＜総軍鏖殺＞ビット再生計画

オープニング

●ビット再生
　ラースビット。
　そう呼ばれる天衝種（アンチ・ヘイヴン）がいる。
　古代遺跡から出土した警備用ドローンに怒りが宿り、動き出した怪物だ。
　自由自在に飛び回り、高出力のレーザーによる攻撃を行うが……そんなラースビットは、元をたどれば警備用のドローンである。
　つまるところ、人類側の機械のはずなのだ。
　勿論「人類」といっても古代人用なので、そうザックリくくるのが正しいかは分からない。
　しかし、それでもと一定量のパーツは回収され続けてきた。
　ラースビットは倒すと怒りの炎と共に大部分が消滅してしまうので本当にパーツ回収だが、そんなものでも集めてみればそれなりの量にはなっている。
　ならば、此処から「ラース」ではない警備用ビットを再生しようと考えるのも、また当然の流れだ。
　幸いにもアーカーシュにはその手のことが得意な人材が揃っているし、ゴーレムとも分かり合えているのだから正常なビットとも分かり合えるはずだ。
　とはいえ、現時点でビットはまだ組み立てられていない。
　そこで……独立島アーカーシュでは、１つの計画が立てられた。
　それすなわち「ビット再生計画」である。

●再生計画のために
「そういうわけで、使えそうな遺跡を見つけたの」
　『木漏れ日の優しさ』オデット・ソレーユ・クリスタリア（p3p000282）は、そう集まった面々に切り出した。
　幸いにもビットの構造は有志の協力によりある程度解析され「こう組み立てれば動くだろう」という段階に至っている。
　それを誰でもできるようにするための組み立て図面も提供されている為、場所と時間さえあれば組み立てることは可能だ。
　そして、それを試験できそうな遺跡もアーカーシュに存在した。
　地上が崩れ地下１階層のみとなった遺跡「冷凍倉庫」である。
　溶けることのない永久氷を各所に仕込み、そこに更に古代技術によるひと手間を加えることで冷凍庫と化した場所だが……現時点ではその冷気が漏れ放題なので、冷蔵庫くらいの性能を発揮するのがせいぜいとなった場所だ。
　故に今では「古代冷蔵倉庫」くらいの呼び名が正しいのかもしれない。
　そんな古代冷蔵倉庫だが、中は非常に広く複数の部屋と通路で構成されている。恐らくは夏場に腐りやすいものなどを保存していたのだと思われるが、今となっては何も残ってはいない。
　しかし逆に言えばそんな場所だからこそ、試験には最適なのだといえよう。
「でも、ちょっと問題があって……天衝種（アンチ・ヘイヴン）が入り込んでるみたいなのよね」
　オデットが試験場所の最終確認として行った時、倉庫の中でチラチラと燃える炎が見えた気がしたのだ。
　あまりに見慣れたそれは、恐らくは怒りの炎だろう。
　古代冷蔵庫倉庫の中には何もないが、天衝種（アンチ・ヘイヴン）などにウロウロされているのも気に入らない。
　となると、ビットの試験稼働も兼ねて「やって」しまうのが丁度いいだろう。
「時間の制約もないから、ゆっくりビットも組み立てられるし……きっと、素晴らしいものが出来ると思うの」

参加者 : 8 人

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参加者一覧（8人）

リプレイ

●ビットを組み立てよう！
　天衝種（アンチ・ヘイヴン）。
　そう呼ばれるモノの中で、ラースビットという天衝種（アンチ・ヘイヴン）がいる。
　古代の警備用ドローンに怒りの炎が宿ったものだが……独立島アーカーシュでは、その部品を集め組み立てを試せる段階まで到達していた。そして今日は、まさに「その日」なのだ。
「これまでの部品と合わせてようやくこの子たちもあるべき姿にできるのね。とはいえビットを組み立てるとは言ったけど技術はないからサイズがいてくれて心強いわ。ちゃんと働けるようにしっかり組み立ててあげないといけないわね」
　『木漏れ日の優しさ』オデット・ソレーユ・クリスタリア（p3p000282）が嬉しそうに言うが、そう……今日この場には『カースド妖精鎌』サイズ（p3p000319）がいる。
「ラースビットとはかなり戦ってるけど、そういえば外装というか機械部分は古代文明のものだしね。組み立てなおして新しいビットを作るの、面白そうだね！」
「魔法的なゴーレムの類や簡易な工作等は幾らか経験があったけど、やっぱり趣深いよね。拡張性も高い様だし手を出し甲斐がありそうだ。完成が楽しみになってくるよね！」
　『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル（p3p000649）も『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト（p3p008357）もサイズを頼りにしているが、サイズはそうした声にしっかりと頷いてみせる。
「ふむ、遠距離支援兵器……ビット作成か……任せてよ！　鍛冶屋として……技術屋として全力で皆のビット作成をサポートするよ！」
　サイズはダブルワークで仲間達にビット製作のコツを教えながら、自分のビットを作ろうと今回は決めていた。
「職人魂、改造、工業技術、各種のの補正、フル活用だ！　あ、難しい所を改造するときはサポートするよ」
　後戦いが終わったら、ビットの作り方の説明書を作っておかないとな……と呟くサイズの姿は、まさに熟練だ。
「流石の私もこういうのを組み立てたことはないんだよなぁ……簡単な自作パソコンなら、かなり昔に一回……あんな感じでいいのか？」
　『紅矢の守護者』天之空・ミーナ（p3p005003）は、ひとまずはと図面を確認。きちんと組み立てられそうか、頭の中でシミュレートしていく。
「これを見る限りなら…なんとか、なりそうか。1から作るんじゃなくて、壊れたものを直すと考えれば、やれそうだ」
　そう、一から設計して作るというのであれば無理が過ぎるが、材料……どころかパーツは揃っていて図面もある。組み立てるだけならば、それに比べれば……ではあるが比較的簡単だろう。
「魔法的なゴーレムの類や簡易な工作等は幾らか経験があったけど、やっぱり趣深いよね。拡張性も高い様だし手を出し甲斐がありそうだ。完成が楽しみになってくるよね！」
「物作りってのはあんまりしない方だが未知の古代技術に触れられるってなるとワクワクするな」
　カインよ『カーバンクル(元人間)』ライ・ガネット（p3p008854）も図面を広げ始めるが、基本が機能的にはシンプルであるだけに技術さえ追いつけば様々なカスタムが可能であると思わせるものだった。
　ちなみにライは『白羽通信』クルザス＝ヘルズを連れてきていた。
　クルザスはアーカーシュにいるし古代技術に興味津々だからビットを再生するって聞けばすぐやってくるはずだ……と言っていたライだが、クルザスは早速図面を見て「ふむふむ」と興味深そうに頷いている。
「ビット再生計画……いいよね。どんなビットができるか楽しみ」
「ふーん、好きにビット組み立てていいんだ、楽しそう」
「僕も頑張って作るよ。みゃー」
　『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探（p3p009413）と『命を抱いて』山本 雄斗（p3p009723）もそう言い合うが……そうして、ビットの組み立てが始まったのだ。

●組み立ての成果は
「私のビットは命中率を重視したいわね。敵を撃破するにしてもどうするにしてもまず当たらなきゃ話にならないもの」
　各自の組み立ては順調に進んでいく。オデットは「まず当てる」をテーマにするようで、サイズのアドバイスを元に部品の選定を進めていた。
「そのためには索敵能力も高くないといけないわね、空間把握と敵の移動を音も含めて感知と予測の精度を高めにしたいとこだけど……」
「なら、このパーツはどうでしょう」
　オデットが妖精であるが故か敬語を使うサイズのアドバイスを受けながら、オデットは部品を組み込んでいく。
　センサー類を多めにしたせいか、それなりにゴツい見た目だが……オデットは、そっとできたビットに口づけをする。
「この子も太陽に愛されて祝福を与えられるように。名前はそうね……サンフラワービット、とかどうかしら」
　サンフラワービット。そう名付けられたビットをオデットが撫でている近くでは、サイズも自分のビットを仕上げていく。
「追加装甲を組み込んだ防御型、丸い形状にすることで、攻撃を受け流ししやすくして、回避力も両立。攻撃面は派手なレーザー弾を放つが、燃費と重量軽量化の為、火力はかなり低い、代わりに護衛対象の攻撃に合わせて一手早く撃つので、相手の回避力削りに役立つ。個人識別は出来ないけど……命令さえすればオデットさんを庇い、守るようにも出来る。これで、この後の試験戦闘ではビットにオデットさんの護衛を任せて、安心して前で戦えるぞ！」
　名前はフェアリーシェルビット。オデットと同じものをベースにしているというのに、随分とコンセプトに差が出ている。
　しかしそれは、この２人に限ったことではない。アクセルもまた、ビットの組み立てを進めていた。
「警備用っていってるから、単体でもビット同士の集団戦でも誰かと一緒でもいけるような性能にしたいね」
　そう悩んでいたアクセルだが、方向性の問題だと気付いてからは早かった。
「……よし、重視するのは「反応」と「通信性能」！　威力や機動性はある程度オミットしたとしても、この2つの性能を上げていくよ」
　アクセルの狙いとしては、まず反応は相手から先手を取って出鼻をくじいたり味方のサポートをできるし、ヒトと一緒に戦うときも動きに追随して連携を取れる。
　通信性能は警備用のビットとしてと、ビット同士で連携する集団戦用に。他のビットから相手の情報を受け取って他のビットに伝えたり、通信妨害とかを受けても警報や警告を出せるように。
「あとは攻撃にバッドステータスでも盛れたらいいんだけど……技術的にもそこまではいかないかなあ。あ、せっかくだし薄い空色で塗って黄色い塗料で小さくオイラの名前のサインも入れておこうかな。個体識別として」
　名前は仮にスカイアクセルビット、といったところだろうか？
「……警備用、なんだよな。敵味方を判別させる方法……。顔認識、声認識、指紋認証……指紋はなし、か。近寄らないと見えないだろうし、近寄れば遠距離攻撃できる利点がない。かといって他2つもそんな正確に作れるかっていうと……なんか皆にいい案がないか聞いてみるか」
　ミーナは考えながらサイズに聞き……元からあった顔認証を活かし、ちょっとレーザーの出力上げる道を選んだ。
　こちらはアーカーシュビットカスタム、といったところだろうか。
　そしてカインだが、こちらはオデットと似たような……けれど、確実に違うものを組み立てていた。
　勿論、作成のコツをサイズに教わりながらではあるが、手先が器用な方だという自覚はあるし、物質透過などのカイン曰く「細工」も用意している。
「こんなこともあろうかと！　ちょっと特殊な工具等の小道具も提供できる。微力ながら協力していこう」
　そう、カインならではの「協力」で仲間たちと連携し、そうしてカインのビット……「シーカービット」が出来上がる。
「ビット名は『シーカービット』。元が警備用ドローンだからこその対象を発見するセンサー類の強化、増設搭載に重点を置いた探査索敵特化型のビットだ。戦闘時は各種センサーで敵対象の情報収集により脆弱部位、弱点となる部位や有効な攻撃手段の模索。また、対象の動作や各種センサーのエネルギー探知により攻撃範囲を予測、他ビットと共有し回避・防御の補助を行うことが出来る。後は申し訳程度のレーザーによる武装での戦闘貢献を……と、こんなところだね」
「皆流石だなあ」
「オレたちも負けてられないな！」
　ライとクルザスのコンビは、こちらは基本に忠実にしつつも独自性を出す方向性だ。
　組立図に沿って作れば出来上がるみたいだが……せっかく作るんだから独自性を出したい所だな、ビットを基本形からどこまで改造できるかのデータになるかもしれないし、というのはライの言葉だが。
「こういう風に手探りでやっていくのは大変だが楽しいから好きだぞ」
　そうして出来上がったのは、偵察性能を重視したビットだ。名前は仮に２人の名前からとって「ライザスビット」というところだろうか？
「機体は速度や小回りを重視して小型に。広範囲を見通せるレンズと動いてる物を感知するセンサーを取り付けたからセンサーが反応したらこっちに信号を送ってくれるはずだ。戦闘に関しても備え付けのレーザーで最低限の援護はできる。よし、これでどうだ！」
「ビットの名前、いいね……僕のビットにも名前つけようっと」
　仲間たちの様子を見ながら、祝音もそう呟く。
「ひと手間加えて……猫さんみたいな動き付けたいな、お目目が光るとか」
　ある程度はサイズに教えてもらっているので、あとは実際に作っていくのが重要だ。
「動物知識で動物の動き方と……あと、えーと……」
　悩みながら、分からない部分は相談しながら、祝音は自分のビット……「ねこさんビット」を完成させていく。
「ちょっと猫さんっぽい、可愛くて身軽な（軽量型の）ビット。着地の時に衝撃を吸収できるように、にくきゅう…風のぷにぷにを底につけよう」
　そう、なんと機体へのダメージを減らそうとする工夫まであるのだ。
「攻撃用のビームは撃てるけど、ちょっと弄って……ねこさんびーーーーーむ！　よし、あとは夜目……というか暗視能力があるし、お目目が光るよ、きらーん。あと、こちらに知らせる時とか敵を引き付ける必要がある時に『にゃーん』って鳴くよ」
　ちなみにこの「にゃーん」は流石にパーツにはないので、なんと祝音の録音である。
「……録音した僕の声、猫さんの鳴き真似だけど……猫さんっぽくなったかな。皆と一緒に戦えるようプログラム……できたらいいな」
　もちろん猫っぽくするには必要と、祝音はファミリアーで可愛い猫を召喚してビットの動きが猫っぽいか確認してみてもいた。
「待って猫さん、ビットにじゃれたら……でもじゃれる猫さん可愛い……避けるビットもすごい……！」
　そして最後は雄斗だが、職人魂を駆使しつつビットを組み立てていた。
　名前は「R－２２B　彗星」。名前の由来は再現性東京で売られている架空戦闘機の模型であるらしい。
「Rは練達、22は型番でBはビットを表している。彗星の名を冠するこの機体は色は青くジェットエンジンの揺らめきは彗星に様に見えるとか」
　なお、これはパッケージ記載のものであるらしく、見た目もちょっと寄せている。
「形状は戦闘機をベースに機体下部にビット本来のレーザー砲を装備。機動性より機動力に特化させて高速で動いて相手を攪乱させる事を重点を置いてみた。機首は鋭くし損傷やエネルギーが残量が残り少なくなったらラムアタックで敵に突き刺さり最後に自爆出来るように火薬を積んである。自爆はロマンってね」
　実際に自爆させるかはさておいて、こうして雄斗のビットも揃い……ラースホーネットの元へ向かい、戦闘が始まった。
「というわけで初陣よ！」
「さあ、行くよ彗星。フォーム。チェンジ！　烈風」
　何やら雄斗が無茶振りをしているが、変形機能はない。残念ながら。しかしノリは重要だから何も問題はない。
「オデットさんがいるからね！　本気で行くよ！　妖精を守る為の武器の本領発揮だ！」
「サイズが張り切ってるのはいいんだけどあんまり無茶してほしくないものね。今回はビットがいるからいいのだけど」
　オデットが心配そうにそう言うが……今回はオデットの言う通りビットもいる。正直に言えば楽勝ムードではある。
「いっけービット！　がんばれー！」
　アクセルの声に応えるようにスカイアクセルビットも仲間と連携し、戦っている。今回組み立てたビットは攻撃力に長けたものはないが、サポート能力に関しては過剰なくらいにある。
「動きは上々ってところかな？　しっかり評価していこう。評価点改善点を探すのは更なる微調整、クオリティアップに欠かせないからね！」
「まあ、ビットの試験稼働も兼ねているとはいえ相手は本物の天衝種だ。気を抜いちゃいけないよな」
「それは勿論だね！」
　カインとライもそう言い合って……しかしラースホーネットは、大方の予想通りにアッサリと倒し終える。
　サポート型が多かったのが、功を奏したのだろう。とはいえ、多少壊れてしまったビットも当然あるので、帰る前に再度の修理は必要……なのだが。
「あ、そうか……修理は可能だった。僕もできる範囲で直すの手伝うよ。ビットさん達も、アーカーシュの仲間……だね。これからよろしく。みゃー」
「じゃあビットの修理と点検班に分かれて、点検班は古代冷蔵庫倉庫の中を点検しましょうか。修理をしてすぐに本来あるべき姿に戻るならよし、そうでなくても修理が必要な個所をメモしておきたいわ。このままでも有用そうだけどね」
「上々、と言っていいか。せっかく物を冷やせるスペースも取れたんだ。ビットのいくつかをここの警備にまわして、食料庫にできないか？」
　古代冷蔵倉庫の探索を続行するオデットにミーナを含む何人かが頷き……そうして、８つのビットも新しくアーカーシュの仲間に加わったのだった。

成否

成功

ＭＶＰ

状態異常

なし

あとがき

命中型「サンフラワービット」
防御型「フェアリーシェルビット」
通信型「スカイアクセルビット」
通常型「アーカーシュビットカスタム」
索敵型「シーカービット」
偵察型「ライザスビット」
軽量型「ねこさんビット」
機動型「R－２２B　彗星」

上記８台のビットが誕生しました！
古代冷蔵倉庫を発見しました！
食材などの冷蔵保管が可能な頼れる施設です！

●運営による追記
　本シナリオの結果により、＜六天覇道＞独立島アーカーシュの技術力が+10されました！