シナリオ詳細
<総軍鏖殺>心安らぐ温もりを
オープニング
●人を受け入れるって大変ですね!
「――大きな銭湯も作りましょう! 疲れ、汚れた身体をお風呂で癒やして温かいご飯を食べる!
明日への大きな活力となります!」
拝廊に夢見 ルル家(p3p000016)の声が響く。ギア・バジリカに集う者たち――ひいては革命派の先を見据えた、雑談混じりの会話のひとつ。
このギア・バジリカに集うのは戦える者ばかりではない。いや、積極的に市民を受け入れているギア・バジリカは非戦闘民のほうが多いと言って良いだろう――なお鉄帝は強さの水準が他国と若干異なるので、一般人は非戦闘民とする。
皇帝が魔種に代わるという大事に続き、各地で起こった混乱と避難生活で人々の心は疲弊している。活力の低下はこの先に大きなマイナス影響があるはずだ。
「勿論男女は別です! あばよシラス殿」
「何で俺の名前が出るんだよ?!」
ギョッとするシラス (p3p004421)。傍らではあらあらとリア・クォーツ (p3p004937)がにんまり。
「まぁ~シラスもお年頃だもんね~」
違うって、と眉間に皺を寄せるシラス。まあ全く興味がないかといえば――気になるなら本人に問い詰めていただこうか!
「お風呂、素敵だね! 冬は厳しいし良いと思うな」
「ええ、そうね! その辺を歩いている技師を説得して(パンチで倒して)連れてきましょう!」
マリア・レイシス (p3p006685)の後にウキウキと続いたのはヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ (p3p001837)。その握りこぶしをもう片手の掌に当てる様は、「いつでも準備はよろしくてよ!」といったところか。
物騒な副音声にコルネリア=フライフォーゲル (p3p009315)がいやいや、と額に手を当てる。流石に怯えさせながら仕事をさせたいわけではない。仕事をしないならまあ多少のあれそれは看過されるべきだろうが、根本的な仕事の意欲は脅して生まれさせるものでもないだろう。自分だったらごめんだ。なんとしても隙をついて逃げ出してやるって思うと思う。
(もしかして鉄帝ってそれが普通……? 流石にないか)
鉄帝にだって真っ当な人間はいる。ヴァレーリヤが、まあ、ちょっと、こうなだけだ。。
「多くはなくとも、金握らせてれば働くだろ……多分。よく働いたやつにゃ更に握らせたりとかやりようはあるし」
「ご褒美ってことだよね? すごくいいと思う! 機械のことはよくわからないけれど、お風呂を作るだけのものは揃っているんでしょう?」
アレクシア・アトリー・アバークロンビー (p3p004630)はヴァルフォロメイから聞いたことを思い出す。ボイラー――確か湯沸かし器のようなものだったか。それと、風呂を作るスペースもあるということだし、最低限"風呂を作る"ことはできるだろう。あとはどのような外観にするか、風呂の種類はどうするかなど、細々したことを詰めていく必要はありそうだ。
「ところで――物理的な説得(パンチ)をしようとしてる人はあとでお説教だ!」
「ア、アレクシア! 違いますのよ!!」
何が違うのか。アレクシアの言葉にぴぇっと怯えの表情を見せたヴァレーリヤだが――アレクシアは優しいけどやさしくない。
●というわけで! 準備はよろしいかしらー!?
「ここにセルフで飲めるお酒の樽を置きましょう! 敢えて樽を置くために壁を抉って、そうね銘柄の種類は――」
「――おかしいなあ、この前お説教したよね?」
「ヒィッ!?」
ぽん、と肩へ置かれた手にヴァレーリヤがぴょんっと飛び跳ねて、それからこわごわ振り返る。振り返るんじゃなかった。
アレクシアへバジリカ裏へ連れていかれるヴァレーリアを心配そうに見るマリアだが、きっと絶対アレクシアなら酷いことはしないはずだと追いかけはしない。あとでいっぱい慰めてあげよう。そうだヴァリューシャの好きなお酒をたくさん用意しておかなくちゃ!
「……あー。ひとまず適当にアタシたちが案出しするっぽいから、細かいところは自分たちで頑張りな。真面目に成果出せば多少の賃金アップはあるし」
「そうですね! メンテナンス含め、詳細な部分は技師さんたちが今後も触りやすいようにして頂ければ嬉しいです!」
嵐のような一幕にぽかんとする技師たちへ、ため息交じりにコルネリアが言えばうんうんとルル家が頷く。きょろりと辺りを見まわしたシラスは露天は難しそうだなと呟いた。
「……違う。断じて違う! 寒い中で入る風呂っていいだろ!?」
「ふーん? そういうことにしてあげましょ。でもそうね、外から襲撃なんてきたら大変だもの」
リアは何か含んだような物言いをしつつ、改めてシラスの意見に賛同する。今のところ風呂予定のエリアは完全室内だし、わざわざ天井をぶち抜く必要もないだろう。
「戻ったよ。思ったんだけれど、鉄帝だとやっぱり木は少ないのかな?」
アレクシアが1人で戻ってくる。その背後を見やれば、ものすごくしょんぼりしたヴァレーリヤがとぼとぼと戻ってきていた。
集められた技師の1人はアレクシアへ首肯する。寒い地域で育つ植物や木々も存在するが、やはり他国に比べれば絶対数は少なく、育つ数も決して多くはない。となれば、木材を使うのは控えた方が良さそうだ。
「癒しは大切だもの。しっかり考えましょ」
「うん! 皆が快適に過ごせるようなお風呂にしようね!」
主に使えるのは石材。となれば加工方法や、石の性質などが利用できれば色々考えられるだろうか。
イレギュラーズは見取り図――とはいっても、がらんとしたギア・バジリカの一角を拡大した図である――を手に、どこへ何を作るか、相談を始めたのだった。
- <総軍鏖殺>心安らぐ温もりを完了
- GM名愁
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2022年11月02日 22時10分
- 参加人数7/7人
- 相談6日
- 参加費---RC
参加者 : 7 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(7人)
リプレイ
●
「この大浴場は決して遊びではなく! そう! 必要なことなのです!!」
そう声高々に宣言する『離れぬ意思』夢見 ルル家(p3p000016)の言葉に、喜色が滲んでいるような気がするのは気のせいだろうか。気のせいなのかもしれない。気のせいってことにしておこう本人そう言ってるし!
実際、これからのギア・バジリカはまだまだ難民の受け入れを行うだろう。人が増えるほど衛生は重要になる。それは常日頃から、非常時だって変わらない。病気はこれらを怠った部分から広がっていくのである。
「ここに休める場所があるんだってことは広く知られて欲しいよね。寒い冬も凌ぎやすくなるように、張り切って良いものを作りましょう!」
「ええ、それじゃあ始めましょか!」
顔を見合わせ頷き合う『蒼穹の魔女』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)と『玲瓏の旋律』リア・クォーツ(p3p004937)。鉄帝の冬は厳しく、暖まれる場所は人々にとって希望にも思えるはずだ。
受け入れた者、あるいはこれから受け入れる者。彼らの中には銭湯やサウナを経験したことがない者もいるだろう。多人数と入ることに最初は慣れないかもしれないが、温かい湯に浸かって語り合える場が人々の心もほぐしてくれたなら。
「皆が楽しめるお風呂、無事にできると良いですわね」
集まった技師に挨拶をする『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)。ちゃんと説得(武力)ではなく説得(言葉と金)で集まってもらいました。
(ついでに私も、えへへ……)
そんな彼らにも見えないよう、あくどい笑みを浮かべたヴァレーリヤだが――まずはお風呂そのものと、そこに付随する部屋がなければ始まらない。
浴室も脱衣所も、規模は大きくとった方が良いだろう。その意見に『慈悪の天秤』コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)は足元を見る。
「木材は限られてるんでしょ? ってことは石材メインか」
硬くて無機質さが目立ちそうだ。何の手も加えられていない足元をトントンと軽く蹴ってみれば、靴裏についていた汚れが落ちる。風呂に入るのだから、床を歩く時は裸足ではあるが――汚れなど少ないに越したことはない。というかせっかく洗っても床が汚れていたら、移動後に浸かった湯が濁るではないか。
「床、汚れがつかないように磨いてもらおうかしらね」
「え、全部ですかい?」
「一部だけ磨いてどうすんのよ」
それは確かに。思わず突っ込んだ技師も口を閉ざす、が、広いのだ。大浴場にと用意された場所はなかなかに広く、全部磨くとなると――技師たちはごくりと唾を飲み込んだ。
「あと天井には暖色の灯りをつけるわよ」
「いいね! きっとお風呂が温かい色に包まれるよ!」
コルネリアの言葉にワクワクとした様子で大浴場予定の場所を見回す『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)。全体的な照明はそれでよさそうだ。
「具体的に何が必要か……というと、なかなか難しいね。深さや広さが違うものを何個か用意してみる?」
うーんと小さく唸ったアレクシアは、指折り候補を挙げてみる。首まで湯に浸かりたい者もいるだろうし、半身浴程度で良い者もあるだろう。子供には浅い風呂の方が安全だ。
「いいわねぇ。何種類か作ってみましょ。
――あぁ、シラス。残念だけど混浴はないから諦めてね~~?」
「一言もそんなこと言ってないんだが!?」
チーム唯一の男性であるから、弄られるのは致し方ないというべきか。それともリアと『竜剣』シラス(p3p004421)という関係だからというべきか。
シラスは咳払いをひとつして、広い室内をぐるりと見渡した。石材なら浴場に清潔さが出てよさそうだ。あの辺りに湯船、こちらには洗い場――と、早々に男湯のレイアウトを考えるシラスの案は、自身も認めるほどに"普通"である。
もう少し遊び心を加えたいと首を捻るシラスの耳に、早速きゃいきゃいと案を出し合いはしゃぎ始めた女性陣の声が届いて。
(ひょっとすると男湯は俺のアイデアで全てが決まるのか? やったね、やりたい放題じゃねえか!)
そう、男性1人なので。別に寂しくなんか無いからな――。
「デカいの造って驚かせてやりたいもんよね。というかこっち寒いわ。身体が冷えりゃ温かい湯が欲しくなるもんよ」
「あら、湯じゃなくてもサウナに入ればポカポカしてくるわよ。コルネリアさんも代謝、良くなるわよきっと」
アタシのことなんだと思ってんだ、というぎろっとした視線にもリアは怯まず。それどころか「自覚あるってことかしら?」みたいな含み笑いを浮かべてコルネリアを煽る。
「ま、それはそれとしてサウナいいわよ! 練達で試してみてから結構はまってるの!」
「バーニャだね! ヴァリューシャの為には必須だよ! 勿論飲酒スペースもね!」
「ええ、ええ! じっとりと暑いバーニャに、冷たいプール! お風呂と言えばこの組み合わせは絶対に外せなくてよ!」
そんな女性陣の強い期待により、バーニャ――崩れないバベルにかけて、ロシアの蒸し風呂――の作成はほぼ即決した。ヴァレーリヤなど、技師職人の傍らで「かまどはもっとこう!」と細かく指示していく熱意である。
「外気浴できる休憩所も必要ですね! ここでお酒を飲めるようにしましょうか」
ルル家は天井を見上げる。せっかくなら天井部分を開閉できるようにして、空気の取り込み具合を調整できるようにしたい。
「ルル家君! 外気浴できる場所に露天風呂を併設してはどうだろう? 疑似的に外の景色を楽しめるような様式にしたいんだ!」
目を輝かせて疑似露天風呂の構想を語るマリア。練達製の強化ガラスなどはどうだろうかと提案すれば、傍らのヴァレーリヤがうんうんと頷く。
「とっても良い考えでございますわー! ゆったりお湯に浸かりながら風景を眺められるなんて、今から楽しみですわねっ!」
――そうだ、男湯にも露天風呂作ろう。空か、海か、果てのない青を眺めたい気分だ。
女性陣の楽しそうな声を聞きながら、シラスはそう思った。いや、純粋に疑似露天風呂は男湯にだって欲しい。絶対風景を眺めながらの風呂なんて気持ち良いに決まっている。大きな窓を作るか、女湯と同様に強化ガラスを嵌めてみるか。
(とはいえ、強化ガラスも大量に使えるとは限らないからな……)
資源は貴重だ。それは大きな一枚板になればなるほど当然高価になると考えたシラスは、技師を何人か呼んでくる。
「この辺りをくり抜いて、鉄格子を張りたいんだ。その隙間に小さなガラス板をはめていく形ならどうだろう?」
「いいっすね!」
「女湯とはまた違った見え方になって面白そうですな」
早速やってみようと道具や資材を持ってくる技師たち。ここは彼らに任せてよさそうだとシラスが視線を巡らせると、ちょうど男湯の方を覗き込んでいるアレクシアと目があった。
「男湯の様子を見に来たんだ。この様子だとこっちも露天風呂かな?」
それなら、とアレクシアが外側へ植物を植えることを提案する。生垣にもなるし、四季を感じることもできるだろう。既に女湯側では「素敵なことを考えるね! そうしよう!」と外側へ植える植物の選定に入っているとか。
「ここは極寒の環境だけど、花も木も強いんだよ」
「なるほどな。じゃあ、男湯でも植えてみるか」
ちゃんと育つし簡単には枯れないのだというアレクシアに頷いて。折角なので女湯側との情報交換といく。
「そっちはサウナか蒸し風呂……鉄帝風に言うとバーニャになるんだったか。それも作ってるんだっけ」
「うん! 皆のこだわりが詰まってるよ。こっちでも作るの?」
首肯するシラス。流石に大浴場も湯をずっと張ることはないだろうし、場合によっては湯船を張る水が貴重な場合もある。そんな時にもバーニャがあれば色々と整うだろうし――鉄帝の男たちにウケそうな気がするので。
「あとは子供たちも入るだろうし、遊べる設備も足したいな」
「遊べる設備?」
目を瞬かせるアレクシアにシラスはにやりと笑う。
例えば、小さなウォータースライダー。お湯の流れる滑り台だ。一度作れば掃除程度のコストで済む。
例えば、噴水広場。床から水が噴き出す仕組み。人がいない時には、出た水で床掃除をすることもできて無駄もない。
(子供が遊ぶなら怪我がないようにしないとな)
滑りにくい素材などは技師たちの方が知っているかもしれない。シラスは手の空いていそうな技師に片手を上げてみせた。
「アレクシア君! ここにハーブ風呂を作るのはどうだい? 疲労回復やリラックス効果のあるハーブを教えてくれたら嬉しいな!」
「良い香りがしそうだね! お湯に入れるなら……」
マリアの言葉に考え込むアレクシア。あとは深い風呂も欲しいが、子供には危険だろうか。いいや、足場や掴まれる場所があれば対策になるはずだ!
風呂の種類が段々と増えていく一方、一部の興味は"風呂以外"に移る。
「滑り止めくらいならいいでしょ? そんなに大量じゃないからさぁ」
そう言って木材で滑り止めの足場を作ってもらうコルネリア。石の床はどうしたって濡れたら滑りやすいし、こればかりは替えがききにくい。
(そういえば、いちいち雪をあちこちから持ってくるつもりかしら)
ふと辺りを見まわす。幸い外側にも面しているし、スペースはある。集雪場を作っておけば、ボイラーへ投入する水、もとい雪はその一か所から調達すればよい。石材で囲ったスペースに鍵付きの扉を付けておけば、安全面も確保できるはずだ。
「飲み物を用意するのはこの辺りですかね?」
「いいんじゃないかしら。あ、ここでアロマを炊くのはどう?」
ルル家に頷いて見せたリアはあちらこちらと呼ばれるアレクシアへ視線を向ける。人気者はこちらも欲しい。何せ草花のスペシャリストと言っても良い。リアの調香の知識と合わされば、リラックスできる素敵なアロマができるはずだ。
「この床の下、温水を流せないかな? お湯を沸かす設備を利用した循環式温水床暖房とか、割と無駄が無くていいと思わないかい?」
床へ視線を向けたマリアに技師たちがはっとして、数人で真剣な話し合いが始まる。より詳しく構想を練り、設計図を引く彼らにこれ以上の助言は要らなそうなので――。
「ねえ皆、お酒も飲めるようにしようよ!! ね! ね!!」
「ここで、ですか?」
「そう! 鉄帝の人たちもきっと飲みたいよ!!」
キラキラとした目で訴えかけるマリアの後ろで、それ以上に目を輝かせたヴァレーリヤの頭がもげんばかりな首肯が見える。どう考えてもあの司祭が一番飲むだろう。いや飲むに決まっている。
「……ん? なぁに、それ。サンドバッグ?」
「そ。絶対に叩く人いると思うぜ」
そんな中、男湯側の様子を伺いに――良い案があったら女湯にも取り入れようと――顔を出したコルネリアは、脱衣所で存在感を放つブツに首を傾げる。まあ鉄帝の性質からして、多分叩く人はいると思う。なんならもう何台か用意してもいいと思う。女湯は――流石に要らないと思うが。
さて、その女湯では。
「神秘的な女神像を建てましょう! 拙者が頑張って掘ります!」
「ハァー!? 神秘的な女神像を建てるのは私なのだけれど!?!?」
「ねえ2人とも! どうしてその像――私そっくりなの!?」
言い争うルル家とヴァレーリヤにアレクシアが叫ぶ。にらみ合っていた2人は同時に『アレクシア(殿)がモデルです(わ)!』と口にした。
「いや、それはいらないでしょう!?」
「何を言いますか! アレクシア殿の神秘的な感じと可愛さは100分の1も出せてませんが、それでも並の女神像より美し可愛いでしょう!」
「俗世に疲れ切ってやって来た湯治客を癒やしてあげようと、壺を傾けて湯船にお湯を注ぐ女神の慈愛の微笑みですわよ!」
「拙者の女神像を女湯の中心に置くんです!」
「お風呂場のセンターは譲れませんわ!」
ぐぬぬぬ、とにらみ合った2人。何事かと戻って来たコルネリアが2体のアレクシア像を見て「どういうことなの」と言いたげな表情を浮かべる。
「風呂場のセンターでいがみ合ってんの? 男湯に持って行けば?」
「「男湯にはザーバ像でも立てて下さい(おきなさい)!!」」
「えぇ……」
じゃあどうすんの、と困惑を深めるコルネリア。まあまあと間に割って入ったマリアがヴァレーリヤにお酒を渡せば、彼女の興味はいともたやすくそちらへ移る。
「おいヴァレーリヤ! お酒飲んでサボらねぇでちゃんと働けよ!」
「あらぁ、立派な女神像を作りましたわよ! お酒の1樽や2樽飲んだってバチはあたりませんわ!」
「マリア! あんたもあまりこいつを甘やかしすぎるんじゃねーぞ!」
「いいじゃないか、休憩は必要だよ! 皆にもサンドイッチを作って来たんだ、リア君もどうだい?」
にこやかな笑みとともに差し出されたサンドイッチは実に美味しそうで、眉尻をあげていたリアも「休憩は必要か……」と勢いを削がれる。
「そうでございますわー! マリィの言う通り! 鉄帝の休日はお酒に始まりお酒に終わりますの! もちろん休憩にだってお酒はつきものですわ!」
マリアにお茶を淹れるヴァレーリヤ――ちょっとそのお茶、器に対してなみなみ入り過ぎではないか?――が歌うように告げる。そのお茶を一滴も零すことなく――だってヴァリューシャが淹れてくれたからね! 零すなんてとんでもない! ――口を付けたマリアは、コルネリアとルル家ににっこりと笑って。
「コルネリア君とルル家君は馬車馬のように働くんだよ」
「今だってサボってない! サボってないじゃん! せめて終わったら一風呂入るくらいはアリでしょ? 一本温めた酒を開けてさぁ!!」
ぴえってしたコルネリアがいつのまにやら確保していた酒瓶をしっかりと抱えるが、ヴァレーリヤの視線が刺さる。凄い刺さる! やばいこれ狙われてる!!
一方のルル家はと言えば、
「馬車馬のように働く!? わかりました……女神像のさらなるディテールアップが必要ということですね!?」
「誰もそんなこと言ってないよ!!! ディテールアップとかしなくていいよ!!!! 今からでも遅くないから別のにしてーーーーーー!!!!!!!!」
アレクシアの懇願が風呂中に響き渡る。技師たちと一通り打ち合わせを終え、平和に着々と施工を進めていたシラスはどうしたのかと言うように女湯の方を見たのだった。
――ちなみに、2体のアレクシア女神像はきっちり中心を図った上で、ぴったり隣り合わせに設置されることになった。が、風呂場が完成した後も時折センターへ移動しようとするかのように、2体の像が動かされているのだとか。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
お待たせしました、イレギュラーズ。
沢山の人に好かれるアレクシアさんだから女神像も建てたくなるよね、うんうん! と思いながら書きました。
それはそれとして、ギア・バジリカに出来た大浴場は難民たちの憩いの場となっているようです。
それではまたのご縁をお待ちしております。
GMコメント
●お風呂を作りましょう!
ギア・バジリカの一角に大浴場を作りましょう。風呂を作るのに必要な職人や、湯を沸かすための移動ボイラー、場所はあります。沸かすための水は雪を溶かして使えば良いでしょう。
大浴場建設予定地はだだっぴろい空間が広がっており、何に使われることもなく暫く放置されていました。掃除が必要ですが、まあプレイングを書くに当たって面白くもない部分だと思うので割愛して良いです。何かやり取りしたいなどあれば書いてもらって問題ございません。
なお、掃除後に男女の風呂を仕切る壁を作ってもらえます。シンメトリーに設計するか、男女それぞれで異なる風呂を設計するかはお任せします。
皆様の仕事は主に『風呂の構想を練ること』です。職人にこれ無理ですわって言われないよう、少し多めに案を出しておくとグッドだと思います。全部グッドだったら漏れなく当方が執筆で悲鳴を上げます。
作成に当たってのトピックは以下の通り。
・主な建材は石材。他に思い浮かぶ材料があればプレイングへ記載して構いませんが、木材はそこまで用意できません。嫌な顔をされるなどではなく、物資そのものとして足りないのです。
・大浴場以外の部屋も考えて良いです。脱衣所とかサウナとか。
・露天は魔物の襲撃が危ないのでNGとします。何か特殊な建材を使う事で、壁はあるが外が見える、などは大丈夫です。
・酒はあります。
●ご挨拶
リクエストありがとうございます、愁です。いいですねお風呂。寒くなって来たから殊更に!
愉しく愉快にお風呂の構想を練ってみましょう。NGの出ているものさえ避けておけば概ねできると思います。鉄帝の職人は優秀なので。
それではよろしくお願い致します。
●特殊ドロップ『闘争信望』
当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
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