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シナリオ詳細

<ジーフリト計画>猛く燃えよ、我が十字架よ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 帝政派とザーバ派の勢力圏の中間地点に存在する『ゲルトフラウ地帯』には古い路線が伸びている。
 帝政派を率いる鉄宰相ことバイル・バイオンは南部戦線との会談を目指して密かにその路線を走っていた。
 そもそも、鉄帝国分裂以来、帝政派と南部戦線はイレギュラーズからも強く共闘を要望されてきた。
 新皇帝への反意という点において2つの勢力は共通していた。
 現実問題、派閥としての連絡手段を持たず環境故にこれまでは連携が難しかった。
 だが――互いが帝都へ向けて勢力圏を拡大したこと、地下道攻略戦と新皇帝派の2勢力の本拠強襲は結果として『好機』となった。
 新皇帝派の目が防備を固めたサングロウブルクに向いている今だからこそ――今でしかできない好機。
 それがゲルトフラウ地帯を使った南部戦線との接触である。
「また会ったな、英雄たち!
 まさか、このような辺鄙な廃墟で貴殿らと戦えるようになるとは!」
「ブリュンヒルデ……お前、なんでこんなところに」
 紫炎を燃え上がらせて笑うブリュンヒルデに、アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)は思わず口を開く。
 ゲルトフラウ地帯を行く最中に見えてきた古い町の廃墟より飛来した紫の炎。
 見覚えのあるそれに反応したアルヴァが先んじて進み出れば、そこには見覚えのある女とその仲間らしき5人の姿があった。
「あぁ、それは私も思っているところでな。
 どうやら私は『裏切る』と思われているらしい。
 全く、最初から味方になった覚えもないのだから、裏切るも何もない――とも思うが」
「ブリュンヒルデ!! あそぼ!!」
 そういうのはアルヴァと同様にその炎に見覚えのあった熾煇(p3p010425)だ。
「うむ――私もちょうど暇つぶしにも辟易としていた所でな、望むところだ」
「……裏切るってなんのことだ?」
「ふふ。私は戦いが好きなのは知ってるだろう?
 私も地下鉄で冬狼と戦ってみたかったのだが、それはどうやら上層部殿は困るらしい!」
「ブリュンヒルデ、冬狼と戦ってみたかったのかー」
「――伝説の獣と戦うのは面白そうだろう?」
「なるほどなーそれでこんな誰もいないところにいるのかー」
 そう言って笑うブリュンヒルデに熾煇も頷いた。
「そういうことだ……私の部下も鍛えてやらねばならんのでな」
 そう言ってブリュンヒルデが周囲に視線をやる。
「周りの連中はお前の部下か?」
 アルヴァが視線を巡らせてみるに、無理矢理に徴兵された一般人というわけではないように見えた。
「そうだ。どいつもこいつも恩賞目当ての奴や家族を守るために自分を売った連中だ。
 貴殿らもこいつらに経験を積ませてもらえればありがたいんだが?」
 ブリュンヒルデが紫炎を纏って構えを取る。


「ブリュンヒルデ中尉、本日分のノルマを達成しました」
 ブリュンヒルデはその声に顔を上げる。
 魔獣を屠った剣兵が血を拭いながら声をかけてくる。
「そうか……」
「中尉は……いつものように僕達よりも屠った数が多いですね」
「……飽きたな」
「はい?」
「飽きたと言っている」
「しかし、イリダール中佐の命令はこの町を守ること、ですよね?」
「――こんな、何もない廃墟に誰が来るんだ。馬鹿馬鹿しい」
「それは……それも中尉が冬狼を」
「……あぁ、分かってる。全く、つまらん。
 イリダールの肉ダルマめ。私をこんな廃墟に配属させるなど」
 溜め息を吐いて、ブリュンヒルデは空を見上げた。
(……また英雄たちと戦いたいものだな)
 ぼんやりと空を見上げて物思いに更ける。
「何のために、自分で英雄などと名乗る変な集団に属したというのだ――」
 小さな呟きは空に消えていく。

GMコメント

 そんなわけでこんばんは、春野紅葉です。

●オーダー
【1】『紫炎』ブリュンヒルデの撃退
【2】紫炎隊の撃退

●フィールドデータ
 ゲルトフラウ地帯に存在する廃墟。
 元々は駅のあるそこそこ繁栄した町だったのでしょうが、
 路線が使われなくなったことにより衰退していった物と思われます。
 廃屋も多く、遮蔽物になりえます。

●エネミーデータ
・『紫炎』ブリュンヒルデ
 『新時代英雄隊(ジェルヴォプリノシェーニエ)』に属す賞金稼ぎ。

 新時代英雄隊によって『英雄狩り(一般人や子供へ行われる苛烈な訓練や労働)』に遭った後、
 実力で自分を攫った連中を撫で斬りにして地位を継承した武闘派です。
 皆さんがあらゆる手段で倒しに来ることを望み、現在も新時代英雄隊に属しています。
 新時代英雄隊の呼称については『正直ちょっとダサくないか?』と思ってるとか。

 どうやら強者を好む気質が裏切りに通じる可能性を考慮され、この地に追いやられていた様子。
 武器は魔力の籠ったクレイモア風の大剣。

 炎を纏った剣は【火炎】系列や【乱れ】系列のBSを持ちます。
 戦闘スタイルは【堅実】かつ【追撃】を駆使し、
 また【復讐】、【覇道の精神】のパッシヴを持ちます。
 基本は近接戦闘ですが範囲攻撃や中距離以上の攻撃も出来ないわけではなさそうです。
 一番の大技は【背水】属性のようです。
 HP、抵抗、物攻、命中、EXFが高く、回避は主義の都合上あまりしません。

・紫炎隊×5
 ブリュンヒルデの手で『英雄狩り』に遭った元一般人の訓練兵達。
 攫われてきた可哀想な人々というよりは真っ当に苛烈な訓練を潜り抜けてきた勇士達です。
 恐らくは元々は恩賞目当ての人物や家族を守るため等、自ら進んで属した人々でしょう。

 軽装備の甲冑に身を包んでいます。
 長剣と盾を装備した前衛2人、杖を装備した魔導師の後衛が3人。

 前衛タイプは肉薄して【火炎】系列や【出血】系列、
 【スプラッシュ】を駆使した単体攻撃を行います。

 後衛タイプは中~超遠距離で【火炎】系列や【足止め】系列、
 【窒息】系列の範囲攻撃を行います。

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

  • <ジーフリト計画>猛く燃えよ、我が十字架よ完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年02月12日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

サンディ・カルタ(p3p000438)
金庫破り
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
アルヴィ=ド=ラフス(p3p007360)
航空指揮
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
結月 沙耶(p3p009126)
少女融解
リコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236)
花でいっぱいの
ファニー(p3p010255)
熾煇(p3p010425)
紲家のペット枠

リプレイ


「さぁ、お前たち。気合を入れろ……死にたくないのなら!」
 ブリュンヒルデがそう言うと、その後ろにいた紫炎隊らが一斉にそれに答える。
「ブリュンヒルデー、久しぶりだな。元気してたか?
 お前も戦い好きなのか。俺も好きだぞ。
 獲物を全力で狩って仕留めるって気持ち良いからな。今日は全力であそぼーな!」
 人型を取った『紲家のペット枠』熾煇(p3p010425)が戦場へ飛び込み、竜気煉武 を以って生み出した愛刀を振り払う。
「久しいな。まさしくもって貴殿の意見には同意しかない!」
 合わされた剣で受け止められることぐらいは承知の上だ。
「ブリュンヒルデは紫炎隊を鍛えるために戦わせるんだろ?
 でもな、個人が強いのは良いんだが、一朝一夕で強くなんてなれるわけがないから、こうやって連携を取るんだ」
「あぁ、だろうな。私も構わんのだが、彼らとは経験値が違いすぎてね。
 連携どころの話ではないのが困りどころだ」
 焔を思わせる灼熱の斬撃を受け切って、ブリュンヒルデが笑っている。
「いやいや、随分と傍迷惑な話だなオイ。
 できりゃ何事もなく通り過ぎたかったんだが……
 こうなっちまった以上仕方ねぇ、相手してやるから覚悟しろよ?」
「あぁ、そうさせてもらおう」
 愛銃を握る『航空指揮』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)に、ブリュンヒルデの余裕気な笑みが映る。
「当ててみなよ。当てれるならの話だけれど」
 そのまま飛翔、圧倒的な高機動能力を以って紫炎隊の背後まで走り抜け、握りしめた愛銃で思いっきり殴りつけて行く。
「新時代英雄隊……ね。
 恨みも因縁もない相手だが、ま、そんなに戦うのが好きなら受けて立ってやるよ」
「――なに、恨みはどうかは知らんが因縁は今できた。それで充分だろうさ」
 白紙のページを紐解きながら『スケルトンの』ファニー(p3p010255)の漏らした言葉に、ブリュンヒルデからそんな声が返ってくれば。
 指先が1人の紫炎隊の死をなぞる。
 触れた指先が魔弾のように弾いてその身動きを押し込んで見せる。
「ブリュンヒルデさん、前戦ったときはすっごく楽しい思いをさせてくれたから、結構思い入れがあるんだよね。
 感慨深いなぁ。これも何かの縁だよね?
 今のボクは前よりもちょ~っとだけしぶとくなってるから、覚悟してよね?」
「是非とも楽しみにしているとしよう」
 天真爛漫そのものといった笑みを浮かべた『狩ったら喰らう』リコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236)にブリュンヒルデもまた笑う。
「期待させちゃったし、早めに終わらせよう」
 フードを目深にかぶり、すぅ、とその意識を人狼のそれへ。
 軽く踏み込み、爆ぜるように紫炎隊の1人へ肉薄すれば、両手の爪が剣のような鋭さを以って肉を刻む。
「ブリュンヒルデ、また会えたな。
 ……この前はすまなかった。貴殿を少し見誤っていた。
 きっと貴殿にとっては、私達のような強者と戦えることこそ、最重要なのだろうな」
 戦場に辿り着いた『奪うは人心までも』結月 沙耶(p3p009126)が言えば、ブリュンヒルデの闘志燻る笑みが見える。
「……ここでの暮らしはどうだ?随分と『退屈』していたのではないか?」
 返事の代わり、彼女の手にある大剣から紫炎が燃え上がった。
 沙耶がカードをブリュンヒルデの方へと投擲すれば、幾つも地面へと突き立ったカードから小さな人形が姿をみせる。
 無数の戦闘人形たちが一斉にブリュンヒルデ目掛けて攻撃を開始すれば。
「――ほう、面白い芸をする! だが、こんなものか?」
「貴殿が受ければ受けるほどキレが増すタイプなのは前回分かった。
 だが一気にその境地までやって戦いが早く終わっても面白くないだろう?」
 弾丸全てを炎で受け切り、返すように薙ぎ払われれば、人形たちが瞬く間に消し炭に変わる。
 直ぐに別の部隊を呼び起こしながら、沙耶は目の前のブリュンヒルデの意識が自分に注がれていることを感じ取った。
「ブリュンヒルデ。聞イタコトアル。
 ウォーカー 伝説ダッタカ。
 死シタ英雄達ヲ神々ノ戦場ヘト誘ウ戦乙女。
 ン。墓守カラスレバ 御免被ル存在ナレド。
 偶然カ。ハタマタ死シテ尚戦イタイトイウ願掛ケ故名乗ルカ」
 天より降り注ぐ光輪を仲間へと齎しながら『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)が呟いた。
「おや、我が故郷の祖を知っている者がいるとは」
 その疑問に対する返答は驚いたようなブリュンヒルデがすぐに返してくれた。
「大昔、私の故郷にどこぞの世界より訪れたそんな名前の戦乙女がいてね。
 以来、故郷ではその時に最も強い戦士へこの名を与えることになっている。
 まぁ、君の言う通り、願掛けのようなものだ」
 穏やかにそう言って笑いながらも、彼女の闘志は些かの揺らぎも無い。
「ああ、なるほど。そういうタイプか。
 それは確かに、裏切ると思われても致し方あるまい。
 何故なら、こういう風に声を掛けたくなるからな」
 ブリュンヒルデと名乗った女の気質を伝え聞いた『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は口元に静かな笑みを浮かべていた。
「伝説の獣と戦いたいのならば、こちらに付く方が確率は高くなるぞ?
 如何せん、そっちは『伝説の獣を利用する側』だろう?――と」
「あぁ、まさに。どうにもその話に乗ると思われているらしい!
 まあ、私自身、乗っても構わんのだが……どうにもこんなところに撃ち捨てられた鬱憤という物は溜まっていてな。
 暫し付き合ってもらおうか」
 汰磨羈の誘いにブリュンヒルデがからりと笑った。
 合わせ、汰磨羈は視線を紫炎隊に向ける。
「如何なる理由があろうと、自ら『その道』を選んだ者達に対しては手加減などせん。
 生きたくば、全力で抗ってみせろ! 覚悟は良いな?」
「……そう簡単に負けるつもりはないです!」
 そう兵士の1人が声をあげ、それに他の者も応じている。
「――絶照・勦牙無極」
 その答えを聞くのとほぼ同時、ふわりと風に踊るほどに伸びた長髪を流し放つは厄狩闘流秘奥『真義三絶』の二。
 居合抜きにより振り抜かれた斬撃は根源たる無極の光を伴って戦場を馳せる。
 戦場を裂く閃光に紫炎隊が切り開かれる。
(もっと下剋上! 弱肉強食! 殺伐! って感じかと思ってたが、新時代英雄軍ってのも大変だなぁ)
 敵を見据える『ラド・バウA級闘士』サンディ・カルタ(p3p000438)はその身に些かの風を纏いながらそんなことを思っていた。
 実際、そう言った外道な者や愚連隊擬きのような連中の方が多いのも事実だろう。
「まあ、職業軍人さん相手に手加減する予定も特にねーんで、一気に行くぜ!
 今日のサンディ様の風は触れたら火傷するぜ!」
 風は熱を帯び、そんなサンディの声と共に紫炎隊を煽るように吹き付ける。
 火傷どころではすまぬ熱風が激しく吹き付ければ、否応なくその視線がサンディを見る。


 圧倒的機動力を以って初手のアドバンテージを取ったイレギュラーズは、順調に紫炎隊へのダメージを稼いでいた。
「隊長は我々に無謀を無茶に変えてくれる程度には鍛えて貰ったのです。
 あの人を失望させたくはない! そうですよね!」
 紫炎隊の一人がそう言って声をあげた。
 それに合わせるように、他の面々も歓声の声をあげる。
 奮い立った紫炎隊の後衛が一斉に魔弾をぶちまけ、合わせて前衛がとびかかってくる。
「フリック狙ッテクル?
 ソレハソレデ良シ。我 不朽不倒 大樹 如シ」
 放たれた魔弾を全て受け止め、静かに告げるフリークライが呼び覚ます天上のエンテレケイア。
 降り注ぐ陽光が、温かなる風光が慈愛の息吹となって周囲を包み込む。
「やはり硬すぎますね……皆さん、あちらの彼は後回しです!」
 そう紫炎隊の一人が指示を出す。
「ン。それもまたよし」
 その姿をみながらフリークライは頷いて、戦場を見渡した。
 サンディは幾つかの魔弾を吹き付ける風を以って受け流し、あるいはひらりと躱し。
「やればできるじゃねーか。けどそれだけで突き崩せるか?
 俺も壁役じゃフリークライにも後れは取らないぜ!」
 長髪と共に再び熱風を以って戦場を払う。
 軽い調子で言うサンディは紫炎隊の猛攻撃の半分ほどを受け持っている。
「……流石に英雄ということですね!」
 支援隊の1人が声を震わせた。
(こいつが隊長……いや、兵士同士で連携とる時の頭ってとこか)
 傷の増えている紫炎隊の兵を観察しながらサンディは推察している。
(今日の少しばかりでもブリュンヒルデとこいつらのレベルが違いすぎるのは分かるけどさ)
 視線を巡らせてブリュンヒルデがウォーミングアップとでも言わんばかりにぶっ放す魔力砲撃を見れば、そんな感想を抱くのも無理からぬものだ。
(まあ、食い扶持求めたり誰かを守るためとか、それだけの素人が俺や皆の攻撃を受けながら生きてるだけで充分だけどさ)
 数ヶ月前までただの一般人だったとすれば、サンディもそんなことを思わずにはいられない。
「あー……忘れてたけどこいつら殺さねぇほうがいいよな?」
 そう呟いたファニーは手を翳せば、空に凶運の四番星が輝いた。
 空に描かれた不吉極まる星の輝きが戦場へと降り注ぎ、紫炎隊を絡めとっていく。
「簡単に死ぬような連中でもないがね」
 そう言ってからりとブリュンヒルデが笑うのを耳にしながら、ファニーは紫炎隊へと星を撃つ。


「ふむ、誰も死んでないか。礼を言うべきかな?」
 支援隊が倒れた頃、ブリュンヒルデが小さくそう呟いた。
「そういうわけで、お礼参りといこう」
 そう言ってブリュンヒルデが笑うと、大剣を覆う紫炎が激しく燃え上がる。
 それはブリュンヒルデ自身さえも焼くような激しい炎だった。
「――猛く燃えよ、我が十字架よ」
 ブリュンヒルデの握るクレイモアが紫炎に呑み込まれ、燃え盛る十字架のように姿を変える。
 その様子を見ながらリコリスが走る。
 天より降り注ぐ光輪が前衛に立つ仲間達へとその恩寵を齎していく。
「ドーピングなんかじゃないよ! 戦乙女の一声って言って欲しいね!」
「ふ、良いな。私の前で戦乙女の一声、とは。なに、そのぐらい気にしないさ」
 軽い笑みと共に告げたブリュンヒルデの剣が更に出力を増していく。
(……その傷ならば!)
 出力の上昇にそれが大技なのだと沙耶は悟った。
「こちらもいい加減気合入れていくとするか。ここからが本気だ。あの時みたいな、な!」
「それは頼もしい。ぜひとも楽しませてもらおうか」
 にやりと笑い、ブリュンヒルデが大剣を振り上げる。
「ブリュンヒルデはやっぱ強いな。俺のツガイ……じゃなかった。
 仲間にならなくて良いから、一緒に新皇帝とか冬の狼を倒しに行ってみないか?」
 熾煇は大太刀を作り直しながら問いかけた。
 熾煇の身には傷も多い。あまり受けすぎないようにしようとはしていたが、それでも1人で受けて立てばその傷は多くもなろう。
「あいつらに従う義理がお前達にあるのか?」
「全くもってないな。そもそも仲間になったつもりもないが」
「なら猶更、あらくらん?を抜けても問題ないだろ」
「――ふ、たしかに。だがそういう話は後に取っておくとしよう」
「あぁ、そうだな!」
 肉薄したまま、熾煇は大太刀を振り払う。
 空へ打ち上げる様な斜め上への斬撃は竜が天へ上るが如く紅蓮の軌跡を描いた。
「こいよ。お前の全てを受けきって、格の差を見せてやる!」
 アルヴァもまたそれに気づけば、そう啖呵を切ってみせる。
「なに、久しぶりの大技だ。最初は感覚を取り戻すため以上の意味はないさ――」
 そう笑うブリュンヒルデの声がして、戦場を紫炎が走り抜けた。
 戦場を呑みこんだ紫炎はちりちりと残火を散らして十字架を大地へ刻み付けた。
「正々堂々やろう。その方がお前も本望だろう?」
 アルヴァは圧倒的な機動力を以って翻弄し、その手に握る愛銃の銃床へ光輝なる神聖を纏う。
「そう言われては、受けないわけにいかんな!」
 楽しそうな笑みと共に紫炎を纏った剣が振り抜いたアルヴァの銃床に合わされる。
 激しく瞬く神聖なる光と支援が互いを貪るようにせめぎ合い、やがて紫炎を呑みこんだ神聖の輝きがブリュンヒルデへと叩きつけられた。
「これだからお前みたいなタイプは相手にしたくねぇんだ」
 ファニーは独り言ちた。
「さぁ、今度はこっちの番だ。おまえは俺様を止められるか? 止められないなら、おまえが止められちまうぜ?」
 アムリタを煽り魔力を補充しなおしてそう告げる。
「さてね。やって見れば分かるさ――私を止められるかどうか、試してみればいい」
 挑発には挑発が返る。
「あぁ、証明してやるよ! さぁ、俺様の真”骨”頂から逃れてみせろよ! 骨だけに!」
 ファニーが放つ白き彗星がブリュンヒルデ目掛けて打ち出される。
「はは、面白い! 受けて立とうじゃないか!」
 瞬く光がブリュンヒルデへと叩きつけられていく。
「それじゃ、ボクもちょ~っとしようかな!」
 リコリスは爆ぜるようにブリュンヒルデへと肉薄する。
「なんてったってボクだって狼だからね!
 ブリュンヒルデさんと同じで闘争本能は抑えられないんだ!」
 一気に飛び掛かり、食らいついて叩きつけるは神滅のレイ=レメナー。
 人狼の牙が突き立てば。
「はは、それぐらいでちょうどいいという物だ!」
 鮮血が寂れた路面に散ることも気にせず、ブリュンヒルデが笑う。
「楽しいね!」
「あぁ、心が躍る!」
 リコリスに合わせて、ブリュンヒルデもまた笑った。
「こういう戦いが好きだったよな貴殿、こういう生死の境を感じさせる戦いが!」
 止まらぬ追撃、沙耶が無数に生み出した戦闘人形たちが一斉にブリュンヒルデへと弾丸をばら撒き、その1つが芯を捉える。
 続けて肉薄していった戦闘人形たちが抜刀し、三連撃を叩き込んでいく。
「ン。フリック 永久機関搭載」
 合流を果たすフリークライは温かなる光を戦場に齎しながらそう言えば。
「ソレサエモ ブリュンヒルデ達カラスレバ ズット回復シテモラエテズット戦エル
 羨マシイ 有用 トイウ評価ニナルノカナ?」
「――ふ、こちらが言おうとしたことを先に言われては私も分かりやすい女だ!」
 からりと笑うブリュンヒルデはフリークライの判断が正しかったことを教えてくれる。
「ああ、実に惜しいな。御主とは、ラド・バウで全力勝負をしてみたかった……!」
 汰磨羈はブリュンヒルデの背後を取り、その身を焼いた傷を思い呟いた。
 限界まで断熱圧縮した空気を纏う刀身を思いっきり振り下ろす。
「そう褒められると流石に照れてくるな!」
 反応したブリュンヒルデの剣が叩きつけるように撃ち込んだ斬撃と競り合い、牡丹の如き朱き焔が紫炎と絡み合いながら立ち上る。
 そのまま走る斬撃は三日月の如き弧を描く。
 あらゆる守りを斬り崩して御霊を屠る瞬撃の太刀が影すら残さず駆けた。
 連撃となった斬撃が強かにブリュンヒルデに傷を刻んだ。


 ちりちりと廃墟を紫炎の残り火が燃えている。
「どの道、新皇帝派に留まるつもりは無いんだろ」
 アルヴァは腰を下ろしたブリュンヒルデを見下ろしていた。
「ばれていたか。強者と戦えるからあちらにいただけ。
 それさえ禁じられたのなら、留まる理由もないな」
 ブリュンヒルデは満足そうに笑ってそう答えた。
「……1人、たたっ斬ってやりたい男もいることだ」
「なんのことだ?」
 アルヴァの問いにブリュンヒルデは小さく笑う。
「あぁ、私は英雄狩りを試みてきた連中を撫で斬りにして今の立場なんだが。
 私に少尉だかなんだかの地位を与えてきたイリダールという男がいる。
 こいつはあれだ……何というんだったか? デボラと同じ……あれだ」
「……魔種か」
 少しばかり考えたアルヴァが言えばブリュンヒルデが頷く。
「何とも不快な声を延々と聞かされていたし、こんなところに私達を左遷した奴だ。
 叩き斬ってやらねば気が済まん」
 そう言って、ブリュンヒルデが立ち上がる。
「それなら俺も一緒に行ってみたいな。
 そうすれば紫炎隊を鍛えることもできるし、
 俺もお前と一緒にいたらもっと強くなれそうだ。……駄目か?」
 そう問いかける熾煇にブリュンヒルデが目を瞠り、少しばかり考える。
「貴殿がそれがいいのであれば、それで構わないさ。
 では――少しばかりの間になるのかもしれんが、貴殿らと同行するとしよう。いいな? お前たち」
「隊長に着いていきます!」
 そう言って敬礼する紫炎隊の面々にブリュンヒルデが微笑を浮かべていた。

成否

成功

MVP

熾煇(p3p010425)
紲家のペット枠

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでした、イレギュラーズ。
ブリュンヒルデ及び紫炎隊が新時代英雄隊より離反し、帝政派へ合流しました。

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