PandoraPartyProject

シナリオ詳細

失われたシンパティクシュ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 混沌の世には様々な存在がいるものだ。
 人の枠組みだけでも多彩な種族がいて。更には精霊や魔物も含めればどれ程の数か。
 故に動物の類にも相応の多様性があるものだ……が。

「ウゥ~! キャウ! わうわう!!」
「ったく。この野郎……静かにしてろ! 飯抜かれてぇのか!?」
「おい。折角の商品なんだからな……殴ったりはするんじゃねぇぞ?」

 時として『ソレ』は商品にもなるものだ。
 幻想王国北部に存在するレジントラ街。山中に挟まれる様に存在するその街には……希少動物の密売人がいた。その名の通り価値の高い希少な動物を狙い、そして資産家などに売りさばく事を目的としている連中である。
 そして今宵彼らが捕らえたのは――巨大なポメラニアンの様に見える動物であった。
 仮に『でかポメ』と称そうか。でかポメは、麻酔銃か何かで捕獲されたのか……体は随分と疲弊している様に見える。強引に体を弛緩された影響が出ているようだ――更には自由に動けぬ様に、でかポメの身体がギリギリ入る程度の檻に入れられている。
 無理やりに人里に降ろされ、満足に動く事すら出来ぬ環境。
 それはでかポメにとって想像を絶するストレスになっている事だろう――
「ウゥ~~……グルルル……ッ!」
 その証左か、檻の中から必死にほえたてている。
 非常に人間を敵視している様だ。毛を逆立たせ、あまり大きくない牙を頑張って見せつけ、威嚇せんとしている――尤も。檻に囚われしでかポメに出来る事などない。密売人達は、でかポメの抵抗を小馬鹿にする様に嘲笑うのみ、だ。
「きゅ~……クルルッ……」
 やがて疲弊し、何とかして座り込むでかポメ。
 垂れる耳。伏せられる瞼。疲れ果てたのか、舌を出して息は荒く。
 あぁこれから己は果たしてどこに連れていかれるのだろうかと――
 不安の色に染まっていた。


 ――わん! わうわう、きゃう!!

「ポメ太郎――どうした。其処になにかあるのか?」

 同時刻。偶然にもレジデント街に訪れていたベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)は、いつもと様子が違うポメ太郎の跡を追いかけていた。ポメ太郎はなにやら焦る様子で周囲を窺いながら走っており……やがて行き着いたのは路地裏の突き当たり。しかしポメ太郎は未だ壁に向かって何か必死に吠え立てている。
 更には壁に体当たりまでするものだ。もふもふなポメ太郎は跳ね返されてフラン・ヴィラネル(p3p006816)やタイム(p3p007854)の足元に転げてきてキャッチされる――
「わわ、ホントにどうしたの? うーん?」
「待って。これ……壁じゃない。隠し扉になってる!」
 然らば不審に思ったフランとタイムが壁をよく見てみれ、ば。
 それは壁に非ず。精巧に作られた隠し扉であった。
 しっかりと力を抑えて押せば、少しずつ開いていく。このような薄暗い路地裏……普通の人であれば寄り付きすらすまい。一体何があるのかと、隠し扉の先の様子をリュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)や笹木 花丸(p3p008689)が見据えて。
「……大量の檻が見えますね。サイズ的に人と言うよりは、動物を収めるぐらいの様な……もしかすれば此処は密売の拠点か何かでしょうか。少なくとも真っ当な施設ではないですね」
「あっ、見て! あそこ、でっかいポメ太郎みたいなのがいるよ……!!」
 然らば敏いリュティスはすぐさま『此処』が一体どういう施設なのか推察を果たし。
 更に奥へと視線を滑らせた花丸が見たのは――一際大きな檻だった。
 疲れ切っているでかポメ。近くでは酒を飲み愉快そうな密売人共の姿も見えて……
「……ひでぇ事しやがる。完全に怯えてるじゃねーか」
「ポメ太郎が騒がしかったのはコレか――なんとか助けてやれねぇかな」
「幸いにして向こうは気付いていないようですね……ただ、大きなポメ太郎さんは、私達の姿も警戒してしまうかもしれません。なんとか上手く、落ち着かせる事が出来ればいいんですが……」
 さすれば秋月 誠吾(p3p007127)に新道 風牙(p3p005012)、リンディス=クァドラータ(p3p007979)らも、密売人たちに見つからぬ位置から言を紡ぐものだ。
 敵は油断しきっている様に見える。恐らく密売人たちを倒すのはそう難しい事ではあるまい。
 ……問題はでかポメ自身の方だ。
 彼から感じる気配を察するに――人間を全く信用してないだろう。
 イレギュラーズ達が近付いても、イレギュラーズ達に威嚇する可能性もある。
「わぅ……」
「ああ、安心しろポメ太郎――必ず助け出してみせるさ」
 だが。このような出来事に気付いて放っておけようか。
 何より。不安そうに、主人たるベネディクトを見上げてくるポメ太郎もいるのだ。
 彼を落ち着かせる様に一撫でしながら――救出の為の思考を巡らせていた。

GMコメント

●依頼達成条件
 密売人をぶちのめして、でかポメを救いましょう!

●フィールド
 幻想北部に存在するレジントラという街です。
 その一角に動物達を密売する者達のアジトが存在し、ポメ太郎が見つけ出しました。
 アジトは少々薄暗く、大小さまざまな檻が存在してます。その為、隠れ潜み奇襲する事は簡単でしょう――敵もどうやら誰かが侵入するとは思っていないのか、酒を飲んで油断しています。

 なんとかでかポメを救ってあげてください!

●でかポメ(仮称)
 人間一人が乗っても大丈夫なぐらいの大きさのポメラニアン(?)です。
 本来は人懐っこい穏やかな生き物……なのですが、心無い密売人にかなり乱暴な方法で捕獲されたのか、今は非常に周囲に対し敵対的な様子を見せています……ウゥ~~グルルッ! ワウワウッ!!
 近付いてくる人間にはわんパンチしたり噛んでこようとします。
 でも根はやっぱり優しいのか本気の一撃ではない……気がします。

 毛は柔らかく、ふっかふかです。
 本来、親しい人間には親愛の証として舐めてくる事もあるのだとか。ちなみに『でかポメ』というのは仮称であり、無事に救出出来たらなんらか名前を付けてあげてもいいかもしれませんね。でも『でかポメ』でも喜ぶかもしれません。複数匹いるかは、不明です。

●密売人×6
 各地の珍しい動物などを違法に捕まえ、各地に売りさばく闇商人です。
 今回はでかポメを無理やり捕獲した様です……銃や鞭などを所有しており、時折戯れにでかポメに振るうなどして、無意味に怖がらせたりしています。

 しかし戦闘能力はあまり優れていない様ですので、戦闘自体はさほど強い抵抗はないと見ていいでしょう。彼らよりもむしろでかポメをどう落ち着けるか、という方が焦点になりそうです。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 失われたシンパティクシュ完了
  • GM名茶零四
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年07月31日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
秋月 誠吾(p3p007127)
虹を心にかけて
タイム(p3p007854)
女の子は強いから
リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)
黒狼の従者
リンディス=クァドラータ(p3p007979)
ただの人のように
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華

リプレイ


「気を抜いたら丸っこくなるが、基本的に有能なポメ太郎が走り出すから何かと思えば……こんな現場を見つけるなんてな。ポメ太郎がいなけりゃ分からなかったかもな」
「うん驚いたね! まさかこんな隠し扉を見つけるなんて……
 大手柄だよポメ太郎っ! 今日は帰ったらおやつをご馳走しちゃうねっ!」
「わう! わうわう~♪」
 ポメ太郎が見つけた密売現場を覗き込む『虹を心にかけて』秋月 誠吾(p3p007127)と『竜交』笹木 花丸(p3p008689)はポメ太郎を褒め称えるものだ……『おやつ~!? ホントですか~!?』という表情で花丸達の足元を走り回り……ハッ!?
 しかし気付いた――ポメ太郎は『あ、あの、おやつ貰ってもいいですよね……!?』とメイドたる『黒狼の従者』リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)の方を上目遣いで見据える事を――! さすれば。
「ふむ……確かによく見つけましたね、ポメ太郎、お手柄です。ご褒美におやつ……と言いたい所ですが体重と相談してからですね。なんだか、ここ最近またふっくらしてきたように思えますからね……確認ですが、つまみ食いはしていませんよね?」
 し、してません! してませんよ、ボクは!
 そんな感じの様子で眼を逸らすポメ太郎。些か訝し気な視線をメイドが向けるものだが……まぁおやつはともかく。見れば、でかポメは随分と疲弊している様に見える。まずは彼方からだ。
「あぁ――突入の策を考えておこう。俺達が一気に強襲すれば密売人は左程問題ではないだろうが……問題は、あのでかポメだろう。これ以上怖がらせるのは忍びないな」
「……ひとまず中をもう少し確認してみます。大きいポメさんは……それからですね」
 故に『黒き葬牙』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)はポメ太郎を優しく撫でながら気配を殺して潜み、同時に『夜咲紡ぎ』リンディス=クァドラータ(p3p007979)は偵察の為にファミリアーのクーちゃんを使役して中を確認。
 ……近くで見ればでかポメは表情からして悲しそうだ。
 やはり密売人共は速攻で捻じ伏せ、でかポメを一刻も早く宥めるのが最善であろうか。故に。
「しゃあ行くか! ポメ、後で俺からもリュティスさんにおやつ増量を具申してやるからな――!」
「びっくりしたよー、ポメ太郎がいきなり壁にアタックしはじめるんだもん!
 うん、でもポメ太郎の大手柄、無駄にはしないよ……!
 まずは悪い人を『めっ』して、でかポメちゃんを救うぞー!」
「んんんん……なるほど密売人。つまり悪い人達ね。しかもポメ太郎に似た子をあんな狭い檻に捕まえるなんて……酷いわ! 勿論、すぐ突入よね……!」
 『よをつむぐもの』新道 風牙(p3p005012)に『ノームの愛娘』フラン・ヴィラネル(p3p006816)。そして『揺れずの聖域』タイム(p3p007854)も突入に賛同し、でかポメ救出作戦を――始めるものである!
「な、なんだお前ら……ぐぁあ!?」
「貴方達に用は在りません、早急に抵抗を止めて――跪いて頂きます」
「でかポメをこんなに虐めやがって……! 後でしっかりボコってやるからな!」
 敵が気付く前になだれ込もう。リュティスが泥を流し込み、密売人共の動きを鈍らせれば風牙が薙ぐ様に一人ずつ始末を付けて行く。
「狭い所に閉じ込められて可哀そうに。直ぐに助けてやるからな」
「花丸ちゃんは怒ったからね! でかポメの怒りを思い知れー!」
 同様に誠吾や花丸も即座に密売人を叩き伏せる様に動こうか。
 さすれば。でかポメが驚きて何事かと視線を巡らせれば――
「大丈夫! すーぐ助けてあげるからね! こんなひどい人達は……ええと、そう! 呪いあれー呪いあれー! お財布落としたりタンスに小指ぶつけたり、えーと石とか口内炎とか三個ぐらいできちゃえ!」
 フランが手をぐーにしてアピールするものだ。あたし達は味方だよ! と。
 ……そして密売人共はあっけなくイレギュラーズ達の前に叩きのめされる。なんかフランが最後あたり凄い呪いを掛けようとしていたが……まぁその辺りの恐怖はともかく。血が流れぬ様に加減した上でもこれだけの面々に攻勢を仕掛けられれば誰が耐えられようか。
「わたし達に慈悲があってよかったわね。ま、後で憲兵には突き出すけれど! ぷんぷん!」
「悪人さん達は向こうの見えない方にひとまず置いてきますね」
「ええありがとうございますリンディスさん――では彼方のほうで私は売人の皆さんと『お話』がありますので、少々お待ちいただければ……」
「ああ待った待った。俺も行くぜ――聞きたい事があるしなぁ? オイ。
 お前らの他に仲間はいるのか? こういう生き物を裏で捌くルートでもあるのか?」
 そしてタイムやリンディスが悪人共を縛り上げ、でかポメから見えぬ所へと運んでいくものだ……さすればリュティスと誠吾が無表情のままに赴きて、連中から問いただすものだ。
 檻の鍵と餌の在処を。それから類似事件発生の可能性を。
 言わない? あぁでしたら結構です。
「――憲兵に突き出されるよりも他の道をお選びになるようですね?」
 ナイフ一閃。ソレは当たらず地面に突き刺さっただけだ、が。
 次は貴方達の身の何処かに当たるかもしれませんね――
 言外に。斯様な視線と圧をもってして彼らと平穏に交渉を進めれば……やがて吐くものだ。この地の全ての情報を――さすれば後はでかポメを解放すれば万々歳で全て解決……
「グルルッ……! キャンキャン!!」
「……やはりそう簡単にはいかないか」
 とは、いかなかった。でかポメがベネディクトらを威嚇している――最早でかポメにとって『人間』と言う枠組みが全て敵に見えるのだろう。毛を僅かに逆立たせ『ちかよるなー!』と言っているかのようだ……
 悪しき人間はさっさと捕縛したが。
 どうもここからが本番の様だと……誰もが思う所であった。


「わわ。でかポメはやっぱりちょっと気が立ってるみたいだね……!
 でも、まだまだこんな程度で花丸ちゃんは諦めないよ……!」
「っ……! 本気で噛んでは来ないみたいですが、でも無理に進めば分かりませんね……ここは慎重にならねば……!」
 そして花丸やリンディスはでかポメを落ち着けようと、目線を合わせつつゆっくり近づかんとするものである……例え構えようと叩かれようと、危険がないと伝える事が最優先だ。
 ――こんなの痛くない。だってこの子達はそれだけ怖くて辛い思いをしてきたんだもん。
「これぐらい、何てことないよ……!」
「グルル~! ワンワン!!」
 信じてもらうのだ。此処にいる人達はあの人達みたいに酷い事はしない、と。
 帰りたい場所があるのなら帰りたい場所に返してあげる。
 ――だから信じてほしい。
 花丸はその身を賭して……でかポメへ意志を伝えんとする。私達を、信じて。
「でかポメちゃん! ん? でかポメちゃんで良いのかな……?
 まぁいいや! とにかくフランだよー、ちょっと体見せてね!」
「しっかし、でかくてかわいいなぁ……こんなにかわいいのを、こんな狭い所に押し込めやがって連中……! よく見りゃあちこち傷ついてるし汚れもひでえ。クソ、もう一発殴ってくるか……!?」
 フランはゆっくりとでかポメに近付く。近づけば吠えてくるものだが、まずは怪我がないかの確認が最優先であると……杖を置いて状態の確認を行う。密売人共に傷つけられたらしき箇所があれば治癒の術を振るおう。
 さすれば風牙もでかポメの様子を見て、大分粗末な扱いを受けていた事に改めて気付くものだ。だからこそ機敏な動きは見せず、刺激しない様にしながら近づいて撫でてやる事を試みて。
「むむ、こわくないよ~だいじょうぶだよ~? ほら。さっきの人達みたいな武器は持ってないから! だからね。ちょっとだけ大人しく――ああああ! 髪が! 髪が噛まれてる~!? ぴえー! ポニテの先っぽ食べられるー! たすけてー!」
「あぁフランちゃん! 大丈夫、暴れたらむしろ千切れるわよー! ゆっくり、ゆっくり歩いてー! ほら、でかポメ! こっちにご飯があるわよ! きっとフランちゃんの髪より美味しいわよー!」
「ふぅむ……では此方もどうでしょうか。ポメ太郎用のボールです――
 ポメ太郎はこれでいつも運動していますからね。
 でかポメさんもこれで気が落ち着けばよいのですが……」
 が。でかポメはフランの髪の先っぽを甘噛みするものだ――それは『はなれろー!』という意思表示だろうか。はむはむしてフランを引きはがさんとすればタイムが急いで対策を打たんとするものである。それが餌で引き寄せる作戦……!
 同時にリュティスもポメ太郎用ボールを足元へと転がすものだ。
 一瞬『え、遊びタイムですか!?』とポメ太郎の方が釣れそうになったが、今は違いますよと諭し、でかポメの反応を待つものである――
「ウゥ~……グルルル? きゃう……」
「うう、なんだろう。これじゃ弱いかなぁ……やっぱりおやつが良い?
 ベネディクトさん、食べやすそうなおやつ系もあればお願いします!」
「ああ任せてくれ。すぐに良さそうなのを見繕ってくる――
 良いか、ポメ太郎。俺が居ない間はみんなの言う事を聞いて協力してあげるんだぞ」
 しかし餌にもボールにも反応が薄い。全く反応しない訳ではないのだが、まだ警戒心が強い故だろうか……故にタイムはベネディクトへと言を紡ぎ調達をお願いするものだ。
 であればポメ太郎は『わふ!』と元気よく吼えて、ベネディクトを見送りて。
「うーん。水や食べ物に反応してくれればな……俺もなにか探してくるか!
 リンディス、なんかいい感じの食べ物とか知らないか?」
「そうですね……あ、ミルクとかどうでしょうか? 犬や猫が好む代物の」
「ははぁそいつはいいな。後は濡れタオルとかも持ってきて、汚れ拭いてやっか……!」
 そして風牙もまたでかポメが好みそうなミルクを探しに出かける。
 犬用のミルクなら好むのではないかと。
 そして上手く事が進んで近寄れれば汚れも綺麗にしてやりたい所でもあるし……
「うーん。あ、そうだ! ポメ太郎、花丸ちゃん達が皆を助けに来たって伝えること出来る? こういうのはやっぱり、犬のポメ太郎だったら聞いてくれると思うんだよね。同種……同種? だと思うし!」
「あぁ……やっぱ人間を警戒するな、って方が無理だよな。
 大人数で世話するのも怖がらせる原因になるかもしれねぇ。
 ――ポメ太郎、行けるか?」
「わぁん! わぉぅ……わんわん!」
 同時。ポメ太郎を預かった花丸と誠吾は、ポメ太郎がいれば説得の起点になるのではと思考するものだ。でかポメも、同種の言葉なら聞いてくれるのではないかと――!
「たしかに……ポメ太郎なら『おともだち』になれるかもしれませんし、そうしたらきっと少しは落ち着いてくれる事でしょう。フランさんも噛まれて大変そうですし、私はまずはあちらの回復に行ってきますね」
「わーん! わーん! でかポメに噛まれたー! びえええええ死ぬかと思った!」
「甘噛みされただけだから大丈夫よ~しかし、ポメ太郎みたいに食いしん坊なら簡単についてきてくれるかなぁって思ったんだけど……まだ警戒心の方が強いかぁ。ポメ太郎とは違うなあ……あっ、ポメ太郎聞こえてた? ごめんごめん!」
 さすればリンディスも賛成の意を示し、その間は甘噛みされて半ベソのフランをあやすものである。まぁ齧られても肉球でぺーん! ってされてもフランは挫けずに戦った名誉の負傷(?)ではあるのだが……そのおかげか、でかポメの傷は大分癒えている。
 同時。タイムは……零した言葉を聞いていたポメ太郎(ぷんぷんして頬を膨らませてる)をあやそう。ホラ、ポメ太郎は頼りになるから頑張って~!
 ――そして気を取り直したポメ太郎が往く。

 わふわふ。きゃんきゃん! くぅ~?
 ガルル……グル? わふ……わんわんわん! ……くぅーん?

「……ふむ。少し態度が和らいだ気もしますね……
 もう一度ボールを試してみましょうか」
「待たせたな――むっ? ポメ太郎が交渉中なのか?
 まぁ丁度いいか。色々買ってきたから、皿に移して間に持って行ってみよう」
「俺もミルク買って来たぜ! こいつでどうだ……!? 頼むぜ……!」
 さすれば、でかポメの敵対心が若干薄まった事をリュティスは機敏に察知。
 もう一度と先のボールを……足元に届く様に投げ入れてやるものだ。
 更に戻って来たベネディクトや風牙が犬でも食べれる代物かつ、でかポメの食欲を促しそうなのをゆっくりと運ぶものだ。途中でポメ太郎に託し……食べるなよポメ太郎? 一緒に食べるんだぞ? いいな?
 ――ともあれ託す。
 ポメ太郎が口に咥えて皿とボールを引き摺り。『はい、どうぞー!』と渡せば。
「……わふ! わふわふわふ!!」
「あ、食べましたね――良かった。敵対心より食欲が上になってきてるようです」
「わわっ、凄い食欲っ! お腹が減ってたんだね。よーし、沢山お食べっ! デカポメ太郎っ! 良かったね! ……あ、じゃあ花丸ちゃんも、ちょっとご飯あげたいな……! 大丈夫? 大丈夫だよね? もう近寄っても」
 まずはでかポメが美味しそうなドッグフードにかぶり付くものである。
 それは正に落ち着いてきた事の証左。フランが体を張って怪我を治癒した事により、痛みが薄れてきたのも大きな要因だろう――代償はフランがでかポメの涎塗れに成っちゃったことだが尊い犠牲である。
 そして食欲が満たされれば続いてリュティスのボールに目が往くもの。
 ――わんこの血が疼く!
 鼻先でボールを弾けば、ポメ太郎も便乗してボールに体当たりし、まるでキャッチボール。さすればリンディスや花丸は胸をなでおろし……花丸は恐る恐る近寄りながらも――その手にはジャーキータイプの餌を握り、でかポメに向けてみよう。
 そうしていれば……でかポメが、はむりと食べた!
「わふわふ~♪」
「よし……もう大丈夫かな。
 じゃあ此処から出よう。君を繋ぐ気はないよ、昏くて狭い此処より、広い外に行こう」
「わふ?」
「分かるか? 黒狼の館に行こうぜ――あ。まぁ、通常サイズの犬小屋じゃ到底収まらないし……牛舎みたいなのを建てればいいんだろうか? はは、ちょっとばかし大規模な工事が必要かもな」
「ポメ太郎のおうちじゃとても嵌りきらないしねぇ……
 デカぽめ用のお部屋を用意できそう? とりあえず馬小屋使う?
 それともみんなでデカぽめ小屋をDIYしちゃう? それも楽しそうかも!」
 最早警戒心はない。でかポメは黒狼隊を信用しているようだ。
 ――故にこそ連れて帰ろうと。でかポメも嫌がる顔はみせない……むしろ新しい場所に行けると目を輝かせている程だ。結構、好奇心旺盛なのかもしれない。
「おや――ボールも取って来て頂けたんですね。ありがとうございます。
 それと……本当に偉かったですよポメ太郎。ですので、今回は特別ですよ。おやつです」
「わふ~♪ わんわんわん!!」
 そして。リュティスより投げられたボールを、でかポメは返しに来る……いや『もういっかいなげてー?』という意志も感じる気がするが……ともあれ顎の下を撫でてあげよう。まだ上からの撫では怖がるかもしれないから。
 更にリュティスに褒められてポメ太郎は嬉しそうだ……更にはおやつまで!!?
 ポメ太郎の目がかつてない程に輝いている。ま、偶には良いでしょう。
「わ~いでかポメちゃん、よろしくね! こっちはベネディクトさんでー、ポメ太郎でー、わたしはねーさっきも言ったけどフランだよー! ……って、わ~~! どうしてまたポニテの先っぽ噛んでくるの~~!!?」
 そして改めて自己紹介しようとするフラン。
 ……が。でかポメはフランのポニテが気に入ったのか噛んでくる。今度はじゃれ合いの意味が強い為に攻撃している訳ではないが……『どうして~!?』と言う声が響き渡るものである。
「よ、ポメ太郎。今回は本当にお前さんのおかげで、酷い目に合っているやつを助けることができた。大手柄だったな」
「わん!」
「ん? あぁ……そうだな。友達になれたらいいな。一緒に外を走り回ったりとかな」
 そうでしょう、そうでしょう! と誠吾の言にドヤ顔するポメ太郎。
 いつか。一緒に野原を駆けまわる事もあるだろうと――未来を想像しながら。

「怖かったですね、帰ったら広いお庭、たくさん走り回りましょう?
 大丈夫ですよ。もうこんな事は、起こりませんから……」

 そしてリンディスはでかポメに告げる。
 ゆっくりと手を伸ばして、怖がらせないようにしながら。
 クーちゃんも一緒に、大きいポメさんのほっぺたに触れるのである。
 とってももふもふで、とっても柔らかい。あぁ……
「――辛かった分、たくさんの優しさが待ってますよ」
「くぅ~ん♪」
「ふふ、くすぐったいですよ」
 さっきは叩いてごめんね? という謝罪だろうか。
 でかポメはリンディスの腕を舐めて、意を示すものである。
「じゃあ――この子もどうやら付いて来てくれるようだし、連れて帰ろうか」
 この子を、黒狼の屋敷へと。
 そう告げながらベネディクトは、でかポメの顎を撫ぜるものだ。
 名前はどうしたものかと――楽しい思案を、皆と共に巡らせながら。

成否

成功

MVP

フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘

状態異常

なし

あとがき

 依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ!
 でかポメが黒狼の屋敷のお世話になるみたいですね! とってもいい子で、もっふもふしてると思います!
 ポメ太郎が先輩になるのかな……? ともあれありがとうございました!!

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