PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<アルマスク攻勢>計略的偶発遭遇

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ――鉄帝国中部に位置する山間の都市アルマスク。
 かつて帝国東部地域と南部地域とを繋ぐ街道で栄えた小都市である。
 大鉄道網の完成により役割は小さくなったが、ルベンと帝都とを繋ぐ宿場町として栄えていた。
 新皇帝派の跋扈により蹂躙されたこの都市の開放は、鉄帝という国にとっての責務を果たすという表向きの責任以上に、戦略的意味を強くする。
 即ち、ルベン-ノイスハウゼンルートである『アルマノイス旧街道』の復活による南東部の物流の回復。
 勇気ある鉄帝国民がこの意味を知らぬ道理はなく、幾度として挑んできた。が、フロースヴィトニルの到来と圧倒的な戦力差は如何ともし難く、勇気ある者の屍は雪の中へと埋もれていった。
 彼らを覆う雪すらも食む劣悪な環境。イレギュラーズがこの状況を打開するとなれば、独立島アーカーシュからポータルによって出撃してのワイバーン強襲、或いは軍用スノーモービルによる高速移動で指揮系統を蹂躙する、謂わば『斬首作戦』を軸とした奪還作戦が主となろう。
 アーカーシュにおける優位は大きい。今こそ、反攻の端緒としての戦いが始まる。


「かなり入念に調べてあるのね。ヴィトルト、あなたは今回の作戦には同行しないのかしら?」
「私は非戦闘要員ですよ。前に出ればすぐに倒されて終わりです。それに、本領発揮は『嫌がらせ』ですので」
 スノーモービルの調子を確認し、アルマスクの地図を確認し合う仲間を見て、ココロはヴィトルト・コメダに問いかけた。非主流派軍人であり文官、戦闘より立案に重きを置く彼は『力こそ正義』の鉄帝国の現状にはいかにも馴染まない。今般の作戦を鑑みても、前に出るよりは戦力分配とコントロールに回った方が戦果をあげられるはずだ。
 なにより、相手の望まぬことを率先して行う気質上、彼は戦場に出ぬまま相手を翻弄することにとても向いている。
 ――仮想世界『ネクスト』に現れた彼は異常性が際立っていたが、現状は頼れる隣人の向きが強い。少なくとも今は作戦を信じ、彼の指定したルートでラジオ塔を目指す。それが最適解と理解した。
「それじゃあ、また。次は作戦成功後になるかしら」
「そうですね、そうなればとても良いと思います」
 斯くして、ココロを始めとする強襲部隊はアルマスク北部の住宅街に降り立ち、ラジオ塔へと急ぐ。路地を抜け、ラジオ塔が直接見える大通りに差し掛かったあたりで、彼らの行く手を一条の光が遮った。
「これは、網? 電磁の」
「フェーズ1クリア! フェーズ2、電磁檻用意!」
 突然の足止め、そして狙ったかのような罠の発動にココロが驚く暇もなく、イレギュラーズは大通り手前の路地に隔離されることとなった。
 おおよそ前後40m、幅は20mあるやなしや。高さは10mほどの電流の檻。飛んで逃げる、というのは無理そうだ。
 それが展開するより早く、巨大な影が空から降ってくる。おそらくは天衝種、そして新皇帝派兵士だ。
「グオオオァァァァ!!」
「あまり吠えるな、エーリカ。興奮しているのは俺達だって同じなんだ」
 腹部に巨大な口腔を備えた牛頭の巨人を宥めつつ、鞭を手にした軍人とその配下達はイレギュラーズを包囲する。天衝種が強敵であることは疑う余地はないが、新皇帝派の兵士達は『そこそこ』のレベルといえるだろう。隊長を除いては。
「残念だったな、イレギュラーズ。貴様等に奇襲の手立てが多いのはわかっていた。だから、特に目立つところで待機させてもらった。我々なりに、いろいろと準備していたのだよ」
 何故、やいつの間に、という言葉を返すにしても、状況があまりに揃いすぎていた。ココロはまさか、とちらついた思考を振り払うことができない。
 罠。その言葉以上の結論は、今の彼等に出し得ない……まず現状打破、そのうえで、下手人を問い詰めねばなるまい。

GMコメント

 わーこうみょうなわなだなーだれがやったんだろう(ぼうよみ)

●成功条件
・敵勢力の掃討および電磁檻ユニットの破壊
(檻外の戦力には達成後まで干渉できないため条件外とする)

●天衝種『ラウデリオス』・エーリカ
 ミノタウロスじみた二足歩行の牛頭の巨人。腹部に巨大な口を有する。
 様々な咆哮による味方バフ、ないし中射程の範囲攻撃(精神系BS、不吉系列)をふりまきつつ、【飛】を伴うバトルアックスでの強撃を繰り出してきます。
 サイズは大きいですが、単独でのブロックは可能です。

●新皇帝派指揮官・ヴリト
 ラウデリオスを飼いならす、鞭を主武装とする男。基本レンジ1の鞭で戦います。鞭は【致命】付与がデフォでつきます。
 鞭による催眠(恍惚付与)、近列の横薙ぎの鞭攻撃、鞭を操っての遠貫(出血系列)の刺突など、多数を相手にしつつ厭らしい攻撃をしてきます。

●新皇帝派一般兵×10
 全員が高反発ゴム弾を装填したランチャーと接近戦武装で身を固めています。ランチャーの攻撃は【飛】を伴う遠距離攻撃のため、集中砲火で電磁網に追いつめられる可能性もあります。
 接近戦での実力はイレギュラーズの下位(~20程度)ならサシでいい勝負ができるレベル(目安)。

●戦場(電磁檻トラップ)
 OPの通り、前後40m、幅10mの路地(この幅だと2車線道路相当か?)、高さ10mの電流による檻です。
 これに触れた(レンジ0隣接1ターン以上)場合、固定ダメージが入る上、【痺れ系列】や【麻痺系列】BS付与を【災厄】込みで判定となります。 
 人数と戦力とを考えればあまり広いとはいえないため、十分な警戒を要します。戦闘終了後、頭上又は四方のコアユニットを破壊すれば消失します。
(戦闘中に迂闊に狙うのはお世辞にも賢い選択ではないでしょう)

  • <アルマスク攻勢>計略的偶発遭遇完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年01月10日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
華蓮の大好きな人
ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
無限円舞
シラス(p3p004421)
超える者
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
ルクト・ナード(p3p007354)
蒼空の眼
ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)
開幕を告げる星

リプレイ


「これはどこをどうみても罠のようですね……」
「この程度で罠だなんて、随分甘く見られたもんだ」
 上空、そして周囲に張り巡らされた電磁の檻を見回し、『魔女断罪』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)はあからさまに自分達を狙っていたと思われる仕掛けにうんざりとしたように首を振った。彼女に情報を寄越したヴィトルトは戦術の専門家ではないため、漏れや想定外は致し方ないかもしれない。が、彼に責任を押し付けて体よく食事をふんだくれないかとも考える辺り、強かさが見て取れる。とはいえ、『紅矢の守護者』天之空・ミーナ(p3p005003)含め実力派のイレギュラーズが揃っている状況下。したり顔で閉鎖空間を作ったヴリトの浅はかさを感じなくもない。それだけの自信があるということだろうが。
「強者こそを至高として弱者を許さない考え方の集団が、こんなにも回りくどくてあからさまな『弱者のための』手段、使っちゃうのでして?」
「いそいそと用意した罠が決まってご満悦かよ、新皇帝派らしくないな。どうした、寒くて風邪でも引いちまったのか?」
 罠に嵌め、行動選択肢を制限し、自分達に有利な状況を作る。『開幕を告げる星』ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)や『竜剣』シラス(p3p004421)はその行為を何の違和感もなく行うヴリトたちの性根に、弱者としてのそれを感じ取っていた。新皇帝派を名乗る割には狡いことをする。彼等なり、とは弱者なりの、ということだったのか? その問いに憎々しげに顔を歪めたあと、ヴリトはゆっくりと息を吐きながら応じた。
「――そうだ。新皇帝のご下命により、我等は強者の側にあらねばならず、立たねばならん。だがそれは有り様ではなく、結果によってのみ成立する。回りくどくてもあからさまでも、貴様等を打倒した瞬間に我等が強者となる」
「罠を準備してきたようだけれど……ごめんなさいね、その程度では私達には準備不足なのだわよ」
 ヴリトの言葉に、『蒼剣の秘書』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)は周囲を見回し、罠の出来を確認する。不意打ちにしては上等な方かもしれないが、逃さぬ為のものとして如何程の効力があるものか。これで倒せると思っているのか、と。
「……いい度胸だ。私から空を奪うか」
「檻は嫌いだが、敵さんがわざわざ入ってきてくれるならこれ以上のことはない。殺る気が上がるばかりだ!」
 『蒼空の眼』ルクト・ナード(p3p007354)と『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)に対し、罠であることや誰が仕掛けたのか、は問題ではない。両者の逆鱗を撫で回すような行いがよろしくない、と。ただそれだけの行為なのだ。何しろ彼等は内側で迎え撃つのだという。逃げ場を捨てるなど馬鹿なことを、とウェールは思ったことだろう。だが、それは相手も同じように考えている可能性が高い。よくも罠の中で平然と戦う気になった、と。
「まさか……」
 そこで、ココロは何事かに気付いたようにはっとして周囲を見回した。それを動揺と見做したのか、ヴリトは自信満面に応じる。
「そう、この状況は」
「あれ、なんだっけ。バカなわたしには何の裏があるのかわかりかねますね! 取り敢えず助けて、華蓮ちゃん!」
 わからんのかい。
 何かが明らかになりそうでならないその言葉に、場に居た者達は思わず転びかけた。が、素早く華蓮に助力を求めたココロの判断は正しい。連携という意味では、間違いなく。
「だれが仕組んだのかはまだわからなかったわね。嫌がらせで、それ以上でもそれ以下でもなく。無意味な足止めを食らってるんだから」
「好き放題言うものだな。俺はそれでも構わんが、こいつはそうでもなさそうだぞ?」
 『剣の麗姫』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)の嫌味がぐさりと突き刺さる。頭部に青筋を浮かべている割に、ヴリトは落ち着き払った調子を装ってエーリカを示した。それに応じるように吠え猛るそれに感化されたか、兵士達もゴム弾の装填を終えてじわじわとにじり寄る。
「そっちがそういう姿勢ならば、代わりに強者を務めてあげるのです。罠だろうが仕掛けだろうが、真正面からぶっ飛ばして“勝って”みせるのですよ!!」
「ってワケだ。私達相手に得意げになった責任、取ってもらうぜ」
 ルシアは常々、意気揚々と拳を突き上げる姿勢は変わらない。いつも魔砲でブチ抜いてきたという自信は、いまこの場でこそ燃え上がっている。ミーナはそんな姿を示しながら、膝を撓めた。


「残念だったな新皇帝派。色々とした準備が自身らへ牙を剥くなんて。それとも俺達を倒した後に電気焼肉パーティーでもするつもりだったか?」
「ヴル」
 ウェールは咆哮を上げるエーリカ目掛けて横薙ぎの一撃を繰り出し、その胴を電磁バリアに押し付けようと試みた。たしかに、目論見通りエーリカはバリアに触れた。だが即座に身を引き剥がして前進すると、ウェール目掛けて衝撃波を叩き込んだ。彼の算段は決して誤りではなかったし、連携ありきなら確実に効果はあっただろう。が、電磁バリアに押し込み不利を押し付けるやり方は、ヴリト麾下の兵団ぐらいに特化した連中でなければうまく行かない。必定の帰結といえる。
「ウェールさん……!」
「構うなっ! ヤツはこっちを向いた、誰も巻き込まない『こっち』を!」
 ココロを庇い、腕を広げた華蓮は彼へ向けられた悪意を受け止められなかった自分を悔いた。手が足りれば、彼も助けられたはずだ。だが、その悔恨はウェールへの冒涜であった。彼は、真っ先にエーリカを狙うことで自分を狙わせ、以て戦線正面への衝撃波の波及を抑えたのだ。初手に於いて、複数名が不利を被る可能性を極力削ったその功績は大きいといえる。
「烏合が多少有利なフィールドを構築できたからといって、それで何ができるのかしら。良ければ教えてくれる?」
「お前達を倒せる」
「……だってさ。実力差なりに対抗できるように涙ぐましい準備をしたわけだ」
 アンナの挑発は、確かに弱卒の一般兵の感情を逆なでするには十分だった。だが、踏み込みが浅い分で難を逃れた(もしくは奇跡的に避けた)者らは、冷静な表情でアンナを、そしてあからさまな所作を繰り返すルシアに銃を照準した。ああ、涙ぐましい。一人ふたりでは押し込まれようが、数で上回ろうと頑張った訳か。シラスはその努力を評価しつつも、しかし実力差なりの現実を叩き込む。何かに引っ張られたように崩れた兵達は、姿勢を立て直す暇もない。
「ルシアちゃん!」
「堂々と真上にコアを晒して、壊してくださいって言ってるようなものじゃないのでして?」
 ココロによる貨居鄲奇術――強化魔術を受けたルシアの魔砲の精度と威力は、もしかしたらバリア装置を破壊してしまうかもしれない。銃口を向けた所作は、あからさますぎたが無視はできない。引鉄に指をかけた兵士の目に、緊張の色は濃い。
「……なーんちゃって、ですよ!」
 が、彼女は銃口からではなくその光輪から一射を発した。膨大な熱量と神秘を伴う光の矢は、最早いち兵卒が正面から受けていい攻撃ではなかったし、いち兵卒のゴム弾が後退させるには遅すぎた。
 死のいち文字が眼前を白く塗りつぶす……直前、風切り音が数度響く。
「馬鹿者が。強者が相手だからといって、敵わないと甘えたな?」
「ハッ、不覚にも……!」
 ヴリトが、庇ったのだ。真正面から受けたにしては傷が浅いのは、あの殲光砲魔神を鞭で凌いだというのか。それ以前に、部下を庇う? 新皇帝派の上官がか?
 その驚きは、ルシアがゴム弾を受けて後退するに十分な衝撃だった。痛みは薄いが、行為は不可解。続けざまに伸びてきた鞭の殴打は、その場のイレギュラーズを纏めて狙うべく乱れ回る。
「……邪魔だ、消し飛べ」
「飛び込んでくるか、この茨渦に」
 ルクトは空を飛べない鬱憤を、そのまま推進力に変えて前進した。狙いはルシアが打ち漏らした相手。この状況下では必然的に、ヴリトに向いた。速度ごと叩きつけた衝撃波でヴリトが後退するのと、鞭に切り刻まれその身が大きく裂けるのとは同時。痛み分けに終わったか。
「そこまで下がってくれたんだ、ついでに私と踊っていて貰うぜ? なぁに、損はさせないさ」
「後備えだと?!」
 否、隙を見せた分だけ押し込んだミーナが上手だ。
 振るわれた大鎌は動揺を顕にした彼の胴を裂き、激しい出血を強いる。それでも深く息を吐き、歯を食いしばって鞭を構えたその姿は鬼気迫るものがある。状況さえ異なれば、イレギュラーズと善戦したかもしれないという可能性。だが、それは叶わぬ未来なのだろう。何せミーナは、まだ動く、まだ襲いかかる。
 上官なりの戦いぶりを見せたとして、ヴリトが彼女と踊れるのは一曲分にも満たぬであろう。


「囲まれずに囲む、先手先手で敵を減らせば勝てます! 私が癒し、ココロちゃんが止めて、シラスさんとルシアちゃんがブチ抜けばこんな罠なんて!」
「罠を作るまではよかったが、自分達で倒しにきたのは減点だったな。捨てきれないプライドがなければ長生きできたのにな」
 狭い戦場ながら、ヴリトとミーナ、雑兵と戦力の大半、そしてウェールとエーリカの対峙の3つの戦局が駆け巡る。ココロは四方に目まぐるしく視線を向けつつ、しかし冷静に治癒を振りまいていく。身に降りかかる汎ゆる不調はシラスが主体となって押し留め、電磁網による後退はルクトの反撃やアンナの誘導、そしてルシアの暴力的な魔術の乱射でひっくり返す。戦場の要は間違いなくココロで、華蓮はそんな彼女を死守する構えを見せている。すべては、傷ついてほしくない親友のために。
「ゴムの弾幕も随分薄くなったの、ですよーっ!」
 そして敵が減れば、ルシアは平気で状況を無視する。いい意味で空気を読まないのだ。
 上空に配置された電磁網のビットが破壊されたことで、電磁網の均衡が瞬く間に崩れ、空が晴れる。周囲が拓ける。路地裏の戦場は、完全に瓦解したことになる。
「ここからは小細工無しの真剣勝負なのですよ!!」
「……だそうだ、エーリカ。好きに暴れろ」
 勝ち誇ったルシアの言葉に、ヴリトは息も絶え絶えながら吐き捨てるように告げた。腹部の口からは先程よりも激しい咆哮が響き、エーリカはバトルアックスを両手で握りしめる。
「ここまで敗けが確定した状況で、士気が下がらないとは……」
「お前は我々を甘く見過ぎだ。たとえ両手両足がもげても、兵士達は貴様等の首筋に噛みつくぞ。頭がなければ、抱きしめてでも動きを止めたろう」
 ヴリトが、もしくはエーリカが電磁網で無様な悲鳴を上げれば士気は下がるだろう、と。そう見越していたウェールは、血塗れで四肢もまともに上がらぬヴリトが、それでも矢のような眼光をしていることに『恐怖した』。
「死に体でもよく口が回るもんだ、感心したぜ。でも、アンタの子飼いは今から死ぬんだ」
「バーベキューにならずに済んだが、それでもボロボロだな。お粗末な罠が失敗した気分はどうだ?」
 シラスは倒れた雑兵を一瞥すると、エーリカ目掛け全力を傾ける。如何に相手が強力な天衝種とて、イレギュラーズ総出でかかって倒せぬわけがない。罠も、なくなったのだ。
 そして、自身の言葉通りその口で以て食いつこうと足掻くヴリトの首を片手で吊り上げたミーナは、殺さぬように慎重に、しかし油断なく問いかける。
「……それで? 一応聞くけれど、どこからのタレコミでピンポイントに罠を張ったのかしら?」
「罠を張ったのは勘働きだ。だが、情報は――、…………」
 軽くヴリトに視線を向けたアンナの問いは、答えが帰ってくるよりはやく沈黙に染まった。見れば、口の端から血を流している。服毒自殺か?
「まあ、いいさ。空を取り戻した私は、もう止まらないぞ」
「どんな小細工が待っていても真っすぐ行ってどっかーん! すればいいだけでして!」
 ルクトはしかし、そんな状況よりも罠から開放された空に喜びを覚え、戦意をより高らかに。
 そしてルシアは、生半可な罠をぶち抜いて前に進むべく拳を突き上げた。拳も銃も向いてない側に飛んでいく極大魔術は、エーリカをして驚愕せしめたのは間違いない事実だが。
「嫌がらせが本領……ね」
「ひとまず、彼の実家の喫茶店で好きなだけ飲み食いできるよう詰めましょう!」
 アンナの呟きをあえて無視し、ココロは再びラジオ塔へと歩き出す。
 この作戦が終わったら、『彼』には聞きたいことがたくさん増えた、と。

成否

成功

MVP

ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
華蓮の大好きな人

状態異常

ウェール=ナイトボート(p3p000561)[重傷]
永炎勇狼

あとがき

 お疲れ様でした。
 罠にかけても、プライドが邪魔するとこうなるという好例でしたね。

PAGETOPPAGEBOTTOM