PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<13th retaliation>いずれ常夜がやってくる

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●夜の夢と、夜ならざる夢
 きっと白昼夢であったのだと思う。
 自分は金髪の女性で、深緑の空で嵐と冬がぶつかり合うさまを見ていた。
 今になって自分に出来ることは、もはやないようにみえる。
 けれど……。
「お姉様、本当にやるのですか?」
 振り返る。同じく長い金髪の、背の高い女性の後ろ姿があった。
 女性は壁際に置かれた鎧を見つめている。
 木箱に腰掛けるように設置された全身鎧は、黒い骸のような姿をしていた。
 鎧がゆっくりとその頭をあげ、内側からふわりと夜色の霧が漏れ出す。
 何かを言おうとしているような、伝えようとしているような霧に手をかざし、女性が少しだけ振り返った。
「誰かが、やらなくちゃいけないことよ」
 女性は鎧に向き直り、その胸に手を――。

●『常夜の鎧』と美少女の夢
 『呪い師』エリス(p3p007830)をはじめ深緑に領地や故郷をもつ者たちにとって、ファルカウ攻略は最優先の急務であった。
 さしあたって問題となるのは。ファルカウ攻略の前に立ちはだかる白い吹雪のごとき結界である。
「『眠りの世界』……といったでござるな」
 結界の前に立ち、手をかざす『闇討人』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)。
 先行したがはじき出されてしまった調査員たちによれば、この結界に触れることによって『眠りの世界』なる夢のような異空間へと入り、特定の『攻略条件』を満たさなければこれを解放することができないという。
 これまで何組ものチームが結界の解除に挑んでおり、複数張られたであろうこれらの結界は徐々に攻略されつつあるという。
 そんな中で、咲耶やエリスたちが今挑戦しようとしているのはやや過酷な夢であるらしい。
「調査員の話によれば、奇妙な鎧と剣を装備して深緑の民を次々に斬っていかねばならぬ夢だと……」
「それは、なかなかヘビーですね」
 むーん、と唸るエリス。ファルカウに領地をもち現地人とも仲良くやっている彼女からすれば、そうした人々を手にかけるのは心が痛むところだ。
 だが、深く聞いてみれば少し事情が違うようで。
「どうやら剣で斬り付けた相手は眠りに落ち、生きたまま霊魂を抜き取ることができるという。エリア内にある全ての霊魂を集めきれば解除されるということらしいでござる。
 調査員たちがはじき出されたのは、おそらく住民から激しい抵抗にあったからでござろう」
「ただでさえやりづらいんだ。抵抗までされたらキツいだろうなあ」
 それまでノートをめくっていた『陽気な歌が世界を回す』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)がやれやれと言ってあたまをかいた。
 そして、指を立てて資料の一部をトンと叩く。
「けどまあ、気になる証言がる。その『奇妙な鎧と剣』ってトコロだ」

 黒き骸のような鎧と大剣。書かれている特徴は『常夜の王子』ゲーラスのそれに非常に似ていた。
 どうやらこれの装着者となり、エリア内の人々の霊魂を集めて回るというのが自分に課せられた役目であるらしい。
「それとな。もう一つ気になる話がある。エリス、あんたの『ドリーミングアイズ』についてだ」
 ヤツェックはエリスが装着している白い宝石の指輪をさし示した。
「おそらく古代の品だろうが、それに関する情報が『一切無い』。ハイペリオンやライエル・クライサーというある種の生き証人がいるにも関わらずだ。ちっとばかし不自然じゃねえか? 誰かが意図的に隠したか、然るべき時まで誰も知らないように仕組んだとしか思えねえ」
「『永遠に隠そうとした』わけじゃなくてですか?」
 指輪をひとなでするエリス。それには、咲耶もヤツェクも首を横に振った。
「それなら今見つかったことが不自然になる。然るべき人物が見つけ装着するように予め設定されてたと考えるほうがまだ自然だぜ」
「で、ござるなあ。特に呪物というものは込められた願いを成就するためのもの。実行力を持った祈りのようなものでござる。見つかったなら、『見つけて欲しい誰か』がいたと考えるものでござるよ」
「…………」
 呪いとは、祈りと願い。
 遥か古代に祈られた邪神の願いを封じ続けるため、より強力な祈りと願いをぶつけ続けた身だ。エリスにはそれがよくわかる。
 ただここで肝心になるのが……それがどんな願いだったか、だ。
 誰かを殺したい。誰かを守りたい。誰かに愛されたい。願い次第で呪いは姿を変える。人々の霊魂を奪って回る呪いとは、一体いかなる願いであったのか……。
「いずれにせよ。挑まなければ始まりませんね」
 エリスは手をかざし、結界へと近づいていく。

●眠りの世界:いずれ常夜がやってくる
 あなたは眠りの世界へと入ってすぐ、ある家屋の中で意識をとりもどした。
 鍛冶師の工房とも、魔女の研究室とも、あるいは化学実験室にも見えるその部屋のなかで……最も目を引いたのは『鎧』であった。
 黒き骸のような姿をした全身鎧が座った姿勢で固定され、かたわらには白銀の大剣が立てかけてある。
 あなたあはそれが『常夜の鎧』という名前だとなぜかわかった。
「お姉様、本当にやるのですか?」
 声がする。振り返ると、長い金髪のハーモニアが自分に呼びかけているのだとわかる。
 おそらくだが、誰かの追体験をしているのだろう。彼女――『■■■』のお姉様とやらの体験を。
 心配そうに見つめる彼女から視線をはずし、あなたは鎧に手をかざす。
 胸のあたりにそっと手を当て、願いを浮かべた。
 『■■■■■■■■■■■■■■』
 鎧がバガッと勢いよく展開し、自動であなたへと装着される。
 あなたが外へ出ると、武装したハーモニアたちが魔法の弓を構えこちらに向けていた。
「鎧を脱いで投降しろ! さもなくば――」
 さあ。
 あなたに身体の自由が託された。
 この世界を解放すべく、動き出さなければならない。

GMコメント

 眠りの世界を解除すべく、誰かの追体験を行うようです。
 解除条件は『エリア内の霊魂を70%以上回収すること』。

●装備と状況
 あなたは『常夜の鎧』と奇妙な大剣を装備しています。
 鎧はあなたの身体能力を著しく向上させるほか、他者とのコミュニケーション能力を喪失させます。あなたは物言わぬ怪物となりはてるのです。
 あなたが剣で斬り付けた相手は深い眠りに落ち、剣は霊魂を奪いとり内部へ蓄積していくでしょう。
 この方法で住民達の霊魂を回収していくのがこの世界の解除方法になります。

 基本的にあなたは1人だけで追体験を行うことになります。
 また失敗した場合や追体験中に大きなダメージを受けた場合、パンドラ消費がおこるでしょう。

 対象となるエリアはファルカウ内にあると思われる集落です。
 人口は200~300程度と少ないですが、大半の市民は逃げ回るのでゆっくりやっていると回収がむずかしくなります。
 一部の市民は戦闘能力を行使して立ち塞がったり時間稼ぎをしたりしてくるので、できるだけ素早く対応する必要があるでしょう。
 集落の地形は一般的な田舎の集落のカンジを想像してください。ややでこぼこな地形と間隔広く建てられた家屋群です。

●現実の能力とその影響
 あなた(PC)の基礎能力やスキルはある程度この世界でも使用することができます。
 鎧に合わせて見た目や性能が変化しますが、おおむね強化された状態で使うことになるでしょう。
 たとえば咲耶さんであれば剣が複雑に変形したり黒い巨大な手裏剣を投げたりするでしょうし、ヤツェクさんであれば黒いリボルバー光線銃が現れるかもしれません。
 エリスさんであれば血を呪力の矢に変換し大量に発射するでしょう。

●あなたの『祈りと願い』
 最後に、解除にあたってあなたはこの深緑に対して『祈りと願い』を口にする必要があります。
 どんなものでも構いません。あなたなりの祈りと願いをプレイングに書いて下さい。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <13th retaliation>いずれ常夜がやってくる完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別EX
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年05月12日 22時05分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

クロバ・フユツキ(p3p000145)
雪解けを求め
ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
イリス・アトラクトス(p3p000883)
光鱗の姫
フルール プリュニエ(p3p002501)
夢語る李花
如月=紅牙=咲耶(p3p006128)
朝を呼ぶために
ハンナ・シャロン(p3p007137)
風のテルメンディル
エリス(p3p007830)
王子様におやすみ
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
冬隣
ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)
奏で伝う
キルシェ=キルシュ(p3p009805)
桜花の決意

リプレイ

●『黒鋼二刀』クロバ・フユツキ(p3p000145)の白昼夢
「鎧を脱いで投降しろ! さもなくば――」
 弓を構えるハーモニアたち。彼らの目には怖れや敵意があった。
 鎧を着て外へ出ていたクロバは自らの手を……鎧に包まれた右手を見下ろす。
(夢、そう、これは夢だ。
 だが――だとしても気分は良いものではないな。
 助けたくて必死に足掻いてる筈の人たちを夢とは言えこの手にかけるしかないというのだから)
 開いた手を、握る。
(リュミエ様……いまあなたはどうなっているのですか。せめて、無事であれば……)
 無事であると信じたい。けれど、その保証はどこにもない。この一連の呪いに抵抗したがゆえ、恐るべき力によって抹殺されていないとも限らないのだ。
「明けない夜はないように終わらない眠りなんて、ない。
 だから祈るのだ。この奪われた魂がいつか在るべき場所へと帰れるようにと。いや――そうでなくてもすべて救ってみせると」
 クロバは己の祈りを口にすると、いつの間にか自らの手にあった白銀の剣を握りしめた。トリガーをひくと同時に吹き上がる呪力の奔流が巨大な剣へと変わり、眼前のハーモニアたちを一撃のもとになぎ払う。
 その様子を、とおまきに見ていた集落の人々が悲鳴をあげて逃げ出し始める。
 逃がしてはならない。
 クロバは呪力によって爆発的に加速しながら急速に距離を詰め、馬へと飛び乗ろうとした男性を剣で斬り付ける。
 眠りに落ちて馬から転落する男性を片腕でうけとめ、地面へとおろした。
 悲鳴がきこえ、振り返る。
 女性と目が合った。女性は窓をパタンと閉じて屋内へと閉じこもる所だったようだ。
 ならば……と、クロバは剣のレバーを引きながら空になったマガジンを抜くと、弾の詰まったマガジンを差し込む。そしてトリガーをひくと、扉を破壊しながら屋内へと侵入した。
(魂は奪う、だが俺がしたいのは”殺し”ではない。
 きっと助ける道は残ってる筈だと信じるしかない)
 泣き叫ぶ娘を抱きしめ、涙を流しながらこちらを見つめる女性がいた。
 クロバはそちらを向き、できる限り最高効率にまで短縮された動きで女生と娘を一太刀のもと斬り伏せた。
 女性がその刹那『やめて』と言いかけていたことを、クロバは分かっていたつもりだが……聞こえないふりを、するしかない。
「全てを救うには、こうするしかない。皆を眠りの呪いから救うためには……こうするしか」
 許してくれなどと、言うつもりはない。だからその代わりに、できるだけ早く。できるだけ鋭く。

●『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)の白昼夢
「鎧を脱いで投降しろ! さもなくば――」
 弓を構えるハーモニアたち。彼らの目には怖れや敵意があった。
 その様子に少なからず、ウェールは動揺する。森を燃やした『次男』のことを思い出したためだろうか。
 首を振る。今は己の過去や経験に捕らわれている場合ではないはずだ。
 腰を僅かにおとす姿勢をとり、両手を広げて構える。
 ハーモニアたちが一斉に矢を放ったが、ウェールは構うことなく突進した。
 無数の矢はウェールの纏う鎧によって弾かれ、急接近したことで最前列のハーモニアの表情が一瞬にして恐怖に染まった。
 叫び出しそうな顔をがしりと左手で掴み、爪を食い込ませる。相手が完全に脱力したことを察し、素早く右手をふるった。
 円を描くように夜色の斬撃が走り、右手の爪が描いた五本の軌跡が周囲のハーモニアたちを崩れさせる。
 彼らは眠ったようだ。
 鎧を纏った自分の目からは、彼らの魂がふんわりと胸元から浮きあがっているのがわかる。それを手で掴むようにして、自らの胸元へと当てた。
 変化があった……ように感じる。
 魂を奪い、取り込んだ感覚なのだろう。
(翡翠の事件を思い出すな。怪我人は出たかもしれないが死者は出ず、どうにか燃え広がる前に止められたが……。
 ROOの時みたいに大樹の嘆きが出て、うちの次男は関係ないが……俺は次男の代わりにあの時の償いをしたいんだと思う。
 それと次男をこっちに連れてきたら深緑の風景を一緒に見たい)
 未来を、あるいは希望をつかみ取るには動き出すしかない。
 悲鳴をあげた人々の声が自分の脚をすくませそうになるが、ウェールは吠えるような声をあげて飛び出した。
 娘を抱え走る女性がいる。馬に乗り彼女たちを回収しようとする男がいる。
 逃げられればおしまいだ。ウェールは飛びかかり、まずは馬に乗った男を爪でもって切り裂いた。
 夜色の斬撃は炎のように燃え上がり、男を馬から転落させる。
 女性の手から逃れた娘が名を叫びながら掛けより、眠った男をゆすった。
「大切な人や家族を失うことはすっごくつらい事だ……」
 思わず呟いていた。
 ウェールはだらんと下げた両腕をそのままに、少女へと歩み寄る。
 やめてと叫び、女が割り込んだ。
 だが、止まることはない。
 なぜならば。
「俺は誰も泣かない明日が深緑に来ることを願う!」

●『光鱗の姫』イリス・アトラクトス(p3p000883)の白昼夢
「鎧を脱いで投降しろ! さもなくば――」
 弓を構えるハーモニアたち。彼らの目には怖れや敵意があった。
 だが、イリスの心に揺れはない。波紋ひとつ浮かばないグラスのうえの水面である。
 夜の色をした剣と盾が両手にあるのを確認すると、イリスはあえてその両手をだらんと下げてみせた。小首をかしげ、撃ってこいといわんばかりに。
 ハーモニアたちはその様子に汗ばみ、手を震わせ、しかし撃った。バラバラに、まるで恐怖やパニックが伝染するかのようにだ。
 イリスは痛みを……ほぼ感じなかった。
 雨が降る日に傘も差さずに外へ出たときと、さして変わらない。
 こんなものかと思う一方で、鎧の性能にため息が出る。
「この能力傾向にボス補正与えちゃダメでしょ」
 夢ならばと思ったのか、それとも本音が漏れたのか、つい口にしてしまう。
 そしてもう一歩踏み出すと、ハーモニアたちは聞き取れないようなわめき声を上げて弓を乱射し始めた。
 こちらが一方的に攻撃されている筈なのに、相手の表情は追い詰められている人間のそれだ。
(私としてもね、気にはなっていたから来てはみたけれど、かなりの厄ネタだったわね……。
 先行調査でやらなければならない事が分かってるのがせめてもの、って感じかしら)
 ハアとため息をついて、イリスは今度こそ走り出した。
 弓を構えていたハーモニアたちが全て倒れるのは、もはや必然であるとしか言えなかった。
 何十秒経った頃だろうか。
 イリスは声なき悲鳴を聞いた。
「こっちか……うわぁ、嫌な能力の使い方」
 扉も窓も閉ざされた家屋へと向かう。扉には当然ながら鍵がかかっていたが、盾をドンと叩きつけることで扉は壊れ、ちからなく開いた。
 ヒッという短い悲鳴が聞こえ、振り向くと娘を抱える女性が部屋の隅で震えている。
 親子だろうか。
 娘はその腕から脱し、知覚に落ちていた掃除用具か何かを手に取ってイリスに襲いかかってくる。
 カツン、カツン、コツン。雨だれが鍋をうつような、それはそれは力ない攻撃だった。
「私の祈りは、前進」
 なにごとかわめきながら棒きれを振り回していた少女が、呟くイリスを見上げる。
「眠りから覚めて、停滞を越えて、まだ誰も知らない明日を見たい」
 少女へ、剣が振り上げられる。
 母らしき女が叫びながら駆け寄る。
「私の願いは守護」
 振り下ろされる。
「その為に、たとえどんな相手でも臆せずに立ち向かい、守りきりたい」
 イリスを止められる者など、この集落には一人たりともいないように思えた。

●『夢語る李花』フルール プリュニエ(p3p002501)の白昼夢
「鎧を脱いで投降しろ! さもなくば――」
 弓を構えるハーモニアたち。彼らの目には怖れや敵意があった。
 しかしフルールはそれらの感情の、どれひとつとして心には刺さらなかった。
「常世の鎧、ね。これを着て剣で住民達を斬り付けて、霊魂を集めなきゃいけないのね」
 独り言のようにつぶやくと、小さく手を掲げる。
 突如夜色の焔がわきおこり、フルールを包み込んでいく。
「黒焔はあまり好きではないのですけど……」
 誰にむけた言葉でもない。あるいは自分にすらむけていないのかもしれない言葉だ。
 その様子に、ハーモニアたちが恐怖しないはずは無かった。
 自分達を主張するように、あるいは自分達を塗りつぶす誰かの自我に抗うように魔力の籠もった矢を放つ。
 フルールはそれを、まるでかわすことなく突き進んだ。
 無数の矢が鎧を通して刺さるが、知ったことではないというふうに腕を水平に払う。
 それだけで夜色の焔がはしり、ハーモニアたちを包み焼いていった。
 意識を焼かれ眠りに落ちるハーモニアたち。
 不安げに、そして遠巻きに見ていた周囲の人々はタガの外れた恐怖に潰されるかのように悲鳴を上げ、そして逃げ惑い始める。
 ゆっくりを見回し、その中でもより強く逃避を試みようとしている人間をフルールは探し出した。
「一人だって逃がしてあげないんだから」
 フルールが剣を手に取ると、夜色の焔を剣へと纏わせる。
 それを振り込んだことで、焔はまるで巨大な蛇のごとく伸び逃げ始めるハーモニアをその足場もろとも焼き焦がした。
 返す刀で別の方向へと剣を振り、家の中へ逃げ隠れようとしていたハーモニアをも焼き尽くす。
 やがて、追い詰められたハーモニアの民たちが一矢でも報いようと武器をとり襲いかかってくるのがわかった。
「これが終わったらどうなるのかしらね。できれば、この深緑が再び焼かれることなく静かに平和になったら良いのにね」
 願いを呟きながら、フルールは再び剣を取る。
 斬りかかってくる男性の剣は、悲しいかなフルールの纏う鎧の装甲に弾かれた。
 勇敢な突進も、フルールの鎧を押し倒すには至らない。
 決死の自爆ですら、フルールを倒すだけの威力をもたなかった。
 フルールのやるべきことは単純で。ただ襲いかかってくる相手に剣を振り続けるだけ。
 振るう腕を阻めるだけの力は誰にも無く、剣を止められるだけの壁はない。
 まるでもやを斬り続けるように、フルールはその作業を続けるのだった。

●『風のテルメンディル』ハンナ・シャロン(p3p007137)の白昼夢
「鎧を脱いで投降しろ! さもなくば――」
 弓を構えるハーモニアたち。彼らの目には怖れや敵意があった。
 それを受け止めるのは、ハンナにはあまりに重すぎる。
 深緑西部で育ち、人々のため戦ってきた彼女にとって、ある意味もっとも縁遠い視線であったためだろうか。
(……なんて酷い夢。でも……)
 強く拳を握る。その手にはいつの間にかガンエッジが握られていた。
(師匠も、皆様も、誰もいない。……私が、やらなければ)
 泣いて縋ればいいなら、あるいはそうしたかも知れない。
 悪しき呪霊や怪物たちを倒していればよいなら、それが一番楽だったのかもしれない。
 けれど、今ここにいるのは自分をおいて他にない。
「なら、ただ突き進むのみです」
 ハーモニアたちの手が、矢を放とうとしている。
 それがスローモーションで知覚できる。ガンエッジのトリガーをひいたからだろうか、それとも極限状態によって脳が活性化したからだろうか。
 いずれにせよハンナは飛来する全ての矢が自らへ届くよりも先に、その間をすり抜けるかのようにジグザグに走って最初のハーモニアをガンエッジの刃で斬り捨てるだけのことができた。
 ガハッと血をはいて吹き飛ぶハーモニア。周囲の者たちが恐怖に顔を引きつらせながら短剣に手をかけるが……遅い。ハンナはそれよりも早くエンエッジを幾度も振り、無数の夜色の軌跡を描いたかと思うと全てのハーモニアたちを斬り伏せた。
 眠りに落ちたハーモニアたちの胸からは、ほのかに霊魂の光が見える。
「このド根性だけは誰にも負けませんもの。そうでしょう、シャハル」
 そう、呟かずにはいられなかった。
 ひどい夢だ。今すぐに辞めてよいなら、そうするだろう。目や耳を塞いでわめき散らせばすむなら、そうしただろう。
 けれど、目を見開き悲鳴を聞き、この手で全て斬らねばならない。
「どうか……どうか……!」
 それは悲鳴のように、ハンナの口から漏れた。
 泣き叫び逃げ惑う少女を斬り捨てたときに。
「皆様が心安らかに過ごせますように!」
 命乞いをする老人を刺し殺すときに。
「苦しみも悲しみも遠くに去り、ただ幸せだけに満ちていますように!」
 家に閉じこもり震える家族へ、歩み寄るそのときに。
「それがいつか覚める夢だとしても、その幸せが未来へ向かう活力とならんこと!」
 振り下ろす剣と共に、ハンナは祈った。
 目が覚めるその時まで、涙はながすまいと誓って。

●『闇討人』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)の白昼夢
「鎧を脱いで投降しろ! さもなくば――」
 弓を構えるハーモニアたち。彼らの目には怖れや敵意があった。
 咲耶は耳を澄まし、彼らの弓が、そのつるから指が離されるその瞬間を聞いた。
 と同時に地を蹴り、宙を舞う。
 焦りに顔をあげたハーモニアの弓使いたちの顔が、上下反転しながらくるくると回る咲耶の視界にうつる。
(この鎧、確かにこれはゲーラスの着ていた物。夢の中とはいえ何時の時も無辜の人々に手を掛けるとは)
 だが、これもまた結界を解くため。それに、本当に無辜の民を殺すわけではない。
 決意を固め、大剣を空中で素早く変形させる。
「これよりこの一時、拙者は修羅とならん。紅牙斬九郎、推して参るッ」
 空中でくみ上げた『大砲』はハーモニアたちを射程に捕らえ、そして夜色の呪力でできた棒手裏剣を大量に発射した。
 次々と突き刺さる棒手裏剣。崩れ落ちるハーモニアたち。
 宙返りをかけて着地した咲耶はガシャンと大砲を二つに分け、二刀の小太刀に変形させる。
(これが追体験であるというのならば……この中でゲーラスを知ることが、できるやもしれぬ)
 走り出した咲耶が地を蹴り、家屋の壁を悠々と透過したかと思うと屋内をごろんと転がった。立ち上がる動作と同時に屋内で武器を構えていた男性を斬り、更なる動きで女性へ小太刀を投げる。
 突き刺さり、崩れ落ちる女性。その後ろに庇われていた少女が窓から逃げだそうとするのを、咲耶は素早くかけより捕まえた。
 悲鳴をあげ腕から逃れようとする少女を床へ押さえつけ、その母親らしき女に刺さった剣を抜きながら見やる。
 これがどういう光景か。
 語らずともよくわかる。
 そしてこれを実行しなければならなかった『お姉様』という人物の心中は、いかなるものであったのか。
「しかしその罪は一人で抱え込むべきではなかった筈でござる。大きな犠牲を払って得たものは大抵碌な事にはならぬのだから」
 言いながら、剣を少女へ突き立てた。
 血の一滴もおちぬまま、眠りに落ちる少女。開いた目から光がゆっくりと消えていくのを見つめながら、咲耶は剣を握りしめる。
「故に拙者は……」

 全て、殺し尽くした。いや、眠らせ尽くした。
 彼らの魂は全て剣が吸い付くし、白銀の剣には赤い光が灯っている。
 ゆっくりと歩き、はじめに出てきた建物へと戻った。
 そういえば……もう一人いたはずだ。
 咲耶はそう思い出し、扉に手をかけた。
 開くと、正面には大鏡。
 全身を映すほどの大きなそれは、自らの姿を投影していた。
 ゲーラスの鎧……いや、少し違う。全身に『赤い目』のようなものが無数に開き敵意や怒りをむけている。それは鏡を通し、自分自身にむけられているようにすら感じられた。
「本当に……本当にこうするしかなかったのでござるか……?」
『他に方法はなかったの。だってこの後、この集落は……』
 誰かの声が聞こえた。美しい少女の声だ。
 振り向く。
 と同時に、巨大な冷気の塊が、流星の如く集落へと降り注いだ。それも一つや二つではない。集落が消し飛ぶほど、その場にいた何人たりとも生き残れないほどの物量で。
 いや……それは正確な表現ではない。
 吹き飛ばされた咲耶は、無事だった。常夜の鎧がダメージを大幅に軽減してくれていたのだ。
 そして同時に、鎧によって奪った集落の人々の霊魂もまた、無事であった。
 無事でないのは……彼らのかつての肉体だけだ。
『こうするしかなかった』
 少女の声はそう訴え、次に……。
『けど、こんなはずじゃなかったの』

●『冬隣』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)の白昼夢
「鎧を脱いで投降しろ! さもなくば――」
 弓を構えるハーモニアたち。彼らの目には怖れや敵意があった。
 それら全てを、アーマデルはあえて一度無視した。
 周囲を見回し、そして自らの手を見下ろす。
「やはり、ここは通常の空間では無さそうだな」
 『眠りの世界』と聞いていたが、こうもリアルに感じられるものなのだろうか。
 しかし、眠り……か。
(眠りと死、夢と冥府は半血の兄弟くらいには近しい。俺は元より死を運ぶもの、必要とあらば躊躇いはすまい)
 再びハーモニアたちが呼びかけてくる。いや、怒鳴りつけると言った方が正確か。
 アーマデルはやっと取り合う気になったようで、ハーモニアたちを改めて視界にとらえる。
 武器をむけているのも相手。取り囲んでいるのも相手。であるにも関わらず、アーマデルの発する気迫だけでハーモニアたちはヒッと引きつるような声をあげた。
 強弱は、明白。アーマデルは白銀の剣を鎖状に展開すると、空を暴れる大蛇のごとく振り回した。
 縦横無尽に暴れ回る蛇腹剣に翻弄され、なすすべもなく斬り伏せられていくハーモニアたち。
 その無慈悲なまでの、『虐殺』とすら言えるほど一方的な風景に影から様子をうかがっていた集落の住民たちが声なき悲鳴をあげる。
 走って追いかけるまでもない。
 最短距離を突っ切るように歩き、民家の壁を透過して屋内へと入り込む。
「祈りは遠く、誰かの為に。
 願いは近く、胸に抱き、己の為に守るもの」
 いつの間にか、無意識に呟いていた祈りの言葉がヘルメットの下から漏れる。
「祈りは遠く、大切な者の為に。彼が顔を上げ、前を向いて歩めるように。
 願いは今は遠く、大切な者の元へ帰る事。共に在ると契った者、その傍らが俺の在処」
 扉を開き隣の部屋へと逃げ込む女と娘がいた。父親らしき男がアーマデルに襲いかかろうとするが、腕の一振りでそれは鎮圧できた。
 それでも足にすがりつく男を、アーマデルは見下ろす。
 見下ろすだけだ。
 剣を逆手にもって掲げ、男の背から突き立てた。
 背から突き破り床板すらも破壊した剣が、男の霊魂を吸い上げていく。
「彼の古き故郷は深緑にあったという」
 脱力した男を軽く片足で振りほどき、アーマデルは扉をあけるでもなく壁を透過した。
 震える親子がいた。やるべきことは、決まっている。
「閉塞のままに淀んでゆく事を望みはしないだろう」
 だから。
 と、アーマデルは剣を蛇腹に展開した。

●『陽気な歌が世界を回す』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)の白昼夢
「鎧を脱いで投降しろ! さもなくば――」
 弓を構えるハーモニアたち。彼らの目には怖れや敵意があった。
 だがそんななかにあっても、ヤツェックの視線は手元の剣に注がれていた。
(魂喰いの大剣か。向こうの世界であいつの剣を壊せば霊が解放されるという寸法か?)
 物は試しかとばかりに鎧の腰に手を当てると、ガシャンと音を立ててホルスターがせり出し刺さっていた夜色のリボルバーピストルを左手で引き抜く。
 連射は慣れたものである。眼前のハーモニアたちの身体に点を見いだし、正座でも描くように銃口でなぞりながら指はミシンのごとく正確にトリガーを引いている。リボルバー弾倉八発分が全て綺麗にハーモニアたちの胸に打ち込まれたところで、彼らはばたりと仰向けに倒れた。
 悲鳴があがる。それを無視してハーモニア達のもとまで歩き、不気味な鼻歌をうたいながら剣を彼らの腹へと順に突き立てていった。
 白銀の剣の中央に、まるでゲージでも溜まっていくかのように赤いラインが生まれ始めた。
 それは徐々に手を通して鎧へ流れ込み、最初に自らの腕部分がドクンと脈打ったかと思うと赤い目のようなものが鎧に開く。
「殺した……いや、『回収した』わけか」
 息をつく。
「『お前さん』も、ずっと独りだったんだろう? 人の意地ってのは、いつだって大変だ……」
 誰かの歌が、聞こえた気がした。

 集落全ての魂を回収し終えたあと、そこはひどく静かだった。
「『お前さん』は、この人等を守りたかったんだろう? そしてそれを、今見つけてもらおうとした。そう、『今』だ……時間をトリガーにしたのか、それとも茨の呪いをトリガーにしたのかはしらんがな」
 誰かが、自分の後ろに立っている気がする。おぼろげな影だ。性別も年齢も、人格すらもあやふやになってしまったような、無数の人間を混ぜに混ぜてから無理矢理人型に成形し直したような、それは『誰か』の集合体であった。
「――魂が、永遠に守られますように。
 ――魂が、いつか解放され目覚めますように」
 『お姉様』とやらが何者かはわからない。
 しかしそれがいにしえの執念と『祈り』で動いていたとするならば、長い孤独は『願い』を忘れてしまうのではないだろうか。
「祈りはいつしか呪いに変わる。その条件はやっぱり……『願い』を忘れた時だろうぜ」
 振り返る。
 そこには、もう誰もいなかった。
 いや。
 『誰でもないもの』が、そこにいた。

●『リチェと一緒』キルシェ=キルシュ(p3p009805)
「鎧を脱いで投降しろ! さもなくば――」
 弓を構えるハーモニアたち。彼らの目には怖れや敵意があった。
 それが、なによりもキルシェの心を突き刺した。
 亜竜の炎が迫る時でも、凶悪な魔種と戦う時でも、野蛮なモンスターたちが抜き身の刃を振りかざし迫る時でも、こんな気持ちにはならなかった。
(でも……現実でみんなを助けるためには、ルシェも、殺さなきゃいけない……。
 ルシェが、殺さなくちゃいけない……)
 強く握りしめた剣が、僅かに震える。
 飛来する矢が夜色の障壁に阻まれ落ちていく。どの一本たりとも痛みを与えなかったが、ハーモニアたちの恐怖や、怒りや、キルシェが剣を振りかざした時の絶望が……やはりなによりも、キルシェの心に痛みを与えた。
「ごめんなさい……ごめんなさい……!」
 恨んで欲しい。
 呪って欲しい。
 『嘆きも憎しみも悲しみも全部受け入れるから』と心で言いながら、キルシェはハーモニアたちを斬り捨てた。
 あがる悲鳴。感情探知をはしらせなくても分かる。住民達の心は恐怖で満たされ、自分や愛する家族がいかにして助かるかだけを考えていることが。
「出来るだけ苦しむことがないように、出来るだけ怖い思いをしないように……」
 地面を強く踏みしめる。走り出し、娘を抱えた女性が振り返るその一瞬に親子共々斬り付けた。
(不思議ね。本当ならルシェ、こんな鎧で動けるはずないのに今はとっても軽いの。心はこんなに重いのに)

 静かなものだった。
 立ち上がる者は、誰もいない。
 集落の中心に立って、キルシェはゆっくりと空を見た。
 恨まれれば、気持ちが軽くなるのだろうか。
 呪われれば、救われるのだろうか。
 この心に巻き付いた鎖のような重さは、なんだろうか。
 夢だから関係ないと切り離せないのは、なぜだろうか。
「ルシェは」
 脱力した手から、剣が転げ落ちる。
 がらんとたてた音を無視して、空をまだ見ていた。
「『こんなことができるひと』だって、分かっちゃったんだわ。こんなこと、知りたくなんてなかった」
 深緑の人々のため。
 愛する人々のため。
 友の、家族の、仲間の、ありとあらゆるひとのため。
 そのために、自分は人を傷つけたのだ。それも、決定的に。
 やらない選択肢もあったろう。目を塞いでこの夢から逃げ出すことだって、あるいはできたはずだ。
 そうしなかったのは。
 自分が『なんとしても』と決めたからだった。
「どうか、どうか……穏やかで優しい深緑を取り戻せますように。
 みんなが目覚めて、会いたい人に会えますように」
 祈りは覚えている。
 願いは、たしか、忘れていない。忘れてはいけないんだ。
「みんなに会いたいな」

●『呪い師』エリス(p3p007830)の白昼夢
 全ての人を斬り、霊魂を奪って回る。
「住民の皆さんを助ける為とはいえ、なかなかヘビーですね……」
 その全ての工程を終える頃、エリスは肩にどっとのしかかるかのような疲労にため息をついていた。
 そも、エリスにとって難しいことではなかった。夜色の弓をとり、呪いの矢を次々に打ちハーモニアたちから霊魂を奪っていく。
 人々の悲鳴を、声のあるものないもの関わらず聞きつけ、ひとりも残さず回収できた。
 元々手回しのよいエリスである。気付いた時には住民の九割以上を回収しきり、そして……。
「最後は、あなたですか」
 鎧越しに見上げると、半透明な球体の中に金髪の少女が立っていた。球体は地面から高く浮いた場所にあり、距離もあったが……杖をもった彼女の目はよく見えた。
 悲しみと、怒り。しかし怒りはこちらに向けたものではない。おそらくは自分にむけたものだろう。
 ――かつては元の世界で邪神の呪いを封じ続けた時と同じように。
「『私は深緑にいる妹や友、そして領民の皆さんの平穏と幸福を願っています』」
「知っています。それは、私も同じなんです、『お姉様』」
 会話が通じた?
 エリスは違和感を覚え、弓を握る手に力を込める。
 少女は――。
 リモスにとてもよく似た少女は、自らの胸に手を当て左目から涙をこぼした。
「だからって、あなたがやらなくてもよかったじゃあないですか! 誰かがやらなければならないなら、私がやっても――」
「『いいえ』」
 自分が言った……わけでえはない。エリスの口から漏れたのは確かだが、この言葉は『お姉様』の言葉だ。
「『あなたには、魂を還す役割があるでしょう? みんなの魂を、この世界が安全になるまでとっておく役目は、私が負うわ』」
 ゆっくりと掲げた剣を見つめる。
 鎧の内側は夜色の幕に包まれ見えなかったが、うっすらと自分の姿が透けて見え始めた。
「それまで、誰にも触れさせはしないから」

 唐突に。
 エリスは夜のなかにいた。
 星空がまたたく宇宙のような……しかしそれが星ではなく、無数の人々の霊魂であったのだと、その瞬間に気がついた。
 ならば。
 エリスは咄嗟に振り向き、後ろに立っていた美少女を見つける。
「あなたは、これをずっと守っているのですか? だったら、私達と争う必要なんてなかったはずです」
「そのはずでした」
 美少女……いや『お姉様』はつぶやき、悲しげに目を伏せる。
「ですが永き封印の眠りは、当時の人々と今の人々を決定的に別ってしまったの。
 『ゲーラス』は、死の運命にあった集落の人々を霊魂だけでも回収し、守っておくための精霊装置よ。
 けれど霊魂の保管と防衛を司る『ゲーラス』にとって、現代の人々は霊魂を脅かす外敵になってしまった」
 星々が瞬く。
 誰かの思い出が少しずつ垣間見えた。
 遥か昔は勇者王時代に紡がれた人々の、何気ない日常のワンカットが流星の如く流れては消えていく。
「もう、守る必要はないの。けれどゲーラスは、それを理解することができない。現代に暮らすあなたたちを排除して、かつての人々の居場所を作ろうとしてしまうでしょう。それはきっと……間違っているのよ」
 『私達はもう先を譲らなくては』。
 美少女はそう言って苦笑した。
「『私は深緑にいる妹や友、そして領民の皆さんの平穏と幸福を願っています』。
 けれどその願いが忘れ去られ、魂の平穏への祈りだけが残ってしまった。
 それは――」
「呪い」
 エリスは、呪いとそうでないものの区別を付けることが出来た。
 願いや祈りが、呪いに近けれどそうでないのは……願いを忘れていないからだ。
 まるで枯れた花のように、願いを忘れた祈りは呪いへと変わる。
 けれど。本当に忘れたわけではない。
 いまこうして残されたのだ。
「わかりました。その願い……私が引き継ぎましょう。
 私も同じ祈りと願いを、持っているのですから」
 翳した指には、ドリーミングアイズが光っている。
 夢見る瞳が、ゆっくりと開く。

 そして、『眠りの世界』は解けていく。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 常夜へと向かえ
 忘れてしまった願いを届けるために

PAGETOPPAGEBOTTOM