PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<覇竜侵食>堅牢なるフルフルド

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ――事の始まりは、亜竜集落イルナークが滅びたことから始まる。
 イルナークは三大集落であるフリアノン、ペイル、ウェスタに続く規模を誇っていた集落である。サンダードレイクの骨は死してな強大な威圧を放ち、岩山をくりぬいた硬い岩盤による強固な守りもあって、これまで滅亡の一途を辿るような事件が起こることもなかったのだ。
 だがそれをもたらしたアダマンアントたちは空からではなく、地下を掘り進めてやってきた。地道かつ着実にことを為したアダマンアントたちの背後に、各集落の里長たちは統率者たるアダマンアントクイーンの誕生を予感したのである。
 彼らはこちらの動きを待ってくれることはなく、次の行動を開始する。それすなわち、デザストルに生息する生物へ向けた襲撃であった。狙うは大量の食糧確保である。
 豊富な戦力を持つアダマンアントの群れは、もはや軍勢といって差し支えない。これを許せばアダマンアントたちはより勢力を伸ばしていくことは必須である。そうなれば――次にイルナークと同じ道を辿るのは、いったいどの集落なのか。
 こうしてローレットへ、大規模な駆除依頼が出されることになる。食糧を確保せんと動き出したアダマンアントたちに対し、攻撃は最大の防御であることを見せつけるのだ。



「邪魔者もろとも食糧にってことか……急がないといけないね」
「うん。あちこちの小集落が襲われてる」
 ヴェルグリーズ(p3p008566)は『Blue Rose』シャルル(p3n000032)の言葉に表情を険しくする。
 イルナークより抵抗力が少なく、デザストルに生息するモノ――モンスターや亜竜たち――よりも弱い。小集落に住まう人々は格好の餌であった。
 加えて、アダマンアントたちには邪魔者もろとも食糧とするだけの余力が充分すぎるほどに存在している。統率者アダマンアントクイーンの元、ここまでの戦闘データを反映した戦闘種の投入、そしてアダマンアントたち自身もまた存分に戦いへ投入することができるのだ。多少抵抗力のある人間がいたところで多勢に無勢という塩梅である。
「――イレギュラーズ!!」
 聞き覚えのある声にヴェルグリーズとシャルルは振り返った。以前依頼を共にした青年がこれまで見たこともないような、緊迫した表情で駆け寄ってきている。
「メナスへともに向かってくれ……このままではあそこも滅びてしまう!」
「ペイル殿、落ち着いてくれ。メナスというのは……集落か、地名かい?」
 ヴェルグリーズの言葉にはっとしたペイルは、咳ばらいをひとつして頷いた。
 小集落メナス。フリアノンの近くに存在するそこは、かつてペイルが住んでいた集落と協力関係を結んでいた場所だという。現里長の子――孫から見れば親に当たる――は以前の外敵襲来で命を落としており、年若い孫がいずれ里長を継ぐことは既に決まっているようだ。
(以前住んでいたという集落は……いや、今は聞いている場合でもなさそうか)
 協力関係にあった小集落が滅亡の危機に瀕している。そして彼があそこ『も』と言った意味。ある程度は察せよう。詳しく聞きたいならば、まずアダマンアントたちの危機を乗り越えなければならない。
「メナスは死せる竅土竜の骨を利用している集落だ。だが安茜……次代の里長も、数多くのアダマンアントが押し寄せればその大波に潰されてしまうだろう」
 竅土竜の骨が集落の姿を隠すメナスにおいて、その遺骨こそが堅牢なる防壁とも言えよう。しかしアダマンアントたちが地上から大挙して押しかけたなら集落も、天井となる竅土竜の遺骨も無事である保証はない。
「わかった、向かおう。道案内はペイル殿に任せても良いかな?」
「ああ」
 至急イレギュラーズたちを集め、出発する。フリアノンから遠すぎる場所ではない。急げば壊滅するまでに辿り着けるだろう。
 ある者は地を進み、ある者はワイバーンを駆り。メナスへ近づくにつれ、集落の異変が察せられる。
「戦いが始まっている……」
「……見たことのある顔がいるみたいだね」
 気が急いているペイルの傍ら、ヴェルグリーズは集落の中にイレギュラーズの同志を認める。どうやら先んじて駆けつけ、応戦を始めていたらしい。
「ボクたちも加勢に――」
「待て」
 集落内へ向かおうとしたシャルルをペイルが止める。その視線の先を追っていけば、新たな敵影が見てとれた。あれを放置する、ないしは引き連れたまま加勢に向かったとすれば、今以上の甚大な被害は避けられないだろう。
 イレギュラーズたちはメナスへ入れるわけにはいかないと武器を握る。そんな彼らを見たアダマンアントたちは、邪魔をするなと言いたげに威嚇の鳴き声をあげた。

GMコメント

●成功条件
・アダマンアントをメナスへ入れないこと
・アダマンアントの討伐

●情報制度
 このシナリオの情報制度はBです。不明点もあります。

●フィールド
 フリアノンの近くにある小集落『メナス』の前。小集落内については別働隊(透明空気GM担当)が動いていますので気にしないでください。
 ゴツゴツした岩山が続く山岳地帯。植物等は見当たらないので思い切り戦いましょう。

●エネミー
 群れは3体で構成されています。また、いずれの個体も小集落で食糧を得る事を最優先課題としています。
・アダマンアントα
 通称『アルファ』。全長2mほどの巨大なアリです。その外骨格は強力です。強靭な顎で噛み付いたり、酸を放って溶かしたりしてきます。
 アルファにおいて特筆すべきは、非常に感覚が優れている事、体内で様々な毒を作り出せる事です。
 また、倒された際は内包していた毒を全て辺りへぶちまけ、戦闘終了時まで残る毒沼を作ることになります。
 
・アダマンアントβ
 通称『ベータ』。全長2mほどの巨大なアリです。その外骨格は強力です。強靭な顎で噛み付いたり、酸を放って溶かしたりしてきます。
 ベータにおいて特筆すべきは、他個体に比べて外骨格が一層強靭な事、外骨格のいたる場所に【棘】を持つ事です。
 外骨格が成長したために機動力は若干落ちているようですが、確実に命令を遂行できると思えば瑣末な問題でしょう。

・アダマンアントγ
 通称『ガンマ』。全長2mほどの巨大なアリです。その外骨格は強力です。強靭な顎で噛み付いたり、酸を放って溶かしたりしてきます。
 ガンマにおいて特筆すべきは、群れの中で随一を誇る攻撃性の高さ、及び反応速度です。
 足先が針のように尖っており、歩いた後には硬い岩盤であろうとも穴があきます。通った跡はわかりやすいですが、追いつく場合には全力でかからねばなりません。

●友軍
・ペイル
 ヴェルグリーズ(p3p008566)さんの関係者。どこか冷めた雰囲気を持つドラゴニアの青年ですが、見たこともないほどに狼狽していました。メナスの者は知己のようです。
 そこそこ戦える近接アタッカーです。指示があればそれに従います。……が、今回は熱くなるあまり攻勢寄りになってしまいそうです。

・『Blue Rose』シャルル(p3n000032)
 イレギュラーズである、ウォーカーの少女。元々は精霊のようなものだったと言います。
 ペイルとは初対面ですが、ただならぬ彼の様子に若干心配しているようです。
 そこそこ戦える神秘適正中〜遠距離アタッカー。指示があればそれに従います。

●ご挨拶
 愁と申します。
 透明空気GMとともにメナスを舞台とさせて頂きました。失敗すれば集落内に甚大な被害を及ぼすでしょう。
 また、双方の参加キャラクターがもう一方のシナリオに登場する事はありませんので、ご注意ください。
 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <覇竜侵食>堅牢なるフルフルド完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年05月02日 22時06分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
優穏の聲
マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)
黒鎖の傭兵
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
一条 夢心地(p3p008344)
殿
ヴェルグリーズ(p3p008566)
約束の瓊剣
スフィア(p3p010417)
ファイヤーブレス
熾煇(p3p010425)
紲家のペット枠

リプレイ



 \アリだー!/

 ゴツゴツとした岩山の続く一帯に『激情の踊り子』ヒィロ=エヒト(p3p002503)の声が響く。大した緑も見当たらない殺風景な場所だったが、傍らの『あの虹を見よ』美咲・マクスウェル(p3p005192)にとっては初めての場所ということもあり、それなりに興味のひかれる土地であるよづあった。
「でも、のんびり見渡す暇もないのよねぇ」
「ボクと美咲さんならあっという間に倒せちゃうよ! そうしたら一緒に色々見て回れるし!」
 ね! と笑いかけるヒィロに美咲もそうねと微笑み返す。覇竜を訪れて早々大変なことになっているようだが、イレギュラーズたちの力を合わせれば乗り越えられるはずだ。
「にしても、節足動物の分際でおこがましいよねー」
 口をとがらせるヒィロに『ファイヤーブレス』スフィア(p3p010417)はけれどと思う。面倒くさい感じがするのは気のせいではない。多少体が大きくとも、そう簡単に負けてしまうほどこの土地に住まう者は弱くない。アダマンアントたちの異常さは、イルナークが滅びたことからも伺える。
(それでも、頑張らないと……私を売った家族に会う為に、お金を貯めないと)
 これまで奴隷だった故に知ったが、冒険者というのは仕事をすれば賃金が支払われるのだという。そして空中庭園へ召喚されたスフィアもまた、ギルド・ローレット所属の冒険者としてこの依頼を受注したのだ。これを繰り返していけば、家族に会って――死を与えることだってできるだろう。
「食物連鎖の下剋上なんて、身体の大きさくらいでどうにかなるものじゃないんだからっ」
「だが、実際どうにかなってんだろ? アリにしては計画的な行動みたいだし」
 『黒鎖の傭兵』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)の言葉にヒィロは苦虫をかみつぶしたような顔をする。そうなのだ。イレギュラーズの介入による結果はさておき、今現在アダマンアントたちは着実に食料を手に入れ、持ち帰っている。それを習性として一蹴するには賢すぎるのだ。
(これが人間を最優先するとなりゃあ、原罪が悪さしてると言い切れるが……)
 これまでデザストルの亜竜やモンスターも襲っていたことを考えると、一概にそうとも言えないか。何はともあれ、こういった考察は得意とする者が行うだろう。
「やれやれ……あいつらを殺せる竜みたいなのがいれば良いんだが」
「残念だが、居そうにもないな」
 小さく肩をすくめる『天穹を翔ける銀狼』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)。開けた空から広域俯瞰で見下ろせば、ここ一帯の地形がよく見える。とはいえ、岩による視覚も多いのでこれだけで安心とは言い難いのだが。
(敵は……まだ見えないか)
 ゲオルグの視界に動くものはイレギュラーズたち以外見当たらない。アダマンアントの脅威から逃れるべく他の生き物すらも息を潜めているようだ。
「ワイバーン、今日もたくさん動いてお腹空かせて、たくさん肉もらおうな!」
 『紲家のペット枠』熾煇(p3p010425)の言葉にリトルワイバーンが闘志を燃やす。全てはこの後の肉のため。アリは美味しくなさそうだし、食べようとしてもワイバーンの牙や爪でさえも外殻が貫けなかったら面倒だ。
「――見つけたぞ」
 ゲオルグの声が敵影を告げる。岩場を縫うように進んでくるそれらに『殿』一条 夢心地(p3p008344)がキランと目を光らせる。
「この『アリ駆除検定一級』の資格を持つ麿が来たからには、これ以上好きにはさせぬぞ――アリども!」
 酸がなんだ、強靭な外骨格がなんだ。こちとらお客様から感謝の声多数、実績多数(?)の殿である。
 リトルワイバーンを駆り、あるいは地上を自らの足で駆けていくイレギュラーズたち。彼らを押しとどめるべく、猛攻が開始されようとしていた。

「おー、アリー! メナスには絶対に入れないぞー!」
 熾煇の手元で赫焉瞳が小さく光を放つ。随分身体にトゲトゲしたものが多いけれど、これがその身体に対抗する切り札だと言わんばかりに熾煇は攻撃を繰り出した。
「ボクも負けていられないね!」
 揺らめく闘志を叩きつけたヒィロが「美咲さん!」と名を呼べば、渾身の一撃がアダマンアントへ叩きつけられる。しかしそれを繰り出した当の本人は硬い、と小さく呟いた。
「ふにゃふにゃの水風船……にはまだ遠いかな?」
「みたいだね。でも、それならなおさら固い棘付きが残るなんて厄介だもの」
 先に倒す理由こそあれど、後回しにする理由はない。幸いにして、共に戦う仲間たちはパワーのありそうな者ばかりだ。
「ペイル殿、あまり無茶はしないように。落ち着いてね」
「……ああ」
 『桜舞の暉剣』ヴェルグリーズ(p3p008566)の言葉が果たして、正しく届いているのかどうか。ペイルはヒィロの引きつけたアダマンアントへ向かって全力で駆け出していく。あとは美咲たちあちらのメンバーが、うまくやってくれると良いのだが。
(……きっと、メナスの人たちが心配なのだろうけれど。俺たちもキミを心配しているのだと、わかってくれているかな)
 全く知らない仲でもないのだから、なんて呟きは心の中にしまって。これ以上ペイルの心配が募らないようにとヴェルグリーズは剣を抜く。
「キミ達……増援のアダマンアントはここで撃退させてもらうよ」
 向かってくるアダマンアントの1体へ敵意をぶつけるヴェルグリーズ。そのまま他のアダマンアントと仲間たちの戦闘を邪魔しないよう、引き離すように動けばティンダロスに乗ったマカライトと『Blue Rose』シャルル(p3n000032)が追随する。
「厄介そうな敵だね」
「それでもやらなきゃいけないんだ、やるしかないさ」
 マカライトの妖刀が敵を牽制するように払われる。そう簡単にメナスへの侵入を許すわけにはいかないのだ。食料――集落の民の確保を最優先とするならば、確実に止めなければならない。
(その為なら多少の被弾も致し方ない、ってな!)
 アダマンアントへ攻勢に打って出るマカライト。シャルルが援護するように蔓薔薇を伸ばす。蔓薔薇の棘がアダマンアントの表皮を傷つけると、うっすら体液が滲みだした。
「Ah――」
 限られた音でのみ紡がれる歌がスフィアの唇から零れ落ちる。それを耳にしながら夢心地は一気に滑空した。
「ぬおおおお!!」
 滑空とともに繰り出される斬撃。再び空へ逃げようとする夢心地へアダマンアントの酸が飛ばされる。こんなもの(イレギュラーズ)にかかずらっている暇はないのだと言わんばかりにアダマンアントが彼の外側へ回り込むが、ゲオルグもまた神の軍馬を思わせるが如く、素早いアダマンアントを追い詰めて逃がさない。
「簡単に抜けられるとは思わないことだ」
 苛立たし気にその鋭利な足先がゲオルグへ突きつけられる。パタタ、と地面に朱が散った。だが、こちらに気が向くのならば丁度良いと、ゲオルグは不敵に笑みを浮かべながら福音を響かせた。



「いってー!!」
 斬撃を浴びせたはずの熾煇が、痛みを逃がすように思い切り叫ぶ。いや、痛いものは痛いし叫んだとてそれが和らぐわけもないのだけれど。それでも叫びたくなったから叫ぶのである。
「いやでもやっぱり痛くない気がする! 痛いけど! 俺はまだまだやれるぜー!」
 携行品の力は一時のもので、それも戦っていればあっという間に効果時間が過ぎ去ってしまった。あとはこちらが倒される前に倒れてくれるよう、祈りながら全力を尽くすだけである。幸いにして、棘の力を無効化している間にそこそこの打撃を与えられていた。
「アハッ、いいね! ボクたちもどんどん行こう!」
 倒れるか、倒しきるか。生死の境を見るようなそれにヒィロの喜色に満ちた声音がこぼれる。存外に敵の攻撃は的確で、ヒィロさえも捉えてしまいそうなそれに笑みを浮かべてしまう。
 嗚呼、こうでなくちゃ。死を感じるから生を実感する。今、ボクは生きているんだって思える!
「ヒィロったら、楽しそうね。畳みかけましょ、ペイルさん!」
 美咲の苦笑とともに、ペイルの攻撃が力強く繰り出される。合わさった2人の攻撃が、あまりの暴力性にアダマンアントの強固な外殻へヒビを入れた。その威力は当然、繰り出した彼女らに跳ね返ってくる――のだが。
「負けないわ……!」
 パンドラの力がヴェールを起こし、反撃から美咲を守る。すかさずヴァルキリーオファーを響かせた美咲は、次いで状態のよくない味方へも福音を飛ばした。
「シャルル殿、近づきすぎないよう気を付けて!」
「わかってる――、っ!」
 ヴェルグリーズへそう返したシャルルが、不意に飛んできた酸に言葉を詰まらせる。咄嗟に横へと跳んだシャルルは、酸のかかった場所がどろりと解け始めたのを見て顔を強張らせた。
「大丈夫か?」
「うん。……でも、アンタたちだけを危ない目に合わせるなんて、できない」
 ヴェルグリーズも、他の仲間たちも、できるだけ安全な場所で戦わせようとしてくれているのを感じる。もちろんそれを否定するつもりはないのだけれど、だからと言って自身が攻撃できない場所まで退くつもりもない。
 それを聞いたマカライトは小さく笑って、それでいいさと返した。できる限り離れてくれるのならば、酸が飛んでもある程度は仕方ないこと。何より――彼女もイレギュラーズなのだと、わかっているのだから。
「さっさと倒して、他の奴らの援護に回ってやろうぜ」
 アダマンアントの足元から鎖が伸びる。凍えるほどの異質さと殺意を秘めたそれはブォン、と風をうならせて周囲を薙ぎ払った。
「一筋縄ではいかぬのぉ」
 ワイバーンを駆りながら夢心地は真下のアダマンアントへ視線を向ける。夢心地がヒットアンドアウェイで厭らしく攻め、ゲオルグが執拗にその足を止め、スフィアが味方を援護する――思うように進ませず、戦わせない戦い方にアダマンアントはまず地上にいるゲオルグやスフィアから仕留めることにしたようだ。メナスへ向かわないならばひとまず上々だが、2人が耐えられなくなるのは時間の問題だろう。
(させない……)
 故郷でなくても守らなければならない場所があるのだ。そして報酬のためにも、ここで失敗などできない。スフィアはすぅと息を吸い込み、口の前へ魔法陣を展開させる。吐き出した息は魔法陣によって破壊的な魔砲へと変わり、アダマンアントへ向かって打ち出された。ゲオルグも続いてゼロ距離の極撃を放つ。
「どうだ……?」
 確かな手ごたえはあった。これで倒れてくれたなら――。
「まだじゃ! 倒れておらぬぞ!」
 夢心地が急降下しながら追撃を浴びせにかかる。スフィアとゲオルグも、未だ向かってこようとするアダマンアントにしかと構えた。
 だがその一方で、他のアダマンアントたちとイレギュラーズの戦いには決着がつき始めていた。
「もう少し、もうちょっと、いけるんだー!!」
 熾煇が力を振り絞って、倒れる限界まで攻撃を繰り出していく。アダマンアントも、熾煇もボロボロだ。
「もーっ、まだやるの!? しつっこい!!」
 しかしもうあちらも限界だろう。ありったけの闘志をぶつけ、ヒィロに続いた美咲の瞳が色を変える。
「『見え』さえすれば、どこだって切れる。だから――お終いよ」
 ヒィロによってより見えやすくなったそこへ包丁を当てれば、柔らかい豆腐のように切れていく。もうアダマンアントが反撃してくることはなかった。
「皆、まだいける?」
「問題ないよ」
 シャルルからの援護に助けられながらヴェルグリーズは返す。相手の攻撃により不調をかかえてこそいるものの、火力に富んだチームだ。強固な外骨格を物ともいわせない攻勢にアダマンアントは押されつつあった。
「剥がせばさぞいい素材になるんだろう?」
 マカライトの妖刀から生えた鎖が黒龍の顎へと編み上げられる。食らうようにその顎がアダマンアントを挟み込めば、響いた嫌な音とともにシャルルが「離れて!」と叫んだ。
 一斉に交代するヴェルグリーズとマカライト。一拍遅れてアダマンアントの体が文字通りはじけ飛ぶ。そこを中心にできあがった毒沼と、ぐずぐずに溶けていくアダマンアントだったものを見て、3人は毒沼へ近づかないようそろりと後退した。

 しかし、なにはともあれ――残すは1体。
「お待たせー!」
 飛び込んできたヒィロが闘志をぶつけ、ゲオルグからアダマンアントの注意を引きはがす。先ほどまで戦っていたアダマンアントも厄介だったが、これもまた面倒そうな敵である。
「こんなのがうじゃうじゃいたら、生態系が壊れちゃうね! 目当たり次第駆除していかないとっ」
「メナスにも、他のとこにも絶対に入れないぞー!」
 熾煇の黒顎魔王がアダマンアントを責め立て、スフィアも力の限り破式魔砲を口元から打ち出す。ほうと息をついたゲオルグは自身の傷を癒しにかかった。
(ゲオルグ殿は……大丈夫そうだね)
 ヒィロたちと同じく合流したヴェルグリーズは敵の逃げ道を塞ぐように立ち、猪鹿蝶を繰り出していく。袋叩きにされるアダマンアントが最後のあがきというように暴れまわるが、多勢に無勢だ。
「悪いが、帰してもやれないんでね」
 マカライトの生成した鎖がアダマンアントの動きを鈍らせていく。今後のためにも、危険の種は摘み取っておくべきだ。そうして弱められた敵へ、美咲の獲物がひたりと添えられる。
「――どれだけ早かろうと、止まるタイミングってのはあるものよね」
 手にした包丁が、またひとつの命を刈り取った。

 ぴくりとも動かなくなったアダマンアント3体を見て、イレギュラーズたちは他に敵影がないかと探す。同時にメナスの様子も見たが、どうやらあちらもつつがなく終わったようだ。
「ペイル殿」
 ヴェルグリーズに声をかけられたペイルは、メナスの方角を見ていた瞳をゆっくり彼へ向ける。それはいつもと変わらない――冷めた、眼差しで。
「……あそこ『も』滅びてしまうと言っていたけれど、キミには何か事情があるのかな」
 できることなら聞きたいと思う。力になりたいと思う。もう知らない仲ではないのだから。
 話してくれたら嬉しいと声をかけるヴェルグリーズ、ペイルは逡巡したように瞳を揺らして……それから、青く澄んだ空へ視線を向けた。

「かつて、住んでいた集落は……故郷は。もう、この世界に存在しない」

 亜竜がすべて壊していったのだと――あまりにも静かな声音で、呟いた。

成否

成功

MVP

美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳

状態異常

ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)[重傷]
優穏の聲
美咲・マクスウェル(p3p005192)[重傷]
玻璃の瞳
スフィア(p3p010417)[重傷]
ファイヤーブレス

あとがき

 お疲れさまでした、イレギュラーズ。
 メナスの地は無事に守られたようです。

 またのご縁をお待ちしております。

PAGETOPPAGEBOTTOM