シナリオ詳細
<Scheinen Nacht2022>ランプとキミの手~豊穣~
オープニング
●なんだってこんな寒い日に寒いところへ
「こんばんは、深夜のワカサギ釣りへ興味ありませんか?」
【孤児院最年長】ベネラー (p3n000140)のとつぜんの声かけにあなたはちょっとびっくりした。
【無口な雄弁】リリコ (p3n000096)の大きなリボンが不本意そうにさやさや揺れた。額へ軽く手を押し当てて彼女はベネラーへ助言する。
「……いきなり結論から言うのはベネラーの悪い癖」
「えーと、なんて言えばいいのかな」
「……経緯、経緯を順番に言うの」
「経緯かー」
ベネラーは血のように赤い瞳をきょろりと動かして、またあなたを向いた。
「豊穣にはこの時期、分厚い氷に覆われる湖があります」
あなたはとりあえず聞く態勢に入った。なるほど? で?
「その湖では、氷へ穴を開けて『ワカサギ』という10センチ前後の魚を狙う釣りが行われています」
ふんふん。で? わっといずワカサギ?
「ワカサギというのは10センチ前後の魚です」
それさっきも聞いた。
リリコは感情のない瞳へベネラーをうつし、彼の手から資料をとりあげた。
「……ワカサギというのは、今が旬で今しか採れない貴重な魚。豊穣の貴族たちが喜んで買い集めるくらい美味しい」
ふむ、豊穣のその湖でないと採れない珍味ということだな。あなたはようやく合点がいった。
「……湖は一般開放されているから、この機会にのんびりワカサギ釣りを楽しんでみてはいかがかしら」
なるほど、そういう依頼か。
「……氷へはすでに穴が開いているし、釣り道具一式は貸し出される。防寒と暗闇対策にランプもおまけでついてくる。ワカサギを釣るもよし、ワカサギ料理に舌鼓をうつもよし。お好みでどうぞ」
了解った。もふもふの防寒着を着て明るいランプをぶら下げて、そのワカサギとかいうものを釣るか、食べて楽しむかすればいいわけだな。あなたが得心していると、ベネラーが思い出したように言った。
「あ、そうそう。シャイネンナハトの夜しか現れない湖のヌシがいるそうです。それを狙ってみるのもいいかもしれません」
それを先に言え。あなたはちょっとだけそう思った。
●輝かんばかりのこの夜に
今夜はすべてが止まる夜。
嘆きも怒りも悲しみも争いも諍いも。すべて止まって静寂がやってくる特別な日。
さあランプへ火を灯そう。
分厚い氷の上へ、おもいきって飛び出してみよう。
小さな命の手応えを感じよう。
冷えきった体へは、揚げたての天ぷらなんかもいいかも。
かじかんだ手をランプの上へかざすとき、どれだけのぬくもりを得られるかな。
それよりも君の手を、握ってみたいな。
しずかなしずかな湖の上で、まるでこの世界に僕しかいないようなこの夜に。
- <Scheinen Nacht2022>ランプとキミの手~豊穣~完了
- GM名赤白みどり
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2023年01月06日 22時35分
- 参加人数19/31人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 19 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(19人)
サポートNPC一覧(2人)
リプレイ
●岸
賑やかなるかな提灯通り。ごったがえす道。
「すすっすっごく寒い! けど人いっぱいね!」
「せやねえ。はぁぁ……ほら、吐く息も真っ白」
キルシェと蜻蛉は通りを泳ぐ。
「こんなに着込んでるのに寒いなんて、いけずな天気やこと」
「うん、でもね。蜻蛉ママと美味しい天ぷらいっぱい食べるの、楽しみなのよ!」
睫毛の先まで凍りそうなこの夜に、キルシェは明るい笑顔。見ているだけであたたまるそれに、まるで太陽の娘と蜻蛉は思う。
思い返すのは今までのふたりの歩み。たくさん作った思い出のほとんどが、おいしいものといっしょ。きっと今宵もそうなる。予感を抱いた蜻蛉はふっくりと微笑んだ。
「そやね、お腹を美味しいものでいっぱいにしましょ」
「最初はどこにしようかな、てんのかみさまのいうとおり」
キルシェがほがらかに歌う。娘が天の神様の店へ立ち寄ったなら、蜻蛉はこれはと思った店へ行く。しばしの別れ、そして再会。揚げたてのお魚さんをキルシェはさっそくぱくり。
「! 熱々なのよ!」
「大丈夫? 火傷してへん?」
「さくさくあっさり。蜻蛉ママ、ここの当たりだわ!」
そのままキルシェは蜻蛉のお口へ天ぷらを。
「……って、キルシェちゃ……もごっ!」
「あら、食べ途中だったのね。ごめんなさい」
口を抑えて首を振るも、蜻蛉はちょっぴり涙目。そこへ流れ来るお醤油の香り。
「なんやろか」
「美味しそうなのよ、行ってみるの」
ふたりが立ち寄った先には、おおここが天国か。店主は太鼓腹を揺らして呵々と笑う。
「ぶはははッ! 天ぷらは定番だが、そればっかじゃ飽きるよな! 俺はちょいと変化球で攻めていくぜ!」
もちもち肌の立派なオークは、さあ準備は整ったとばかりに合わせ出汁をおたまでかきまわす。ささがきゴボウが水面で踊る。
水気を切ったワカサギを煮込み、溶き卵を回しかけたらネギをぱらり……ワカサギの柳川風。ぷんといい香り。ぐうと鳴るお腹。集まる耳目に、副店長まで上機嫌。
「こりゃ、新しい名物になりそうだな」
羽釜を見るはゼンシン。ふわりと丼へ今年の新米をよそったなら、ゴリョウがそれを受け取り柳川丼のできあがり。今度は出汁たっぷりで吸い物へ、次、汁を控えて煮物、変幻自在の柳川風。
「出汁のみの提供もしてるぜ。そのまま飲んで良し、天つゆにして良し」
「ぶははッ! さあどなたもこなたも食いねえ食いねえ、どんどん盗んでいきねえ、もっともっと楽しもうぜ!」
●湖
「鬼灯くん! ワカサギ! ワカサギ釣りですって!」
「そうだな章殿。章殿はワカサギ釣りは初めてだな?」
リリコとベネラーの頭を撫で、鬼灯は腕の中の愛しい妻の、興奮でほてった頬を見つめ、連れてきてよかったなどと内心ほくそ笑む。
力仕事は夫の担当。氷へ穴が空いていくのが、章姫には楽しいらしい。じーっと熱視線。それを受けながら鬼灯は湖面まで到達する。
椅子へ腰掛け準備万端。主役は章姫。自分は支えるだけ。
「あ!」
章姫が飛ぶように引っ張られる。竿ごと氷の奥へ。あわてて抱きかかえ、竿を握れば重い引き。
「ヌシか!?」
いきなりのヒットである。仕掛けごと食いちぎり、ヌシは去った。
「びっくりしたのだわ、でもちょっと楽しかったの」
それなら何よりだと鬼灯は微笑んだ。
冷たい冷たい氷へバクルドは穴を開けていく。
ランプの明かりと温かい飲み物。これだけ揃えば充分だ。ワカサギ釣りと洒落込もう。
「そういやヌシがいるみてぇだな」
ひとりごちながら釣り糸を垂らしワカサギを狙って竿を踊らせる。やがて。
「……っと、こりゃ幸先がいい。一度に二匹だ。こりゃいい肴になるぞ」
思わずにんまり。狙うは十匹超え。どうせならたくさん釣りたいものだから、穴の中へ仕掛けをどぼん。ややあって、びいんと緊張する糸。
「おん? 妙に引きが強いな」
怪訝な顔でリールを操り慎重に巻き上げる。ランプが照らしたのはぞろりぴちぱた踊るワカサギの群れ。こいつは重畳。たらふく食える。
「輝かんばかりのこの釣果にってやつだな!」
普段から寒冷地にいるから、ワカサギ釣りなんか珍しくもないリーディアだ。
「リコリスさん、リコリスさーん?」
「あお~ん! 雪だー!」
遠吠えをお耳がキャッチ。急いでいってみると。
「えっ、空中に顔浮いてる……」
恐る恐る近づけば、雪溜まりに飛び込んで顔だけ出しているリコリスががが。
「やっぱり雪を見るとテンション上がってきちゃうよね! ボクは犬じゃなくて狼だけど!」
「風邪引くから速くこっちに来なさい」
リーディアは釣り道具を取り出した。
「今日のメインターゲットは、氷の下にいるワカサギだ」
「ラジャー! そいや!」
「待て、待ちなさい、お手、伏せ、はいよくできました。氷は割らなくていいし寒中水泳もしなくていい。釣りだ、釣りをするんだ」
リーディアはこんこんとワカサギの生態と釣りの意義を説明する。
「釣りも狩りのうちなの? なら強くてカッコいい狼としては完璧にできるようにならなくちゃね! ボクいい子にしてがんばるよ!」
「うんうん、できることは増やしておいた方がいい。それに釣りは忍耐力の訓練にもうってつけだからね。私たちは狙撃手だし、一箇所に身を潜める時の訓練だと思ってやってみよう」
「わかった!」
リコリスは糸を垂らし、リーディアの指導どおり小刻みに竿を振動させ餌を踊らせる。北風ぴゅうぴゅう。
( ‘?’ )ってなったり、( ‘ᾥ’ )ってなったり、( ‘?’ )へ戻ったり、また( ‘ᾥ’ )に変わったりして……リーディアのコートへ潜り込むリコリス。
「さむい」
「リコリスさんには早かったかな? よしよし」
「ベネラー殿!」
「あっ、はい!」
「サンタさんに貰った銃の調子はどうだ? 困ったことがあったらいつでも言ってくれ。俺はサンタさんの鬼ダチだからいつでも手を貸すぞ!」
「あ、はい」
ていうか弾正さんですよね? 頑固だな君は。
「サンタ……なるほど?」
弾正だな、まちがいない。と、後方彼氏面してるアーマデル。
「俺達の領地である常山は、カジキマグロがよく採れる」
「カジキマグロ過ぎますよね、弾正さんの領地」
いちめんのかじきまぐろ。
いちめんのかじきまぐろ。
やめるはひるのだんじょう。
いちめんのかじきまぐろ。
「ええい、名作をこんなところでパロるな、字数を食う!」
「メッタなことを言うもんじゃない弾正。弾正とこのせいで隣接する俺の領地にもゲーミングカジキマグロが不定期POPするようになったんだぞ」
「すまないな、だがアーマデルもダンボールハウスはなんとかしてやってくれ」
とかなんとかしてるうちにワカサギ、ゲットだぜ。
「よかった。光らないな。常山への土産にして新しい名産にするか。なにせ一族の者からマグロは飽きたという声が上がってきてなぁ……」
ていうか光るのが前提なの? 大丈夫? 感覚麻痺してない?
釣りたてのワカサギは天ぷらにするのがデフォルトだと聞いたアーマデルは、あえてちょっとはずしてみることにした。
「素揚げにするべきだ。唐揚げ粉をまぶすのもやぶさかではない。スパイスを使うか? ちょうどここにある」
「いや、光りそうだ。遠慮しておこう」
サヨナキドリでなんやかんやしているマネージャーは、氷上でもなんやかんやしている。鉄瓶をかんかんに沸かしてお茶の準備。
「ハァイ! 俺と一緒に冬のロマンス感じてみない?」
「……僕、この釣りのこと詳しくないけれど、声出すと逃げちゃわない? 良いの?」
「京ちゃんの視線が冷たい? もしかして嫉妬か?」
「いやそういうわけじゃ」
「心配しなくても、俺のベスティは京ちゃんさ!」
「ああ、うん、もう好きにしなよ」
京司は冥夜へぬるい視線を送った。
「このホストクラブ『シャーマナイト』店長にかかれば魚だって魅了してみせるぜッ! 最近は店にヤバいくらい熱狂的なファンの子も来るけど、夢を見せる場所に現実を持ち込んでしまったら、かけられる魔法もかからなくなるからな、精進あるのみ!」
「声おおきいよ」
「兄上打倒を果たした次は叔父上打倒だ!」
「なんなの君んち。血族同士で戦わないと気がすまない戦闘民族? また大怪我すんなよ」
そうしている間もワカサギの釣果はうなぎのぼり。さすが冥夜、情報通だけある。冥夜はホクホクしながら大量のワカサギを天ぷらにし、京司とともに食した。うまい、テーレッテレー。
片付けを終えると京司は冥夜へ視線を向けた。
「ホテルに帰ろっか」
「え? 宿を取っていたのか?」
「うん、遅くなると思ってったから。あ、ちゃんとベッドは別々だぞ?」
冥夜が黙ってしまった。よく見ると頬が赤い。
「なあに、友達同士でホテル泊まるの初めて?」
「……ああ」
「へーえ? じゃあ『初めて』奪っちゃったな」
うふふ。黒猫のように京司は笑う。
「さっむ……!」
イーリンは思わず声に出してしまった。
だってレイリーが「ワカサギ釣り行くわよ、付き合って!」なんて言うもんだから、ついてきちゃったじゃない。まさかこんなに寒いなんて。
レイリーのほうはウキウキしながら天ぷらと熱燗の準備をしている。湯気を立てる酒をくいっとやりつつ、釣り糸を穴へ垂らし、寒風を身に浴びて、ふたり体を寄せ合う。
「どう? こういうのも楽しいでしょ」
「あんたの腕、キンキンに冷えてるんだけど?」
レイリーの肩へ頭をあずけたイーリンは、苦笑しながら熱燗をすする。
「そういえばさ、二匹以上同時に釣れたら、その周りを行進してもいいんだって。笑っちゃうよね」
「はあ? ……っていうか、そんなことで行進ってどういう文化なの?」
行進、行進曲、マーチ。イーリンはぼんやりとレイリーをながめながら思考を遊ばせる。
歌ってみようか。マーチ。元の世界での……。あれ? 何も思い出せない。
「あ、かかった!」
レイリーがぱっと顔を輝かせた。
「いいわいいわ、キテるキテる、今夜は天ぷらパーティーよ!」
着実に釣果を上げたレイリーが、ちょっと代わってとイーリンへ竿を渡す。イーリンは相変わらずほけらっとしている。
……なんでだっけ。なんで思い出せないんだっけ。
「イーリン! 手元手元!」
「えっ、あ、ああっ!?」
レイリーの鋭い声にあわてて釣り竿を引っ張り上げる。冴え冴えとした月光の中、二匹のワカサギが舞った。
「釣れた、ほんとに釣れた!」
跳ねるように立ち上がり、行進を始めるイーリン。楽しい夜を友と過ごせる、こんなに嬉しい事はない。
「ワカサギ釣り……これもまた一種の狩りだな。俺もノルダイン、狩りで遅れを取るつもりはない!」
ラグナルはやる気まんまん。まわりでベルカもストレルカもそうだそうだと言っている。他の狼は知らん顔。
「来てくれてありがとうね、夜の魚釣りなんて初めてだわ、ワクワクしちゃう♪ ベルカたちもいるんだもの、今夜はきっと大漁ね」
「そうだな、ジル! 狼ども、よし! 籠、よし!」
「釣り道具、よし! ランプ、よし!」
ラグナルとジルーシャの楽しげな点呼が夜空へ昇っていく。凍てつく空気は、しかしラグナルにとっては慣れたものだ。当然、その掛け替えのない友人であるジルーシャだってそう。つまり、へっちゃら。やるぜやるぜ俺はやるぜ! アタシだってがんばっちゃうもんね!
「ワカサギを釣る時は、こうやって竿を動かして餌が生きているように見せるといいんですって」
「おっ、なるほどな。そうやって釣り上げるわけだ」
「後で何匹か天ぷらにして食べましょうか」
「天ぷら、いいねぇ! きっとみんな喜んでくれるだろうさ。飯がたくさん手に入ったら、これで今年の冬も越せそうだな」
ところで、とラグナルはジルーシャへそれを差し出す。
「あらぁ、ホット・フォンダン・ショコラじゃない」
「ああ、ジルのおかげで熱々だ。体が冷えてきたらこれをはんぶんこしよう」
「ふふっ。じゃあご相伴に預かっちゃおうかな」
ジルーシャはにこにこ顔。そのとき、がくんと竿がすっぽぬけかける。
「なんだ、この引きは!」
「えっ、待って待ってこれヌシじゃない!?」
オーエス! オーエス! 狼たちまで加わって、必死に引き上げるも、ああ無情、ぶつん。
「ま、たくさん釣れたし、アイデの皆へのお土産にしましょ?」
「ふふふ、ついにこの日がやって来ましたわね……マリィに私のワカサギ釣りの腕を披露する時が!」
バーンと効果音付きで氷上に立つのはヴァレーリヤ。マリアもいっしょに準備をしながら「わあー↑」って応援する。ヴァレーリヤは自信満々に仕掛けを施し、氷の穴へ投じた。そのまま竿を上下に振る。穴釣りの基本だ。
「まあ見ていて下さいまし? 次から次に釣り上げて……」
しーん。
「次から次に釣り上げて……」
しーん。
「釣り上げて……」
しーん。
「おかしいですわね、いつもはもっと……」
「場所を変えるかい?」
「違うんですのよマリィ、本当に得意ですの! 何故か調子が悪いだけで!」
「わかった! 見守ってるからね! 頑張れヴァリューシャー!」
そう言うマリアのほうが次から次に釣っている。解せぬ。ヴァレーリヤは周りを見回し、その釣果を確認し、ここが当たりスポットだと確信しつつも、ちっとも動かない竿の先を悲しげに眺める。
「大丈夫だよヴァリューシャ! こういうのって時の運もあるからね! 気にしないで! 君が頑張ってくれたその気持ちがとっても嬉しいよ!」
「いや、気にしますわ、やっぱり」
「あ、じゃあさじゃあさ! ヴァリューシャはワカサギを料理してくれない? 帰ったら一緒に食べよ!」
「……ええ、そういたしますわ。ごめんなさいね。本当は私が沢山釣ってご馳走してあげたかったのだけれど」
しょんもりしているヴァレーリヤの肩を、マリアがガッってつかむ。
「うれしいことは分け合おう! 悲しいことも分け合おう! 私達は恋人だからね!」
頬に灯った熱は、きっとランプよりも温かい。
甘い時間をふたりで過ごそう。冷え切った氷の上でも平気だ。慈雨がそばにいるから。
執着は砂糖菓子の鳥籠さァ。欠乏はクリームで埋め立てて、渇望へはアラザンを散らせばいい。おまえのための時間だよ。
まあ慈雨がいるなら悪くねえよ。ふたりきりの時だけのとっておきのオマエの呼び名。慈雨。そう呼ばせてくれよ。いつまでも。
とうとうと注ぐともさ、慈愛を。とろとろと溶かすともさ、執着を。その手をとっていいかい。寒くないか心配なのだもの。
『愛したい』と願ったのは俺様のほうだ。後悔はないんだ。本当なんだ。だからこの冷えた手をあたためてくれ。こんなんじゃあ竿も握れやしない。
そっと、触れ合う。骨の髄まで冷えていく湖上。繋いだ手のたしかなぬくもり。
ああ、慈雨がそんなだからよ、俺様はイチコロ。笑っちゃうくらいチョロい。
夜気を吸って冷えた星型のポルボロン。口元へ捧ぐ。
口に含めたまま3回願い事を唱えろよ。聞かせてくれ、慈雨の望み。
もう叶っているさァ。今この瞬間はね。だけど我(アタシ)は強欲なんだ。できれば明日も、明後日も、そのあともそのあともそのあとも、この願い、叶えてくれるかい、ねぇおまえ。
熱いココア。溶け落ちそうだ。だけどすする、罪の味。
「リーリコ。我(アタシ)のかわいいお気に入り」
武器商人がリリコを呼び、何事か囁く。少女はゆるく笑む。
「……私ね、クウハさんと仲良くしたいと思ってる。私の銀の月に言われたからじゃない。本当よ?」
「そうかよ」
「……でも私達あまりにもお互いのことを知らなさ過ぎると思うの。だからたくさん遊ぼう?」
返事をするのも面倒で、クウハは雑にうなずいた。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
おつかれさまでしたー!
なんで輝かんばかりのこの夜にワカサギ釣りシナリオ? 知らん、私にもわからない。
お付き合いいただきまして、心より感謝いたします。称号バンバン出しときましたんで、お気軽にどうぞ。
MVPは輝かんばかりの釣果を得たあなたへ。
それではまたのご利用をお待ちしています。
GMコメント
みどりです。さむーい! 寒波には寒波をぶつけるんだよ! いや、それはちょっと……。
って思考が混濁するくらい寒いですね。
さて、あなたはワカサギ釣りを楽しめる湖へでかけてくる依頼を受けました。
湖はとにかく広くて暗くて寒いです。ランプをゆめお忘れなきよう。じゃないと、夜が明ける頃には凍死しちゃいますよ。
●いつもの
書式
一行目:同行タグもしくは空白
二行目:行先タグ
三行目:プレ本文
●行先
【湖】
ワカサギを釣ります。いわゆる穴釣りです。釣れるかどうかは時の運。もしかするとヌシがヒットするかもね。
この寒いのにワカサギ目当ての旅行客がたくさん集まっています。
暖を取るための防寒着やランプが貸し出されます。
【岸】
ワカサギ料理をふるまう屋台がずらっと並んでいます。天ぷら屋ばっかりですので、常連の旅行客からは若干飽きられているようです。
それでも暖かくさくっとした歯ごたえの旬のワカサギはすばらしい味です。のんびり歩いて回りましょう。
またはあなたの料理の腕で、差別化とはいかなるものか教えてやりましょう。
●EX
開放しています。ご自由にお使いください。
●NPC かかわってもかかわらなくてもいいです。
【孤児院最年長】ベネラー (p3n000140) 魔種に呪われてる男の子。理性をなくし吸血衝動のままに呪いを振りまいたことがある。イレギュラーズに助けられ、深い感謝の念を抱いている。絶賛何か企み中。
【無口な雄弁】リリコ (p3n000096) 巻き添えで魔種に狙われている女の子。ベネラーとは同じ孤児院の兄妹分。過去に両親を目の前で殺されたショックから無口無表情。それでもイレギュラーズのおかげで最近はすこし表情を見せるようになった。美味しい紅茶を練習中。
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