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シナリオ詳細

<13th retaliation>呪いのミセス・アルヴラーナ屋敷

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●呪いの館
 たとえば、通路に飾られた鎧が動き出し襲いかかる。
 たとえば、棚に置かれた人形がナイフを持って襲いかかる。
 たとえば、ベッドがひとりでに浮きあがりあなたへとぶつかってくる。
 たとえば、発狂した幽霊のような存在が意味不明な言葉を叫びながら掴みかかる。
 そんな場所があったとしたら、まさしく『呪いの館』と呼ぶに相応しいだろう。
 事実、その原因が呪術であったならなおのこと。

 きっかけはアンテローゼ大聖堂の奪還であった。
 深緑じゅうが謎の茨に覆われ、人々が眠りの呪いにおちてしまった事件から大きく進展したローレットたち。
 彼らは魔物の大群や強敵たちを退け、ついに大聖堂の奪還に成功。これをトリガーとしてラサ~アンテローゼ大聖堂間のルート制圧が始まったのである。
 そんななかで比較的早期に行われたのが、ミセス・アルヴラーナ屋敷の探索であった。
 ミセス・アルヴラーナ屋敷は古くからあるハーモニアがメイドたちと共に暮らす屋敷で、周囲に魔物達の姿もなかったことから屋敷内の探索が行われた。
 これは、その探索を描く物語である。

 門をぬけ庭園に入ったところで探索隊のひとりであったサルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)は屋敷で働くメイドとおぼしきハーモニア女性を発見した。
「もし、もし。ご無事ですか?」
 地面に倒れて眠るメイドをゆすってみるサルヴェナーズ。意識こそあるが眠りの呪いにかかっていると判断したサルヴェナーズは探索にあたって持たされていた『聖葉』を仕様することにした。
 これは大聖堂地下にある灰の霊樹に祈りを捧げ作られた加護ある葉で、ファルカウ内で観測された『茨咎の呪い』を緩和あるいは解呪する効果をもつ。
 しかし……。
「目覚めません、ね」
「どれ、見せてみろ」
 探索隊に加わっていたTricky・Stars(p3p004734)が近づき、ハーモニア女性の状態を診察する。彼は医療の知識や技術をもっていた。こういうことは任せて間違いないだろう。
「倒れた場所から動かしても変化はない。確かに例の呪いは解呪されているようだ。しかし、健康状態がよくないな。睡眠障害とは異なる……これは、覚えがあるぞ」
 Tricky Stars(稔サイド)は顔をあげ、『同じケース』を経験していたであろうサルヴェナーズの顔を見た。
 一度小首をかしげたサルヴェナーズだが、次の言葉でハッとした。
「周囲を霊的に観察してみろ。疎通可能な霊魂はあるか?」
「――!」
 あたりを見回す。確かに、霊魂のたぐいを感じられない。それも異常なほど静かだ。
 アルブレウという村落を調査した際の現象に、それはよく似ていた。
 パッと手をかざすTricky Stars。彼の手には一枚の紙片が現れ、そこには戯曲が短く書かれている。その中に気になる一節をみつけた。
「『常夜の鎧』……」
 アンテローゼ大聖堂攻略戦のなかで出現したという強力な敵個体の中に、『常夜の王子』ゲーラスというものがあったのをふと思い出した。身体は夜の色をした鎧でできており、精霊とも魔種ともことなるいわゆる『呪物』にあたる存在だとも。
 その時である。
 ぶわりと、館から強い呪力が噴き出した。
 それはサルヴェナーズはおろかTricky Starsにも感じることができるほど明確な霊的気配であり、圧力さえもって吹き出るそれは……。
「『呪霊』……」
 そんな言葉を思わず口にしたサルヴェナーズに、Tricky Starsが振り返る。
「まさか、捕らわれているのか? 彼女らの霊魂が……この館に」
 ゆっくりと二人は立ち上がり、館へと身構える。
 今から始まるのはただの館の探索ではない。

 呪われた館の探索、である。

GMコメント

●オーダー
 呪われた館『ミセス・アルヴラーナ屋敷』の探索

 この館の中には館の主であるミセス・アルヴラーナとその家族。更にメイドを含めた従業員たちがバラバラに倒れ、昏倒しているものと思われます。
 彼女たちは霊魂を抜かれ、その館やその内部にある品々が霊魂を素材とした『呪物』や『呪霊』に変えられているようです。
 皆さんは館内部を探索し、人間達を救出しながらこれら呪物たちを退けていくことになります。

・探索チームについて
 また、探索に時間をかけすぎると霊魂を失った人々の状態が悪化するおそれがあることから早期の探索が求められています。
 リスクと相談しつつ、探索チームを何組かにわけて館各所へ散らしましょう。
 およそ2~4人組チーム。自信があるなら1人チームでもいいでしょう。

●フィールド:ミセス・アルヴラーナ屋敷
 二階建ての広い屋敷です。周囲は庭園に囲まれており、内部の部屋は1階、2階、地下室の三階層に分かれています。
 どの場所に誰がいるかはわかっていないので、全体をくまなく探索する必要があるでしょう。

●エネミー
 館内部の置物や家具などが呪物化しています。
 ここでいう呪物とは、住民から奪った霊魂を物品に押し込めたことでできあがったモンスターです。
 これを倒すことで霊魂が解放され持ち主のもとへ戻るとされています。
 そのため、これら呪物を倒すことも住民救出に必要な工程となるでしょう。
 中には物体に押し込めず直接呪霊化させたモンスターもいるようです。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <13th retaliation>呪いのミセス・アルヴラーナ屋敷完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年04月20日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
Tricky・Stars(p3p004734)
二人一役
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
薄明を見る者
鏡禍・A・水月(p3p008354)
鏡花の盾
グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者
サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)
砂漠の蛇

リプレイ

●ミセス・アルヴラーナ屋敷
 白く美しい二階建ての屋敷だ。
 正面にはステンドグラスが飾られ、広い庭園には美しい花が咲いている。
 門から玄関に通じる道を歩きながら『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)はその不気味なまでの静けさを感じていた。
「生きたまま魂を抜き取って戦力にするとはな……」
 横に道の端。コートを敷いた上へ寝かされたメイドらしきハーモニア女性を見下ろす。
「まだ息はあるんだよな? 死んだら……どうなる」
「普通に考えるなら、抜き取られた魂は二度と肉体に戻らないだろう」
 生きている内に戻さなければならない。そう、『二人一役』Tricky・Stars(p3p004734)はメイドの状態を確かめてから立ち上がり、言葉を加えた。
「仮に幽体離脱をしたとき、肉体が車にひかれて死ぬさまを想像してみろ」
「ホラーがすぎる」
「今回は人命第一だ。できれば、呪われた原因も探ろう」
「それには賛成です。いったい、どうしてこのような事を……」
 『砂漠の蛇』サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)は館のほうへと振り返った。
 美しい屋敷であるはずなのに、今はどこか禍々しい雰囲気を感じざるを得ない。
「時間をかければ被害が増えてしまうでしょう。早く決着を付けなくてはなりませんね」
「…………」
 黙って館を見つめていた『抱き止める白』グリーフ・ロス(p3p008615)が表情に暗いものを宿す。
 深緑にはグリーフの領地もある。あの木もだ。
 もし領民達が呪いに犯され、どころか霊魂までもを抜き取られ呪物にかえられていたらと思うと……身震いするものがあった。
 それは生命への。あるいは『個』への冒涜といってもいい。
「生霊を意図的に作っているんですよね? 普通の人の考え方じゃないです。ちょっとゾッとしますよ」
 『割れぬ鏡』水月・鏡禍(p3p008354)も出自から呪術や妖術というものに馴染みのある存在だ。そんな存在でも、好んで生霊を作って並べようなどとは思わないだろう。
 少なくとも、生きた人間に対して相応の尊重というものがある。霊魂だけ抜き取って呪物を作ろうなどというのは、生かすとか殺すとかそういう次元を越えた価値観だ。
「……」
「……」
 仲間達がそれぞれ意見を述べるなかで、『導きの戦乙女』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)と『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)が全く同じ姿勢で並んでいた。
 腕組みし、顎をすこしあげ、足を肩幅に開く……という完全な受けの姿勢である。
「モカ。今回の話、分かったか?」
「お前こそ、分かったのかブレンダ?」
 目だけを動かして互いを見やる。
「理解する必要はない。暴力があり、晒され奪われた者がいた。動く理由はそれで充分だろう」
「同感だ。曲がりなりにもイレギュラーズ。世界を救うために召喚された存在だ。巣くうために動くさ。今まで通りにな」
 モカは腕組みを解くと、館へと歩き出した。
 遅れてブレンダも歩き出そうとし、ふと自らの左目に手をやった。前髪で隠れたその場所には、曰く神から贈られた呪いが刻まれているという。
「どこの世界でも、呪いというものは厄介なのだな」
 しかし。
 呪いの定義とは、なんだろう。
 願いや祈りや祝福とは異なるものなのだろうか。
 ……あるいは、同じものなのだろうか。
 『希う魔道士』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)が通路を進んでいき、扉に手をかける。
「魂も体も本人の意向を無視して勝手に加工されたりするのは……勝手に扱われて苦しむのは、つらいよ。
 魂が抜けた身体を維持する『魔術紋』である僕にとって、館や人々の状態は…想像するだけで心苦しい」
 館の人々の身体がいつまでもつかはわからない。今も衰弱している状態だ。はやく助け出し、安らかな状態にもどしてやりたい。
「急いで助けよう。皆を」

●屋敷二階にて
 玄関の扉をあけると、広いロビーがある。脇にある階段を上っていけば、屋敷の二階へと入ることができた。
 明るく広い吹き抜けのロビーとはうってかわって、二階の通路は薄暗い。壁の灯りが消えているからというのもあるが、それ以上に薄気味の悪さがつきまとっていた。
 二階の探索を担当しているのはヨゾラ、ブレンダ、鏡禍の三人だ。
 ヨゾラは感覚を研ぎ澄まし、いつでも魔力を発動できるように構えながら慎重に進んでいく。
 ブレンダは透視能力を、鏡禍は暗視能力をそれぞれオンにして周囲に視線をはしらせていた。
「とうやって探索しますか? 手前から一部屋ずつ見ていきましょうか」
「それがいいだろう。何人か助けたら一度休ませよう。場所からして危険な場合は……動かすのもいいが、慎重にな。『聖葉』もそう数がない」
 灰の霊樹からとれる『聖葉』は数に限りがある。館の全員の意識を戻して連れ出すというより、霊魂を一旦戻した状態のまま寝かすというのが適切な処置になるだろう。一人くらいは解放して状況を尋ねたいが、その選択は後に回せばよい。
「わかった。皆も気をつけて」
 ヨゾラが頷き、そして進もう――とした途端。
「ヨゾラ殿!」
 ブレンダがいち早く何かに気付いて叫んだ。
 だが同時に、壁が突如として破壊されヨゾラが巨大な手のようなものに掴まれそのまま壁むこうの部屋へと引きずり混まれる。
 ブレンダが部屋の中へと追いかけ、剣を抜く。
 飛び込んだ部屋は、ありていにいって『強化版ポルターガイスト』の現場になっていた。
 広い寝室だが、ベッドも椅子も化粧台も浮かび上がり、ベッドから伸びた巨大な手がヨゾラを掴み締め付けている。
「鏡禍殿、彼を頼む!」
 ブレンダは腕の付け根めがけて走ると、炎をあげる剣で根元を切断。
 パッと散った霊体からヨゾラが解放され、転落せぬよう鏡禍がそれを支えた。
 支えつつ、はっとして振り返る鏡禍。
 化粧台がまるでミサイルのように二人へと突っ込んできた。
「ヨゾラさん伏せて!」
 支えていた腕を解き、鏡禍は両手を突き出すようにして魔力障壁を展開した。
 鏡禍の妖術によって湖面のようなフィールドが広がり、ぶつかる化粧台がゴッという音をたてた。障壁はそのままに、波紋のようなものが広がり表面に鏡映しになった鏡像もまた歪む。
 一方のヨゾラはごろごろと転がり安全な場所で起き上がると、周囲を素早く観察。
 広範囲に向けて魔法をぶっ放すことは可能だが、狙いも付けずにそんなことをすれば無駄撃ちにもなりかねない。
(考えるんだ。これはただのモンスターじゃない。人の霊魂から作られた呪霊だ。こんなに強力に振る舞う個体が一部屋にいくつもうまれるのは不自然だ。だったら――)
 意識を集中。飛び交う椅子やベッドサイドテーブル。
 鏡禍があちこちに障壁を展開してヨゾラを守ってくれているし、ブレンダに至っては飛んできた椅子を剣でたたき落とし粉砕までしていた。
 だがこの有様が収まる様子はない。
 更に意識を……今度は耳に集中させた。
「……ッ!」
 何かに気付いたヨゾラは、ブレンダと鏡禍それぞれに呼びかける。
「隙を作るよ、『本体』を叩いて!」
「本体!?」
「大丈夫、見れば分かる!」
 立ち上がり、ホワイトハープに手を書けた。
 音が可視化できるのではと思うほど美しい光が波紋となって広がっていく。それらは衝撃となってあちこちの椅子やテーブルを弾き飛ばしたが、最も強く効果を現したのはベッドの上にある透明な何かだった。
 人型の呪霊が悲鳴をあげ、透明化を解いて全身をふるわせる。と同時に、布団によって隠されていたハーモニア女性の姿もまた露わとなった。
 鏡禍が走り出し、ブレンダもまた走り出す。
 焦ったように手を伸ばした呪霊がブレンダに巨大化した腕で殴りつけ――ようとするのを、鏡禍の障壁が斜めに受け流した。
 あまりの衝撃に鏡禍が吹き飛ばされるも、ブレンダが斬りかかるには充分なチャンスだ。
「今です! あとは壊すだけ!」
「任せろ、『それ』は得意分野だ」
 ブレンダの剣が、呪霊を豪快に切断した。

●屋敷一階にて
 ウェールとグリーフは協力して屋敷の一階を探索していた。
 二階や地下にくらべて広いものの、その殆どが広い部屋でできている。
 困ることといえば、絵画や像といったアイテムが大くどれが呪物か判別がつかないところだった。
 丁度今は食堂を探索していたところだが、壁にかかった絵画がいまにも襲いかかってきそうでウェールは気が気でない。
 透視能力を発動させつつ、隠し部屋などがないかを確かめながら部屋じゅうを隅々まで調べていく作業はなかなか神経をつかった。
「この部屋は大丈夫ですね」
 一通り調べ終えたグリーフが、壁際の棚に飾られたへんてこな地球儀めいた美術品から顔をあげる。
 同じ部屋の中とは言え離れて調査できているのは、二人が共鳴スキルによって互いの位置確認や意思疎通ができているためだ。連携して動くにはかなり有利なスキルである。
「隣は……客間か。透視した限りではおかしな様子は見えないが……どう思う」
 ウェールは目の疲れが出たのか目頭に手を当て、小さくため息をつく。
「私が呪物化した家具だったら、侵入者が近づいてくるまで動かずに奇襲を狙うでしょう」
「だよなあ」
 ウェールも同じ事を思った。二人は食堂を出てから客間の前に立ち、扉に手をかけつつ顔を見合わせる。
 客間に並んでいるのは、鎧飾り、絵画、向かい合わせのソファ。間にはガラス板を使ったテーブルがある。
 窓からは光がさしこみ、絨毯の美しい模様もあいまって部屋はとても上品だ。
「…………」
 ウェールは何かを思い、半眼になりつつも、とりあえずといった様子で扉をあけグリーフと共に素早く中へ入った。
 背中を合わせるように立ち、周囲を観察。
 二人は再び頷き合ってから部屋の奥に飾られた絵画へと歩み寄った――その時、後ろで鎧がガチャリと動き出した。
「どうせそうだろうと思った!」
 ウェールは振り向きざまに魔術を発動。炎が燃え上がり、今まさに斬りかからんとする鎧を包み込んでいく。
 炎にまかれた鎧はそのまま強引に距離を詰めてくるが、剣の刀身と鎧の腕をそれぞれ掴む形でグリーフが割り込んでいく。
「ウェールさん、ソファの裏に人が倒れています」
 グリーフの言葉通り、窓側のソファの裏にやや隠れるようにしてハーモニア女性が倒れているのがちらりと見えた。
「わかった、保護は任せろ! ここじゃ遠距離戦をやるには狭すぎる!」
 ウェールはそう叫ぶとハーモニア女性と鎧の間に割り込むように立ち塞がり『療原之火』の術を放った。広がる癒やしの炎がグリーフを包み、同時にグリーフは自らの拳に魔力を宿らせる。
 至近距離での戦闘なら、心得がある。
 グリーフは鎧の腹を蹴りつけて一旦距離をとると、勢いよくそのヘルメットへと拳をたたき込む。
 がごんという派手な音が響き、鎧のヘルメットが吹き飛び壁に激突。と同時に、鎧に込められていた力が抜けた。

●屋敷地下にて
 ロビーから更に奥へ進んだ後、地下へ続く階段が見つかった。
 それほど広大とは言えないが、元の広さがかなりあるだけに地下空間も立派なものだ。
 Tricky Stars、サルヴェナーズ、そしてモカが持参したランタンを翳して周囲を照らし出す。
 赤い煉瓦で作られた地下室には樽や木箱が置かれ、その殆どは自家製ワインや保存食が入っているようだ。
 部屋は……ひとつしかない。空気はどこかひんやりとしている。倉庫として使われているのだろう。
「地下はこれだけか? 何かが襲ってくるようなこともないようだが……」
「いいえ、待って下さい。声が……」
 Tricky Starsが訝しんでいると、サルヴェナーズが手をかざして周囲を観察するかのように首を巡らせた。
「声? 何も聞こえないが」
「霊の声です。私達を呼んでいるような……」
 モカは『ふむ』とつぶやき、地下室の壁際を調べて回ってみた。
 するとややってから、地面にレールのようなものを発見した。
 壁際に置かれた棚の下からのびているものだ。
 もしやと思って逆側から強く押してみると、棚は思いのほか簡単に動いた。
 タイヤが回るような音と共に、レールにそって動く棚。端まで押し込むと、壁だと思っていた場所に石の階段が現れた。更に下へと続くものだ。
「……おお」
 モカが手をかざし、その手をTricky Starsが軽くハイタッチする。

 慎重に地下二階へと降りていく。
 防空壕かなにかだろうか。隠し部屋とは随分用心深いものだが……。
「気をつけろ。人の息づかいが聞こえる。誰かいるぞ」
 Tricky Starsが小声で呼びかけた。
 ならばとサルヴェナーズが前に出て……地下二階のスペースへと出た。
「――ッ!」
 振り向く。と同時にサルヴェナーズは泥のような障壁を展開し、ほぼ同時に吹き飛ばされた。
 目の前で吹き飛ばされたサルヴェナーズに驚くモカだが、引き下がりはしない。
 あえて飛び出し、立ちすくむように存在していた呪霊めがけて壁を蹴っての三角跳びで襲いかかった。
 攻撃直後だったのだろう。隙のある呪霊めがけ『雀蜂乱舞脚』を繰り出すモカ。
 まるでマシンガンのように連射された蹴りが呪霊の頭部をべこべことへこませていく。
「無事か」
 Tricky Starsが一拍遅れて姿を見せると、壁にめり込むかのように激突していたサルヴェナーズがむくりと身体を起こす。
「ええ。少し死にかけただけです。怪我はありません」
「言葉の矛盾がはげしいが……わかった」
 サルヴェナーズに回復は必要ない。というか、HPが1で保たれている彼女を回復する余地はそもそもない。
 重要となるのはモカのほうだろう。
 呪霊は手をかざし、モカへ無数の衝撃の弾丸を撃ち込んでいく。身体のあちこちがベコンとへこむが、Tricky Starsが対抗するように放った治癒の魔法によってボコッと損傷箇所が急激に修復されていく。
「実に心強い。こう見えて打たれ弱いものでね」
 冗談めかしてそう言うと、モカは強烈な後ろ回し蹴りを繰り出した。
 と同時に、ぬるりと距離を詰めたサルヴェナーズが呪霊めがけ『ペイヴァルアスプ』を仕掛ける。目を覆っていた布を外し、魔眼の輝きによって幻影魔術を行使したのである。
 呪霊にも幻影魔術はどうやら有効なようで、ありもしない恐怖を振り払おうと腕を振り回し後じさりした。
 が、後方にあったのはスウェー移動したモカだ。再びの後ろ回し蹴りが呪霊の後頭部へ直撃し、パンッと水風船の弾けるような音がしたかと思うと呪霊が弾けて消えてしまった。

 弾けたあとは霊魂の光が散り、それらは地面に倒れたハーモニア女性へと集まっていく。
 Tricky Starsはすかさず『聖葉』を取り出すと、女性へと使用した。
 ハッと目を見開き、荒く呼吸をする女性。
「大丈夫だ。助けに来た。何があったのか教えてくれ」
 Tricky Starsの言葉をうけ、抱え起こす彼の顔と、覗き込むモカと、その後ろのサルヴェナーズをそれぞれ見る。
 女性は安堵の息をつくと、肩の力をぬいた。
「夜のような色をした鎧が、屋敷を襲撃したのです。剣によって斬られたメイドたちは怪我ひとつないのにその場に眠るように倒れいって……この場所へ逃げこんだ私も……」
 そうか、と小さく返しモカたちへと振り返る。
「後は頼む。地上へと運ぼう。ここは少し冷えすぎる」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 屋敷の人々を救出しました
 彼女たちは『夜の色をした鎧』に襲われたようです

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