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シナリオ詳細

<Stahl Gebrull>兵器と魔種の融合体

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●魔種の犠牲者、魔種となる
(何故、オレがこんな目に遭っているんだ……軍人として、上官の命に従っただけなのに……!)
 アーカーシュ遺跡深部。古代防衛兵器アルトラアームズの内部で、レイジ・アブサードは己を襲った理不尽な運命に憤っていた。いや、内部と言う表現は正確とは言えないだろう。レイジの肉体はアルトラアームズと完全に融合し、「アルトラアームズそのもの」になってしまっていたのだから。
 レイジは鉄帝の軍人で、パトリック・アネル率いる特務派に属していた。だが、魔種と化したパトリックがアルトラアームズを起動させた際に、その魂をアルトラアームズの動力とするべく融合させられてしまったのだ。
 己の肉体がこの古代兵器のものとなってしまった以上、レイジが元通りにヒトとしての生を送ることは絶望的である。自分だけが兵器として生きなければならない――それを生と呼べるものかは怪しいが――不条理は、レイジの精神を蝕むには十分だった。
 そんな状態を強いられたレイジは、己の理不尽な運命に、そして他人はレイジの不遇とは関係なくのうのうとヒトとしての生を送っている事に、憤慨する。その感情はレイジからそう遠くない場所にいる魔種パトリックからの「呼び声」に反応し――レイジは、魔に堕ちた。「呼び声」を放っているのが、レイジをこんな状態にした張本人であるとも知らずに。
 魔種と化したレイジが抱いたのは、ヒトへの強烈な憎悪と殺戮衝動だった。アルトラアームズとなったレイジのボディから、次々と直径一メートルほどの薄い円盤が放出されていく。
 円盤達はレイジのボディから出てくるや否や、殺戮すべき対象を探し求めてアーカーシュ遺跡の外へと向かっていった。
(ヒトは一人残らず滅びろ……! オレだけがこんな体になっているのに、お前らがヒトのまま生き続けるなんて許せねえ!)
 レイジの、この身勝手な念に従って――。

●撃破せねばならぬ、二つの理由
 鉄帝軍とローレットは、アーカーシュ遺跡の深奥に潜伏する魔種パトリックを討伐すべく『鋼の咆哮(Stahl gebrull)』作戦を発動した。
 エピトゥシ城にいるローレットの情報屋、『真昼のランタン』羽田羅 勘蔵(p3n000126)と『夢見る非モテ』ユメーミル・ヒモーテ(p3n000203)は、変動する情勢に対応するべく次々とイレギュラーズ達に依頼を割り振っていく。
 その最中、鉄帝軍の伝令からある情報が記された紙を受け取った勘蔵は、難しい顔をして頭をガリガリと掻いた。
「何とも面倒なことになりましたねぇ……」
「誰か手が空いてる奴を、集めてこようか?」
「お願いします――出来るだけ、手練れの方で」
 勘蔵の様子にただならぬものを感じたユメーミルは、依頼を受けられるイレギュラーズを探すべく部屋を飛び出していった。

「魔種パトリック・アネルに至るルートが、遺跡の古代兵器――アルトラアームズに阻まれています。
 皆さんには、このアルトラアームズの排除をお願いします」
 ユメーミルによって集められたイレギュラーズ達を前にして、勘蔵が依頼の説明を始めた。
 アルトラアームズとは、アーカーシュ遺跡の深奥に眠る古代兵器の事だ。ハイアームズよりも強力であり、動力として人の魂を必要とする。動力とされた者の身体はアルトラアームズと完全に融合してしまうため、その犠牲者を救出することは不可能であった。
「アルトラアームズだけでも厄介なのですが、動力にされた犠牲者が『呼び声』に反応して、魔種となってしまいまして……」
 犠牲者が魔種と化したことにより、そのアルトラアームズのスペックが魔種相当に強化されてしまった。つまり、イレギュラーズ達でなければ到底対処できない相手となってしまったのだ。
「パトリックへのルートを塞いでいることもそうですが、もう一つ皆さんにこのアルトラアームズを撃破してもらわねばならない理由があります」
 重苦しい表情で、勘蔵が続ける。勘蔵の言うもう一つの理由は、このアルトラアームズが『ヒト』たる知的生命体を虐殺する円盤を放っていることだ。
 この円盤を阻止する依頼は既に別に出ているが、発生源となるアルトラアームズを撃破しなければ、いつまでも円盤が放出され続けることになる。いわば、元を止める必要があるのだ。
「魔種パトリックの手によってアルトラアームズの犠牲者とされたことには、同情の余地があります。
 ですが、魔種となりパトリックへの道を塞ぐだけでなく、このような虐殺兵器を放つような存在を捨て置くわけにはいきません。
 どうか、皆さんの力でこのアルトラアームズを撃破して下さい。それが、犠牲にされた人を解放することでもあると思います」
 勘蔵が、そしてユメーミルが、イレギュラーズ達に向けて深々と頭を下げた。

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。
 今回は全体依頼<Stahl Gebrull>のうちの1本をお送りします。
 レイジと融合したアルトラアームズを撃破し、ジェノサイド・ディスクの発生を止めつつパトリックへの道を開いて下さい。
 ちなみに、このシナリオで言う「ヒト」は、PCになりうる種族の知的生命体のことを指します。

●成功条件
 敵の全滅

●ロケーション
 アーカーシュ遺跡内部。500メートル四方の部屋。
 床は平らで障害物などはなく、天井から光で照らされているため、環境による戦闘へのペナルティーは発生しません。

●初期配置
 アルトラアームズ=レイジとセレストアームズは部屋の中央からやや後方に横一列に並んでおり、ジェノサイド・ディスクはその周囲を浮遊しています。
 イレギュラーズ達を発見したら、砲撃戦の出来る距離まで接近しようとするでしょう。

●アルトラアームズ=レイジ ×1
 アーカーシュ遺跡の深奥に眠る古代兵器です。パトリックが起動させ、レイジがエネルギー源として融合させられています。
 レイジが魔種と化してしまったため、融合しているアルトラアームズは魔種相応に強化されてしまいました。また、その特殊性から、このアルトラアームズをアルトラアームズ=レイジと呼称します。なお、レイジの属性は「憤怒」です。
 能力傾向としては高命中、高火力、高抵抗。EXAと防御技術も高く、耐久力に至っては魔種の生命力相応のタフさを有します。イレギュラーズ達よりも巨体であるため、回避と反応は低くなっています。 

・攻撃手段など
 シャイニングフィスト 神至単 【弱点】【邪道】(【封殺】【恍惚】)
  ビームで形成される手です。いわばビームサーベルの掌版。相手の頭部を掴んだ場合に限り、相手にカッコ内のBSを与えます。
 シャイニングフィスト(薙ぎ払い) 神至範 【弱点】
  ビームで形成された手による手刀で、周囲を薙ぎ払います。
 肩部/胸部/腰部/脚部ミサイルポッド 物/中~超/域 【多重影】【変幻】【火炎】【業炎】【炎獄】【紅焔】
  各部のミサイルポッドから、無数のミサイルを撃ちます。
  データが共通なのでまとめていますが、各部ごとに別々の武装として扱います。
 自律行動型大口径ビームカノン 神/至~超/単~域 【多重影】【変幻】【スプラッシュ】【弱点】【邪道】
  全部で6門ある、自律行動するビーム砲です。【多重影】【スプラッシュ】を外して、1門の大口径砲として運用することもできます。その場合、範囲が貫になって【防無】がつきます。
  ダメージは攻撃範囲が狭くなるほど大きくなります。火力が最大になるのは、1門の大口径砲としての運用時です。
 ピンポイントバリア
  部位狙いなどをされた場合に、狙われている場所にエネルギーを集中し展開して防御技術を大幅に引き上げます。【防無】【弱点】【邪道】は無効です。
 【怒り】無効
 【毒】系BS無効
 【出血】系BS無効
 BS緩和
 飛行(能力としては可能ですが、基本的には飛びません)
 
●セレストアームズ ×10
 アルトラアームズ=レイジにコントロールされています。2門のビームカノンと無数のミサイルをメインとする砲戦仕様です。
 ビームカノンとミサイルによる攻撃を、確定で1回ずつ行ってきます。一方、EXA判定は発生しません。
 能力傾向は高命中高火力。防御技術と耐久力も高くなっています。抵抗はそこそこの水準であり、回避と反射は低いです。

・攻撃手段など
 肩部ビームカノン 神/中~超/単 【多重影】【弱点】【邪道】
  2門のビームカノンによる攻撃です。
 各部ミサイルポッド 物/中~超/域 【多重影】【変幻】【火炎】【業炎】【炎獄】【紅焔】
  胸部/腰部/脚部のミサイルポッドから、無数のミサイルを撃ちます。こちらは、まとめて1つの武装として扱います。
 【怒り】無効
アルトラアームズ=レイジによってコントロールされているため、【怒り】によって誘引されることはなく、効率的に敵の命を奪おうとします。
 【毒】系BS無効
 【出血】系BS無効
 BS緩和
 飛行(能力としては可能ですが、基本的には飛びません)

●ジェノサイド・ディスク ×20
 アルトラアームズ=レイジから放出された、浮遊する円盤です。
 ヒトを発見次第、その命を奪おうとします。
 縁から相手に応じて実体とビーム両方の刃を出すことができ、標的となったヒトを斬り刻んでいきます。
 命中、回避、反応が高い一方、防御技術、耐久力は高いとは言えません。抵抗はそこそこです。

・攻撃手段など
 カッター 物or神/超単 【移】【変幻】
  縁の周囲に展開する実体もしくはビームの刃です。実体の場合は出血系BSがこれに加わり、ビームの場合は【弱点】がこれに加わります。
 【怒り】無効
アルトラアームズ=レイジによってコントロールされているため、【怒り】によって誘引されることはなく、効率的に敵の命を奪おうとします。
 【毒】系BS無効
 【出血】系BS無効
 BS緩和
 飛行

 それでは、皆さんのご参加をお待ちしています。

  • <Stahl Gebrull>兵器と魔種の融合体Lv:40以上完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2022年08月31日 22時06分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
鏡花の矛
リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め
紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)
真打
アルヴィ=ド=ラフス(p3p007360)
航空指揮
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
薄明を見る者
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)
流星の狩人
ムサシ・セルブライト(p3p010126)
宇宙の保安官
ライオリット・ベンダバール(p3p010380)
青の疾風譚

リプレイ

●救うことは能わず
 ショコラ・ドングリス遺跡の、魔種パトリック・アネルへと至る通路を、十人のイレギュラーズ達が進む。目的は、この先を阻む古代兵器アルトラアームズの撃破だ。
「んー……この兵器、ネクストで似たようなのなかった??」
 情報屋から渡された資料を手に、『戦支柱』マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)が首を傾げた。ネクストとは練達の創り出した仮想の混沌であり、そこではエクスギア・EX(エクス)と呼ばれる超強襲用高機動ロボットによる戦闘が行われていた。
「あれはまた別か。魔種なんて乗ってなかったし……」
 だが、マニエラは自身でエクスギア・EXとアルトラアームズとの違いに思い至り、一人で納得した。そもそも、エクスギア・EXは人の搭乗が前提であり、パイロットの魂を動力にしたりはしない。だが、アルトラアームズは融合させられた人の魂を動力として動く兵器であり、魔種であろうと何であろうと人が搭乗して操縦するようなものではなかった。
「憤怒と聞きましたが……思ってたより複雑というか、病的というか?
 このバリアの仕様、製作者はさぞかし嫌な思いをしたんでしょうか……もっと嫌な思いさせるんですけどね!」
 アルトラアームズと融合させられ魔種と化した敵の属性に、そしてアルトラアームズを守るバリアについて、『雨宿りの雨宮利香』リカ・サキュバス(p3p001254)は言及した。特定の部位を狙われると、エネルギーを集中してピンポイントでバリアを展開する能力など、確かに忌避すべき経験がなければ早々思いつくものではないだろう。だがリカには――リカ達には、その上を行く自信があった。

「あぁもう! なんて酷い兵器なのかしら」
 憤りのままにそう叫んだのは、『木漏れ日の優しさ』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)。アルトラアームズの犠牲者である鉄帝特務派軍人レイジが魔種となる前に、いや、そもそもアルトラアームズと融合させられる前に止められなかったことが、オデットにとっては悔しくて仕方ない。
「取り込まれ、兵器にされ……その上魔種になってしまうとは……助けられなかった事、残念であります……」
 その悔しさは、『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)も同様だ。叶うことなら、その前に助け出せていればとさえ思う。
「魂を動力源にされることに加えて、呼び声までか……」
「無理やり融合させられたことに同情はするっスけど……」
 『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)も、『青の疾風譚』ライオリット・ベンダバール(p3p010380)も、理不尽な目に遭ったレイジに同情するところはある。だが。
「事は魔種であり、兵器の暴走……軍人としても、早く止めて解放してやるべきだろうな」
「そうっスね。他の人を巻き込もうとするのは感心しないっス。元に戻す方法がないなら……まぁ、倒すしかないっスね」
「そうであります! 虐殺兵器をばら撒く存在を、放置するわけにはいかない! 必ずここで止めるでありますっ!」
 錬も、ライオリットも、ムサシもそれで為すべき事を見失ったりはしない。アルトラアームズと融合させられた時点で、レイジを救出することは不可能なのだ。ましてや、魔種となり、虐殺兵器ジェノサイド・ディスクを放出しているとあっては、ムサシの言うように捨て置くわけにはいかなかった。
(やっぱり、こうなった以上はやるしかないのね……)
 男達の会話を聞いて、オデットは改めて他にどうしようもないことを痛感する。ならば。
(火力は得意分野よ。長引かせて苦しめる前に、さっさと止めるわよ!)
 オデットはそう、固く意を決した。

(全く、古代兵器と融合なんて考えたくもないな……)
 『航空猟兵』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)が、ぼさぼさの頭を左腕でがりがりと掻きながら内心で嘆息する。アルトラアームズに融合されたレイジが救出不可能であることは、アルヴァも理解するところだ。アルトラアームズからの救出方法自体が不明――そもそも、存在しないのだが――であるし、加えて魔種となってしまった以上はどうしようもなかった。
 そうなるとやはり、せめて苦しませずに殺してやるしかない。
「彼が、人であった頃を完全に忘れてしまう前に……」
 アルヴァはそれだけを、ぼそりと口に出してつぶやいた。
「兵器に乗り込んだ……いや、同化されてしまった、か。
 それがそのまま魔種になるなんて、これまた厄介なことを……パトリックめ」
 苦虫を噛み潰したような顔で独り言ちるのは、『戦神護剣』紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)。魔種パトリックがレイジをアルトラアームズの動力にしたために、紫電達はアルトラアームズと魔種の融合体である、言わばアルトラアームズ=レイジと戦わねばならなくなった。
「人類への強い憤怒を感じる。だが恨むならパトリックだろうに……全く、魔種は身勝手で理不尽だ」
 アルトラアームズ=レイジが虐殺兵器ジェノサイド・ディスクを放出していることについて、紫電はそう評した。

「なんとも厄介な相手だが……わかっていればやりようはある。さぁ、こちらの策をお見せしよう」
 アルトラアームズ=レイジが古代兵器と魔種が融合した敵であるにもかかわらず、『導きの戦乙女』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)は自分達の策に自信満々な様子で不敵に笑った。
(この作戦の要はまあ……ブレンダだよな)
 そんなブレンダの笑みを横から眺めている『ヤドリギの矢』ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)も、その事実は認めざるを得なかった。
(こーゆー護衛なんてのは騎士の役目で、俺(狩人)のガラじゃねぇんだけど、少しはサポートしてやらねーとな。
 アイツだけに良いカッコされるのは癪だけどそれはそれ、これはこれ。作戦はキッチリ成功させるぜ!)
 薄明の大弓を握りしめながら、ミヅハはそう意気込んだ。

●六人による一斉同時攻撃
 アルトラアームズ=レイジとの戦場は、五百メートル四方の広大な部屋だ。その中央からやや後ろにアルトラアームズ=レイジやセレストアームズが横一列に並び、ジェノサイド・ディスクがその周囲を飛び回っている。
 イレギュラーズ達がその部屋に入ってくると、アルトラアームズ=レイジはセレストアームズやジェノサイド・ディスクと共に前進した。その動きは、セレストアームズやジェノサイド・ディスクがアルトラアームズ=レイジにコントロールされていることもあるが、一糸乱れぬものだ。一方、イレギュラーズ達は足並みを揃えるために、入口付近で待機。
 そうして彼我の距離が徐々に近くなり、七十メートルを切ったところで戦端は開かれた。

「行くぞ!」
 ブレンダの声と同時に、ブレンダが、そしてブレンダと心を一つにしたリカ、マニエラ、紫電、ムサシ、ライオリットの五人が一斉に動いた。
「ピンポイントでバリアを貼るようだが、同時に複数個所を攻撃すれば守り切れまい!」
 それが、ブレンダの言う「策」だった。そしてこの策は、見事に的中した。ブレンダの言うとおり、同時に複数箇所を攻撃されればエネルギーを集中すべき先は分散し、一カ所以外を守ることは不可能だった。
 ブレンダはフランマ・デクステラを手にした右手を縦に、ウェントゥス・シニストラを手にした左手を横に振る。するとフランマ・デクステラの刀身から炎の塊が放たれて突き進み、それをウェントゥス・シニストラの刀身から放たれた風が後押しして加速させる。狙ったのは、アルトラアームズ=レイジの自律行動する大口径ビームカノンのうちの一門。
「さぁ、あのポンコツをバグらせましょう! ――穿て、グラム!」
 膨大な魔力を纏わせた魔剣グラムを、リカは横薙ぎに振るった。すると、魔剣グラムの刀身から全てを斬り裂くが如く雷が迸り、ブレンダが狙ったものとはまた別の大口径ビームカノンの一門へと突き進んでいく。
「――装甲が厚い? 火力も高い? そんなの、動けなければただのカカシだ。
 オレはそういうのは、何度も何度も異世界で見飽きてるんだ。時空ごと叩き切られて、ブリキに戻ってしまえ!」
 紫電は特式・紫電影式【黒猫】改を抜刀し一閃。その一閃は、紫電とアルトラアームズ=レイジの距離など存在しないかのように、アルトラアームズ=レイジとその左側二機、右側二機を空間ごと斬り裂かんとする。
「流石に何度も叩けば、いつかは割れるだろう?」
 瞬く間にアルトラアームズ=レイジとの距離を詰めたマニエラは、跳躍してブレンダやリカが攻撃したものとはまた別の大口径ビームカノンの一門に触れた。マニエラが触れた瞬間、闘気によって練り上げられ生成された無数の棘が大口径ビームカノンを貫かんとする。さらにマニエラは、追撃とばかりに無数の拳を大口径ビームカノンに叩き付けていった。
「行くであります! まずは、そのミサイルポッドを灰にするであります!」
 ムサシが狙ったのは、大口径ビームカノンではなく胸部のミサイルポッド。敵を灰と化して殲滅せんとする聖なる光が、ミサイルポッドごとアルトラアームズ=レイジの胸部を覆っていく。
「オレはこれッスね。行くっスよ」
 まだ誰も狙っていない大口径ビームカノンの一門を選ぶと、ライオリットは飛翔して突撃。蒼き彗星と化したライオリットは、大口径ビームカノンを レヴィアン・セイバーの刃で貫かんとする。
「ピンポイントバリアで防がれたでありますか! ですが!」
 イレギュラーズ達の攻撃のうち、胸部ミサイルポッドを狙ったムサシの聖光は展開されたバリアによって弾かれ、ほとんどダメージを与える事は出来なかった。だがその間に、大口径ビームカノンのうち一門は炎に包まれてその一部を解かされ、別の一門は雷に包まれ内部をスパークさせられた。マニエラのラッシュを受けた一門は一部が変形するほどに歪み、ライオリットに突撃された一門は深々とレヴィアン・セイバーの刃で串刺しにされた。
 さらに紫電の一閃は、アルトラアームズ=レイジと四機のセレストアームズの装甲の一部を空間ごとスッパリと斬り取り、その圧によって瞬時ながら行動自体を不可能とした。
「史上最高(Greatest of All Time)の狩人ミヅハ・ソレイユが相手だ!」
 ミヅハはそう高らかに告げると、古代兵器の右翼、セレストアームズ三機とジェノサイド・ディスク六機に向けて無数の矢を放つ。よくよく見れば、ミヅハがただ矢の雨を降らせているだけでなく、途中から性質と範囲を切り変えていることが見て取れるだろう。
 まず右翼全体に向けて楔を打ち込むが如く矢を放ち、十分に楔を打ち込んだところで範囲をその右半分に絞り、威力を増した矢を撃ち込む。二度目の矢は一度目の矢が作った装甲の傷に命中し、その傷を抉るかのように深々と内部へと侵入していく。最右翼のジェノサイド・ディスク三機が、矢の威力に耐えきれずに爆発を起こし、その残骸が地に墜ちた。
「空の掃除なら任せとけ。俺の得意分野だ」
 アルヴァはジェノサイド・ディスクと対峙すべく飛行。
「あーらよっと、墜とせるもんなら墜としてみな」
 挑発を交えながら、アルヴァは右翼から中央にかけてのジェノサイド・ディスク六機とセレストアームズ四機に、対人狙撃銃HOUND&CHIMERA Model 7360を連射する。弾丸は対人狙撃銃から放たれたものでありながらその威力は絶大で、特に右翼寄りのジェノサイド・ディスク三機は撃破されて爆発し、中央寄りのジェノサイド・ディスクも撃墜寸前にまで追い込まれた。
「どうやら、ジェノサイド・ディスクとやらは随分と脆いようだ。オデット、合わせてくれ」
「いいわよ! 妖精と精霊の全力全開、見せてあげる!」
 ここまでで二十機中六機のジェノサイド・ディスクが撃破されたのを確認した錬は、ジェノサイド・ディスクの数を減らした方が戦術上有効と判断し、左翼のジェノサイド・ディスクに目を向ける。そして、オデットに連携を求めた。もちろん、オデットにそれを断る理由もなく、二つ返事で快諾する。
 錬は式符を取り出すと、鏡を鍛造した。もちろん、ただの鏡ではない。陰る太陽を写し、敵の命運を漆黒に塗り替える魔の鏡だ。そして錬は、その鏡を左翼のジェノサイド・ディスク六機とセレストアームズ四機に向けた。鏡に映ったジェノサイド・ディスクとセレストアームズが鏡面から滲み出る暗黒の雫に包まれると、本物のジェノサイド・ディスクとセレストアームズの命運が歪められ、さらには明らかにダメージが入った様子を見せた。
 その敵左翼の端の方を狙い、オデットは猛暑の砂漠を思わせる熱砂の嵐を吹かせた。猛烈な砂嵐がジェノサイドやセレストアームズに絡みつき、動作を封じると共に強い風圧によってダメージを与えていく。既に錬によってダメージを受けているジェノサイド・ディスクのうち三機が、この砂嵐に耐えきれずに爆発して撃破された。
 アルトラアームズ=レイジはここまでの経過から紫電を危険視し、動けるセレストアームズとジェノサイド・ディスクに紫電を集中攻撃させた。十本を超えるビームの光柱と雨のように延々と降り注ぐミサイル、そして実体とビームの刃が紫電を襲う。ここまで攻撃を集中されると紫電としても回避はしきれず、重傷を負った。
(やはりオレの危険度を認識されたか……)
 紫電にとって、この事態は予測出来たことではあった。だが、紫電が倒されてしまうとアルトラアームズ=レイジやセレストアームズの行動を封じる戦術は瓦解してしまう。
(いわば綱渡りだな……だが、成し遂げてみせるさ)
 傷口を押さえ、よろけながらも、紫電は不撓不屈の精神でアルトラアームズ=レイジを見据えた。

●解放の刻
 ジェノサイド・ディスクは早々に掃討され、セレストアームズも多少堅固ではあったがやはり次々と撃破されていった。
 そしてイレギュラーズ達は、アルトラアームズ=レイジの遠距離兵装――大口径ビームカノンと各部のミサイルポッドの破壊に成功する。だがそこまでに、アルトラアームズ=レイジの反撃によって紫電が可能性の力を使わされ、やむなく紫電の盾とならざるを得なかったリカも浅からぬ傷を負わされている。また、ミヅハ、オデットもアルトラアームズ=レイジからの遠距離攻撃によって深手を負い、オデットもまた可能性の力を費やすことになった。
 そして戦闘は、アルトラアームズ=レイジが遠距離攻撃の手段を奪われてシャイニングフィストしか使えなくなってからがようやく後半戦と言えた。その間にリカもパンドラの力を費やすことになり、マニエラ、ムサシが深手を負っている。
 だが、イレギュラーズ達が傷つく一方で、アルトラアームズ=レイジにもまた傷ついていた。装甲は見る影もなく歪み、あるいは剥落し、内部からはボロボロと部品がこぼれ落ちて各所でスパークを発している有様だ。

「そろそろ、墜ちてもいい頃なんだがな」
 既に勝負は見えている、あとは倒しきるだけだとばかりに、ミヅハはただひたすらに弓を乱射する。前半で楔を穿ち、後半で傷を広げる矢の雨を受けて、アルトラアームズ=レイジは矢だらけになった。
「お前の仇は仲間が討つ――だからせめて、安らかに」
 アルヴァはアルトラアームズ=レイジに急接近すると、胸部の中心に向けてHOUND&CHIMERA Model 7360の方向を向け、タン、と撃った。強烈な雷を帯びた弾丸はアルトラアームズ=レイジの内部へと着弾すると、その各部にさらに激しいスパークを引き起こす。
「――こんなことになったのは、かわいそうだし同情もするわ。
 だからこそ、安らかに眠ってもらうのが私たちにできることなのよ」
「ああ。もう終わらせて、その兵器から解放してやる」
 もう終わらせて眠らせることがレイジへの手向けだとばかりに、オデットも錬も勝負を決めに出た。
 オデットはアルトラアームズ=レイジの後背に回り込むと、自身の魔力を掌の一点に集中し、アルトラアームズ=レイジの背部に叩き付けた。同時に、錬が式符から五行の循環の宿る斧を鍛造し、五行の循環から生成された魔力を斧ごとアルトラアームズ=レイジの胴部に叩き込んだ。
 オデットと錬から魔力を叩き込まれたアルトラアームズ=レイジは、最早動く事もままならず、ガクガクと痙攣するように震えている。部品の脱落、各所のスパークももう限界だろうと言うほどに酷くなっており、限界なのは目に見えて明らかだった。だがなお、アルトラアームズ=レイジは憤怒と憎悪のままに動き続けようとする。
「魔種だろうとポンコツだろうと死ねば人——人として悪魔に殺される事に、感謝することですね」
「そこまで執着できるのは私には理解しがたいが――何にせよ、これで終わりだ」
「貴様の怒りはただの八つ当たりだ! なぜ軍人になったのか、何を為したかったのか。
 それを忘れてしまった貴様に、私たちができるのは終わらせることだけだ」
「これ以上、貴方が罪を重ねさせないために……! 今ここで、止めてみせる!」
「そうっスよ! これでもう、終わらせるっス!」
「迸れ、紫電の太刀よ! 怒りに呑まれた魔機を斬り、空虚なる魂に安らかな眠りを!」
 リカが、マニエラが、ブレンダが、ムサシが、ライオリットが、紫電が、アルトラアームズ=レイジを完全に停止させて「終わらせる」ために、最後となる攻撃を仕掛けた。
 雷を纏った魔剣が、無数の拳が、炎と風の長剣が、焔を纏ったレーザーソードが、二振りのレヴィアン・セイバーが、紫電の本体である刀が、次々とアルトラアームズ=レイジの胸部や胴部に突き立てられていく。何本もの刀剣に串刺しにされたアルトラアームズ=レイジは、断末魔のようにガクリと大きく震えると、それ以降動く事はなかった――。

成否

成功

MVP

ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
薄明を見る者

状態異常

オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)[重傷]
鏡花の矛
リカ・サキュバス(p3p001254)[重傷]
瘴気の王
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)[重傷]
記憶に刻め
紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)[重傷]
真打
ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)[重傷]
流星の狩人
ムサシ・セルブライト(p3p010126)[重傷]
宇宙の保安官

あとがき

 シナリオへのご参加、ありがとうございました。アルトラアームズ=レイジは皆さんの活躍によって撃破され、遺跡の奥への道は開かれました。また、これ以上ジェノサイド・ディスクが放出されることもなくなりました。

 MVPは、六人同時攻撃の要となったブレンダさんにお贈り致します。

 それでは、お疲れ様でした!

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