬ人の視点しか持ち得ない盤上のキャストには分からない事。
 かと言って、可能性の獣とも称される諸君からすれば『ごく些細』な特別に過ぎない。
 茫洋と過ごせばこの一日は何も変わる事は無く、凪の世界の水面は揺れまい。
 しかし、ほんの僅かだけ上下左右に振れやすくなる今日という日は、君達の行動如何で幾ばくかの『物珍しさ』を望み得るのだ。

 分かり難い? ハッキリ言え?
 いいだろう。平たく(シンプルに)行こう。

 ――諸君が出くわした有閑な今日という日は過大な運命を背負っていない。
 君達の人生に決定的な結論をお仕着せる事も無いし、取り返しのつかない出来事等起きはしない。
 しかしながら、この日は幾ばくか『違う』のだ。
 ほんの少しだけ、『特別』に出くわしやすくなると言える。
 故に君がそれを望むのならば、普通とは少し違う事が起きる『かも』知れない。

 うん。やっぱり良く分からない?
 そうだろう、そうだろう。
 分からないだろうが、『そういうもの』なのだ。

 嗚呼、いよいよ混乱するだろうが案ずる事はない。
 君達が今疑った通り、私はこれから目覚める君達が見ている夢の戯言に過ぎないのだから。
 え? 自分は眠らない? ……面倒くさいな、君達は!
 白昼夢でも幻視でも何でもいい。重要なのはこの話は覚醒する君達の記憶には残らないという点だけなのだ。
 君達は極普通に覚醒し、何の変哲も無い筈の一日を過ごすだけ。

 後はまぁ、風の吹くまま気の向くまま。
 あんまり酷い事は起きない筈だから、それで良しとしておいてくれたまえよ――

GMコメント

 YAMIDEITEIです。
 ライトシナリオ実装記念品。
 忙しいですが無理矢理出しちゃうです><。

●任務達成条件
 個々人が眠ったらおしまいです。
(概念的に)一日が過ぎた時点で終了します。
 また0時を回っても終了します。

●要するにどういうこと?
 要約しても奇妙奇天烈なこのオープニング。
 更に分かりやすくメタ解説をすると……

1、皆さんは夢だか幻視だかでオープニングのような何かを告げられました。
  皆さん(PC)は胡散臭い夢もどきの事を覚えてはいません。

2、皆さんはこの一日の間、『少し特別なイベント』に出会いやすくなります。

3、イベントの内容は個々人で違います。キャラらしいものになるでしょう。

4、イベントは重大すぎたり過酷過ぎる内容になったりする事はありません。
  日常の延長線上で起き得る、しかし少し珍しい出来事、或いは不思議な事象だったりします。

5、望まないと起きなかったりもします。
 その場合、日常的なシーンが極普通に描かれます。
 長閑な休日を過ごす事が出来るでしょう(コーヒーブレイク系のイベントシナリオの豪華版、SSっぽくなるでしょう)

●他PCやNPCと絡めますか?
 一人のシーンを希望する場合は選択肢1の『ソロ』。
 参加PC同士で連携した内容にしたい場合は選択肢2の『マルチ』を選んで下さい。
 但しこれは『複数PCでの連携描写を許可する』という意味であり、確実ではありません。(極力、描写相性のいい(或いは親しい)方同士を連携させますが、難しい場合はソロとして扱う場合もあります)
 NPCの場合は選択肢3の『NPC』を選び、その上で希望がある場合は誰に出てほしいかを記載して下さい。
 尚、NPCは総じて必要に応じて勝手に出る場合もあります。(3以外は控えめに)
 またこの場合のNPCとは関係者や必要に応じて生じるモブキャラ、新キャラも含みます。
 NPCの希望については個々のGMの保有等、明らかにYAMIDEITEIの担当外なものはご遠慮下さい。(パブリック系はまぁOKです)

●補足について
 基本的にどんな傾向が見たいかの希望を書いてくれたらいいと思います。
 キャラ理解されている自信がある場合はお任せでいいです。
 雑目なSSの発注文をイメージしてくれれば良いと思います。

●備考
 ライトシナリオは(依頼+幕間+SS)/3といった風情です。
 本シナリオに関しては描写量を上げる為、人数を絞っています。
 SS発注価格に対して半値程度までの価格調整を行っておりますのでご注意下さい。(1000字程度を想定)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はEです。
 無いよりはマシな情報です。グッドラック。


描写区分
劇中の一日をどういう風に描写希望かの選択肢です。

【1】ソロ
主にPC一人のシーンのリプレイを書く選択肢です。

※NPCや関係者、モブ(新キャラ)等は必要に応じて登場する場合があります。

【2】マルチ
参加PC複数の連携でリプレイを書く事を許可します。
参加者中の誰かと何らかの行動を共にする可能性があります。
誰と組むか等はGM任意で決めますが、相性の良さそうな相手を選びます。(難しい場合はソロになる場合もあります)

※NPCや関係者、モブ(新キャラ)等は必要に応じて登場する場合があります。

【3】NPC
ソロの亜種です。この選択肢の場合、NPCをそこそこ多く出しやすくなります。
希望するNPCが居る場合は名前を指定して下さい。

※指定外NPCや関係者、モブ(新キャラ)等も必要に応じて登場する場合があります。


イレギュラーエンカウント
何の変哲も無い日をちょっとした特別にするか否かです。

【1】する!
ちょっと特別な事が起きやすくなります。
補足を参考にキャラの延長線上で比較的安全運転でやります。

【2】激しくする!
オープニング通りですが、そこそこ激しく攻めます。
補足を参考にします、が……
強めのアドリブや解釈を入れるので、不安な人は使わないで下さい。

【3】しない!
今回のリプレイは補足を参考に日常の幕間的な、長閑な休日を描くような内容になります。

  • イレギュラー&イレギュラーズ完了
  • GM名YAMIDEITEI
  • 種別 通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年02月05日 23時20分
  • 参加人数6/6人
  • 相談0日
  • 参加費350RC

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(6人)

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
郷田 貴道(p3p000401)
竜拳
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
シラス(p3p004421)
超える者
新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの

リプレイ

●イレギュラー・デイ
 繰り返す。それは決して特別な日では無いのだ。
 日々を過ごしていれば幾らでも出会う一日に他ならない。
『危急の用事は無く、ローレットの仕事も限定的な』。
 さあさあ、一つまみの数奇に出会った六人のイレギュラーズの日常の時間をご覧あれ――

●『社長の視察』キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)の場合
「はあああああ!? また知らん顔がウチのシマを荒らしただって!?」
「利権の坩堝には珍しい話にもならないだろう?
 こういう場所だからな、さもありなんだ」
 ネオ・フロンティア海洋王国がフェデリア島、事務所を構えるはその無番街――
 領地ルンペルシュティルツに本拠を置く『派遣会社ルンペルシュティルツ』の社長であるキドーは『経営コンサルタント』を自称するいけ好かないエルフ野郎ことラゴルディアの淡々とした報告に思わず声を荒げていた。
「この野郎! こっちがどれだけ苦労してアレに食い込んできたと思ってやがる!」
「そんな事私が知るか。我慢の利かないのは腐れゴブリンの説教出来た話ではないと思うがね!」
 皮肉めいたラゴルティアの鋭い切り返しにキドーは気色ばむ。
 口角泡を飛ばし、あわや取っ組み合いでも始めそうな勢いだが……
 実際の所を言えば、この二人の険悪なやり取りは半ばお約束のようなものであった。
 絶対に口にはしないが、キドーはラゴルティアを頼りにするし、頼られるラゴルティア側も口ではどうあれ『ド素人』のキドーを何だかんだで支えてやる辺り、甘いも甘い。つまりこれは、
「出来レースって訳で」
「あ!?」
「何だと!?」
「……何でもねぇです。『俺はいつでも社長に忠実ですからね』」
 静かな口調で肩を竦めたスキンクに同時に向き直る辺りも実に息が合っている。
「兎に角、重要なのはフェデリア島の問題ですよ。放っておけば我が社が舐められる。
 早急に手を打つ必要がありますが、あそこは実際面倒くさい」
 嘆息した彼はその辺りを突きまわすのは無駄だと分かっているし、した所で意味も無いから話を戻した。
「……確かになァ」
 唸ったキドーは現地の事を考えた。
 フェデリアは海洋と鉄帝をはじめとした各国の利権の絡む火薬庫だ。
 明るいニューリゾートの空気以上に張り詰めたものが裏に燻っているのは間違いない……
(力づくか? いや、ここは様子を見るか。イレギュラーズの名もありゃあ競合を傘下に置ける目もなくはねェ)
 ビジネスは生き馬の目を抜く世界だ。悩み顔のキドーの顔は、まさに経営者のものだった。
 ……何年か前の彼にこの状況を言ったなら決して信じなかったに違いない。まさに彼はただの『ゴブリン野郎』だったのだから。
「ごめんねえ、社長! 考え事の最中に失礼しちゃうんだけど!」
 そんなキドーの沈思黙考を中断させたのはノックも無く社長室に入ってきたマーコールだった。
「……マーコールまで、急に何だよ!?」
「フェデリアの話ね。舐め腐った地元の半グレがウチの系列の店で暴れ回ってるみたいなんだけど。殺していい?」
「……マジかよ」
 一件では終わらなかった。これは確かに『特別』だ。『特別最悪な日』に違いない!
「何て日だ!!!」

●『喰鋭の拳』郷田 貴道(p3p000401)の場合
「……シュッ……!」
 上体を捻り、拳を打ち抜いた貴道の口から鋭い呼気が漏れる。
「フッ、ハッ……シュッ……!」
 滝のような汗を零しながらも神速の鋭拳を一定のリズムで宙空に叩き込む彼の演武(シャドーボクシング)は美しい。
 スーパーヘビー級の体躯を思わせないシャープな動きは、何処ぞの小悪魔が見たらうっとりとしてしまう位だっただろう。
「……フッ、ハッ……うん?」
 三百六十五日欠かさない鍛錬は貴道の日課そのものである。
 その鬼気迫る時間を邪魔する者は居ないし、そんな事を彼は決して許さないのだが……
 邪魔をするでなしに存在感だけで彼にその手を止めさせる程の人間は別物だ。
「……邪魔をしたか?」
「まぁな。だが、構わねぇよ。『最初からやり直すから』」
「『ボクサー』らしいな。何が起きてもラウンドはラウンドか」
「これでも『実戦』を意識してるんでね。三分一ラウンドを十二回。
 試合中、フルに動けるのは大前提。インターバル以外の休憩は無しって訳だ」
 木の枝に掛けていたタオルを手に取った貴道はニヒルに笑った。
 スポーツドリンクを一口ぐびりとやり、予備の一本を視線の先の男――ガイウス・ガジェルドに放り投げる。
「珍しいじゃないか。ユーはどうしてここに?」
「お前がトレーニングをしていると聞いてな。久し振りにその拳を見たくなっただけだ」
「ヒュウ」と口笛を鳴らした貴道は飾らない言葉に実に嬉しそうな破顔をした。
「八回戦ボーイ扱いは撤回してくれたみたいだな」
「分かっているだろう? 自分の戦績が。それに今となっては此方も国の事では世話にはなっている身だ。
 今更、そこまでお前を侮る心算は無い」
「嬉しいねェ」
 このガイウスと貴道は数年来の付き合いだ。
 友人とまでは言えないし、ライバルと呼ぶにはおこがましい。
 されど、彼は『ボクサー』である貴道にとって特別であり続けた『チャンピオン』に他ならない。
 貴道はトレーニングの疲労が高揚で吹き飛んでいくのを自覚した。
 寡黙なガイウスが何を考えて、こんな『特別』に到ったかは分からない。
 されど、今なら。
「――そろそろ、戦ってくれる気になったかい?」
 何時かは無謀な挑戦をあしらわれたが、多くの場数を踏んだ今ならば。
 貴道とガイウスの視線が絡む。まんじりともしないその時間は男臭い剣呑そのものを帯びていたが――
「それは――」
「――冗談だよ」
 ガイウスの言葉を待たず、貴道は肩を竦めて脱力した。
「『S級に上がったら』だろ?
 そういうルールがある以上、プロとしちゃあ横紙破りなんてしねェよ」
「大人になったものだな」
「……若気の到りはそろそろ忘れろよ」
『珍しく』冗句めいたガイウスに貴道は笑った。
「S級に上がれるよう、トレーニングを再開するか」
 屈伸と伸びをした貴道にガイウスがもう一つ珍しい提案をした。
「付き合おう。ミット打ち位なら相手になる」
「そりゃあ、いい!」

●『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)&『よをつむぐもの』新道 風牙(p3p005012)の場合
 ふとした瞬間に、人物を評価を見直す事はままある。
 例えば、何時も地味な仕事に従事していた縁の下の力持ち。
 いざ、そんな人物が居なくなった時、全体の仕事が全く回らなくなったなら。
 余程の阿呆でなければ、その場の一同は失ったものの大きさ、或いはその人物の有難さに気付く事だろう。
「酒! 肉! 酒でしてよーーーーッ!」
「……あー……」
「もっと! もっと持ってこいでございますわ!
 今日は天下のイレギュラーズ、新道 風牙の奢りでしてよ!
 何を遠慮しようというものですか、樽ごと持ってこいでございますわ!
 近隣の店からもかき集め、シャンパンタワーならぬ酒樽タワーでも用意しろでございますわ!!!」
(これは酷い……)
 酒場の中央テーブルを支配し、奇声を上げるヴァレーリヤの姿を眺め、風牙は心底からの溜息を吐き出した。
 風牙とヴァレーリヤ。普段『つるみそうもない』二人が今日という日を過ごした『特別』は偶然から生まれた出来事だった。

 ――大した仕事じゃないが、一人は微妙だな。暇ならオマエ達、ペアで行ってこい!

 ローレットの野暮用を居合わせた風牙とヴァレーリヤが振られたのが数時間前。
 丁度『お小遣いが切れていたらしい』ヴァレーリヤは二つ返事で頷いて、やる事の無かった風牙もこれを了承した。
 仕事は幸いに聞いていた通りのどうって事のないもので、スライムとかも出なかったのだが……

 ――さあ、風牙! 勝利の後は宴会ですわ!
   折角の機会ですものね。ここは少し親睦を深めるお遊びをいたしましょう!

 ――何だそれ。まぁ、別にそういうのも悪くねぇとは思うけどさ!

 風牙はどちらかと言えばピュアで真っすぐな気質をしている。
 一方で提案者のヴァレーリヤは酒で濁った目に定評のある『聖職者』である。

 ――簡単ですわ! 今日はお互いに『奢り合い』ましょう!

「……詐欺だろ、これ」
 いや、まぁ……
 経緯を見るにヴァレーリヤが素寒貧なのは分かっている。
 一方の風牙は別に当面困っていないのだから、それはもう諦めはつくのだが……
(聖職者って何なんだ……?)
 その疑問ばかりにはどんな神も応えてくれまい。
 当のクラースナヤ・ズヴェズダーの皆さんも黙って首を横に振るだけだろう。
「すげえなあ、本当に……」
 何かと噂になる人物だから、まぁ再確認したに過ぎないのだが。
 普段からこれを御し、何時も幸せそうにニコニコしている虎の人間強度(矛盾)を思い知るに十分である。
「――風牙!!!」
「何だよ!」
 突然目の前にポップしてきた赤ら顔のヴァレーリヤに思わず風牙は後ずさる。
「呑んでいまして!? コップが開いておりませんわよ!?」
「未成年だよ!!!!!」
 反射的な未成年の主張にヴァレーリヤは「……あ」という顔をした。
 神を恐れぬ革命の徒であっても、飲酒喫煙は二十歳から。
「え、えっと! で、ではもっと沢山食べましょう! それが一番ですわ! コンプライアンス万歳ですわ!!!」
 混沌世界を形作る絶対のルールは火炎瓶の聖女であっても踏み越えない『一線』である。
「まったく……」
 何て酷い光景だろう。ここは地獄か何かなのだろう。
 けれど……
「……おもしれーやつだな、アンタ」
 ふっと表情を緩めた風牙は何だかんだでこのやたらにやかましい酷い休日を楽しんでいる自分に気が付いた。
 暴風のような彼女は成る程、憎んで憎めるような人間ではない。
 本能的で身勝手で迷惑で愉快で――とても愛らしい。
 野生動物か何かかな?
「面白い女ですわ! ですが、風牙!」
「……ん?」
「面白がったからにはおひねりを頂戴いたしますわ! さあ、跳ねろですわ! 半分で許して差し上げますからね!!!」
「おい!!!!!」
『珍しい』組み合わせの宴会は何処までも無軌道に、愉快なままに過ぎていく――

●『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)の場合
「兄さんは、帰って下さい」
「嫌だよ。折角汰磨羈changが遊びに来てくれたのにSA!」
「兄さんは邪魔です。とてつもなく。汰磨羈さんは私のお客様として練達にやって来たのです」
「汰磨羈changをエロエロに引ん剝くのは俺様の使命! 読者の期待ってもんなんだZE!」
「――ちょっと待て!?」
 思わず静止をかけた汰磨羈は目の前で展開される訳の分からない展開に思わず頭を抱えていた。
 千年以上の長きに渡り、練達はセフィロトのコントロールを一手に担ってきた『マザー』ことクラリス。
 彼女は先の練達事件の影響でかなり深い損傷を受け、未だに機能修復を続けている状態だ。
 一方で話を混ぜっ返すクリストは『Hades-EX』の異名でも知られるクラリスの兄妹機。彼女とほぼ同等の性能を持っている、混沌のオーパーツ。未完の天才チュー二ーにより産み出された超高性能AIなのだが……まぁ、こちらは筋金入りの迷惑者である。先の事件にもガッツリ噛んでいた彼は結果として酷い目に合わせた妹に悪びれたのか、練達の維持を補佐している状態なのだが……
「今日、汰磨羈さんを招いたのは私です。用向きと議題は兄さんを何とかする事です。
 その必要性を決定的に証明しているのが、現在進行形で行われている兄さんのウザ絡みなのです。
 ここまでは理解出来たでしょうか?」
 クリストに言葉の刃を投げつけるクラリスは機械の身、少女のなりでありながら無限の母性を備える文字通りの『マザー』である。
(……ううむ、クリストが相手の時だけはどうも勝手が異なるな……?)
 しかし、汰磨羈の考える通りどうも彼女はクリストを相手にした時だけはそうはいかないようであった。
 前々からそういう気配はなくはなかったのだが『兄さんの悪戯』対策に頼られた汰磨羈は今日、感情的に抗議しまくるクラリスなる『恐ろしく珍しい』ものを見せられている。
「あー、兄の心妹知らずだYO! 悲しいね、汰磨羈chang!」
「私に振らないで欲しいのだが???」
 頬をぷっくりと膨らめるクラリスを察し、汰磨羈は真顔で抗議をした。
 痴話喧嘩ならぬ兄妹喧嘩に巻き込まれてはかなわない。
 クラリスはそれでも理性的だろうが、冒頭の発言からして何かクリストが悪だくみの一つでも思いついたら目も当てられない!
(何せ今日は……)

 一 人 な の だ

 盾にする奴が居ない。
 あいつもこいつもそいつも――闇の生贄になりそうな奴が居ない!
(声が、声が聞こえる!)

 ――別にお前でも大丈夫だよ――

 ぶんぶんと首を振った汰磨羈は恐るべき未来を心底から否定した。
 クラリスには悪いが、今日の相談は承れそうもない。兎に角早くここを脱出してみせなければ!
「では、兄さん。フェアに決めましょう」
「いいね、フェア。ゲイムに重要ないい響きだZE!」
 汰磨羈の内心を他所に機械仕掛けの兄妹は不吉な合意に達している。
「兄さんの同席を許すか、汰磨羈さんに決めて貰いましょう」
「は……?」
「分かってると思うけどNE、汰磨羈chang。
 俺様ハブにされたら、悲しくてちょーっと暴走しちゃうかも?」
「分かっていると思いますが、汰磨羈さん。
 兄さんの同席を認めるという事はその狼藉を認めるという事でもあります。
 セフィロトの管理者として、私は汰磨羈さんの結論を尊重します」
(さ、最悪過ぎる……!)
『珍しい』日は汰磨羈にとって酷い日であった。
 何も、いい事ばかりが起きるとは限らない――

●『竜剣』シラス(p3p004421)の場合
(……さて、困ったな。これは……)
『黄金双竜』レイガルテ・フォン・フィッツバルディの見舞いからの帰り道、シラスは溜息が止まらなかった。
 せめてお目通り叶えば、と駄目元で顔を出したのだが、当然と言うべきかこの願いは叶わなかった。
 彼の病状は現状の幻想におけるトップシークレットそのものであり、シラスのみならずフィッツバルディ派のかなりの貴族であっても面会謝絶になっている事は事前から知れていた。
(それでも、まぁ……)
 シラスは一定に納得し、満足している点もある。
 会えなかったのはそうだが、シラスの応対をしたのはあのザーズウォルカだったからだ。
 レイガルテの腹心中の腹心である彼は爵位こそ持たないものの、フィッツバルディ家の番頭のようなものであった。
 その彼が「現状での面会は不可能だ。貴様なら分かるな?」と直接告げてきた事はフィッツバルディ派ならぬフィッツバルディ『家』中でのシラスの評価を裏付けるものであると言えるだろう。少なくとも爵位を持ちながら門前払いを受けた連中よりはずっと上等だという事だ。
(それはいいけど……公の病状はやはり気になるな)
 双竜宝冠事件――
 先のアーベントロート動乱に続き、幻想の屋台骨を揺るがす現在のトップニュースである。
 レイガルテが倒れた事に起因してその後継者達が激しく跡目を争い始めた政治劇は、後継者の一人であるミロシュ・コルビク・フィッツバルディの暗殺事件を契機にして、いよいよ内乱の兆しさえ見せていた。
 元の生まれとその内心はさて置いて、経歴としては立派に『フィッツバルディの尻尾』が板につくシラスにとってはこれが目下最大の懸案事項だった。
 どう泳いで、どう乗り切るか――
 血縁や年長者に可愛がられた経験の薄いシラスは、無意識の内にレイガルテに一定以上の情を抱いていたが……それは兎も角。
 現状の活動さえ『幻想という国への復讐』の一つと考えるシラスはここで頓挫する気はない。
(情報収集を続け、チャンスを待つしかないな)
 幸いにもローレットには協力が期待出来るイレギュラーズが複数いる。
 フィッツバルディ派と目されるイレギュラーズは腕利きが多く、彼等の助力を得れば手札が増える事だけは間違いない。
「おっと……」
「あ、失礼」
 往来での沈思黙考は程々に。
 深い考え事をしていたシラスは道行く一人の男に肩をぶつけた。
 反射的に謝罪し、彼の顔を見上げる。
 王冠のような豪奢な金髪に、鋭い竜の碧眼。
 着崩したスーツは如何にもで、その男が只者ではなく荒事に慣れた印象を決定付けるもの。
(……まずいな)
 シラスは内心で苦笑した。
 イレギュラーズの中でもトップクラスの実力を誇る彼は『負ける気なんて毛頭も無い傲慢』だったが、『チンピラ』と往来で喧嘩なんて、『フィッツバルディ』に相応しくないと計算する。
「お前さあ」
「……?」
「今、不愉快な事考えただろ?」
「――――!?」
 男はノーモーションで真っ直ぐに拳を振り抜いた。
 その一撃はシラスが反応出来ない程に早く鋭く。彼を地面に叩きつけた。
「……マジかよ」
「マジだろ? それとももう一度教えてやらないと分からないか?」
「……っ……」
 頭が痛い。胡乱な記憶が疼いている。
「一発で許しといてやるよ、泣き虫小魚。まぁ『今日の所はな』」
 せせら笑うその声を地面に寝そべって聞く事は――まさにシラスにとって『特別』に違いなかった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 YAMIDEITEIです。
 初ライトシナリオ記念RTA完了。
 タイムはええと、1:36ですね!

 やればなんとかなるもんだ。
 シナリオ、お疲れ様でした!

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