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シナリオ詳細

<太陽と月の祝福>全てを閉ざし、目覚めぬ眠りを

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 『ファルカウ攻略作戦』を進めるローレットイレギュラーズ。
 目指すは、深緑を覆う『茨咎の呪い』の解除。
 それを実行する為、障害となっていた竜種や亜竜。それらが王として仰ぐ『冠位』暴食ベルゼーは撤退したが、深緑を茨で閉ざした張本人『冠位』怠惰カロンは健在だ。
 また、カロンの手下である夢魔や魔種、力を貸している冬の王の配下など、なおも行く手を阻む存在は多い。
「皆さんにはこれらの討伐を願います」
 『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)は端的に現状と、依頼について集まったイレギュラーズへと告げる。
「その中には、サテラさんもいるはずです」
 そこで、口を開いた『守護者』水月・鏡禍(p3p008354)の一言に、アクアベルが頷く。
「突破には、魔種とサテラというオルド種の2体の討伐が必須です」
 下層でも立ち塞がった魔種インヴァリスと共に、大樹の嘆き上位種であるオルド種サテラもいるはずだ。
 インヴァリスは鎖状にした蔓を操る元幻想種。カロンの部下となったことで怠惰の魔種となり、眠りの権能も使うという。
 彼女は変化を厭い、深緑に不変をもたらすべくカロンに従い、深緑全土を眠りへと落とそうとしている。
 鏡禍の話したサテラは四肢を枝や根に変えて相手を縛り付ける。全てを氷に閉ざし、やはり眠りへと誘おうとしてくるようだ。
 現状を打破しようと動く深緑民……迷宮森林警備隊をも捕らえ、無力化しようとしていたこのオルド種。深緑民を眠らせ、それ以外の者を全力で排除しようとする動きが先日の依頼でも確認できた。
「また、それぞれが配下を引き連れています」
 インヴァリスは前回連れていたバーゲストを強化した個体を2体連れている。サテラも氷樹型の大樹の嘆きを4体も連れている。
 さらに、戦場に張り巡らされる茨が非常に厄介だ。
 これまでの戦いでは、倒すことで戦場内の茨の活動が止まったが、敵の本陣とあって、駆除してもほぼ無制限に出現する様だ。
「敵も強く、茨の対処も必要。突破には緻密な戦略が要求されるでしょう」
 こちらも10人で当たることで手数を増やし、戦略の幅は広がるはずだ。
 説明を聞き終えたメンバー達は早速戦略を練る。
「くれぐれもお気をつけて。皆様が深緑を目覚めさせ、茨の呪いを解いてくれる事を願っております」
 アクアベルは彼らの身を案じ、深緑の解放できるよう祈りを捧げるのである。


 木々に囲まれる大樹ファルカウ。
 イレギュラーズはその内部を駆け抜け、上へ、上へと階段や吊るされた蔦を登っていく。
 先日戦場となった通路も通り、一行は上層を目指す。
 初夏とは思えぬ寒々しい光景が広がり、通路は凍り付いているところがほとんど。冬の王の影響は今なお強いらしい。
 さて、メンバー達がやや広めの空間へと出ると、そこに2つの人影があることに気付く。
「また会ったわね。イレギュラーズ」
「できるなら、もう会いたくはないのだけれど」
 スレンダーな見た目の女性インヴァリスが挨拶すると、中性的な外見のサテラは露骨に溜息をつく。
 この先に進むなら、自分達を倒していけと言わんばかりに、2人は配下である強化バーゲストや氷樹型大樹の嘆きを呼び寄せる。
 対峙する両者。そこに飛び込んできたのは思わぬ援軍だった。
「ちょっと待つの!」
 現れたのは、氷の肌を持つアイススプライト、アイシィだ。
 先日大した時までは冬の王の配下としてイレギュラーズと対していたアイシィだが、説得もあって離脱していた。
 そんな彼女だが、イレギュラーズの方へとついて。
「これ以上縛られたりはしないの」
 今回は、配下を犠牲にしたくないからと単身で飛び込んできたアイシィ。それでも、心強い援軍を得たイレギュラーズの士気は高まる。
「いいわ。貴方もイレギュラーズごと縛り付けてあげる」
「任せて。全員捕えて眠りに落としてあげるよ」
 動き出す巨躯の配下達と共に、強敵2人もまた戦場に張り巡らされる茨の中を自在に動き始めるのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様、こんにちは。なちゅいです。
 <太陽と月の祝福>のシナリオをお届けします。
 こちらは、水月・鏡禍(p3p008354)さんのアクターアクションによるシナリオです。
 ファルカウ上層部で待ち構えるカロンの部下、大樹の嘆きオルド種の討伐を願います。

●目的
 魔種インヴァリス、『オルド種』サテラ、両者の討伐。

●状況
 舞台は大樹ファルカウ上層。
 凍り付いた通路を塞ぐように、魔種、オルド種が立ちはだかります。
 強化バーゲストに氷樹型の大樹の嘆きという手下と共に、全力で突破を阻止しようとするこの一隊の討伐を願います。

 戦場は凍った茨が絡み合う様にあちらこちらに生えた広間です。
 周囲に張り巡らされる茨も健在で、いつどこから茨が束なって襲い来るか分かりません。今回は無制限に現れる為、常に対処が必要です(魔種+オルド種討伐で茨の出現は止まります)。

●敵
◎魔種インヴァリス
 身長は人間種の一般成人女性相当。怠惰の魔種。カロンの部下。元幻想種女性。
 すらりとしたスレンダーな見た目をしており、変化していく深緑の実状を憂い、カロンに与しています。
 カロンの権能『眠り』を利用し、『眠りの世界』を構築。侵入者を深い眠りへと陥れることができます。
 戦闘では鎖状に組み上げた蔓を使って相手を束縛したり、鞭のように打ち付けてきたりします。
また、広範囲に倦怠感をもたらす空気を展開し、浴びた者の戦闘意欲を削ぎ、強く動きを鈍らした上で、先述の鎖状の蔓で相手を縛り上げたり、貫いたりしてきます。

○強化バーゲスト×2体
 インヴァリス指揮の魔物達。
 全長3m強。二本足で立つ魔獣。首に装着された首輪から数本、地面に至る程に長い鎖を垂らしています。
 全身の筋肉が強化されており、鎖の叩きつけ、殴り掛かり、牙での食らいつきといった攻撃が強化されております。
 遠吠えも健在で、こちらの動きを止めようとしてきます。

◎大樹の嘆き・上位存在『オルド種』サテラ
 人語を理解、操ることができる中性的な人型をした大樹の嘆き。
 腕や足を枝や根に変化させて攻撃を行う他、冬の王の力、茨の力のそれぞれ一端を得て氷の茨を飛ばします。こちらも相手を眠りに落とす力を持ちます。

○大樹の嘆き×4体
 樹高6~7m程度ある氷の樹を使い、攻撃を仕掛けてきます。
 凍った枝、根を使った突き出し、薙ぎ払いに加え、広域に凍気を発したり、氷の葉を散らして周囲を切りつけたりしてきます。

○茨×?体
 有刺鉄線の如く一定空間へと張り巡らされる謎の荊。
 一体範囲の茨が束なってから敵対するもの目指して伸び、絡みついてきます。また、強引に排除しようとする者を昏睡状態へと陥らせたり、体力、気力を奪いつくりして死に至らしめようとしたりする。
 茨は戦場のどこからでも束なることができるようで、その出現の把握はかなり難しいでしょう。
 ただ、茨を傷つけることでその活動は低下します。
 戦場に張り巡らされた状態では範囲攻撃に耐性を持つ為、非常に厄介な相手ですが、束なった茨は耐性が無くなるため絶好のターゲットとなるでしょう。

●NPC
○アイススプライト・アイシィ
 関連シナリオに幾度か登場。今回は協力者として共闘してくれます。
 全長5,60センチ程度で、見た目だけなら氷の肌を持つ美しい妖精。自分らしくあるべく、冬の王に反旗を翻してインヴァリスに宣戦布告します。
 これまでの戦い同様、凍てつく視線、凍てつく吐息、宙を舞うダンスを使用します。
 気まぐれな一面もありますが、今回ばかりはこれ以上拘束されたくないと全力で戦ってくれます。

●魔種
 純種が反転、変化した存在です。
 終焉(ラスト・ラスト)という勢力を構成するのは混沌における徒花でもあります。
 大いなる狂気を抱いており、関わる相手にその狂気を伝播させる事が出来ます。強力な魔種程、その能力が強く、魔種から及ぼされるその影響は『原罪の呼び声(クリミナル・オファー)』と定義されており、堕落への誘惑として忌避されています。
 通常の純種を大きく凌駕する能力を持っており、通常の純種が『呼び声』なる切っ掛けを肯定した時、変化するものとされています。
 またイレギュラーズと似た能力を持ち、自身の行動によって『滅びのアーク』に可能性を蓄積してしまうのです。(『滅びのアーク』は『空繰パンドラ』と逆の効果を発生させる神器です)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <太陽と月の祝福>全てを閉ざし、目覚めぬ眠りを完了
  • GM名なちゅい
  • 種別EX
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2022年06月29日 22時10分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
マルク・シリング(p3p001309)
軍師
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め
シラス(p3p004421)
超える者
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
鏡花の癒し
アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手
雪村 沙月(p3p007273)
月下美人
鏡禍・A・水月(p3p008354)
鏡花の盾
ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)
航空猟兵

リプレイ


 寒々しい大樹ファルカウ内の通路。
 他国では炎天下という気象状況もあるはずだが、ここは極寒であり、身震いしてしまうほどに空気が冷え切っていた。
「冬は、嫌だな。飢えて凍えて、人が死ぬ」
 幻想のスラム出身、マルク・シリング(p3p001309)は子供の頃を思い出す。実際、彼はそうした人々を多く見てきたのだろう。
「春を待つからこそ、人は冬の苦難に立ち向かえるんだ。この森を、冬に閉ざさせはしない」
 大樹ファルカウを中心に、迷宮森林の広い範囲が氷に閉ざされている。いつまでも緑が戻らず、声明を育むことのないこの地の状況を、マルクは受け入れられなかったのだ。
「茨咎の呪いを解除する為にもこの戦いは負けられませんね」
 旅人と人間種のハーフ、『月下美人』雪村 沙月(p3p007273)も怠惰の冠位カロンの思い通りに事を進めさせるわけにはいかぬと大樹の上を見上げて。
「全力でその企みを阻止させて頂きましょう」
 その為には、全ての障害を排除せねばならない。

「また会ったわね。イレギュラーズ」
「できるなら、もう会いたくはないのだけれど」
 スレンダーな見た目の女性インヴァリス。中性的な外見のサテラ。
 行く手を塞ぐ彼女達の前にはさらに、強化バーゲストに氷樹型大樹の嘆きが並び立つ。
 しばし、両者は対峙する。
「上に行けば行くほど強い敵が出てくるのは、よくある展開だよね」
 音を愛する精霊『いにしえと今の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)は強者との遭遇は当然とでも言うように身構える。
「知ってる? 主人公はどんな強い存在でも倒して上り詰めるんだよ!」
 それは怠惰にとっては暑苦しいかもしれないが、イレギュラーズは進み続けるのみだ。
「変化を厭い、これまで積み上げられてきたものを大事にしたい、って感情は理解できるのよね」
 古代ローマ出身、『決死行の立役者』ルチア・アフラニア(p3p006865)も、魔種インヴァリスへと語り掛ける。
 その考えは保守的なもの。どんなところにもある保守的な考え自体はルチアも悪いものではないと一定の理解を示したが。
「でもね。貴女が守りたかった『深緑』だって、小さな変化が積み重なってできたもののはずなのよ?」
 そうでなければ、文明はできない。
 だから、その『停滞』は、ただの逃げなのだ。
「……なんて言っても、もう反転してしまった貴女には届かないのでしょうけれど」
「あるべきものを守る。その為に異物は排除するのみさ」
 横から入ってくる大樹の嘆き上位存在であるオルド種、ステラ。
 あくまで深緑を閉ざし、自分達が守るというエゴ。その主張は深緑出身以外の者にとって、いや、深緑民である幻想種達でさえも受け入れることはできない。
 なぜなら、幻想種達の多くは今だに眠りの中。
 目覚めることのない彼らの状況もそうだし、茨や氷に閉ざされた深緑の状況を是とするわけにはいかない。
 散らす火花が大きくなってくる状況の中、割ってくるように飛来してきたのは……。
「ちょっと待つの!」
 氷の肌を持つアイススプライト、アイシィが大声で叫ぶ。
 一時は氷の王に与した氷の妖精に、インヴァリスもステラも眉を顰めて。
「いいわ。貴方もイレギュラーズごと縛り付けてあげる」
「任せて。全員捕えて眠りに落としてあげるよ」
 もはや敵対者として見なしたアイシィに対しても戦線布告する両者。
 ただ、イレギュラーズは開戦の前に、アイシィへと伝えたいことがあって。
「あなたの無事を祈る人からです」
 かつては姿見に取り付いていたという『守護者』水月・鏡禍(p3p008354)は空中へと浮かぶアイシィへ渡したのは妖精鎌の護符。
 先日、敵対していたアイシィに対して身を張って説得に当たったイレギュラーズからの贈り物。
 依頼に来られなかった妖精鎌がこれほどまでにアイシィの身を案じているという事実。先日の依頼でも身を挺して彼女の説得に当たってくれた。
「ほんと、すっごくお節介なの」
 口ではそう言うものの、アイシィはこの上なく笑顔を浮かべていた。
 そして、マルクが小声で彼女へと指示を出す。
「サイズさんから頼まれてるんだ。やってくれるかい?」
「わかったの!」
 マルクに持ち掛けられた共闘の話を、アイシィは快く引き受けてくれた。
「さて、反旗を翻した妖精の意気に応えよう」
 士気を高めるイレギュラーズ。
 死神としての役割を押し付けられた過去を持つ『雪解けを求め』クロバ・フユツキ(p3p000145)としても、自由を勝ち取る為の戦いとあらば黙っていられず。
「派手にやらせてもらうとしようぜ!!」
「これ以上、誰も夢には落とさせない!」
 エルフレームシリーズ最新機種を名乗る『反撃の紅』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)のエンジンも好調。
 やはり、友達に目の前の相手をぶっ倒してくれと頼まれたこともあり、ブランシュの戦意は高い。
「さあ、ぶっ潰すですよ!」
「OK。ではサポートをさせてもらう」
 銀色の尻尾を持つ狐の獣種、『無名偲・無意式の生徒』マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)は火力が出ないからと、自分の代わりに皆のサポートへと回る構えだ。
「もう問答は不要よ」
 インヴァリスの取り巻く魔種としての力。
 中性的な外見をした美少年の姿をした『心優しきオニロ』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)は放たれる現在の呼び声に不快感を示す。
 旅人であるヨゾラには影響がないが、仲間達もそうだし、アイシィだって反転する危険がある。もし、そうなったら許せないだろうと彼は考えて。
「アイシィさんを反転なんて絶対させない……魔種も呼び声も、終わらせるよ」
 動き出す敵対勢力に合わせ、ヨゾラもまた仲間と共に立ち回り始めるのである。


 茨が覆い、全体が凍り付く戦場は広く、双方が存分に立ち回ることができる。
 それだけに、強い力を持つ魔種やオルド種は抑えておきたいところ。
(上手く抑えておいてくれよ)
 幻想のスラム出身の青年、『竜剣』シラス(p3p004421)は仲間と共に配下達へと攻撃に出るが、ちらりと視線を向けた際には、強敵2体の抑えに当たる鏡禍、ルチアの姿があった。
(ルチアさんと分かれて敵を抑えることになるなんて)
 鏡禍は強敵のブロックという役割に憂慮するが、手元へと手繰り寄せたある物を強く握りしめて。
(でも、心配ばかりしていてはだめですよね。頑張らないと)
 それは、妖精鎌の護符。渡してくれた人とアイシィを守ると約束した鏡禍は奮起し、オルド種サテラへと向かう。
「縛り付けてやるよ」
 サテラは大樹の嘆き。自らの体の一部を枝や根に変えて相手を縛り付けようとしてくる。
 鏡禍はそれに対して、防御、抵抗力を強めて身構え、相手を抑え込む。
 仕掛けられるタイミングさえあれば、鏡禍は攻勢にも出る。竜撃の一手によって、相手の体を穿とうとするが、さすがに相手もこれまで交戦した大樹の嘆きとは一味違い、簡単に攻撃を受けてはくれない。
 もう1人、魔種インヴァリスにはルチアが立ち向かう。
「1人? 舐められたものね」
「…………」
 すでに言葉が届かぬ相手。
 今は倦怠感をもたらす空気の中、敵の操る鎖状の蔓に耐えねばならない。
 敵の力は強く、いくら防御していても体への異常は避けられない。
「大丈夫。まだやれるよ」
 ルチアは号令を上げて態勢を整え、しばらく時間を稼ぐ。

 マルクはアイシィと共に襲い来る茨を相手にする。
「もう縛られたりしないの」
 空中を飛ぶ可憐な氷の妖精は茨が束なるのを見定めて吐息を吹きつける。
 茨は広域展開していると、防御耐性が非常に高くなり、多少切り払ったところでほとんど駆除することができない。
 しかしながら、それが束なって攻撃特化の形態となれば、一気に攻撃できるようになる。脆くなって数度攻撃を受けただけでも広域の茨が枯れ果ててしまうのだ。
「その調子だよ」
 彼女に合わせ、マルクが指輪から立方体の魔力を展開して茨の活動を低下させる。
 茨を抑え、仲間達が戦いに集中できる環境を整えるのがマルクの役割だ。
 なにせ、これまでとは違い、敵の本陣近くとあって茨は駆除してもものすごい勢いで繁殖し、再び襲い来る。茨は絡まれるだけでも耐えがたい眠気に襲われる為、マルクはアイシィと一緒になってその襲撃を食い止める。
「また、茨が来ます!」
 サテラを抑える鏡禍は広域俯瞰で戦場を見渡しており、茨が束なる瞬間を見逃さない。余裕もって対処出来るマルクは別の場所にも視線を巡らせる。
 例えば、多くのメンバーが相手どる敵対勢力の配下、首輪から垂れ下がる鎖をジャラジャラと鳴らす強化バーゲスト2体、そして、凍り付いた大樹をベースとした体を持つ大樹の嘆き4体と対する仲間達だ。
「あの妖精鎌の意気を受け継いだからにはな」
 妖精アイシィを守りたい。その気概を受け、クロバが自分にできることをと敵を纏めて捉え、魔剣を操る。
 黒羽が使うは、剣聖の技「無想刃」。自分が斬ると決めた相手のみ断ち切る。
 筋力の発達したバーゲストに、枝を広域に広げて被害を抑える大樹の嘆き。いずれも簡単に切り裂かれてはくれない。
「出来るだけ、大樹の嘆きは纏めて攻撃したいですね」
 氷の枝を振り回し、大樹の嘆きはメンバーを薙ぎ払おうとする。
 沙月はそれらが纏まるタイミングを見計らい、流れる様な動きで連撃を打ち込んでいく。
 氷樹型の嘆きの幹へと拳が叩き込まれた箇所から広がる亀裂。
 合わせて、膂力で剛腕を振るい、鎖を叩きつけてくる強化バーゲストに対して、蝶のように舞い、蜂のように刺すが如く強打を打ち込む。
 グウウ、グガアアアアオオオオオ!!
 荒ぶるバーゲストは目の前の獲物を食らおうと乱打を打ち込んでくるが、沙月はそれをやり過ごしながらも猪、鹿、蝶の三連撃を浴びせかける。
 だが、配下とは言え巨躯の相手。かなりのタフネスを持ち合わせており、その体幹が簡単に揺るぐことはない。
「さて、私はいつも通り、出し惜しみはなしで行こうか」
 その沙月の攻撃を有効打として押し上げるべく、マニエラは支援に当たる。
 マニエラはプロトコル・ハデスによってテンションを高めて自らを強化し、沙月にも同様の強化を施していく。
 それで終わらず、マニエラはシラスやブランシュにも強化を施すマニエラは仲間達の気力、体調管理へと回る。
 敵は魔種。万全の状態で戦ってなお、致命打を浴びる可能性のある相手。マニエラは自身や仲間の強化が途切れぬよう常に気を払い、支援強化を続ける。
 その強化を受けた1人、ブランシュは速度を高めていた。
「茨も纏めて風穴を開けますよ!」
 まだ敵が多いことに加え、他メンバーの狙う茨も捉えられれば、ブランシュは一気に聖弓改造型接続式滑腔砲より放つ弾丸で敵配下を纏めて撃ち貫く。
 シラスもまたマニエラの強化を受け、得意の追撃で相手を攻め立てる。
「俺の蹴りは弾丸並みだぜ」
 シラスの攻撃は止まることなく、バーゲストの腱や氷樹の枝わかれ部分を蹴り砕かんとする。
 広範囲に及ぶシラスの攻撃だが、仲間には一切害を及ぶすことない。
 シラスの蹴撃は敵だけを痛めつけ、防御態勢を解いて強撃を打ち込む。
 とにかく、敵の数を減らしたいところ。抑え役となるメンバーの負担はあまりにも大きい。
 ヨゾラはアイシィにも気を払い、傷ついていないかを逐一確かめながら、敵配下へと纏めて紫色の帳を下ろす。
「茨と氷に閉ざすなんて生易しいものではないよ」
 なにせ、ヨゾラの一撃は終焉をもたらす。
 早くも、バーゲスト1体の上半身が大きく揺らぐ。
「体格差は勝負を決する絶対的要素ではないんだよ!」
 至近距離へと張り付いていたアリアは好機と判断し、ナイフのような刃に神秘的破壊力を集約して切り込む。
 グオオオオオオオオ!!
「まだまだ!」
 痛みに悶えるバーゲストへ、ゆるふわな雰囲気とは裏腹にアリアはとてつもなく重い一撃を与えていくのだった。


 少し前までは冷えた空気が辺りを支配していたが、戦いが始まるとすぐに周囲の凍った壁をも溶かす勢いで熱気が高まる。
 強化に当たるマニエラが合間に仕掛ける牽制攻撃。花吹雪が如き極小の炎乱がさらに戦場の温度を高めていた。
「犬っころ共、テメーらはそこでお座りだ」
 上気して激しく息つくバーゲストへと、シラスが波濤ともいうべき乱撃で下半身を攻め立て、大きく態勢を崩せば、ブランシュが仕掛ける。
 迅速の一撃が生んだ衝撃波は刹那で戦場を飛び、バーゲストの体を切り裂く。
 身体を大きく裂かれて血を噴き出した敵がまだ息をしている。
 一気に距離を詰めたブランシュは所持していないはずの刀を思わせる斬撃をバーゲストへと浴びせかける。
 胸部へと二撃。首へと一撃。
 もはや声を上げることができず、バーゲストは重い音を立てて崩れ落ちた。
 グオオオオォォォォ……!
 程なく、もう1体のバーゲストも追い込まれて苦しそうに吠える。
 強く殴り掛かってくるバーゲストはさらに食らいつこうと大きく口を開いた。
 魔獣の牙はそこらの野生生物なら一瞬でかみ砕くほどの威力。バーゲストは獲物を生きたまま貪り喰らうのだろう。
 だが、アリアはそうならない。
 アリアは余力をもちながらも、接敵したそいつの腹へと神秘の一撃を食らわせる。
 破壊的な威力の一撃に内臓をずたずたにされたバーゲストは泡を吹き、卒倒してしまったのだった。

 バーゲストが倒れ、イレギュラーズの次なる目標は氷樹型大樹の嘆きへと集まる。
 今だ4体全てが活動を続けてはいるが、メンバー達の範囲攻撃にさらされ、その全ての体がボロボロになってきている。
 それらを、沙月が纏めて捉え、己の体より繰り出される拳、蹴りで破壊せんとする。
 雪村家に伝わる徒手空拳の古流武術。その心構えは、冬の雪、秋の月、春の花。
 一面の冬景色とも思える場所だが、別の季節を感じさせながらも沙月の繰り出す連撃が1体の氷樹型嘆きの幹に風穴を穿つ。
 …………!!
 元より声を出すことのない大樹の嘆きだが、崩れ落ちるときだけ幹の穴から嘆きの声が聞こえた気がした。
「アイシィさんは……」
 序盤から茨の排除を任せていたアイシィを、沙月が気に掛ける。
 2組の束なる茨に攻め立てられる形となっていた彼女を助けるべく、ヨゾラが聖体頌歌を響かせる。
「アイシィさん、気をしっかり持って……」
 直接は交戦していないが、魔種インヴァリスが時折放つ呼び声は恐ろしい。混沌に住む者全てをあるべきではない存在へと引きずり込もうとしてくるのだ。
「くっ、ああああっ!」
 依然として、ルチアがインヴァリスを抑える状況が続く。
 魔種の攻撃は気だるげな所作から繰り出されていたが、その全ての攻撃の威力が高く、ルチアは歯を食いしばって身構え、福音を紡ぐことで自らの傷を癒す。
 鏡禍もルチアの負担が大きいことを察し、時折フォローに入る。
 絡みつく鎖状の蔓は一度腕や足に絡みつくと、独力でほどくことが難しい。ルチアが体力の回復に当たれるようにと、鏡禍は絶気昂によって継戦できるようアシストする。
「……余所見をしている暇はあるのか?」
 オルド種ステラも支援回復を妨げようと、鏡禍へと伸ばした枝や根を体全体へと絡みつかせる。
 強敵2体の抑えは今のところ上手くいっている印象だが、いつ戦況が悪化するか分からない為、予断を許さない。
「ううううっ、うあああああああっ!」
 再度、魔種インヴァリスが上げる叫びは、耳を塞ぎたくなる程。脳が揺さぶられて自分が自分でなくなりそうになってしまう。
「あんな声なんかに君は負けない。反転は、何よりも悲しい拘束だから……!」
「…………!」
 反転して魔種となれば、生き方は大きく制限されてしまう。
 ヨゾラの声に、なんとか自我を保つアイシィは反転を恐れてか、小さな体を大きく身震いさせていた。
 その間に、沙月が茨にも連撃を打ち込んで。
「アイシィさんだけに任せる訳にはいかないですからね」
 バーゲストを倒したことで、ブランシュもアイシィを気掛けて声をかけてくる。
「自由に、貴方が思うように羽ばたいてくださいですよ」
 多少熱気があろうが、大樹上層が寒いことに変わりはない。これは元となる脅威を討伐するまでは変わらないだろう。
 秘宝種であるブランシュはこの寒さを感じないそうだが、凍てつく光景によって、心が寒くなるのがわかるという。
「でも、雪解けは必ず来て、春の温かさを迎えるですよ」
 言葉と共に、無数の弾丸を放つブランシュ。さながら暴力の嵐が吹き荒れる中、彼女はさらに叫ぶ。
「だからこの熱は……此処を全て溶かす為にある!」
「全て……なの」
 相槌を打つアイシィの瞳に、激しい嵐に煽られる氷樹が映る。
「今だ、アイシィ」
「分かったの!」
 呼びかけるマルクの発した神気に照らされ、氷の妖精が精一杯舞い踊る。
 アイシィの踊りに見惚れていた氷樹型の嘆き1体が意識を失って全身を崩していく。
 氷樹型の嘆きはもはや満足に攻撃できぬ状況にまで追い込まれていたが、イレギュラーズは攻勢を止めず、一気に仕留めにかかる。
 刹那の間にクロバが繰り出す紅と黒の太刀「鬼哭・紅葉」。さらに、ガンブレード「ゼーレトリガー・滅式」による連撃によって、氷樹は寸断され、音を立てて地面へと倒れ、衝撃によってその全身が砕けてしまう。
 程なく、ヨゾラが再度残る氷樹型大樹の嘆きの全身をワールドエンド・ルナティックによって紫色の帳で包み込む。
 内部へと取りついていた大樹の嘆きの意識が徐々に薄れて霧散してしまえば、氷樹のみがその場に残り、ピクリとも動かなくなってしまった。
 茨は合間を縫うように襲い来るが、これで敵勢力の配下は全て倒れた。残すはオルド種と魔種の2体。
 手早く掃討に当たっていたイレギュラーズは残る力を振り絞り、それらへとぶつけていく。


 この場のイレギュラーズは魔種やオルド種の討伐の為、力を温存しつつも手早く、効率を考えて立ち回っていた。
 それもあって、皆ここまで疲弊が小さい状況で戦いを進めることができていた。
 メンバーの攻撃はオルド種サテラへと集まる。
 魔種以外の邪魔な相手を放置できないとみていた面々にとっては、なおも前座といった衣装で交戦する。
「なぜここまで抵抗するんだ」
 この場に、深緑出身者はいないが、サテラは先日、迷宮森林内で森林警備隊と交戦した。
 彼らは深緑のほぼ全域を覆う茨の中で、同胞を救おうと活動を続けていた。
 自分達が守るのに、なぜ抗うのか。それが大樹の嘆きであるサテラにはわからない。
「ねぇサテラさん、これが人の力なんですよ」
 ここまで相手を抑えていた鏡禍がサテラへと呼び掛ける。
 人は大樹の嘆きに守られる必要などない。鏡禍がそう主張するが、彼もまた旅人であり、余所者という認識しかサテラは持っていない。
「そんな力は全て不要。ただ、この枝の、腕の中で眠ればいい」
 もはや、平行線のまま、互いが理解することはない。
 話の最中、敵の背後へと回り込んでいた沙月が身軽さを活かして連続斬りを浴びせかけた。
 人と同じ体躯をしているが、相手は上位種。氷樹型と比べれば体力も攻撃力も何もかもが上回っている。
 ただ、歴戦のイレギュラーズが集まり、集中攻撃を与えれば話は変わる。
 鏡禍も攻勢へと出て、掌打を打ち込むと同時に強いプレッシャーを与えて相手の体勢を崩す。
 そこでクロバが太刀と銃剣で激しい雷の如き連撃を見舞うと、さすがのサテラも棒立ちになってしまう。
 タイミング悪く襲い来る茨をアイシィやマルクが対処する間、ヨゾラがサテラへと肉薄し、魔力を集中させる。
「深緑の幻想種の皆さんを解放してほしい」
 ヨゾラの魔術紋……正確には彼の本体が光り輝くと、次の瞬間、膨大な魔力が星空の極撃を生み出す。
「ただ、深緑の、ため、に……」
 その考えは歪んでしまったのかもしれないが、大樹の嘆きの行動理念は深緑の為を思ってのことだったのは間違いない。

 一息つく面々だが、ここからが本番。
「わざわざ苦痛にまみれて眠ることもないだろうに……」
 徐々に追い込まれている魔種インヴァリスだが、尊大な態度を一切崩さない。
 その全身から放たれる呼び声が混沌出身勢に……とくにアイシィを苦しめる。
「う、うう……」
 アイシィとて、本気で戦えば魔物を屈服できる力はある。束なる茨にも対処できており、イレギュラーズともそれなりに渡り合う力はあるだろう。
 そんな彼女であっても、抗う事すら厳しい魔種の発する原罪の呼び声。
「うう、うああああっ!」
 これまでにない声で叫ぶアイシィ。
 その彼女の体をクロバが受け止めて。
「冬の王から自由になろうとしたんだろう? なら、そこで終わっていいのか?」
 クロバはあの存在を目覚めさせたというある意味で自分のせいだと少なからず自責の念があったようだ。
 色んな意味で複雑な相手。クロバにとっても、アイシィにとってもそれは同じなのかもしれない。
「君を楽にさせようとする声の先に求める自由はないとだけ」
「あ、うん……」
 インヴァリスはカロンの権能によって眠りの力を行使した。
 激しい眠りがメンバーを襲う中、魔種は告げる。
「変化など必要ない。このままあるべきままに深緑を閉ざす」
「現状を維持するのって大変だし大事だと思うんだけどね。このままを維持されちゃうと困るの!」
 だが、そこでアリアが凛として反論する。
 アリアは深緑の民ではないが、この地に領地を持っており、沢山の思い出もある。
「だってここには大事なものが一杯あるから!」
 それらを全て閉ざしてしまうことなど、アリアは耐えられない。
「それじゃあ、後は頼んだわね」
 その間に、それまで魔種を抑えていたルチアが鏡禍と抑え役を交代する。
「任せてください。貴女を護るのが僕の喜びですから」
 特別な関係にある2人。鏡禍はルチアを守ることができると本心から充実感を抱く。
 そんな彼を、ルチアも全力で支えようとそっと天使の口づけを。
 戦いが始まってからずっと盾役を担っていた鏡禍の傷を、彼女は癒す。
 一部甘い雰囲気に包まれていたが、戦場全体にもこの上なく甘い誘いが。眠気は恐ろしい程にまで心地よく、気を抜けば本当に眠ってしまいかねない。一度眠ればおそらく自力で目覚めることは困難だ。
「眠ってなんかいられねえよ、お前をブッ飛ばす想いを預かってるからな!」
 大声で眠気を振り払うシラスは勢いのままに突進する。
 再び熱気が辺りを包み込む中、シラスはインヴァリスを強く殴りつけた。
「ああ、また眠気が……鬱陶しい!」
 手持ちのナイフで軽く自身の肌を切り、痛みで少しでも目覚めようとしたアリアもまた攻撃に出て、神秘の一撃を直接インヴァリスへと叩き込む。
「貰い物なんだ。以前、君達相手に戦った人からの」
 そこで、ヨゾラが妖精鎌から託された遺失魔術のアミュレットを使い、一気にインヴァリスへと星の光を瞬かせて殴り掛かる。
「絶対に君達を倒す、目覚めない眠りなんて二度と与えさせない!」
 さらに煌めく拳で追撃するヨゾラ。
「要らぬ眠りはまったくを以てノーセンキューだ」
 なおも、クロバが2本のガンブレードを構えて。
「『自分らしく』その誘いは全力でお断りさせてもらおう!!」
 態勢を崩す敵へとクロバもまたアミュレットを使い、連続して畳みかける。
 傷だらけになるインヴァリスは並々ならぬ闘志を燃やして。
「ならば、力尽くで眠らせるしかないわね……!」
 鎖状に組み上げた蔓を自在に振るい、叩きつけてくるインヴァリス。
 鉄をもやすやすと砕く蔓は無知の如くメンバーの体を連続して打ち付けてくる。
 後退してからしばらく、魔種を抑えていた鏡禍へとその蔓が及び、傷ついていた体の体を深く抉る。
 床へと叩きつけられる形となった鏡禍がパンドラ復活し、ルチアが介抱を当たる間に、回復役となるマニエラもアミュレットを使って高濃度の魔力を圧縮し、至近から獣の一撃を放つ。
「多少はヘイトがこちらに向くと良いけどねぇ?」
 マニエラの狙い通り、インヴァリスの蔓が彼女へと向く。
 相手の気を散らそうとするマニエラへと、苛立ちげにインヴァリスが鎖状の蔓を打ち付ける。
「ほら、あくまで主役は他のメンバーだ」
 うっとうしく思われれば、脇役としては最高だと考えていたマニエラ。
 だが、追い込まれたインヴァリスの蔓は彼女の体力を瞬く間に削り切ってしまう。
 パンドラ復活するマニエラ。だが、彼女が注意を引く間に、他メンバー達が一挙に攻め立てる。
「おおおおおお!」
 夏風の護符を使うシラスが吠えた。
 青い鎖や鎌、夏の花や秋の花が舞う中、シラスはインヴァリスへと迫る。
 ――一歩でも深く踏み込む。
 ――一撃でも多く技を繰り出す。
 命を燃やしてでも、挑まんとするシラスは竜の咢の如く魔種の体を打ち砕かんとする。
「コイツが、友の剣!」
 続いて、青い鎖や鎌、秋の花や春の花が舞う。ブランシュが秋風の護符を起動させたのだ。
 ――もう誰も、貴方たちに縛られやしない。怠惰の終わりは、今そこにある。
「何時までも夢に遊ぶ者に、ブランシュ達は負けねーですよ!」
 まさに怒涛の如く、彼女は刀の如き三撃をインヴァリスの体深くへと食い込ませる。
 いつの間にか敵の傍へと近づいていたアリアが零距離から神秘の極撃を放ち、直もインヴァリスを追い込む。
 堪える魔種が鎖状の蔓を振り上げると、マルクが叫ぶ。
「力を借りるよ、サイズさん!」
 次の瞬間、青い鎖や鎌、秋の花や春の花が舞う。
 激しい熱波が辺りを包み込んで。
「熱波よ、冬を焼き払え……!」
 圧倒的な破壊力を伴う魔術の光。それが二度、魔種の体を打ち付ける。
 強い衝撃がインヴァリスの体を駆け巡って。
「あ、あああああっ……!!」
 大きく目を見開いたインヴァリスはどうと地面へと落ちて。
「カロン様、おゆる、しを……」
 その体は灰と化していき、メンバー達の起こした風に巻き上げられ、ファルカウの外へと運ばれていったのだった。


 魔種もオルド種も倒れ、広間は再び静けさを取り戻す。
 先ほどまで熱気で汗が出るほどであったのだが、すぐに底冷えがするような寒さが支配していく。
 それでも、戦いの最中に秋風を吹かせることができたと、ブランシュは満足げだ。
「約束は守りましたですよ」
 アイシィにもその気持ちが十分伝わっている。
「すごくよかったの」
 心地よい風を感じ、飛んでいたアイシィ。もっとその中を飛び続けたいと言葉を漏らす。
 ただ、イレギュラーズの戦いはまだ続く。
「俺は最初から最後まであの『存在』に諍い続ける、君はどうだい?」
 ――歩みを止めた瞬間に、負けなんだ。
 クロバはカロン本人を叩くべく、仲間と共にさらに上を目指す。それに、アイシィを誘いかけた。
「ううん、皆の勝利を待つことにするの」
 しかし、アイシィは首を横に振る。
 これ以上進めば、自分の身を案じる妖精鎌が是が非でもとやってきてしまいそうだ。少し、いや、かなり心配させてしまったこともあり、自分はここまでと考えていたらしい。
「歩みは止めない。ずっと自由でいたいの」
 自由を求めるアイシィのこと。これからもずっと気ままに歩み続けることだろう。
「さあ、上を目指していくですよ!」
 そのままファルカウ内部を駆け上がっていく面々をアイシィは見えなくなってもなおしばらく見送っていたのだった。

成否

成功

MVP

マルク・シリング(p3p001309)
軍師

状態異常

アリア・テリア(p3p007129)[重傷]
いにしえと今の紡ぎ手
ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)[重傷]
航空猟兵

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは魔種を倒した貴方へ。
 今回もご参加ありがとうございました!

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