シナリオ詳細
<ネメセイアの鐘>朋友の想いに寄り添うなら
オープニング
●
ちらちらと雪が戦場に降りて行く。
修道院を包むその光景は場合によっては見惚れるほどに美しかろう――が。
肌を貫くような潮風や、理由の分からぬ焦げ臭さのような、生臭さのような――気分の悪い臭いが不快感しか作らない。
「き、来たぞ、ローレットだ!
聖獣様、聖獣様、どうかどうか、お力添えをください!」
まだ10代前半を思わせる子供達が銃を取る。
オンネリネンの子供達とも言われるアドラステイアの傭兵部隊だ。
「落ち着け――お前らにはティーチャーアメリの祈りがある。
あの方の救いがあるのだ――銃を取れ」
そういうのは、彼らのリーダーらしき少年だ。
「しかし、本当にこの数の聖獣がまだ残っているとは」
そう呟くのはベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)である。
愛槍を握り、視線を聖獣たちの後ろへ。
(青髪がベイル、赤髪がブレット……あそこの少女がアニーか)
「怯えているようだな……それで俺達に勝てると?」
これで退いてくれれば――その方がいいと思いながら、ベネディクトがそう言えば。
「貪り喰らえ、聖獣よ。贄はここにある」
リーダーらしき少年が静かに声をあげ、戦端が開かれる。
●
分裂した鉄帝国に置いて各派閥が同時に行動を開始した日からほどなく。
ローレットは時を置かずして慌ただしさを増していた。
イレギュラーズはアドラステイアの傭兵部隊たるオンネリネンの本部の他、中層に存在するア・プリオリ図書館、ボーヴォワール寄宿学校への強襲を敢行していた。
ベネディクトも参加した大規模なアドラステイア中層への攻撃。
その結果、中々動けずにいた大国――天義を動かすに十分すぎる理由(しょうこ)を得た。
――即ちこれより行われるは独立都市アドラステイア上層へと迫る攻略戦。
本格的な決戦の幕が上がろうというのだ。
「ご主人様、少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか」
どこへ行くべきかと唸るベネディクトはその声に顔を上げれば、見慣れた顔があった。
恭しく礼を尽くすのはリュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)だ。
「リュティス? それに」
信頼する従者の隣には少年が1人。
「ベネディクト兄ちゃん!」
「ジャン、元気だったか?」
「先程、ローレットの入り口でお会いしまして。
ご主人様を探していると仰ったのでご一緒しました」
「うん! ありがとう、リュティス姉ちゃん。
それで兄ちゃん。これからあそこ……アドラステイアに行くんだよね?」
ジャンはベネディクトとは知り合いの友人にあたる人物だった。
ディダスカリアの門を含む中層攻略戦の最中、攫われそうになった少年を何とか救い出した。
その後は再度の潜入も難しいと判断したローレットで身柄を保護していた。
「あぁ、そのつもりだ。……何かあるのか?」
「俺の友達がまだあそこにいるかもしれないんだよ。
――まだ無事な俺の友達がいるかもしれないって」
そういうジャンは顔を上げてぎゅっと拳を握る。
「……分かった。君の友達はもちろん、他にもいるのなら救い出そう」
上層攻略戦――それによって確実に生じる隙がある。
今ならば、確実に救えるはずだと。
「あぁ、その子達の特徴を教えてくれるか?」
「ありがとう、兄ちゃん!」
年相応に喜ぶように笑ったジャンは子供達の情報を教えてから手を振りながら立ち去っていく。
「……ベネディクトさん、リュティスさん」
その様子を見届けたベネディクトはそんな声に振り返る。
「君は……シンシアか」
ジャンを救い出した戦いに置いて、一緒に戦ったアドラステイアを出身とする少女だ。
「ジャンくんのご友人のこと、よろしくお願いします」
「……きみが教えてくれたのか?」
「はい。改めて彼から情報を聞いて、そう結論付けました」
「良ければその理由も教えてくれるか?」
「はい、ティーチャーアメリは、聖別――聖獣化実験に関して段階を踏んでました。
彼女にとって、それは重要なのか段階を飛ばしたり期間を削減したりは決してしませんでした」
「最近であればあるほど、まだ彼らは聖獣化していないということでしょうか」
「ええ、でも確信が持てないのです。
これまでは確かに、この手順を変えませんでした。
でも、今はどうかわかりません。今回は戦時ですから」
リュティスの問いかけにシンシアは頷きつつも少し目を伏せ気味に語る。
「それでもかけてみる価値はある。……他に何かあるか?」
ベネディクトはシンシアにそう返すと、シンシアの方も顔を上げた。
「……恐らく、戦場にはたくさんの聖獣と子供達がいると思います。
フォルトゥーナを皆さんで壊滅させたことで、イコルの生産には多大な影響が出てると予測されます。
でも聖別による聖獣たちは基本的には彼女の本拠にて聖銃士や子供達の世話を受けています」
「……彼女の手元には未だ損害のない戦力が存在しているというわけか」
「はい。そして、恐らくですがティーチャーアメリは既に聖獣の幾らかを残して上層に逃れているはず……
他人を捨て駒にして自らを優先する。『先生』はそういう作戦を立てることを厭うなと、私に教えたことがあります」
シンシアの声は悲しげで、同時に確信めいたものがある。
「……分かった」
ベネディクトの頷きは重い。
子供達を捨て駒に使うことを教えるような指導者がいていいものか。
だが同時にそれは最大のチャンスでもある。
「彼らが捨て駒として利用されるのは許しがたい。
だが、だからこそ救える可能性は増したはずだ」
――今から行く戦場には、救い出すべき者達しか、残っていないのだから。
- <ネメセイアの鐘>朋友の想いに寄り添うなら完了
- GM名春野紅葉
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2022年12月16日 22時45分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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「あらあらまあまあ! か弱いわ! 小さいわ!
可愛い子達がいっぱいね!」
「ひっ!?」
「ぴゃあぁ!?」
突如として耳元で聞こえた声に、子供達の悲鳴が上がる。
「怯えないでも大丈夫。
おねーさんがたーくさん愛してあげるんだから!」
構えを取った子供達の目の前にいきなり姿を見せた『超合金おねーさん』ガイアドニス(p3p010327)に子供達がすくみ上る。
「お、おちちちちつつつ!」
「うわぁぁ!?!?」
「ふふ、おっきいということはそれだけ一歩も大きいということよ?」
てんやわんやになって銃を落とす子、弾丸を込め損ねる子達の様子をにこにこしながら見ていれば。
その子達の注意を引きつけるにはあまりある。
「――落ち着け」
そう重騎士がが言えば子供達は別の意味で竦んだように見える。
ぎらりとした剣がガイアドニスに向いた。
(例えば私が、あと10年か少し遅くこの国に生まれたとして。
そうしたら、ここにいたのは私かも。
そうじゃなくても私が『ティーチャー』と呼ばれていた可能性だってある)
祖国の地で『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)は複雑な思いを胸に秘める。
「……助けましょ、必ず」
小さな呟きを残して、ガイアドニスに続いたアーリアは既に準備を終えていた。
「パンドラを使ったって、深手を負ったって、貴方を止めるのは私。攻めに攻めて、雁字搦めにしちゃうんだから!」
その瞳が真っすぐに射抜くのは、戦場の最奥にて浮遊する巨大なる無貌の天使。
『ルルゥゥ――』
人語とは思えぬものを発するそれからは何らかの波動のような物が感じ取れた。
放たれた魔力は美しき香りとなり戦場を包む。
独特な香りは周囲に大いなる不吉を呼び寄せる。
「それでは、ご主人様。先に参ります」
先に礼を示して『黒狼の従者』リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)はガイアドニスに続く。
視線の向かう先は聖銃士達。
「ご主人様、皆様方。このリュティス、全力で支えさせていただきます」
戦場に堂々と立ち塞がり、その身を晒すと共に宵闇を引き絞る。
放たれた矢は傷を負わせることなど出来まいが――それで十分だ。
「聖獣を無視し、俺達を傷つけるか。俺達はティーチャーアメリの物。
それを傷つけるのはティーチャーアメリを傷つけることに等しいとしれ!」
激昂したのはレオナルドだ。
「総員、あの女を撃ち抜け!」
「ガイアドニス様、それは後はよろしくお願いします」
「はーい。おねーさんに任せて!」
ガイアドニスの傍によれば彼女が頷く。
そのままリュティスは視線を巡らせた。
「こいつらの中にも孤児や捨て子から始まってる奴もいるんだろうな」
小さく呟く『抗う者』サンディ・カルタ(p3p000438)は呪符を一枚取り出すと、紫電を纏わせて振り払う。
横一文字を描いた雷光は子供達の身体へこびりついた。
「どうやら正念場だな」
拳を軽く握って『竜剣』シラス(p3p004421)は戦場を見る。
飛びぬけて高い反応速度を持つガイアドニスが掻き乱した戦場の揺れはまだ収まりを知らない。
指で鉄砲のようにしたまま、照準を合わせた先。
放たれた魔弾は一斉に、全く同時に放たれる。
動揺して身動きのとれぬ子供達を撃ち抜くには十分すぎる技だった。
特に当たりの良かった子供が呻くのを見ながら、2度目の魔弾を撃ち抜いた。
連撃を受ければ痺れるように動きを止めた子や激しく動揺する子も増えようというものだ。
「情の欠片も見えないな。
ティーチャーにとって、コイツらは実験動物でしかないのだろうか」
子供達の様子を見ながら『絶海』ジョージ・キングマン(p3p007332)の呟きがあった。
もちろん、事前に子供達を用済みと切り捨てるよなティーチャーであると聞いてはいた。
だからといって、ああも怯えている子を戦場に捨て置くとは。
「救う等、高尚な事は出来ないが、世界の広さを見せてやる事くらいは、できる筈だ。
そのために、まずは第一歩だな」
握りしめた拳。
先制する仲間達により明らかな動揺をきたす聖銃士達に向かって一気に走り抜けた。
「問おう」
「ぴぇっ!」
驚いた様子を見せる少年へ静かに言葉を乗せる。
「教え子を聖獣と称した怪物に変え、
捨て駒にし、自身の命を優先する人間の祈りや救いに、殉じる意味はあるのか?
殉じるというなら構わない。それが正しいと信じるならば、
俺は、お前達の無事を願った、お前達の友の言葉を信じ、叶えるのみだ!」
「――何を恐れる。先生は何のためにお前らをここまで連れてきた!」
子供達の後ろよりそう告げた重騎士の言葉に子供が震えた。
銃口をこちらに向けたまま固まる子供に一歩前に出ると、小さな悲鳴と共に子供が銃を放り投げた。
「……友達を助けてほしい、か」
ジャンの言葉を思い起こしながら『黒き葬牙』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)は小さな呟きを残す。
――それは忘れようにも忘れられない、かけがえのない者達のこと。
「……騎士とは乙女の祈りに、無辜の民の願いに、
そして──少年の勇気にこそ振るい立つ物だ。なぁ、レイル、ローレンド……先生」
握る槍に力を籠めて、ベネディクトは声を張り上げた。
「俺が名はベネディクト=レベンディス=マナガルム! この槍の錆になりたい者はいるか!」
『ォォォォ!!!!』
狼たちが、武器を構えたアークエンジェルたちが、一斉に此方を向いた。
(約束しよう、ジャン。待っていろ……直ぐに君の友人達は連れて帰って来る、犠牲になどさせはしない)
槍を構えなおして、一番に近づいた者へと踏み込んだ。
放たれる残影の刺突がアークエンジェルに傷を刻んでいく。
「いやー、敵もやる事も多い事で。
まぁそれでもチャンスはチャンスだ。
通りすがりとはいえ、やることはやれるだけ頑張りますか」
戦いの始まる中、『一般人』三國・誠司(p3p008563)は御國式大筒に降り積もる雪を払ってから構えを取る。
既に戦闘の形は整いつつある。
それを見て止めた誠司はすぐさま引き金を弾いた。
シャカシャカとブレながら戦場を走る弾丸は仲間へと迫ろうとしていたアークエンジェルを穿ち、その身体を後方へと吹っ飛ばした。
●
『ロォ――――ォ、ォ、ォ』
最奥にて力天使が嘶く。
空に生じるは大いなる日輪。
見上げるだけで、それが落ちることの恐怖に背筋が凍るような圧迫感があった。
雪の降る冬のアドラステイアではありえないほど、全身から汗が溢れだす。
急速に質量を増す日輪がいよいよ戦場に降り注ぐ――その一瞬の事だ。
日輪に罅が入り、砕けて四散する。
(……上手く、いったみたい?)
――そうして、戦況は大幅にイレギュラーズ有利を以って開始となった。
安堵するには大いに早いと、アーリアは魔力を籠めて行く。
銀の指輪が魔力を帯びて輝いた頃、掌を空へ向けて、小さく吐息を零せば、銀の娥が空を舞う。
舞い踊る蛾たちは一斉に力天使へと纏わりついて、その在り方を更に押し止めて行く。
「喧嘩ってのはこうやるんだよ」
一気に零距離まで詰めたシラスは拳を作り、一瞬の体重移動と共に静かに押し付ける。
寸勁の要領で放たれた魔力の塊が炸裂と同時に爆発を引き起こせば、連打の拳は瞬く間にアークエンジェルの肉体を削り落としていく。
一撃でさえ致命的たる連撃は一連の動きが収まる頃には1体のアークエンジェルを鎮めていた。
「ベイル様、ブレット様、アニー様。
出来れば武力制圧はしたくありません。
ジャン様も心配しておられましたので、降伏していただけないでしょうか?」
「じゃ、ジャンが? ほんとに?」
「ええ、こちらとしては手荒な真似はするつもりはありません。
このまま協力するというのであれば聖獣になってしまいますよ。
あの化け物は人間が自ら作り出しているのです」
「せ、聖獣!?」
「聖獣様に?」
「そ、そうなの!?」
3人は驚いた様子を見せる。
既に戦闘が始まって暫くが立っている。
子供達の多くはイレギュラーズ側の攻撃で倒され、気絶している者がほとんどだ。
リュティスはそれを機にこっそりと声をかけた。
「聖獣様、強そうだけど……」
「皆と一緒に遊べなくなるのは辛いな……」
「うぅ……怖いよぉ……」
3人がそっと武器を置いた。
「あらあら、かわいいわぁ! それじゃあ、ちょっとだけ目を閉じててね!」
ガイアドニスは庇護欲を刺激する3人の様子に頬を綻ばせる。
3人が倒れたように偽装すると、そのままそっと下がっていく。
●
『ロロロロロロロロロ』
アーリアによる散々な妨害を受けたヴァーチャーの存在は完全にその利点を見失ったと言っていい。
ヴァーチャーが一気に後退する。
弾かれたようなその動きは、迫る青年を見咎めたもの。
「――それで逃げれるとでも」
一歩踏み込むと共に、シラスは一気に跳ねた。
『ルルルル』
空に足場を築き、飛翔する。
「どうした、飛べるのに驚いたか?」
動揺にもにた声らしき物を聞きながら、シラスは静かにそう告げ零距離まで詰めていく。
飛翔せんとするヴァーチャーを追い、握った拳を打ち付けて行く。
「――降伏なんて、するはずないだろ。
お前らに降伏するなら、死んだほうがましだ!
見ていてください、ティーチャーアメリ! 俺は、俺は貴女の為に!」
雄叫びを上げ、レオナルドが剣を掲げた。
「聖獣化や、ティーチャーを生かすことが救いに繋がるというなら、
俺はお前達をこちらの道へ引きずり込む!」
ジョージは握りしめた拳をそれに合わせて動かした。
振り下ろされる剣は堅実に、そして鋭いものだ。
それを撃ち返して、刻まれた痛みを気にも留めず、握った拳を振り抜いた。
反撃となって振り抜かれた拳は神威の一撃。
重装甲のレオナルドの鎧、その薄い部分を撃ち抜いていく。
「子供達には休ませる必要もある。
……一気に片を付けさせてもらうぞ」
ベネディクトはその様子を見ながら槍を振り抜いた。
放物線を描いて空へと打ちあがった槍はうねりを上げる。
竜爪の如き槍は空を舞い、狼の咆哮を立てて降り注ぐ。
「くっ――! おの、れぇぇ!」
盾を押し立てて構えたソレを防いだレオナルドは、直撃を防げども体力を削られ肩で息をし始める。
「やっぱりその盾が厄介だな」
誠司はその様子を認めると、銃口を静かに盾の方へ向ける。
「やっぱり、役に立つのは俺だけか……」
肩で息をするレオナルドが盾を構えて――そのせいで誠司を見失ったであろうその刹那。
「――ここだ」
誠司は引き金を弾いた。
静かに打ち出された弾丸は揺れながら大盾目掛けて飛翔する。
「――は?」
そんな彼の声と共に、大盾が空を舞った。
シャゲ弾のせいか、あるいは盾の形状ゆえか、ブレながら舞い上がった盾が大きな音を立てて地面に落ちた。
「よし、今だ!」
その言葉と、仲間達の動き出すのはどちらが速かったか。
「――行くぜ」
まずサンディが飛び込む。
ナイフへと力を籠め、振り抜いた斬撃が盾代わりに剣で防ごうとしたレオナルドの剣を叩き切り。
「ふざけ、ふざけんな! ティーチャー、俺にも加護を、もっと力をくれ!」
そう叫ぶレオナルドの視線がヴァーチャーをみて、驚いたように目を開く。
「あらあら、とっても驚いてるみたいね!」
「そこに、ティーチャーアメリがいるのですか?」
ガイアドニスが言う後ろ、リュティスはその驚きように目を細めつつも、錐刀を抜く。
そのまま、ガイアドニスの影を飛び出して刺突を叩きつけて行く。
「もう一度だけきこう。降伏する気は?」
「あるもんか!」
「そうか、ならば……この戦いを終わらせよう」
静かに続けたベネディクトは握りしめた愛槍に力を籠めた。
黒狼は気高く、慈悲深く――けれど苛烈に。
美しい軌跡を描いた槍はレオナルドの鎧をはぎ取り、その内側を打ち据えた。
「俺は海賊だからな。奪うと決めたものは、力ずくでも奪わせてもらおう。
お前たちをこちらの道に引きずり込むと――そう言ったからには!」
思いっきり踏み込んで、魔力を籠めた。
アンカーリングが陽光に輝く頃。
放たれた拳は慈悲に満ちていた。
●
ジョージが縛り上げたレオナルドから武器を取り上げ、舌をかまないように猿轡をした頃の事だった。
「流石に、捨て置いて正解というしかありませんねぇ。
慕ってくれるのは嬉しいですが、
レオナルドのそれはあまりにも忠義というには澱んでいましたから」
全ての倒れた戦場でその声が響いていた。
「――誰だ」
振り返りざま問うジョージの視線の先、倒れた無貌の天使がある。
巨大な天使の背中から、一羽の烏が羽ばたいた。
「……ファミリアー、か」
「こんにちは、初めまして。私の名前はアメリ。ここの責任者です。
素敵な戦いをありがとうございます。たっぷりと見せていただきました」
朗々と語る声はいやらしいほどに余裕がある。
「……お前には情というものはないんだな」
ジョージが思わず呟けば。
「ふふふ、私は不器用でして……情を贈れる方が1人しかいないのですよ。
――もしも、私に御用がおありであれば、アロン聖堂でお待ちしております」
それは考えるまでもなく罠に違いない誘いの言葉だった。
穏やかに告げた烏は、どこかへと飛び去っていく。
恐らくは、本人の待つその地へと。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
お疲れさまでしたイレギュラーズ。
MVPはアーリアさんへ。
ヴァーチャーは自由にしておいた場合、終盤に倒れた子供を皆様ごと攻撃させる予定がありました。
それを回避できたのは貴女のご活躍によるものです。
GMコメント
そんなわけでこんばんは、春野紅葉です。
ジャン君のお友達を、それに捨て置かれた子供達を救い出しに行きましょう。
●参考シナリオ
下記シナリオは呼んでおくとより面白いかもしれませんが、強制ではありません。
『<オンネリネン>眠りの乙女は夢を見る』
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/6765
『<ディダスカリアの門>奪われたものを求めて』
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/7180
『色褪せたアメジスト』
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/7494
●関係シナリオ
当シナリオは『<ネメセイアの鐘>酷く狭く、そして悍ましき世界(こきょう)へ』とも多少の関係性を持ちます。
具体的には『上層へと進む最中に待ち受けていた敵と交戦する』→『<ネメセイアの鐘>酷く狭く、そして悍ましき世界(こきょう)へ』
『中層に存在するティーチャーアメリの拠点を襲撃して取り残された子供達を奪還する』→当シナリオとなります。
●オーダー
【1】聖獣の討伐
【2】子供達の無力化(要:生存)
●フィールドデータ
アドラステイア中層に存在する修道院。
ティーチャーアメリの本拠であり、『聖別』と名付けられた聖獣実験の部隊となった場所。
敷地内には広大な広場が存在しているほか、幾つもの建物が存在しています。
中には聖獣が入っていたであろう厩舎のようなものや荘厳なる教会、
子供達が勉学に励んでいたであろう学舎のような物まで並んでいます。
殆どこの修道院だけで生活が成り立つように作られているようにも見えます。
●エネミーデータ
・『プリンシパル』レオナルド
アドラステイアの聖銃士幹部候補生(プリンシパル)の一人。
ティーチャーアメリ子飼いの聖銃士の1人です。
ティーチャーアメリへの強烈な忠誠心を持ち、妄信にも近いものを感じます。
大剣と大盾を持ち、重騎士を思わせる装いです。
その装備から分かる通り、守りに長けたハイバランス型と思われます。
大盾を駆使した堅牢な防技やHP、忠誠心から来る強靭な抵抗力、物神問わぬ攻撃力を持ちます。
一方でその重装備から回避はやや低めと思われます。
大剣を片手で振るう剣技は【堅実】であり【恍惚】にも似た隙が生み出されるかもしれません。
大盾は守りに使う他、【足止め】系列、【乱れ】系列、【自カ至】を持つ押し出すような攻撃を行います。
また大盾による守りはパッシヴで【反】や【復讐】を持つでしょう。
・『青髪の』ベイル、『赤髪の』ブレット、『桃髪』アニー
ジャンの旧友たち。まだ聖別の段階としては早期の段階故かまだ怯んでいる様子。
聖銃士の見習いであり、マスケット銃を装備した軽装兵です。
近接まで到達されると攻撃手段がなくなります。
基本的に聖獣による猛攻を補助するような銃撃を行ないます。
縫い付けるような銃弾は【凍結】系列、【足止】系列の効果を持ち、
【スプラッシュ】付の範囲相当の弾幕として飛んできます。
・聖銃士隊×4
聖銃士の見習いであり、マスケット銃を装備した軽装兵です。
前述3人との違いはジャンくんとの友人か否かだけです。
全員が10代前半から半ばを思わせる少年少女たち。
近接まで到達されると攻撃手段がなくなります。
基本的に聖獣による猛攻を補助するような銃撃を行ないます。
縫い付けるような銃弾は【凍結】系列、【足止】系列の効果を持ち、
【スプラッシュ】付の範囲相当の弾幕として飛んできます。
・聖獣〔タイプ:フェザーウルフ〕×3
翼の生えた美しい毛並みの大型狼のような聖獣です。
知性があり『聖銃士達と意思疎通が取れているかのような』連携を持ちます。
【災厄】属性を持つ【火炎】系列のBSによる魔力砲撃を主体とします。
その他、近接戦闘では口の中で魔力を飽和させて零距離で爆発させる、などの攻撃を行います。
・聖獣〔タイプ:アークエンジェル〕×3
顔のないつるりとした頭部を持つ、天使のような聖獣です。
成長した人間ぐらい(160~180cm前後)ほどあります。
知性があり『聖銃士達と意思疎通が取れているかのような』連携を持ちます。
手に大剣や斧などを持ち、白兵戦を仕掛けてきます。
【乱れ】系列、【致命】、【凍結】系列が予測されます。
・聖獣〔タイプ:ヴァーチャー〕×1
顔のないつるりとした頭部を持つ、天使のような聖獣です。
アークエンジェルとの違いは3mもの巨体と
身体をすっぽりと包み込むほどの大きな二対四翼です。
常に戦場の最奥にて3mほどの上空に滞空しています。
極めて高いHP、高めのAP、神攻、命中を持ちます。
戦場にバフをばら撒く個体らしく、
フィールドに存在する限り聖銃士達の命中精度、防技、抵抗が上昇します。
また、攻撃手段として光の束を振り下ろす魔術モドキを行ないます。
この魔術モドキは以下のスペックを持ちます。
力天使の極光:神超域 威力特大 【万能】【雷陣】【炎獄】【致命】【呪い】
・『ティーチャー』アメリ
アドラステイアのティーチャーの1人。
独自に『聖別』と呼ばれる聖獣実験を行ってきました。
部下の聖銃士に『宣教師』と名乗らせ、
下層や外の子供達を勧誘しては聖獣や聖銃士による軍勢を築き上げてきました。
恐らくはアドラステイア中枢とは別の目論みの下で行動している様子。
当シナリオの黒幕です。どうやら現在は上層へと逃亡していると思われますが……?
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
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