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シナリオ詳細

輝ける覇竜桜

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●覇竜桜の物語
 覇竜領域デザストルにおいて、桜に類する花は幾つかある。
 たとえば、デザストルチェリー。美しい花を咲かせる巨木だ。
 他にも色々と存在するが……この夏を前にした時期に咲くものもある。
 それが「覇竜桜」と呼ばれるモノだ。
 春から夏へと変わっていくこの時期、夏へとそのバトンを渡すかのようにその花は咲き誇るという。
 そして最大の特徴は、その花だ。
 濃い桃色の花を咲かす覇竜桜だが……その花は夜が近づくと、その最大の特徴を明らかにする。
 その桃色の花は、夜になると美しく発光を始めるが……これが、その光景の合図。
 その花から、無数の光の玉のようなものが現れるのだ。
 それは木の周りをクルクルと回り、やがて天へと昇っていく。
 どういう理屈による現象なのかは未だ解明されていないが、あるいは周囲の魔力を吸収浄化し空気中に還しているのではないか……という説もある。
 しかし、そんな蘊蓄は無粋なだけだろう。
 その光景こそは覇竜において今の時期にしか見る事の出来ない、最高に贅沢な花見なのだから。

●覇竜桜を見に行こう
「……という花ならあるらしい」
 本を閉じた静李がそう言えば、集まった面々が軽く拍手をする。
 花見をしたいが、覇竜ならこの時期でも出来るのではないか。
 そんなベネディクト=レベンディス=マナガルム (p3p008160)の問いに答えた形になるが……今回花見をしようと集まったのは、なんと合計10人だ。
 笹木 花丸 (p3p008689)、國定 天川 (p3p010201)、リンディス=クァドラータ (p3p007979)、タイム (p3p007854)、ソフィリア・ラングレイ (p3p007527)、秋月 誠吾 (p3p007127)、フラン・ヴィラネル (p3p006816)、マルク・シリング (p3p001309)スティア・エイル・ヴァークライト (p3p001034)。
 皆ベテランのイレギュラーズだが……そんな面々が集まったせいか、丁度揃っていたフリアノン3人娘たちも何事かとやってきたのが実際のところだ。
「覇竜桜か。うむ、確かに今が時期じゃのう」
 黒鉄・相賀(p3n000250)がそう言えば、黒鉄・奏音(p3n000248)も「へー」と頷く。
「この辺にあるんだっけ?」
「あるがのう。まあ、これだけいればそう問題でもないじゃろ」
「何処にあるの?」
 花丸が聞けば相賀は「フリアノンからまー……少し歩いたとこじゃな」と答える。
 そう、覇竜桜はフリアノンから少し離れた岩山の上、ちょっとした広場のようになっている場所に何本かが生えている。
 場所が場所であり、特に美味しくもないのであまりモンスターは近づかないのだが……ちょっとした問題も、ある。
「人間が近づくとデミワイバーンともがチョッカイ出してくるからのう。連中のことじゃから、ちょっとやれば逃げていくとは思うが」
 そう、この時期に人間が来ると分かっているのだろう、山を登る人間をデミワイバーンは襲うのだ。
 ……とはいえ、ワイバーン未満のデミワイバーンなど相手にもならないだろうが。
「なるほどな、そいつさえどうにかしちまえばいいってわけだな」
 天川の言葉に、相賀も頷いて。
「なら、決まりかな?」
 マルクに全員が同意する。その程度の障害で諦めるつもりなど、微塵もないからだ。
「……すぅ」
「棕梠ー、起きてー、お花見だってさー」
「うぅん……」
 寝ている棕梠を揺さぶる奏音に花丸が加わって揺らしていたが……まあ、出発までには起きるだろう。

GMコメント

リクエストありがとうございます。
絶景ポイントで不思議なお花見です。
道中邪魔するはデミワイバーンたちですが、凄い過剰戦力なので「逆立ちで一輪車を漕ぎながら戦うぜ!」とか言い出さない限りはリプレイで戦闘シーンは描写カットになる可能性もあります。
だって今回の主役はお花見ですもの。
順調にいけば到着はお昼頃。朝までコースも可能なので、お花見にガッツリプレイングを振って構いません。

なお、今回は相賀&フリアノン3人娘が参加しています。
指定がなければ相賀はお酒を呑んでいますし、奏音はもぐもぐ食べて静李は桜を見て、棕梠は寝ているでしょう。
……おかしいな、4人もいるのにお花見してるのが静李しかいない……?

●デミワイバーン×5
ワイバーンの中でも比較的小型種。
弱いわけではないが、デザストルに住むモンスターとしては比較的下位の実力。
火を吹くブレス攻撃、鋭い爪による攻撃と、相手を掴んで空中で振り回す攻撃を使用してきます。
不利になると凄い勢いで逃げます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 輝ける覇竜桜完了
  • GM名天野ハザマ
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年05月13日 22時10分
  • 参加人数10/10人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
マルク・シリング(p3p001309)
軍師
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
秋月 誠吾(p3p007127)
虹を心にかけて
ソフィリア・ラングレイ(p3p007527)
地上に虹をかけて
タイム(p3p007854)
女の子は強いから
リンディス=クァドラータ(p3p007979)
ただの人のように
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華
國定 天川(p3p010201)
決意の復讐者

リプレイ

●花見の場所へ
「覇竜にも桜があるんだね」
「確かに……覇竜領域にも桜があったなんて、幸運だね。それも丁度今の時期に」
 『純白の聖乙女』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)にマルク・シリング(p3p001309)も頷く。
「今日は一日、桜を見ながらゆっくり羽根を伸ばしたいな」
「お花見だー!」
 マルクに『青と翠の謡い手』フラン・ヴィラネル(p3p006816)もそう叫ぶが、そのかばんの中には300G以内のオヤツも入っている。
「覇竜の桜、咲く時期が少し不思議なのです……でも、皆でお花見できるのは大歓迎なのですよ! ……お弁当は食べるけど、ちゃんとお花も見るのですよ!」
「今年はタイミングが合わずに皆では花見は出来なかったしな、これは重畳」
『地上に虹をかけて』ソフィリア・ラングレイ(p3p007527)に『竜撃の』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)も頷くが、確かに外の桜と比べると開花時期が大分遅い。
「夜になると輝くって聞いたから見るのがとっても楽しみ! きっと綺麗なんだろうなー! 今日は目一杯楽しんじゃうね!」
「本当かな~? わくわくしちゃう!」
 スティアと『揺れずの聖域』タイム(p3p007854)がそんなことを言い合うが……そう、覇竜桜は夜になると花が発光するというのだ。
「奏音さん達は見に来た事あるんですか?」
「あるよ! 綺麗だよー!」
 代表するように 『鉄心竜』黒鉄・奏音(p3n000248)が頷くが、今回は奏音を含むフリアノン3人娘、そして『フリアノンの酒職人』黒鉄・相賀(p3n000250)も同行している、かなり大人数の道行であった。
「えへへ、まさか覇竜でお花見が出来るなんて思っても見なかったよ! 教えてくれた静李さんには感謝しないとねっ!」
「別にたいしたことじゃない。この時期に見れて、たまたまタイミングが合わさっただけだ」
「覇竜桜……季節の変わり目の象徴なのですね。ここでしか見れない光景。せっかくですから楽しんでいきましょう」
 『可能性を連れたなら』笹木 花丸(p3p008689)に静李が応え、『夜咲紡ぎ』リンディス=クァドラータ(p3p007979)がそう笑う。
「さっさと邪魔者を片付けて、花見といこう……って話ではあるんだが」
「途中にワイバーンみたいなのが居たような気がするんだが、あっという間に消し炭になっていたような。こえー……」
 『求道の復讐者』國定 天川(p3p010201)と『虹を心にかけて』秋月 誠吾(p3p007127)の会話の通り、途中のお邪魔であったデミワイバーンはもう撃破済だ。
 ちなみに誠吾の背中には先輩のリュティスに託された弁当と、ソフィリア用の特大お重と、主に女性陣が持ってきた荷物があった。
 荷物持ちもいい筋トレになるんだぜ、とは誠吾の台詞だが……。
「ふぅ、見えて来た。あれが例の覇竜桜かな?」
「だね。今年も満開だ」
 ベネディクトの問いに静李も答えるが……岩山の上の広場に咲くそれらの木は、確かに花が満開で。
 まるで、ベネディクトたちを歓迎しているようであった。

●楽しいお花見
「着いた―っ!」
「すっごい! きれ~~~! ポメ太郎も頑張ってよく歩いたね~」
 花丸とタイムの叫びが響き、花見の準備が始まっていく……その前に。
 満開の覇竜桜を持ってきていたaPhone10で花丸が写真をパシャリと撮る。
「皆も折角の覇竜でのお花見なんだから記念にどうかな? ほら、並んで並んで!」
「ん、写真? とるとる~! ぶいっ」
「大人数だしジャンプして……うわーぶれた! 花丸さんもう一回!」
 フランがそんな「あるある」系の失敗をしたり、リンディスが「なんだか恥ずかしいので」と言いながら端っこに行こうとして奏音に中央近くに引きずり出されたり。
「こうして抱えるとお前も大きくなったな、ポメ太郎」
 ベネディクトがそんなお父さんみたいなことを呟いたりと、そんな記念撮影も終われば、いよいよ準備の始まりである。
「成程これが桜……見事だな」
「見事な満開の桜。夜になると光り出す……これって本当に桜なのです?」
 誠吾とソフィリアが覇竜桜を見上げ、そんなことを呟く。
ひとりごちて、桜を見上げ。
「花見かー。こっちに来てまで桜が見れるなんて嬉しいこった。
ソフィリア、弁当は多めに作ってきたが…食いながら花もしっかり見ような」
特製3段重ねの重箱を指差しながら揶揄ってやる。
 ソフィリアが少し首を捻ったりしつつも、皆でお花見の準備を進めていく。
「皆コップは行き渡ったか?」
 声をあげる誠吾のコップの中にはシードル。つまるところ、リンゴ酒である。
「良し、皆に飲み物は行渡ったかな?」
「おー! ベネディクト! こっちには酒は行き渡ってるぜ! いつでもOKだ!」
「では、乾杯だ!」
「乾杯!」
「かんぱーい」
 グラスを持つ手が掲げられて、各々の乾杯に唱和する声が響いていく。
(この出会いと混沌での新しい運命に感謝を……)
 天川はそんなことを考えながら、グラスの中身に口をつける。
「こっちに飛ばされるまでは、まさか自分がこうして誰かと花見を楽しむなんざ考えられなかったが、いいもんだな。旨いな。酒も飯も……」
 今日は酒に初挑戦の面々がいる。彼等の監督をせねばと思いながらも見上げる覇竜桜は、実に雄大で。
「せっかくだから頑張ってお弁当を作ってきたよ! 名付けてスティアちょっとスペシャル弁当!」
 ちょっと、な辺りがポイントだ。量的な意味で。
「おにぎりにサンドイッチ、唐揚げにアスパラベーコン、ポテトサラダにごぼうサラダ。ちくわチーズにちくわきゅうり、デザートにはイチゴとオレンジで! 量が多すぎるって怒られるから配慮した量にしておいたよ。栄養バランスもそれなりのはず?」
 言いながら、ふとスティアは首を傾げる。
「結局美味しいから食は進むけど、体重が気になる……」
「タイムさんがちょっと微妙な顔してる気がするけど気の所為かな? 花丸さんがいっぱい食べたいって言ってたって聞いたからちょっと多めなだけだよ!」
 スティアのお弁当は美味しいが、それだけにタイムには乙女の悩みがあるのだが……。
「あの、スティアさん? スティアちょっとスペシャルって言ってたよね? 花丸さんがいるから大丈夫! ってポメ太郎も言ってたって? ぽ、ポメ太郎―っ!?」
 指名された花丸がポメ太郎をもにゅもにゅしていたが、さておいて。
「今日は初めてお酒を飲む人……具体的にはフランさんと誠吾さんがお酒にチャレンジするって聞いたから、軽くて飲みやすいのを探してみたよ」
「フランさんは先月、誠吾さんはつい数日前にお酒が飲めるようになったんだっけ? いいなー、花丸ちゃん達はまだまだ先になりそうだよ。って、奏音さんもお酒を飲んでいい年齢だったの!?」
「そうだよ!」
 実際の年齢が不詳な棕梠をさておけば、フリアノン3人娘では20歳の奏音が一番年上だったりするのだ。
 ちなみに花丸は18なので、まだお酒は呑めない。
 まあ、そんなわけでマルクが用意した酒はシードルであり、もうグラスに注がれている。
「……こ、これがお酒。ごくり。マルク先輩がおすすめしてくれたシードルがはじめてのお酒!」
「爽やかで美味い。後味がほんのり…これが酒なのか? なるほど、なるほど……」
「僕の領地があるブラウベルク領は林檎の栽培が盛んだから、林檎を利用したお酒も多く作られているんだ」
 2人がシードルに抵抗なく呑めているのを見ながら、マルクはそう解説する。
「お酒に詳しい人が言うには、アルコール度数は1%未満なんだって。お酒に強い人には物足りないかもだけれど、アルコールの苦味や刺激を感じなくて、飲みやすいと思うんだ」
 何でもそうだが、初めてのお酒というものはその後に影響する。色んな機会で触れるものだからこそ、呑みやすいものを。
 そうしたマルクの配慮は、誠吾にもフランにも届いたようだった。
「1%ってことは、100杯飲まないと酔っぱらわないんだよね? じゃあ全然大丈夫なはずっ!」
「フランちゃん誠吾さんは成人おめでと~! ささ、飲んで飲んで! お酌はまかせて! わたしはリンディスさんに聞いたオススメのジュースベースのカクテルを持ってきたよー」
 そこにタイムがやってきてお酌をするが……ジュースをベースにしたお酒は呑みやすく強いものが多いので注意が必要だ。
「お酒が飲める人ばっかりだからちょっと羨ましいかも。リンディスさんもフランさんも私を置いて大人になっちゃったよー! どうしてー!」
「ふふーんスティア先輩、まだまだこどもだね……大人の魅力、あたしから学んでいいよ」
 だから、スティアをグラスくるくるさせて煽っているフランも、きっと酔ったせいだろう。
「えっへっへーせーごさんとは同い年! でもせーごさんの方が老け、じゃなくて大人っぽいって思うよねソフィリアさん!」
「老け……?」
「誠吾さん、初めて会った時からしっかりしてて大人っぽいのですよ! うちは、誠吾さんにいっぱい助けてもらったのです」
 誠吾の疑問は胸を張るソフィリアの純真さで流されて。
「天川さんとこうやってのんびり話すのは初めてかもしれない。改めてよろしくな」
「おう! こちらこそよろしくな誠吾。飲みすぎるんじゃねぇぜ?」
 気にしないことにした誠吾は天川とのゆったりとした会話に興じる。
「こっちに飛ばされるまでは、まさか自分がこうして誰かと花見を楽しむなんざ考えられなかったが、いいもんだな。旨いな。酒も飯も……」
 天川はそう呟きながら、酒のペースの早いフランに視線を向ける。
「ところであたしにはスティアちょっとスペシャル弁当が今日の11人目のメンバー位に見えてたよ。これが……ちょっと……? でもおいしいから止まらないよー、うう今日はズボンの紐ゆるくしちゃう! リンディスさんもしちゃおー!」
「もう。お酒は飲んでも飲まれるな、ですよ」
 どうやら絡み酒であるようで、リンディスに絡んでいるのが見えた。
「おいおい。フランの嬢ちゃん。経験がない分ゆっくり飲まないとエライ目に遭うぜ?」
「んんん? なんかぽめたろーが10匹いてべねでぃくとさんと合体してるし、國定さんも10人いてすごいよぉ、えへへ」
「基本的に俺は11人に増えないからな? リンディス嬢はフラン嬢を悪い見本にするといい」
 リンディスに天川がそうからかうように言えば、リンディスは困ったように笑って。
「んん? よっぱらってないし! たいむひゃん、もっと飲むのー! やらー!」
「もうお酒ないよフランちゃん! フランちゃん~!?」
「ねーぽめたろ、あたしふつーだよね?」
 最終的にフランはポメ太郎に絡んでいたが……それもまた花見の華であるだろうか。
「わーん、美味しいけど量が多いっ!」
「どれもこれも美味しいのです! 誠吾さんのお弁当は勿論、スティアさんのお弁当も美味しくて……これだけいっぱいあれば、足りない事も無いから食べ放題なのですよ! うん、後でポメ太郎と運動もするのです!」
「実は楽しみにしていたんだ。量がすごいって噂ばかりが流れるけれど、味も美味しいお弁当だからね」
「マルクさんはありがとー! いっぱい食べてね! 天川さんにも一つどうかな?」
「おう、ありがとな」
 マルクもソフィリアも天川も弁当を食べて……そんな中、ふとマルクが思い出したようにフリアノン・ジンを取り出す。
「そういえば、フリアノンで新しいお酒が造られたって聞いたから、持ってきてみたんだ」
 そう、これはイレギュラーズが覇竜で作った「最も新しい」覇竜の酒だ。
 ベースとして使うにも最適だが、そのまま呑んでも素晴らしいものだ。
「複雑な味と香りで、初めて体験する味。炭酸で割ると爽やかに香るんだね。あ、でもこれ、ちょっと強い……」
 元々が強い酒だ。流石のマルクもちょっとクラッときてしまったようで。
「ごめん、少し横になるね」
「えへ、えへへ。みんなとお酒が飲めて、一緒にお花見できてしあわせだなぁ……」
 そんなマルクを枕にしてフランが寝れば、そのお腹を棕梠がポンポンと叩く。
「……枕ゲットなの」
 そしてフランを枕にして棕梠が寝て。
「あ、やべ。飲み過ぎたか? 頭がぐるぐると……ここで虹を作るわけにはいかないんだ! 耐えろ俺!」
「誠吾さんは大丈夫です? お酒……大変そうなのです……」
「お水もあるから飲めば落ち着くかも」
 誠吾にソフィリアとタイムが水を飲ませ、背中をさすって介護していたが……まあ、おかげで誠吾は虹を作らずに済むだろう。
 ちなみにそんなタイムの膝には、柔らかな寝心地を求めてフランが寝ぼけてやってきていた。膝枕であるが、枕を失った棕梠は花丸を枕にしていた。
「誠吾は合間に水を飲む事も忘れずにな。潰れてもちゃんと連れて帰ってはやるが、程々に」
 ベネディクトはそう声をかけながら、天川と相賀……比較的落ちついた酒の楽しみ方をしている2人の近くに移動する。
「相賀殿と國定はまだ飲むだろう? 俺が注ごう」
「悪いなベネディクト。俺も注ごう。元々こっちでは独りで活動するつもりだったんだが、不思議とこうなっちまったな。お前さんには感謝してるぜ」
「それも人生じゃのう。縁とは最も得難き財産とは言うが……どれ、若者も凡そ潰れ始めて来たし、ここらで秘蔵の酒でも1つ出すとするかの」
「ハハッ! 性格悪いな爺さん!」
 そんなことをしていると……いつの間にか空は暗くなってきて。覇竜桜の花が、光り出す。
 淡い桃色の光は強く、強くなっていって。
 その花から現れた無数の光の玉が木の周りをクルクルと回り、やがて天へと昇っていく。
「……ああ、お酒は飲まないでもこの景色に酔ってしまいそう」
 ポメ太郎を膝に乗せたリンディスは、思わずそう呟く。
 自分の目の前をスッと通り過ぎていく光の玉は、見入ってしまう程度には美しくて。
「見ることができた幸運に感謝を……そして黒鉄さん達も案内、ありがとうございますね。また願わくば―来ることが出来ますように」
 思わず、そんな願いすらかけてしまう。
「こんな景色の前で眠ったら勿体ないのに」
 タイムは寝てしまっているフランに……しかし起こさないように見守るが、横から出て来た奏音の手がフランの脇をキュッと抓る。
「アッー! うわ何これ綺麗!」
 そのまま奏音はマルクと棕梠も起こしに行くが……これで何とか見逃す人は出ないだろう。
「こんな綺麗な景色が見られるなんて幸せだなぁ。また皆で一緒に見に来たいね!」
「ああ、そうだね。これは綺麗だ……」
 スティアにマルクもそう応え、空を見上げる。天に向かい昇っていく光の玉は、幻想的で美しい。
「今日はありがとう、静李。何かと君には依頼でも世話になるからな、改めてこの場で礼を言わせてくれ」
「私は何もしてない。何も出来ていない、と言った方が正しいだろうか。ありがとうはどちらかというと私が言うべきだ」
 生真面目な事を言う静李に、ベネディクトは笑う。
「覇竜で会ってから、もう幾らか経った。まだ俺達のすべき事は残っているが……」
 言いながらベネディクトは静李のコップに向けて自分のコップを差し出す。
「また君が良かったら皆で見に来よう、約束しないか?」
 静李からの答えは……ベネディクトにしか聞こえなかったが、グラスを打ち合わせる音は、響いて。
「色んな事が起こって大変な場所だけど、こういった光景も見れるんだもん。―うん、悪くない」
 そんな花丸の呟きが、光玉と共に空へと昇って。
「マルクもベネディクトも、もっとこっちに来いよ! 一緒に飲もうぜ! タイム嬢も飲んでるか?」
 何処となくはしゃいでいる天川の声が夜空の下で響く。
 楽しく食べて、呑んで……今日見たこの光景を、誰も忘れはしないだろう。
 そんな、印象的な花見の夜だった。

成否

成功

MVP

スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女

状態異常

なし

あとがき

お花見っていいですよね。
桜の美しさは心洗われる素晴らしいものです。

そんなわけでお楽しみいただけましたでしょうか?
今回はリクエストありがとうございました!

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