シナリオ詳細
<大乱のヴィルベルヴィント>強者を求め、修羅道悪鬼を選ぶ者
オープニング
●
「メンドクセェ――」
ブロンドの髪を流し、女が苛立ったように呟いた。
女の名を、デボラという。かつては『雷拳』と異名どるラドバウの闘士だった女だ。
苛立ちを隠さず、女は舌打ちする。
「何をそうも苛立つ?」
そう答えたのは別の女だった。
しっとりとした紫色の髪に宿る涼し気な瞳は紅蓮の如く燃えている。
「ちっ、アンタには分からんだろうさ。『紫炎』」
「そうか――」
興味を失ったように紫炎と呼ばれた女は目を閉じて瞑想する。
それを見てまた、デボラが舌打ちした。
――鉄道都市ボーデクトン。
ゼシュテル分裂以来、『帝政派』が根拠とするサングロウブルクより東方、帝都へ向かう路線の集積地。
その地は今、新皇帝派とでも呼ぶべき勢力によって占領下にある。
『新時代英雄隊(ジェルヴォプリノシェーニエ)』、『アラクラン』、その他無法者やらバルナバスの恩赦に伴い獄をでた囚人たちといった数多の精力が行き交い、町の活気はない。
「そういえば、たばこは止めたのか」
「あぁん?」
瞑想していた紫炎が問えば、苛立ったようにデボラが声をあげる。
「苛立つのもそのせいではないかとな」
「はっ――うちが中毒みてぇに言いやがって。
ちげぇよ、つまんねェことになったってな」
「つまらないこと、か」
「ふん――上の人らもそうだ。
くだらねぇ連中相手に待ちの姿勢で、
攻めてくるってなって人を集めるなんてな」
「……象が蟻を殺すために動くわけもあるまい」
「はっ――」
静かに答えた紫炎に今度は逆にデボラが興味を失ったように鼻で笑う。
「――デボラ少尉、ブリュンヒルデ中尉、上官がお呼びです」
ふと聞こえた声に、大げさにデボラが笑う。
「おいおい、紫炎、アンタいつの間に昇進してたんだよ」
「あぁ――最近だよ。スラムの連中と手を組んで兵を挙げようとしてた連中がいたからな。
ばれても私一人ぐらいならやれると思ったらしい」
「ひゅぅ、で? 何人斬ったよ」
「さぁ――2桁はいたか。人を舐めるぐらいだ。腕利きも無かった」
「はっ」
嘲るように笑ったデボラを前に、ブリュンヒルデが進む。
●
鉄道都市ボーデクトン。
鉄帝の西部に位置し、サングロウブルクと帝都スチールグラードの間にある大都市である。
そこの奪還に向けて動いた帝政派は、ローレットと共に町へと突入していた。
数多の新皇帝派の待ち受けた町への突撃は容易ならざる物であり、戦端は立地上の理由から西部入り口で切られた。
ボーデクトン内部でもスラムに潜んでいた親ヴェルス派が蜂起する中、
アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)と熾煇(p3p010425)は見た顔を見つけていた。
「よぉ、ガキ。元気だったかよ」
「まだ死んでなかったんだなー」
熾煇はワイバーンの背中から顔を出し、その女を見下ろした。
「はっ、殺せるような傷だったか?」
「今度は逃がさないからなー」
「こっちも上からの命令なんでな――死んでも許せよ」
熾煇の視線を正面から受けてデボラが雷鳴を響かせ、スパークを拳へ纏わせる。
「私はお初にお目にかかるな。私の名はブリュンヒルデ。
まぁ、本名ではないが――そう呼ばれている。
今は新時代英雄隊とかいうのに属している、しがない賞金稼ぎだ」
そう言ったのはデボラの横にいた女だ。
20代半ばであろうか。その手にはクレイモアにも似た武骨な大剣が1本。
紫炎を纏う大剣は宛ら十字架を思わせる。
その視線は真っすぐにアルヴァを見上げ、次いでイレギュラーズを見渡す。
「――本気で来てくれ、英雄。
さもなくば何故こっちに立っているのか分からないのでな」
小さく、静かに『紫炎』ブリュンヒルデが笑みを刻む。
「あんたからは原罪の呼び声が聞こえてこない。あんた人間だろ」
「あぁ――もちろん」
ブリュンヒルデは涼し気だ。
大剣を握るその手は一切の揺るぎが見られない。
「どうして、魔種に味方するんだ?」
アルヴァの詰問に、ブリュンヒルデが笑う。
「この国で懸賞金がかかるほどの実力者、音に聞くローレットの英雄。
『そちら』にいては君達と戦えないだろう――」
静かな言葉の終わり、殺気がイレギュラーズ側を包み込んだ。
あぁ、この賞金稼ぎは――どうにも生粋の戦好きらしい。
- <大乱のヴィルベルヴィント>強者を求め、修羅道悪鬼を選ぶ者完了
- GM名春野紅葉
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2022年12月08日 22時06分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
(戦好きが2人、1人は魔種でもう1人は魔種に味方する人間種、ですか。
魔種と行動を共にしながら、何故魔種に堕ちていないのか気になりますが……
まあ、きっとその性格(戦好き)のせいなんでしょう、ええ……)
静かに戦場を舞う『暗殺流儀』チェレンチィ(p3p008318)はその身に雷光を纏う。
美しい青翼が青雷を纏いて戦場を奔る。
まさしく雷光そのものとなり神速を以って飛翔すれば。
こちらに気付いたデボラ隊のレーザー砲撃を雷のように躱しながら突貫。
地を穿つ雷光は一条ならず、降りてはデボラ隊の兵士を打ち据えて行く。
「強力な魔種に加えて強い賞金稼ぎまで来たか……
だが、どんな強敵であろうと、この貴族騎士が成敗して見せる!」
厄刀『魔応』に手を添え、『ノブレス・オブリージュ』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)は、宣誓を告げる。
「デボラたちの兵士たちに告ぐ、今すぐ投降すれば命だけは助けてやろう!」
自らが騎士である以上、ノブレス・オブリージュの在り方というものだ。
例え聞く耳が持たれまいとしても。
「――魔種もそれに与する者も、どちらもこの貴族騎士が倒す!」
そのまま、シューヴェルトは愛刀を振り抜いた。
戦場を駆ける形なき呪詛の刃はデボラ隊を真っすぐに貫通して切り払う。
形なく、故に傷も無し。
呪詛の太刀筋は必殺不殺の太刀となり、デボラ隊を崩れ落としていく。
「お互い『上』がいると大変だろうな。
嗚呼、だが――そちらも戦いを望むのであれば、私達は全身全霊でお相手しよう」
そう漏らすのは『奪うは人心までも』結月 沙耶(p3p009126)だ。
圧倒的な速度で繰り広げられる猛攻は主にデボラ隊の後方を削り落としていた。
「であれば私が狙うべきは――」
沙耶は掌に魔力を集めて行く。
翳した掌はデボラ隊の剣兵達を包み込むようにして動く。
それは掌握魔術。気糸が剣兵達の周囲を斬撃となって縦横無尽に迸り、逃げ場なく多量の血を零していく。
「おっと、お前はこっちだ。
懸賞金はそこまで高くないが、ボーナスくらいにはなるだろう?」
ブリュンヒルデへ肉薄する『航空指揮』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)は、そのまま引き金を弾いた。
カチャン、と音を立て、銃声が響けども、痛みのあるはずもない空砲が虚しく響く。
「おっと、悪い悪い。お前に使う弾丸が勿体なくて、抜いちまった」
「そうか、勿体ないなんて言えなくするしかなさそうだ」
そう言ったブリュンヒルデの大剣が紫炎を吹いた。
「デボラ、また会えたな。元気だったかー?
お前、ドラゴンほどじゃないけど、強いから俺の本当の姿で戦ってやるぞ。光栄に思えー?」
ワイバーンの背中より『紲家のペット枠』熾煇(p3p010425)はデボラを見下ろした。
「へえ、それが本当の姿ってやつか」
「それに、俺、ガキじゃないぞ。熾煇って名前があるんだ。しーきー!」
「へえ、そうかい。ガキが、その姿も大人とは言い難いんじゃねえか?」
「ガキじゃないって言ってるだろ! ――ガキって呼ぶなババァ!」
「てめぇ――言うに事欠いてババアだぁ!?
良い度胸じゃねえか、降りてきやがれ! 殴り潰してやらぁ!」
熾煇の挑発を真に受けるように、デボラの雷光が質量を増していく。
務めて冷静に、だめ押しとばかりに熾煇は煌閃を撃ち込んでいく。
「俺と戦いたいか? 俺が空にいるのがそんなに気に食わないか?
本気で好きな戦い方をしてるやつに卑怯だとか言うなよ?」
熾煇はつかず離れずの位置より見下ろしながら続ければ。
「降りてこねえってぇんなら仕方ねえ――叩き落としてやらぁ!」
雷光が音を立て、一条の稲妻が地から打ち上げるように熾煇へと走る。
ワイバーンへと炸裂しかけた雷光を躱して、熾煇は地上へと飛び降りた。
(ちょっと俺も生死を賭けて戦ってみるか)
竜気煉武で生み出した大太刀を構え、熾煇はその剣に竜気を籠めて行く。
「「やあ、『雷拳』のお姉さん! ボクはリコリス。
血と骨とお肉がだ~いすきな狼さ!
今日は純粋に闘士として一戦交えたくてやってきたんだ!
……今日は悔いが残らない様、全力で殺し合お?」
『牙隠す赤ずきん』リコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236)は楽しそうに笑ってデボラの前へと姿を見せる。
「そりゃあ気が合いそうだ。全力で殺り合おうじゃねえか!」
笑うように言えば、デボラからもそんな言葉が返ってくる。
「たしかにボクとちょっとだけ気が合いそうじゃん?」
人狼が牙を剥く。
「戦好きが相手か、やりやすくていいね。
私もそういうシンプルなのが好きだよ
さあ、どちらが喰らい尽くされるか、勝負といこうか」
愛刀を抜き、デボラへと迫る『優しき咆哮』シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)に、目を瞠った魔種が口角を釣り上げて笑う。
「いいねえ、そういうの。
そういうのを待ってたんだ!」
「私は結構強いんだよ!」
振り払った斬撃は美しき軌跡を紡ぎ、瑞兆を齎すもの。
「いうだけありそうだ!」
バチリとスパークが爆ぜ、デボラの笑みがさらに深まれば、苛烈な雷光がシキを狙う。
(さてさて、アルヴァ君を虐めた敵とはこれは全くもって許せない存在だ。
いや……むしろ虐められた方か、だとしたら哀れな奴だな。
まあしかし、報告書を見る限りでは前回向こうにハンデがあったようだし、油断は禁物。
気を引き締めていこう)
眼鏡越しに魔種を見た『隠者』回言 世界(p3p007315)は既に開幕している戦場を見た。
(しかし、ラドバウの闘士だったと聞いたが、反転しているとは底が知れる。
余程無力な闘士だったのだろうな)
思い描いた挑発はまだ秘めておこう。
開始された戦闘に介入するように、術式を起こす。
自然に満ちた調和の形を取り込み、デボラの猛攻を受ける仲間へと転換していく。
●
その戦場に置いて、イレギュラーズの攻勢はまさに風の如きものだった。
圧倒的な速度を以ってほぼ先手を取ることが出来たのは大きい。
その圧倒的な先制攻撃は流れを作り、結果としてデボラ隊の動きを著しく衰えさせた。
熾煇は中ほどから砕けた大太刀を再構築していた。
元々守りを得意とするわけではない分、疲労は蓄積されている。
仲間の支援があっても、何度デボラの攻撃を耐えれるか。
「魔力とかそういう手品か、おもしれえ」
驚いたようにデボラが目を瞠る。
「卑怯とかいうなよ」
「はっ――魔力を武器に変える程度で卑怯なもんかよ」
熾煇は再び大太刀を構えると、その剣身に烈火の如き炎を纏う。
「ボクも雷を用いる端くれですが負けませんよ」
チェレンチィはデボラを見下ろしてそう告げれば、その身に雷を抱く。
「へぇ――あんたもそうなのか。いいねえ」
デボラの笑みが楽しそうに歪む。
「勝負です――」
宙がえり勢いをつけたままに、稲妻が戦場を駆け抜ける。
「面白れぇ!! 来な!」
その両手に雷光を纏い笑ったデボラの拳が、チェレンチィを打たんと伸びる。
それをすんでのところで躱してデボラの肩を取り、勢い任せに腹部へ蹴りを叩きつけた。
青色の雷光は弧を描いてデボラの肉体を曲げる。
握りしめたミーロスチを抜き放ち、低空飛行のままに追撃の斬撃を見舞えば、愉し気な声が耳に残った。
「貴族騎士が貴様を打ち倒す! 貴族騎士流蹴技『蒼脚・堕天』!」
続けて飛び込んだシューヴェルトはその脚へと自らにかかる呪いを集束させていた。
放たれた青白い呪いの籠められた脚は鞭のようにしなり、刈り取るようにデボラの身体を打つ。
チェレンチィによる雷光に続くシューヴェルトの呪詛の籠った一撃はデボラの身体にその呪いを一部なれど転嫁する。
撃ち抜かれたデボラが僅かに体勢を崩して驚いたように目を瞠った。
「ばいばい、お姉さん」
リコリスの目が胡乱な赤を映した。
かみちぎるように喰らいつき、いちめんを赤に染め上げては次いで背後よりしのびよる。
燃えるような痛みが引かぬデボラにリコリスは走る。
狩人の如き赤ずきんの猛攻は静かに、明るく、大胆に。
数多の状態異常を押し付けてその体力を削り続けている。
「君は魔種なんだろう。
ならば、姑息などと言ってくれるな。これも戦い方なんでな」
沙耶はデボラへと魔弾を打つ。
放たれた魔弾は躱すことを許しなどしない。
その内側にある数多の悪意をもってデボラの動きを抑え込まんと牙を剥く。
「声ばかりでかいな。余程、無力な闘士だったのだろう。
この戦いの行方も最初から見えてると言っても過言じゃない。
今から尻尾を巻いて逃げ出してもいいぞ?」
熾煇から変わるようにして、世界はぽつりと呟いた。
「てめぇ、今のは、うちに言ったのか?」
「それ以外に誰がいる?」
「良い度胸だ、てめえの身体で試してみやがれ」
雷光眩きデボラの連撃がいくつも世界へと炸裂する。
1つ1つの攻撃が鋭く、突き刺さるような一撃だった。
それはまさしくデボラの怒りを表しているかのように。
幾度か受けている猛攻を浴びながら、世界はその視線を上げた。
(――ネイリング・ディザスター)
魔眼がデボラの身体を絡めとっていく。
シキはその時を待っていた。
自分から注意をそがれ、無防備になったその隙。
その刹那、鮮やかなりし瑞刀が魔力を帯びる。
「ぜんぶ、食らいつくしてやる!」
闘争心に煽られるように、宵闇の刀は麗しくも恐ろしき光を纏っていく。
美しき瑞の加護を降ろすが如く、友の力の籠った愛刀から、斬撃を振り払う。
犬のような大顎を形作った斬撃がデボラの身体を呑みこんだ。
僅かにちらつく雷光、デボラの健在を確信してそこへ飛び込んだのは熾煇だ。
「これで――終わりだ!」
反射的に伸びて来た拳に合わせて、熾煇は大太刀を振り抜いて行く。
烈火の炎が、雷光を包み込み――爆ぜ狂う。
「――やるじゃねぇか、熾煇だっけ。これぐらい強くねえとなぁ」
目を瞠ったデボラが、そう零しながら倒れ伏した。
●
戦いは続いていた。
デボラ隊とデボラの様子を少しばかり気に賭けながらもアルヴァはブリュンヒルデへの抑えを続けていた。
「『さもなくば何故こっちに立っているか』って、お前馬鹿だろ。
何故そちらにいなければ俺達と戦えないと考える?
お前は自分が悪であり、少なくともそれに対する抵抗もあった筈だ。
魔種にもなれず完全な悪にもなり切れず、別の手段も考えようとしないお前は馬鹿だよ」
「なるほど、たしかにな。私は馬鹿というのもその通りだろう。
だが――だからどうした? 別の手段を考えるまでもない。
今、この場で戦えているのだからな。
――なぁ、少年。あまり、興が覚めることをいうなよ?」
肌を刺すような殺気が、アルヴァの当初の目的を達していることを教えてくれる。
「お待たせ、アルヴァ! 大丈夫?」
背中より撃ち抜いた黒顎魔王。
微かに体勢を崩しながらも邪道の斬撃を受け切ったブリュンヒルデ越しにシキが言えば。
「――はい、時間稼ぎおしまい。悪いけどお前、もう詰んでんぜ?」
アルヴァは視線を巡らせ、デボラが倒れているのを確認すれば、ブリュンヒルデへと告げる。
そこより始めるは自らの全霊。
速力を駆使した侵略にも等しき猛連撃をブリュンヒルデへと叩き込んでいく。
「詰んでる……ふむ、いいなそれは――それぐらいでなくてはつまらないというものだ!」
受け止められたアルヴァの猛攻に返すように、ブリュンヒルデの笑みが見えた。
返すように振り抜かれた剣が微かにキレを増していた。
「そういえば、私達って賞金首になったんだっけ?
それなら狙われるのも致し方なしってやつだけど、
黙ってやられるわけにもいかないもんね!」
握る愛刀に魔力を籠めるシキが言えば。
「デボラが倒れたか。
なるほど、浅からぬ傷のようだが――あぁ、全く、楽しめそうだ!」
振り返ったブリュンヒルデがシキの身体を見て、愉しげに笑う。
「にひひ、血のにおいがいっぱい……たのしい、たのしいねぇ!
キミ達も今す~っごく楽しいでしょ!? ねえねえ!」
リコリスは笑っていた。
「あぁ、全くだ。愉しくて仕方がない。
じらされて堪らなかったんだ。もっと楽しもうじゃないか!」
紫炎が質量を増すのを見ながら、リコリスは飛び掛かっていく。
ブリュンヒルデの腹部をかみちぎり、そのまま返すように撃ち抜いた炎はブリュンヒルデの体を焼きつけて行く。
「魔種に味方せず、正々堂々と挑んでくれればここまですることもなかったのに……貴殿は随分もったいないことをしたぞ?」
「はっ――寧ろ、味方して良かったと思っているところだというのに!」
数多のBSを押し付けんとする沙耶の言葉に、ブリュンヒルデの言葉は嬉々としたものだ。
「……なにを」
「貴殿が言ったのだろう、『ここまですることもなかったのに』と。
――つまり『ここまでの物が見れたのは奴らに味方したからだ』ということだな!」
爛々と輝く瞳には戦意の乱れなどありはしない。
紫炎がブリュンヒルデの愛剣を燃やし、踏み込みと同時に横に薙ぐ。
切れ味の増した斬撃が魔種戦を経たイレギュラーズに浅からぬ傷を刻んでいく。
「あなた、どこまで戦いが好きなの……」
思わず零した本音には笑みが返ってくる。
戦いの形勢は確かにイレギュラーズが圧倒的に優位だった。
とはいえ、魔種との激戦を繰り広げた後に倒すには損耗が激しすぎた。
「残念だが、時間切れらしい。
いつまでも楽しんでいたいのだが、これ以上は私の望む戦いにはなるまい。
また会おう。全く、デボラと別行動をしておけば良かったか!」
ブリュンヒルデは清々しいほどに笑う。
周囲を見れば、激闘は徐々に終わりを迎え、新皇帝派が後退していくようだ。
紫炎を掻き消したブリュンヒルデは後退する新皇帝派に紛れ込んで消えていく。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
お疲れさまでした、イレギュラーズ
GMコメント
そんなわけでこんばんは、春野紅葉です。
早速行きましょう。
●オーダー
【1】『雷拳』デボラの撃破または撃退
【2】『紫炎』ブリュンヒルデの撃破または撃退
●フィールドデータ
ボーデクトン西入り口付近。
各所で帝政派側と新皇帝派の激闘が繰り広げられるど真ん中です。
そこら中で戦闘音が鳴り響いています。
戦場は射程が広く取れますが、射線を切るのは困難でしょう。
●エネミーデータ
・『雷拳』デボラ
憤怒の魔種。元ラドバウ闘士。
より強い相手との戦いを求めて新皇帝派に付きました。
新皇帝派に付いた後に反転したとか。
皆さんとの戦いを嬉々として行うでしょう。
憤怒属性のためか、元々の気質か、
かなり気性が荒く挑発に乗りやすいです。
【痺れ】系列、【麻痺】などのBSを多用し、
【スプラッシュ】【追撃】【邪道】などの連撃を駆使します。
気功を駆使した自己回復の手段も持っていそうです。
・デボラ隊×10(剣×6、銃×4)
元ラドバウ闘士。
デボラの部下であり、実戦経験の豊富な強力な部隊です。
剣身がビームの剣と盾を持つ剣兵、
レーザーを放つ狙撃銃と盾を装備した銃兵で構成されます。
・『紫炎』ブリュンヒルデ
『新時代英雄隊(ジェルヴォプリノシェーニエ)』に属す賞金稼ぎ。
なお、どうやらただの人間種のようです。
新時代英雄隊によって『英雄狩り(一般人や子供へ行われる苛烈な訓練や労働)』に遭った後、
実力で自分を攫った連中を撫で斬りにしました。
音に聞くローレットの英雄、
賞金首になった皆さんと戦うためだけに今も新時代英雄隊に属しています。
合理的かつ理性的ではありますが、その性格上、戦闘を避けることは不可能です。
武器は魔力の籠ったクレイモア風の大剣。
クレイモアによる戦闘は【火炎】系列、【乱れ】系列のBSを与える可能性を持ちます。
非常に【堅実】であり、【追撃】も怠ることはないでしょう。
また、受ければ受けるほど技のキレが増すタイプのようです。
恐らくは【復讐】と【背水】技を持っていると思われます。
基本は近接戦闘ですが範囲攻撃や中距離以上の攻撃も出来ないわけではなさそうです。
また、すぐ傍に魔種が居ながらも反転しない
その堅牢な精神性は高い抵抗力と【覇道の精神】として現れています。
●特殊ドロップ『闘争信望』
当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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